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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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魔法を信じていないから

 草原と言っていたが、確かに緑色の草で覆われた広い場所だった。
 周りが木で囲まれているので、この一打と城の方からよくは見えないと思う。
 レイアは彼女なりに事情があるようで、あまり僕のことを知られたくないようだった。

 そう思いつつ僕はそこでレイアに、

「えっと、魔法について教えてくれるんだよね?」
「はい。と言っても颯太は巨大な魔力を持っていますので、それさえあれば、颯太の望む用に好きに魔法は理屈上使えるはずなんです」
「理屈上?」

 付け加えられた言葉に何となく僕は不安を覚える。
 妙なことにならないといいなと思いつつ、

「でも僕はこれまで魔法を使ったことがないから、どう使ったらいいのか分からないや」
「……ではまず簡単な魔法について説明します。魔法には二種類あって、前者はこの世界に干渉して、一定の方向に風を拭かせる魔法等、後者はこの世界に新たに水などを魔力で作り出す魔法です。ですがよほど魔力が大きくないと後者はきついので、この世界の魔法使いはたいてい前者のこの世界にある事象に干渉し、操る魔法が主になっています」
「となると……でも、後者の場合は生み出したのを操らないといけないんじゃないかな?」
「そうですね。そういった意味では両方を使う威力の高いものほど高度な魔法と言えるでしょう。ですので、炎を生み出して攻撃や氷を呼び出して攻撃といったものは、比較的高度な魔法に分類されます」
「そういったものが使えるようになれるのはいいかな。えっとそうだ、それでまず教えてもらえるのは、どんな魔法なのかな?」

 僕の魔力は強いと言っていたので、後々にはそういった魔法も自由に使えて、華麗な攻撃やら何やらができるようになるかもしれない。
 よくゲームや漫画、小説のファンタジーに出てくるような魔法を自分の手で行えるのはちょっとだけ……否、凄くワクワクする。
 そう僕が期待に胸を含ませているとレイアが自身の前に手を伸ばして、

「では、魔法を使ってみせます。これは小さな風の渦を呼び出す魔法です。まずは頭の中にその渦ができるイメージを浮かべます。次にこの手の先に体内にある魔力を集めるイメージです。そして動くよう念じると……ほら」

 そこでレイアのかざしたての前の方に風がうずまき、草が宙に飛んで行く。
 たしかに小さな風の渦がそこに生じていた。
 魔法だ! 僕は即座に同じように手をかざして念じてみる。
 けれど何も起こらない。

「あ、あれ? 何も起こらない」
「……やっぱり、ですか」
「やっぱり?」

 そこでレイアがむ~っと小さく呻いてから、

「最近異世界の方を呼ぶと魔法を使えないんです。魔力はあるのに」
「え?」
「どうやら魔法の存在を信じていない、否、無いと思っているらしく無意識の内にこの世界でも魔法が使えなくなっているようなんです。心当たりはありませんか?」

 そう言われて僕はぎくりとした。
 だって魔法が使えるなんて言えるのは、それこそ小学生までじゃないかと煽ってしまうレベルである。
 けれどそういった思いがあるから逆にこの世界で僕は魔法を使えないのかと思っているとそこでレイアが、

「ですがその無意識を蹴散らすくらいに確固たる“イメージ”があれば魔法が使えるはずなんです」
「それをするにはどうすればいいのかな?」

 僕がそう聞くとレイアは一本の長方形の棒のようなものを取り出した。
 硝子のようなそれは、先ほどレイアが騒ぎを起こすために使ったものである。
 確かこれを使って魔法を使っていたようなと僕は思っているとそこで、

「これに魔力を注入するイメージで力を加え、手前に放り投げてください。それほど強い魔法ではないので大丈夫だと思います」
「わ、分かった」

 僕はそう答えてその硝子の長方形の棒状のものを受け取る。
 中には複雑な模様と花のようなものや石の欠片のようなものが封じ込められている。
 とりあえずは僕は魔力を込めるようなイメージをしながらそれに触れて、

「こう、かな」

 ぽんと目の前に投げる。
 そこでその硝子が輝き、信じられないような量の水が、その硝子が砕けると同時にあふれたのだった。

 
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