異世界を拳で頑張って救っていきます!!!
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この世界に来て 【4】
【4】
「ぶぎいぃいぃいい! は、早くやっちまえお前ら!!」
「「「は、はいお頭!!!」」」
親分の命令に忠実なゴブリン3匹が同時に僕に向かって突進してくる。スピードは成人男性と同じくらいか……いや少し遅いかな……。
敵の武器は棍棒……一度も相手にしたことはない、木製バットを使ってくる相手と戦う感覚でいいのかな? 僕は咄嗟に敵の武器を認識する。先ほどまでとは違い、頭の中は違い真っ白にはならない。
「グルぁアアアアアアアアアアアア!!!」
敵の動きは何の訓練もされてないただ力任せの攻撃、動きは遅いし守るべき急所はがら空きだ。
「シッ!」
始めに大声を上げながらこん棒を振りかざしてきたゴブリンのみぞおち……専門用語で水月と呼ばれているあたりにかかとをめり込ませる。
「グゲッ!?」
そのままゴブリンのみぞおちを足場に後ろに跳び、最初の一匹よりも少し遅れて二人のゴブリンがほぼ同時に振ってきた棍棒をかわす。
「ぐげっ!?」
「ごべっ!?」
二人のゴブリンは空ぶった棍棒でお互いの頭を殴りあう。……まるでコントだな……。
「この程度なのかい?」
僕は自然に顔にでてきた挑発的な笑みをゴブリン隊長を向ける。
「きいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!! 使えない奴らめ!!! 全員で、全員でつぶせえええええええええ!!!」
「「「「「「「「「「「グルぁアアアアアアアアアア!!!」」」」」」」」」」
僕の笑みを見て頭に血が上ったのか親玉ゴブリンが緑色の唾を散らしながら怒鳴りあげる。それに答えるようにして大勢のゴブリンが一斉に僕に向かってきた。
「ケント……逃げて……!」
近くでしびれて動けなくなっているアリスの声が聞こえた気がした。
「問題ないよ……」
僕はアリスに対して一言だけ言葉を発する。敵の攻撃はひどく遅い、集団攻撃の訓練すら受けていないらしくお互いがお互いの動きを規制しあっている。これでは僕と直接戦える奴は3人だけになってしまう。それに敵の身長は僕より低い。身長差は格闘戦に置いてとても重要だ、5cm違うだけで間合いが全く違ってくる。
「……………」
僕は全神経を集中させてひたすら相手の攻撃を見切ってはカウンターを入れていき、攻めれるときにはきちんと攻めていく。
上受中段熊手突き突き点一からの十字受け蹴り振り突き中段回し蹴り撃ち受け中段蹴り下受け蹴り飛び二連蹴り上中上三練攻前千鳥足からの内受け突き……………………
「ッ………………!」
どれくらい時間がたっただろうか……我に返った僕は血まみれのゴブリン達を見下ろしていた。頭がボーっとする、呼吸がとても荒い、肺が焼け付くように痛い。体全身が酸素を求めてあえいでいる。
「……………」
ジッと自分の拳を見つめる。アリスのガントレットはゴブリンたちの血で染まり、ひび割れ、だいぶ傷んでいた。拳が痛い、この痛みは前の世界でコンクリートを殴り続けた時の痛みに似ている。
「ッ!?」
もうろうとした頭を振りながら、血だまりを歩いて倒れているアリスの方へ歩いて行こうとしたら足の甲に激痛が走った。
これは……折れちゃったかな……。靴はボロボロになっているし足の皮も向けているみたいだ………。
「アリス、立てる……?」
「ケン……ト……そ、そんなに強かったんだ………」
「ハハハ、あの巨大トカゲを一撃で倒したアリスの方が強いと思うよ………」
アリスは信じられないものを見るような顔で僕を見てくる。僕は優しく微笑みながらアリスの手を掴み起き上らせた。
「クッ……」
アリスは僕の血にまみれた手を掴み、何とか起き上ったが歩こうとしたらこけてしまった。
僕はまだしびれが残っているらしくうまく歩けないアリスに肩を貸そうとすが――――――――――――
あれ………なんで地面が目の前に……。
「ケント!? しっかり!? しっかりして!!!」
ちょっと無理しすぎたかな……。
アリスの叫び声を聞き流しながら僕の視界はだんだんと黒く染まっていった……。
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