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緋弾のアリアGS  Genius Scientist

作者:白崎黒絵
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イ・ウー編
燃える銀氷
  34弾 『生徒呼出 星伽白雪』

 放課後。

 あの後調子に乗った間宮に1対1の勝負を挑まれ、見事にボコボコにしてやった俺は装備科の校舎を出た。

 夕焼けに照らされる道を少し歩いて、後方――――正確に言うと後ろから近づいて俺を驚かせようとしている小さなパートナー――――に声を掛ける。

「バレてるぞ、アリア」

「っ!?」

 振り向かなくても分かる。驚いた顔をしたアリアがビクンッと跳ねた。

「……はあ。あんた、勘はいいのね」

「勘『は』?」

「勘『も』、よ」

 そう言い直し、アリアは小走りで俺の隣に並んでくる。

「なのに、変なところで鈍感なのよねー」

「? 変なところで鈍感?」

「気にしなくてもいいわよ。どうせ考えても分からないだろうし」

 それに、気づかれても困るしね。と微笑むアリア。むう、何だかよく分からんが、アリアがこういうなら些細なことなんだろう。

 しばらくの間、くだらない雑談をしながら夕暮れの道をアリアと歩いていると、教務科(マスターズ)の前でふと奇妙なものを見つけた。

「おい、アリアこれ」

「ん?何よ?」



『 生徒呼出 2年B組 超能力捜査研究科 星伽白雪 』



 白雪が教務科に呼び出されている旨を伝える紙が、掲示板に貼り付けられていた。

「アリア、お前この前の件を教務科に言ったりは……してるわけないか」

「当たり前じゃない。貴族はそんな卑怯なことはしないの」

 まあそうだろう。アリアはどちらかというと直接的な方法を好むからな。こういった間接的な手段で、しかも敵でもない相手を追い込むはずがない。

 となると、他の理由は……無いな。皆無だ。

 白雪は超絶優等生である。そんな白雪が呼び出されるなんて某リリカルでマジカルな魔法少女が、ホビーショップで平和に体感シミュレーション型ゲームに熱中するくらいあり得ない。

 が、実際に白雪はこうして呼び出されてるわけで……むむむ、少し気になってきたな。よし。

「潜入しよう」

「は?」

「だから、教務科に潜入するんだよ」

 呆けるアリアにもう一度言ってみる。しかし反応はなかった。

 流石の双剣双銃(カドラ)さんも、隅から隅まで危険な東京武偵高校の中でも更に危険な『三大危険地域』の一つ、教務科に潜入するという提案には思考がフリーズしてしまったらしい。

 しばらくその場でアリアが戻るのを待つ。待つ。待つ。待――――

「ハッ!」

 戻った。

「ちょ、ミズキ!あんた正気!?」

「もちろん正気だが」

 あっさりそう答えると、アリアはむむむと唸った後――――

「ま、いいか」

 と、これまたあっさり了承あそばされた。

「いいのか?」

「止めてもあんたは行くんでしょ?なら、あたしが行かないわけにはいかないじゃない」

 いかないないのだろうか。いかないらしい。

「……それに、これであの女の弱みを握れれば……くふふ」

「お前、未だにこの前のこと根に持ってたのか」

 てっきりもう気にしてないと思ってた。

「あたしとしては別にもういいと思ってたんだけどね。あの後も何度か嫌がらせを受けてるのよ、あの女には」

 なんと。

 聞けば、アリアが一人だとあちこちでドアの前に気配がしたり、物陰から見張られてる感じがしたり、電話が盗聴されてるみたいに断線したり、渡り廊下から水を掛けられたり、どこからともなく吹き矢が飛んできたり、落とし穴に落とされたり、『泥棒ネコ!』って書かれた手紙がデフォルメされた猫のイラスト付きで送られてきたりしていたらしい。

 何か壮絶だな。最後のだけはちょっとほほえましいが。

「それに!こないだなんか、女子更衣室のロッカーを開けたらピアノ線が仕掛けてあったのよ!あたしがロッカーの奥に潜りこまないと服を取れないって分かってて、首の位置に張られてたんだから!」

 そいつは、流石に洒落にならないな。というか、一つだけ別格で、異質だ。

 そう、まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……考えすぎか」

 何だか嫌な予感がしたが、首を振ってそれを振り払う。

 とにかく、アリアの許可は得た。今日、白雪が呼び出されてる時間に――――

「――――教務科に、潜入だ」 
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