大統領の日常
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本編
第四十話 首都戦8
前書き
またまた遅くなってしまったorz
最近宇宙戦艦ヤマト2199の物語ばかり考えてしまって全然話が進まない・・
今回も少し長いです。でもこれだけ時間あったのにと思うと少ないです。反省するんで許してください・・・
西暦2115年 11月 13日
核攻撃の約30分前
新無宮殿上空には、シヴァ、第三独立艦隊が周辺を警戒し、度々接近してくる貴族派の部隊に対空砲の雨を降らしていた。
地上では、部隊の撤収作業が始まっていた。新無宮殿の周囲では武装親衛隊第三師団通称武装神父隊が警備に当たり、対空砲の雨をかいくぐってきた貴族派軍を盛大にもてなしていた。
ペルシャールに同行していた特殊戦闘大隊の隊員達が、担架に乗せられたペルシャールとそのそばで今にも泣きそうな表情をしている天龍と龍田、そして既に涙でぐちゃぐちゃになっているビスマルクを囲んで、シヴァからの連絡艇を待っていた。
「ちっ・・俺がついていれば・・・」
「天竜ちゃんがついていてもどうにもならなかったわよ・・」
既にペルシャールが死んだかのように話しているが、意識不明の重体であり、まだ死んではいない。
「う・・ぅぅう・・・私のせいで・・・私のせいで・・アドミラルが・・・私の・・・私の・・せい・・で・・・うぅぅ・・・・」
ビスマルクは艦娘宿舎から顔を伏せて永遠とそ葉を繰り返していた。重要なことなのでもう一度言うが、ペルシャールは意識不明の重体であり、まだ死んではいない。
彼女たちには見向きもせず、いつもと変わらない無表情な顔で警備をしているのは訓練のおかげか、ハイドリヒの人格が影響しているのだろう。
数分その光景が続いていると、上空から連絡艇が降りてきた。
着陸すると中から10人ほどの医療班が現れ、専用の担架に乗せ換えると、天龍と龍田、そしてビスマルクと数人の隊員が乗り込み、離陸した。同行していった親衛隊の隊員はいずれも特殊戦闘大隊の中でも特に優秀な隊員であり、ビスマルクを囲むように護衛の言う名の監視を行っていた。ハイドリヒからは少しでも不穏な動きをしたらすぐに撃ち殺すように命令されており、手には親衛隊の標準的なライフルではなく、対艦娘用の特殊ライフルが握られていた。これもハイドリヒが艦娘が現れた直後に、マゾサイエンティストこと開発部に極秘に開発させたものである。
艦娘宿舎で保護した艦娘たちを輸送艇に乗せていく兵士たちもこのライフルを装備している。
連絡艇が去った後も撤収作業は進んだ。
途中武装神父隊の疲労がたまったため、SS第二師団通称装甲擲弾兵師団と交代し、彼らも輸送艇に乗って揚陸艦へと帰還していった。
一方沿岸部の艦娘、深海棲艦の艦隊は、沿岸部から撤収して、海上にて待機していた。ちなみに妖精部隊の約3割は新無宮殿にて撤収作業の手伝いをしている。
撤収作業の70%が終了した直後、シヴァのオペレーターの一人が叫んだ。
「2時方向から高速で接近してくる物体あり!ミサイルと思われます!!」
砲雷長は直ちに迎撃を命じた。
しかし、いかにディベル粒子の散布された状況でもある程度当てることが出来るとはいえ高速で飛来してくる物体に当てるのは困難であった。
「迎撃ミサイル全弾命中せず!」
「ミサイルさらに接近中!!」
そんな報告の中、オペレーターの一人の表情が青ざめた。彼の所属は解析班である。これは主に回収したものを解析したり、戦闘に影響する物質や、生命反応の確認などをする班である。ミサイルなどの弾頭を解析して通常弾頭か否か、対艦か対潜か、などを調べることもできる。
「こ、これは・・・・」
「ん!?どうした!」
解析班のオペレーターが青ざめた表情でニコラフスキーの方を向いて震えた声で言った。
「て、敵ミサイルの弾頭は・・通常に非ず・・」
「!?なんだと!?」
「敵ミサイルの弾頭は通常に非ず!核弾頭の模様!!」
そう叫ぶと艦橋は騒然となった。
「なっ!馬鹿な!!」
「自国の首都に核攻撃だと!?」
そんな中、ハイドリヒは特に驚かずに冷静に言った。
「撤収作業を中断して、全艦離脱せよ」
その言葉に艦橋の乗員が一斉にハイドリヒを見た。
「ハイドリヒ閣下!味方を見捨てていくのは!!」
「このままとどまっていても全滅するだけだ。全艦離脱せよ」
ニコラフスキーはこぶしを握り締め、自分を落ち着かせるように一息すると、途中で途絶えつつ言った。
「・・全艦・・撤収作業中・・・中断して離脱行動をとれ・・」
オペレーターたちは黙って命令を実行した。彼らは兵士であり、上官の命令はどんなことでも絶対なのである。
艦娘・深海棲艦は、妖精部隊を収容して洋上で待機していた。
そこに突如まばゆい光が襲った。
その直後に鼓膜が破れるほどの爆音が響き、目を向けた先ではきのこ雲が天を突き刺すように既に暗くなり始めた空に煌々と光り輝いていた。
全員が手で目を覆っていると、ただ一人、長門だけがそれを直視していた。
「あれは・・・まさか・・・核・・・」
長門が沈んだ原因、核の光であった。
「総員退避!!」
長門はすぐに叫ぶように離脱を命じた。呆然と立っていた艦娘たちも次々と我に返り離脱を開始していった。
深海棲艦も現存する通常兵器の中でただ一つダメージを負う核については熟知しているようで、すぐに反転して離脱を始めた。
「テートクを助けないと!」
金剛は離脱行動をとらずに波止場に転移しようとしたが、何者かに手をつかまれ止めさせられた。
「お姉さま!艦娘とはいえ核に巻き込まれたら死んでしまいますよ!」
金剛を止めたのは金剛型の四女である霧島であった。
「止めないで霧島!テートクを助けなきゃ!」
「お姉さま!!・・姉さますいませんっ!・・・」
それでも振りほどいて転移しようとする金剛を何とか説得しようとした霧島だったが、核の爆発が近づいていることもあり、已むおえず麻酔を打って眠らせると、金剛の艦長代理妖精に指揮権を移させた。
西暦2115年 11月 14日
そこには離脱してきた深海棲艦の水雷戦隊が本体からはぐれてさまよっていた。
「ウゥー本体ハドコニイルンダロウ・・・」
旗艦である軽巡へ級が呟くように言った。
「危険デスケド一度陸ノ方ニ戻ッテミマショウヨ」
配下の駆逐イ級の一人が後ろからつつきながら言った。
「ソウネ、危険ダケドソウシマショウ」
へ級は一度頷くと、反転して陸に向かおうとした。
しかし、反転する直前に水平線の彼方で一瞬赤く光り輝くものがあった。それを見たイ級は首をかしげたが、艦船の照明か何かだろうと思い、そのままへ級の後を追った。
戦隊の5kmほど後方の空間がゆがんだかと思うと、そこから炎の竜巻が水雷戦隊を襲った。
「!?ナ、ナンd・・・」
最後尾のイ級は言葉を言い終わる前に火炎流に巻き込まれ、次々に他のイ級も飲み込まれていき、先頭にいたへ級も回避する暇もなく飲み込まれていった。
西暦2115年 11月 14日
「大統領座乗艦シヴァの所在を確認しろ!」
核爆発が一通りおさまった後、命からがら離脱に成功していたビッテンフェルトは、果てたようにイスに深く座りこんだ。しかし、すぐに思い出したように怒鳴り声をあげた。
その声にイスに深く座っていたオペレーターたちが体を震わせ、すぐに各自の持ち場の仕事を進めて行った。
「大統領座乗艦シヴァは健在の模様!ですが、左舷から火の手が上がっています!」
ビッテンフェルトはその報告にほっと息をつくと、別のオペレーターに向かって救助艇を向かわせるように先ほどとは違い、落ち着いた声で指示した。
一方副官のビューネ・クネート中佐は、オペレーターたちに損害報告をまとめさせていた。
「艦隊の・・約3割が巻き込まれたか・・・」
まとめられた報告書を見たクネートは3割で済んだことをよかったと思う反面、3割もの艦艇、そして乗っていた将兵が戦死したことに心を打たれていた。
クネートは一通り報告書を見終わると、ちょうど指示を出し終えた上官であるビッテンフェルトに近づき報告をした。
「閣下、損害報告がまとまりましたので報告させていただきます。艦隊の約3割にあたる42隻が核爆発に巻き込まれ轟沈。右翼艦隊はその半数が轟沈し、半壊状態となっています。しかし主だった指揮官に戦死者はおりません」
報告を終えたクネートのもとに、オペレーターの一人が新たな報告を届けた。それを受け取ったクネートが、続けて報告をした。
「大統領座乗艦シヴァの状態ですが、左舷後方が核爆発の余波で装甲板が融けて内部に放射能が侵入。しかしすぐに隔壁を閉鎖したため、1ブロックを放棄するのみにとどまっている模様です。大統領閣下は現在医療ブロックで治療を行っています。代理指揮官であるハイドリヒ中将は核爆発の際、左腕を骨折しましたが、今後の指揮に影響はないとのことです」
「ハイドリヒの奴死ななかったか」
ビッテンフェルトは軽く舌打ちすると呟くように小さな声で言った。
「は?何かおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもない」
頭上に?マークを付けたクネートが首をかしげながら聞くが、ビッテンフェルトは報告書を受け取りながら言った。
「まさか、自国の首都で核を起爆するとは・・・これがいわゆるベルカ式国防術というやつか・・・」
【ベルカ式国防術】
エスコンで登場するベルカ公国が、自国領に侵攻されたとき領土内で7つもの戦術核兵器を同時に起爆して侵攻軍を大混乱に陥らせたことから、戦争ゲームなどで核を使用して自国を守ることをベルカ式国防術と呼ばれるようになった。
ビッテンフェルトはエスコン自体に興味などはなかったが、副司令官であるフクヴァ・ミローネ准将が暇なときにいつもエスコンやろうと家に押しかけてきたため、仕方なくやり始めたことでドはまりしてしまい、一時期は無断欠勤することもあった。しかし、その後の演習で艦載機を巧みに使った作戦でほぼ無傷で勝利したため、実動部隊副総司令官であるアイデェアムが”それによってちゃんと結果を出しているのだから別にかまわない”とめんどくさそうに言いつつ、緊急でない限り本来の勤務時間より1時間早く終了していいという直筆の許可証を出したため、1日に2時間必ずエスコンをやっている。
「そういえば、皇帝派軍の方はどうなっている?」
ビッテンフェルトは報告書をぺらぺらとめくりつつ、思い出したように言った。
「はっ、通信を傍受しておりますが、幸い司令部は首都から離れた工業地帯に有ったようで健在です。しかし、首都に突入していた部隊の損害が激しいようで、指揮系統は乱れ混乱状態模様です」
「そうか・・・」
「ハイドリヒに、いやハイドリヒ中将に皇帝派軍に対して支援の必要はあるか問うておこう」
ビッテンフェルトがそういうと、クネートはハイドリヒを呼び捨てにした事は気にせずに、オペレーターの一人にシヴァとの通信をつなぐように言った。
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