少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
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第十二話:傾かぬ
「―――――以上の理由があり、私は逃げた五体……堕天使達、及び聖天使を追わねばならない」
ダイニングキッチンの座卓にて、マリスは先刻俺たちに話した事を、俺が質問した分など話さなくてもよさそうなものは除き、あの五体が何なのか、マリスは何者なのか、どの様な目気があるかを説明した。
無表情で淡々と語る姿は、傍から見るとそれなりに真摯に映るもので、親父は途中軽く質問を交えながら、お袋は台所へ立ったまま繰り返し頷き、マリスの話を聞き続けている。
話が終わってからオヤジは目を閉じると、やや間を開けてから口を開いた。
「あの怪異にはそういう理由があったとは…………マリスちゃん、だったか? 君の小さき双肩には、重き重圧が掛かっているのだな」
「……彼女等はどれも強敵。苦難は終わらない」
小さい双肩も何も、コイツは見た目通りの存在では無いのだし、少女の姿をしているのも楓子の趣味なのだから、年齢は絶対に合わないんじゃなかろうか。
少なくともか弱い存在では絶対に無いといい切れる。
でもまあ、格上ばかりが相手なのだし、大なり小なりプレッシャーは掛かっているかもな。
目頭を押さえ、何やらこみあげる感情を押しとどめているらしい親父が、またも数秒黙りこくると意を決したように顔を上げた。
……嫌な予感しかしねえ。
「良かろう、好きなだけ家にいなさい。ワシも協力は惜しまんぞ。……そうだ楓子、あとで開いている部屋を片付けなさい。そこをマリスちゃんに使って貰おう」
「やたっ! 流石パパ、話せる!」
チッ。やっぱり当ったよ、嫌な予感が。
こっちの世界に生まれてから数えたならまだしも、今日に限ってはこの手の予感を外した試しがない。
気持ちの沈む俺とは対照的に、楓子はマリスの手を取って大喜びし、握られているマリスの方は逆らいもせず腕を振り回されている。
「駆け込み寺って知ってるでしょ? まあうちは神社なんだけど、昔はよく家出した少年少女を保護したもなの」
「最近はめっきり少なくなったがな。だから余所様を受け入れる体制は万全と言う訳だ」
初めて聞く話を披露しながら、お袋は同時進行で鰹節からとる出汁の味見をし、親父は昔を懐かしむ様に眼を閉じ口角を僅かに上げた。
俺に取っては全く持って、有りがたく無い情報だ。
「……ありがとう。こんなに良くして貰える、私は運がいい」
頭をぺこりと下げるマリスを見て、俺はこいつもこいつで得な性格をしていると思った。
何故かと言えば……感情を抑えた喋り方をする所為で、社交辞令に聞こえないのだ。だから親父もお袋も気分をよくし、笑顔まで浮かべている。
元からない俺の笑顔は、どんどん消えて行くけどもな。
「自分の家だと思ってね、マリスちゃん。遠慮なんていらないわよ」
「うむ、優子さんの言うとおりだ」
「可愛い娘が増えるし、私達だって嬉しいものね」
「うむうむ、賑やかなのはいいことだ」
「なら今夜もう一人作っちゃう?」
「ごふっ!? げふっげふげほっ!!」
お袋の発言で顔を耳まで真っ赤にし、吹き出してからの咳払いで何とかごまかそうとする。俺はその会話を聞かない事にして、溜息と共にソッポを向いた。
「ひゅーひゅー! ラブーい♡」
冷やかしを飛ばす楓子……馬鹿だコイツ。
「親をからかうとは良い度胸だな楓子」
「ひぇぇええ!? DV反たごふほおっ!!」
頼みの綱であるお袋も料理中で動けないと言うのに、懲りずに殴られに行くとは、やはり単なる馬鹿であった。
「……やはり私は運がいい……」
ん……?
気の所為か? 今マリスの瞳に温かいものが宿った様な……もうただの透明な瞳に戻っているし、俺の見間違いだろうか。
ほっこりできる場面では無く、寧ろ顔をしかめる光景であったのに、何故 “温かい” と言う単語が俺の中に浮かんだのだろうか?
まあ、こいつの事など人間でもないのだし分かる筈が無い。それに構っていても心労が増えるだけ。
ならば仕方が無いかと視線を背ければ―――何時の間にやら隣にお袋がいた。
「うふふ」
……本当にいつここまで来たんだ、あんたは。
しかもその視線は「何もかもわかってます」と言った、恐らくラブコメ路線で勝手に勘違いしている類のものが、確り色濃く宿っていた。
「うふふ……アンタにはヒヤヒヤさせられたけど」
「は……?」
「何時まで経っても妹離れが出来ないし―――」
「逆だ」
少なくとも俺からアイツに構っていった事は無い。
小さい頃ですら、向こうから構って欲しいと向かってくる事に、煩わしさも何も無いその素直な感情で癒されていた事こそあったが、今では口を開かば馬鹿発言なのもあって、余計に話しかける理由が無い。
この親は一体何を見てきている?
「理子ちゃんとはまーったく脈無しだし―――」
「当たり前だ」
寧ろ過ごして来た年月の中で、アイツと脈があるような出来事があったのか?
隠し事嫌いから派生する鞄による暴力の嵐に、時折発生する自分の意見の押し付け、俺自身もアイツに特に良い感情を抱いている事も無いのだし、幼馴染なのだという認識があるだけなのに。
この親はそんな関係の中に何を望んでいた気だ?
「ほら、お母さんて正統派ラブコメ好きでしょ? 禁断の愛とかかもう駄目でね、この子は妹に恋しているんじゃあないかと心配で心配で―――」
「一生かけても絶対に起こり得ないな、そんな奇怪な出来事は」
言葉を聞いただけでも気分が悪くなる。どれだけ元から無い食欲を、より減衰させれば気がすむ?
そしてそんな事が心配ならば、ついでに海が砕けないかとか、空が振って来ないかとでも心配していればいい。
そう言った気悠の類を通り越した、無用では済まないクソったれな心配なのだから。
「とにかくいい子が来てくれて安心よ。正統派ラブコメ、頑張りなさいよね」
「断る」
「あんたが頑張ってさえくれれば、あの娘だって戸籍上も我が子になるじゃない」
「マリスに戸籍は無い」
どうやらこの母親は自分がどのような事態に脚を突っ込んでいるか、マリスがどんな目的と事情を持っているのか、全く持って理解できていないと見える。
俺が今巻き込まれているのは、妹及びマリスによってもたらされた訳の分からない事態と、冗談では済まない命の危機であり、ラブコメ的シチュエーションでも何でもない。
そもそも “人” では無いマリスに、恋愛感情があるとも思えない。
……あ、言いたい事だけ言って帰っていきやがった。
満足そうな顔してんじゃあねえよ、こっちは余計にイラついたってのに。
「……チッ」
心なしか香りだけは良い筈の食事も、何時もより濁った《臭い》となっている気がする。
ちなみに昼はご飯を炊く暇が無かったからとうどんであり、小エビや野菜のかき揚げを沢山添えるらしい。
だが、俺にとっては異臭を放つ重油モドキに囲まれた、藻の生えるプラスチックと青臭い固形物に他ならない。
つまり不味いから食いたくない。
ほんと、最初の頃よりもひどくなりすぎて、最初からポーカーフェイスや渋い顔で食事をしていたのが、結果的に良い方向へ傾いていると……食事の度に胸を撫で下ろしてしまう。
(俺限定で)刺激臭を放つ揚げ物を待つ傍ら、親父が話を再開し始める。
「ところで……その堕天使と聖天使は、実際問題危険なのかね?」
「……この事態は、私達死神にとっても予想外の事態。本体成仏する筈の彼女達が、全く別の存在と成り人智を超えた力を得たとなると、何を仕出かすか分からない」
「クソ……それは、外れて欲しい推測だな」
「……私にとっても、彼女等が悪でない事を祈っている」
現時点で可能性があるのが、キケロクロットとメープルか。そして分からないのがナーシェで、可能性が低いのがロザリンドとアイシャリアだな。
こうして説明し大人しくしている以上、マリシエルは論外だろう。
「でだ、その堕天使と聖天使を―――」
「あのさ、パパに兄ちゃんにマリスたん。毎回分けて呼ぶの面倒くさく無い?」
確かに一体だけ堕天使では無いから、彼女等と分けられない部分ではまどろっこしくもなるだろう。
まあコイツに限っては善意や効率だけでは無く、もしかしなくても自分が考えた名前を、定着させたいってだけだろうが……。
「ふむ、では何と呼ぶのだ?」
「【A.N.G】とかいて『アンジェ』と呼ぶのがいいと思います!」
「アイツら天使が、英語で “angel” だからか?」
「ノンノン! 【Avatar of Nolife Girls】の頭文字を取って【A.N.G】だよ!」
「…… “生きていられない女の子達の化身” か? ちょっと意味が違うと思うが」
「違うよお兄ちゃん、直訳しちゃダメっ! ちゃんと意訳して “死せる乙女たちの外装” にしないと!」
何が自慢で胸を張っているのかは知らないが、俺はお前に今ビックリしたわ。
そんな単語がスラスラ出て来るばかりか、意訳まで並べられるとは。驚かない方が無理だろう。
その才能を英語の授業の方面でも生かせれば、少なくとも赤点ラインからは脱却できるだろうに……心底残念な奴。
「まあそれでいいんじゃないか?」
本音としてはもうそれ以外思いつかないし、考える気も無いから如何でもいい、だから「それでいい」が正解だがな。
兎に角名前も決まり、話は再開される。
「その【A.N.G】を生み出してしまったのはワシにも責任がある。 腰に痛みが走ったとはいえ、ノートを火の中に放り込んでしまったのだからな」
何と作り出したのは楓子でも、直接の原因は親父らしい。協力的だったのはこう言う理由もあったのか……。
「……京平には霊的な力を全く感じない。珍しいとも言えるそんな存在により、聖邪混沌の儀式が行われたからこそ、【A.N.G】が生まれる可能性がより高まったのだと推測される」
やはり呼びやすいのか、すぐに定着したな。
「出来ればワシが手伝ってやりたいのだが……しかしもう正《婚約》を終えた事になってしまっていて、しかもワシの年齢では資質に当てはまらんのだろう?」
「うん、十代男子に限るって書いちゃったからね、あたし。この家で当てはまるのって、兄ちゃんとギリギリで “あの人” ぐらいかな」
楓子は嫌がらせを続けられた俺と違って、実に淡泊に接されていたにもかかわらず、長男をえらく嫌っているようで、どの状況をもっても “あの人” としか呼ばない。
「だが泰平は大学に行ったっきりで帰省せん。オマケにもう終わっているとなると、やはり麟斗しかいない訳か」
「……いない訳」
「ワシとしては我が子を危険な戦場へ行かせるなど、些か負におちんのだが……のう、何とかならんかね?」
「わっ、パパ勇敢! 感動したっ」
おお……俺もだ、ちょっと感動した。
前からボコスカ殴られてはいれども、しかし愛されてはいるのだろうと分かっていたが、ノリではなくきちんとこうした事を考えて協力を申し出たと分かる。
まあ親父は常識人と言えは常識人なのだし、楓子やお袋のようなノリで、ワシが力になるなどと言う筈もないか。
「ダーーーメーーーーッ!!!」
……が、折角親に対して感動していたのに、お袋の要らない大声がぶち壊して来た。
何で駄目なのかは薄々分かる。そしてその理由が、余り状況と結びつかない上、こじ付け且つラブコメ路線である事も。
「ダメ! 浮気なんかダメっ!!」
「ま、待て優子さん! 今の会話を聞いていたろう? コレは己の不備をから来る行為であって、決して浮気などでは……」
「ついさっきまで娘みたいだって言っていた子に不潔だわ! 京平さんは私の物じゃあないと嫌なの!」
「し、しかしだなぁ……それでは余りにも理屈がなっていないと……」
「いーやーなーのーっ! 誰にも渡さないのーっ!」
ほらな? 見事に当たった、嬉しく無い。
飛び付き、唇をとがらせ、ひたすらに駄々をこねる。全く……苛立たせる天才だ、お袋は。
詰まる所自分が幸せであれば、それでいいと……息子が不幸であろうと良いと思っている、と取られても不思議ではない言葉なのに。
極論言えば、それがラブコメ的展開で有れば、最悪ぶっ倒れてしまおうといいと思っているんだろう?
親父は見なおしたが、お袋は尚見下げるばかりだ。
「あたしはママの気持ち分かるなぁ……」
「手のひら返しが早すぎだろうが」
「あたしはその場の欲望に忠実だからいいのっ!」
「お母さんだってそうよ! だからいーやーなーのー!」
ああそうだ、失念し掛けていた。この人はほかならぬ『楓子』の親だったな。
そして楓子はお袋似とくれば……もう考えるまでもない。
「どうしてもというなら私を倒してからにしなさい!!」
「……ほらよ」
ほんのちょっとだけ、踵でお袋の脚をつつく。ダメージなどヒョロモヤシな人物だって、感じはしないだろう攻撃ならぬ攻撃。
「ひぎぃぃぃぃい!!」
なのにお袋はひっくり返りやがった。痙攣も大きいし、態とらしいにも程がある。
「家庭内暴力とは、良い度胸だな麟斗!!」
「ぐっ……!!」
それを見抜けない盲目的な愛を持つ男から、これぞ本物の家庭内暴力と言える拳骨が跳んできて、俺は痛みに顔をしかめた。
……だが、そこで少しばかり何時もと違う現象が起きる。
「ぬぅ……? なんだ?」
「如何した親父」
「いや……いや、何でもない」
俺を理不尽に殴った親父が自分の拳を見つめ、不可解な事でも起きたかのように睨んだのだ。何時もなら此方も親父を睨みつける所だが、常時とは違う所作に俺も首を傾げてしまう。
結局は親父が流した事で、うやむやになってしまった……だが、 “此方” はまだ続いている。
「やだやだやだやだやだやだやだやだーやだーやだー!!」
もうこうなったら手がつけられない。
楓子なら親父じゃあ無く、俺が打撃をぶち込む事で如何にか収まるが、親父と言う理不尽な肉の壁がある以上、そんな手は通じない。
畳の上でジタバタ暴れるお袋に、親父は困ったと言いたげに頭を書き、視線定まらぬ瞳で見やった。
「撤回する、撤回するから落ちついてくれ、優子さん」
その言葉でお袋は漸く立ち上がるが、何故か親父にぴったり寄り添っていった。
……もう面倒くさい事を見たくない一心で、俺は一旦トイレへ行くと、元々イライラからなのだから用も足さずに手だけ洗って、食卓に戻る。
お袋は既に台所へ戻っており、親父はどっと疲れた顔をしていた。お袋の頬にキスマークがあるので、何が起こったかは想像するまでもない。
「あー……そういうわけだ麟斗。お前がパートナーとして頑張りなさい」
「如何言う訳だ」
「元々不可能なのだし、道の繋がっていない方法を模索するよりは、可能性があるお前がマリスちゃんのパートナーとして頑張りなさい、と言う訳だ」
「……」
「ワシの息子として立派に義務を果たせ、良いな」
「……良い訳あるかよッ……!」
「なら歯をくいしばれ」
その後何も言わなかったからか、二発目の拳骨をくらい先程と同じ状況を作り出す事となった。だが、俺の心の内だけは先と違う。
見直して損した、それだけが締めてやがるよ、今は。
父としての威厳や低際、妻との愛が、息子の安全を上回ったって事だからな。つまりは所詮 “その程度” って事か。
まあ、流石にここまで行けば、穿った見方かもしれないが……。
「親父…………《婚約者》はそれ自体が強化される訳でもなく、そもそもの魔力供給ですら見込みが無い。なのにオヤジより弱い俺が戦えだと? 無理があるとは思わないのかよ」
「今から強くなればいいだけの事だ。毎朝巻き藁百回突く事だな」
それは毎日欠かさず鍛錬すれば月ごと、年ごとに成果が出る物だろうが。
今からやったって、最悪の場合は明日にでもはち合わせる可能性があるのに、余りにも遅すぎるんだよ。
……もっと言葉をぶつけたかったが、何を言った所で最終的に暴力で黙らせようとする、理解し合えない不毛な会話となると俺は口をつぐんだ。
「理解があるのは良い事だ。この家でわしに逆らったらどうなるか、分かっているだろうしな」
最悪断固拒否だと家にこもって抗っても、力付くで戦へと向かわされるだけとは……八方ふさがりとはこの事だ。
だが何も口にしないのも癪で、兼ねてより抱いていた文句を口にする。
「何が逆らったらだ……お袋に頭が上がらず、尻に敷かれている事を棚に上げるなよ、親父」
「うっ……う、うるさい、お前だってその内分かるようになる。諦感ができるさ、女に逆らっても碌な事が無いとな。ワシの血が流れているのだ、それは断言しても良い」
「するな、なってたまるか」
「いいやなる。なってしまう。ワシの子なのだから。やれやれだぜ、等と言いながら結局は言う事を聞いてしまうようになる」
「ウフフ、クスクス」
「……笑ってんじゃねぇ、楓子」
親父から随分と勝手な事を言われ続け、ついでに楓子にも意味深長な笑みで笑われ、視線をそらさず睨んでいると、止めなのかマリスから―――――
「……やはり私は運がいい」
「舐めてるのか……?」
どう考えても舐めきられている台詞を掛けられた。
これで声を荒げない俺を、誰か少しでもいいから、痛い奴と思われても良いから誉めて欲しい。
こんな無駄でしかないやり取りをしていると、如何やら気のせいでもなかったようで、俺にとっては不快な臭いの混じり始めた……しかし親父や楓子、マリスにとってはとても良い匂いを漂わせ、まずはうどんの丼を、次にかき揚げの乗った皿をお袋が運んできた。
「そうと決まれば栄養を付け、英気を養わなきゃね。一杯食べてちょうだい」
「おお、きたか」
「まってましたーっ!」
「……いい匂い」
「何も決まってねえんだよ……」
誰もかれもが既成事実にし、俺一人だけ蚊帳の外にする中で、各々に手を付け食事を始めてしまう。そしてついに、味覚でも蚊帳の外になってしまい、俺はクソったれな美味に震えながら感想も言わず黙々と啜る。
たっぷりと汁気を吸った細長い『毛糸の束』を口に入れ、思った通りさくさくとした『重油』の様な何かに囲まれた、『プラスチックと腐りかけの野菜』をただ何も言わずに齧る。
さっさと食事を終えてしまうべく、しかし味の所為で箸が進まず悶々としていると、隣から出された丼が目の前に現れる。
「おかわり」
もう一杯目を食い終わったらしい。超がつくぐらいのハイペースだ、そこだけは見習いたい……まあ無理だが。
「うん、遠慮しないでねマリスたん! どんどん茹でるしどんどん揚げるから、たーっくさん食べてね!」
「うふふ、楓子ったら調子いいんだから。揚げるのは母さんなのに」
「だが良い事だ。どうだいマリスちゃん、優子さんの食事は」
「……おいしい、とてもおいしい」
「そうか、良かったなマリスちゃん」
一家団欒と言った感じで睦まじく会話する横で、俺だけが暗い雰囲気を醸し出し、ただ淡々と飯をくらうのだった。
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