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DIGIMONSTORY CYBERSLEUTH ~我が身は誰かの為に~

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Chapter2「父を探して 山科悠子の依頼」
  Story7:初仕事はご近所回り

 
前書き
 
ついにChapter2!
  

 
 





 俺の身体が“半電脳体”となり一悶着あった日の、次の日の朝。
 久々の敷布団での就寝で、しかも他人の家だからか。少し身体が硬い気がして、首を鳴らしてからゆっくり背伸びをする。

 ここは暮海宅。昨日大変お世話になり、その上この身体が元通りになる手がかりをつかむべく、俺を助手にしてくれた“暮海杏子”さんの家だ。
 元はここで生活していたそうなのだが、探偵稼業の為ここ数年は“暮海探偵事務所”の方で寝食をし生活しているそうなので、助手として働く間は俺が使う事になった。

 数年使ってないとは言っても、掃除はある程度しておいてあったようで、思っていたよりも埃っぽくなかった。そんな部屋を見て、意外と几帳面な人なんだろうか、という感想を抱いた。
 因みに場所は中野ブロードウェイの上層、住宅区画の一軒だ。下には件の探偵事務所もある。この距離をサボる為に事務所で生活しているのかと思うと、そこはずぼらなのか、と素直に思ったものだ。


 と、昨日のあの後の出来事はこれぐらいだろう。(何故か数時間分記憶なないのだが…)
 そして今、俺は今日の朝食を作っているところだ。やっぱり朝ごはんは抜いてはいけない。一日の活力になるのだから。

 とは言っても、数年間も生活の場として使われていないこの家に、何かまともな食材が残っている訳もなく。昨日暮海さんからパンをもらったが、それだけでは足りないので、卵とベーコンももらいベーコンエッグを作っているところだ。


「よし、できた」


 出来立てのベーコンエッグを皿に盛り、パンと一緒に並べる。他は牛乳と……あれ、何故だろう? コーヒーを見ると一瞬鳥肌が立ったのだが……
 まぁ取りあえず、今は気にせず朝食だ。テレビも付けて、ゆっくりしようじゃないか。



 ―――こうして、電脳探偵(サイバースルゥース)となった俺の、初めての朝が穏やかに始まった。
























「―――おはようございます、暮海さん」

「おはよう、助手くん。昨日はよく眠れたかい?」

「えぇ、布団に入ったらすぐ寝てしまいました。自分でもビックリするぐらい熟睡ですよ」

「ふふ、そうか。まぁあれだけの事があったんだ、精神的な疲労があったのだろう」


 朝食を食べ終え、俺は暮海探偵事務所へ顔を出した。
 一番大きなデスクの前に座っている暮海さんは、挨拶をした俺に微笑みかけながら言い返し、手元のコーヒーを啜った。

 ………あれも、「海ぶどう粒あん珈琲」だろうか。よくあんなものが平然と飲めるな……


「…? どうした? キミも欲しいのかい?」

「い、いえ…結構です。自分で作るので」


 流石にもうあんな思いはしたくないので、暮海さんのお誘いは丁重にお断りさせてもらう。
 すると、彼女は何故だか意外そうな表情を浮かべ、俺を見てきた。


「ほう、自分で淹れられるのか。キミの珈琲がどんなものか、飲んでみたいものだが」

「そんなの、普通のコーヒーですよ。普通の」


 あなたの作るコーヒーに比べれば、全て普通のコーヒーだ。
 そう言いたかったが、何故か言うべきではないなと決断し、口には出さなかった。

 そんな俺に対し、暮海さんは「それはそうと…」と話題を切り替えてきた。


「来てもらって早速なのだが、キミにやってもらいたいことがある。電脳探偵としての記念すべき最初の任務だ」

「任務…依頼じゃないんですね」

「何、まだ初めて一日も経っていないのだ。そんな急に依頼をさせる程、私も鬼ではないよ」


 あんなコーヒーを飲ませるのに、鬼ではないのか……


「ともかく、最初の任務は……拠点となる、ここ中野内にある各施設への挨拶回りだ」

「挨拶回りですか…まるで引っ越しでもしたみたいですね」

「まぁ似たようなものだろう。これから何かと世話になることが多くなるはずだからな、しっかり顔を覚えてもらってきてくれ」


 暮海さんはそこまで言い終えると、「しかし、依頼か…」と顎に手を当てて呟いた。と思ったらな、小さな笑みを浮かべて顔を上げた。


「そうだな、ついでに私から『依頼』をしよう」


 そう言うが速いか、暮海さんはデスクの上に重ねられた紙を一枚取り出し、サラサラと何やら書き始める。
 そして書き終えるとイスから立ち上がり、デスク横の壁に取り付けられているホワイトボードへ向かい、先程書いた紙をマグネットで張り付けた。


「基本的に『依頼』は、この事務所宛てに来た物を私が受け取る。今までは私一人で全て解決させてきたのだが、今後キミ一人でもできるような簡易的なものはこの“ホワイトボード”に張っていくことにする。それをキミが確認し、『依頼』を引き受け、解決してくれ」


 そう言われ、早速俺は暮海さんが張った紙を確認する。要するに、これが依頼書となる訳だ。
 え~っと、内容は……『珈琲豆の購入』だな。場所は…書いてない?


「挨拶回りのついでだ、買う場所は自分で見つけ出してくれ。色々歩き回れば、挨拶回りもしながら聞き込みもできる。まさにキミがどれだけ探偵としての能力があるかを確かめることができる訳だ」


 なるほど、言いたい事はわかった。それなら納得できる。
 というか、コーヒー豆切らしてたんですね。なんかパシリに使われてるみたいで、あまりいい気分ではないけど…まぁちゃんとした狙いがあってのことだ。仕事だと思えば、楽なものだ。


「『依頼』を引き受ける時は、私に声を掛けてくれ。あるだけの情報と場所を伝えるのでな」

「分かりました。じゃあ、挨拶回りに行ってきます」

「私の依頼の方も、頼んだぞ」

「はい」


 俺はそう言うと、探偵事務所の扉を開いて外へ出た。
 さて、どんな人達がこの中野にいるんだろうな。楽しみだ。












 と、勇ましい感じで出たのだが……


「こんにちは、電脳探偵さん」


 事務所を出ると、すぐ側の相談屋に紫色の髪の女性―――御神楽ミレイさんが立っていた。


「み、御神楽さん!? どうしてここに…!?」

「フフ、ミレイでいいわよ。 …そろそろ来る頃だと、わかっていたわ」


 わかってたって……まさかの未来予知かなんかですか?


「こっちへ―――お店の中へ入ってくれる? あなたに、してあげなくちゃいけないことがあるの」

「し、してあげなくちゃいけないこと…ですか?」

「“こうなること”は、あなたと私の運命に定められているの。…さぁ、早く」

「ちょ、御神楽さん!?」


 彼女はそう言うと、俺の右手を取ってお店の中へ引っ張っていく。
 てかこの人、意外と力あるな…グイッて引っ張られて、一瞬ビックリしたんだが。

 とにかく、俺は御神楽さんに連れられお店の中へ入った。
 すると彼女は俺の手を掴んだまま、こちらを見てきた。


「まずはこの『右手』から。すぐに済ませるから、じっとしていて」

「は、はい……」


 言われるがまま、右手を差し出しじっとする。
 何やら両手でぎゅっと握ったり、ぐりぐり押したりしてくるんですけど……え、何してるんですか?


「―――次は、『それ』よ。後ろを向いて、動かないで…」

「は、はい…って、これ後ろ向く必要―――」

「大丈夫、私に全部任せておきなさい」


 そう言われるとなんか、普通に任せてしまうんですが……
 というかさっきの、右手に何かしたのかな? あんまし変わったようには見えないが……


「―――終わったわよ」


 そう言われ、俺は御神楽さんに向かい合うように振り向く。
 すると御神楽さんは、手元のパットを操作してなのか、そのパットから何故か「パパーン」という音を流した。随分といきなりな……


「……あの、何処も変わったようには見えないのですが?」

「見た目は、そうね。でも“半電脳体”であるあなたに『特別なプログラム』をインストールして、『とある機能を追加』したわ」

「『とある機能』…ですか?」


 オウム返しのように聞き返した俺の言葉に、御神楽さんは「そうよ」と言って頷いた。

 御神楽さんの説明によると……
 先程触っていた右手―――詳しくはその右手にいつもはめていたグローブで、物質的なものをスキャンすることで、対象を「半電脳化して取得することができる」機能らしい。

 これによって、現実世界で手に入れたものを「データとして電脳世界に持ち込める」のだと。


「……え、それってすごいことじゃないですか!?」

「取得したデータは、あなたが腰に付けている『それ』―――その『かばん(ストレージ)』に格納されるわ
 本当に…便利な世の中になったものね」

「……それ、世の中のせいじゃないんじゃ…?」


 そう言うと、御神楽さんは呆れた表情を浮かべ、首を左右に振った。


「これくらいのことでいちいち驚かないで欲しいわ。今後も、あなたの身には次々と―――」


 そこまで言い終えて、御神楽さんは小さく笑みを浮かべ、再び首を振った。


「…いえ、未来(さき)のことは知らない方がいいわね。すべては定められた運命が導くままに…ね。ここからコネクトジャンプすれば、デジラボに直接来られるようにしておくわ。私に用があるときは、いつでも来なさい」

「は、はい…わかりました」


 俺の返事を聞くと、彼女は笑みを消し自分のメガネに手を添えた。


「この世界はデジタルとの境界線が希薄になっているようね…。私があなたと現実世界で出会えたのも、その証明の一つだわ。
 でもそれは、決して世界にとって良い出来事ではないはず……きっとこれから起こる災厄の兆しの前兆ね。あなたとの出会いが、この世界の希望の光となると良いのだけれど……」

「災厄の…兆しの、前兆…? 世界の、希望の光…?」


 なんか話が壮大になってきたような……


「フフ…この世界は私を楽しませてくれるのかしら? それじゃ…“いつもの場所(デジラボ)”で会いましょう」


 そう言うと笑みを浮かべ、彼女は相談屋の奥へと消えようとする。


「―――ちょっと、待ってくれませんか?」


 だがその前に、俺が御神楽さんを引き留めた。
 彼女は素直に立ち止まり、踵を返した。どうしても、これだけは聞いておきたい。


「あなたは……何者なんですか?」


 俺の、真剣な質問に、彼女は笑みを浮かべたまま口を開いた。


「フフッ、私は人よりちょっと電脳世界の構造に詳しいだけ。それに……あまり女性の秘密を知りたがるのは、感心しないわね。紳士のすることじゃないわよ?」

「うッ……」

「フフ……それじゃ、また会いましょう」


 彼女はそう言って、再び踵を返しお店の奥へと消えていった。
 女性の秘密、ねぇ……“A secret makes a woman woman.”ってか? まぁそんな女性は嫌いではないが……

 とにかく、今は挨拶回りと暮海さんの依頼を済ませよう。
 そう決めて、俺は中野ブロードウェイを歩き始めた。これからどんな出会いがあるのやら……













 ……いや、確かにね。確かに面白い出会いを求めてはいたけど…


「―――あぁ、タクミ!? よかったぁ、無事だったんだ!」


 彼女との出会いは、予想できなかった。

 ここは事務所より一階上にある、CDショップ。
 その店の入り口に、彼女―――白峰ノキアがいたのだ。

 そう言えば彼女とは、昨日EDENで分かれてから何も連絡をしていなかったな。心配させてしまっただろうか?


「てかま、そりゃそうか~。電脳世界で起きたアレだし…リアルでどうこうなるアレじゃないよね」


 ……この様子だと、俺の身体が半電脳体となっている事は、言わない方がいいかな?


「けど、あのコたち…大丈夫かなぁ…?」

「あのコたち…?」

「覚えてないの!? こんの、ハクジョーモン! ほら、あたしをかばってくれたデジモンたちだよ! ちょっと心配だなぁ…あのコたちがいなかったら、きっと今頃……」


 そう言うと、白峰は両手を胸の前で組んで小さくため息をついた。


「なんかあたしってば、子供のころからああなんだよね。大事な時になると、いっつもビビっちゃうってゆーか…頭が真っ白になって動けなくなっちゃう、みたいな。きみにもヤな思いさせちゃったかな…ホントごめん…」

「別に、気にしてないさ。それに、白峰が謝る必要はないだろ?」

「で、でも…」

「あいつらも、俺も、お前が危ないと思ったから前に出た。それだけさ。それに、あんなもの見たら誰だってビビるさ」


 それよりも、と言って俺は白峰の肩に手を乗せた。


「お前が無事で何よりだった。じゃなきゃ俺とあいつらの苦労が、無駄になっちまうからな」

「う、うん…ありがとう…!」

「ん、どういたしまして」


 そう言って俺がニヘラッと笑うと、彼女も表情を明るくした。


「あ、それはそうと、きみもしょっぴんぐ・なう?」

「いや、俺は挨拶回りだ」

「挨拶回り? いったいなんの…?」


 う~ん、これは少し説明した方がいいかな…?

 ―――かくかくしかじか―――


「へ~、助手兼電脳探偵になったんだ~! すっご~い! 電脳探偵か~! 電脳探偵ね~……電脳探偵…………は? なにソレ? で・ん・の・う・た・ん・て・い?」

「そう、それ」


 これまでの経緯(半電脳体やEDEN症候群については省いた)を説明すると、白峰はなんだか困った表情を浮かべた。


「べつにいいけど…てか、いいか悪いかもわかんないけど…何だか、すんごい思い切ったんだなって……ま、ハッカーになるとかより全然いいかも! ―――てかハッカーだよ!」

「うぉッ!? ど、どうした急に?」

「アラタだよ、アラタ! 助けてはくれたけど…あいつ、完全にハッカーだったよ!? 何かちょっと、凹むな…ウソつかれてたわけじゃん? あれから会ってないんだ……。
 うぅ~、ヤダなぁ、気まずいなぁ…」


 まぁ確かに、ロックのかかったログアウトゾーンを、あんな短時間で解除したんだもんな。ハッカーじゃない人が、あんな事できる訳ないか。


「でも、真田は俺達を助ける為に、ロックを解除してくれたんだ。別にデータを盗む為とか、犯罪染みたことをやろうとする人には見えないけどな…」

「そ、それはそうだけど…」

「それに、時間を置くと余計に気まずくて、顔を合わせづらくなるぞ? こういうのは、なるべく早い方がいいぞ」

「うぅ…そうなんだけど……」


 白峰はそのまましばらくの間、「うぅ~…」などと唸っていたが、何かを思い至ってか、急に顔を上げた。


「こういう時は『ジミケン』の新曲でも聴いて、悪魔的になろ…蝋人形になろ……」

「あ、お、おい…!」


 そう言った白峰は、少し肩を落としたままCDショップの中へと入って行った。
 な、なんだ…? 悪魔的になるって、どういう状況なんだろう…? 少し気になるな……

 まぁ取りあえず、白峰の無事も確認できたし、向こうも俺が大丈夫だってわかって少しは気が楽になっただろう。
 それじゃあ引き続き、挨拶回りと行きますか。
























 その後は順調に、挨拶回りを進めていった。
 三階の古本屋の前では、新人さんが接客に慣れる為に店前で声を出してたり、喋り方が江戸っ子みたいな店長のたこ焼きやがあったり。
 四階にはゲームコーナーがあったり、デジモンの絵柄が書いてある『デジモンメダル』をコレクションする“メダルマニアのおじさん”がいたりと、中々個性豊かな人達がこの中野にいた。

 その中で、四階のとある場所に、“K-カフェ”という喫茶店があった。落ち着いた雰囲気で居心地の良さそうな店で、中には数人の客がいた。中野に来ている人の中にも、結構飲みに来ている人がいるようだ。
 他にコーヒー豆が返そうな場所はないから、暮海さんが言ってたのはここかな? 取りあえず、中に入ってみようか。


「―――いらっしゃいませ~♪ あいてるお席へど~ぞ♪」


 中に入ると、メイド服を着た女性が案内をしてきた。ここでバイトしている人だろうか?


「あ、いや、俺はコーヒー豆を買いに。というか、挨拶回りをしにきたんです」

「挨拶回り? 君、どこかで働くのかい?」

「えぇ、暮海探偵事務所で、助手として」

「え、暮海さんのトコの助手? 暮海さん…助手、雇ったの?」

「はい。それで今日は暮海さんに頼まれて、挨拶回りを兼ねて豆を買いに……」


 そう言っている途中で、カウンターにいる男性―――エプロンを付けているから、店長さんだろうか―――の様子が、変わっていくのに気がついた。


「……あんなけしからん美人を、ためつすがめつ、いつでもいつまでも眺めてられるなんて……うらやましい……いや、けしからん…実にけしからん…!」


 えぇ……なんかさっきまでは、少し男前なマスターって感じしてたのに、今の発言で台無しになったな。まぁ暮海さんが美人だってのは、俺でもわかることだが。

 すると近くにいたメイド服の女性が、表情を暗くしてマスターを見ていた。


「……マスター」

「うん…何だい?」

「ひょっとして、わたしのこともそんな目で…?」

「………は?」

「やだ、フケツ…キモチワルイ……わたし、今日限りで辞めさせていただきます!」

「え……えぇッ!?」


 な、なんかマスターの発言が、凄い事に発展してるんだが……というか周りの客も、冷ややかな目でマスターを見てるし……


「今月のバイト代は満額で。あと、いやらしい目で一年と8ヶ月見られ続けたぶんを慰謝料として請求しますから。
 ……あ、お客さん、『コーヒー豆』が欲しいのよね?」

「あ、はい」

「杏子さんは、いつもこの豆を買っていくわ。はい、どうぞ♪」


 しかし急に女性から話しかけられ、袋詰めされたコーヒー豆を受け取った。『特選コーヒー豆』って書いてあるな。
 え、いや…というより、そっちの話はもういいの?


「ちょ、ちょっと、サっちゃん!? 急に辞めると言われても、俺、困っちゃうよ…!」

「…そうですか? それじゃあ…交渉しましょうか、マスター」

「こ、交渉…何を…?」

「何って…もちろん時給です、お・時・給♪ すっとぼけるつもりなら、法に訴えちゃいますよ? ―――せ・く・は・ら・で♪」

「ヒギィ…!?」


 ……な、なんか凄いことになったな。大丈夫かな、あのマスター。
 しっかし、中々個性的な二人だな。一方は男前なくせに変態チックで、一方は腹黒な一面を持ってる……これを個性的と呼ばずなんというだろうか。

 まぁそれはそれとして、頼まれた「コーヒー豆」は手に入った。依頼の品を依頼人―――暮海さんに届けるとしよう。


「ありがとうございましたぁ♪ 今後とも「K-カフェ」をごひいきに♪」


 お店を出ようとしたところに、バイトのメイドさん―――サっちゃんがそう言ってきた。なんだかんだ、仕事はしっかりやるんだな。

 「K-カフェ」の入り口の扉をパタン…と閉める。これで一通り、挨拶回りは済んだだろう。頼まれた「コーヒー豆」も手に入ったし、そろそろ事務所に戻ろうか。


 しかし、暮海さんはいつもこの豆を買うんだよな。つまり、この豆を使って“あのコーヒー”を作り上げるという訳で……
 今度は、どんなコーヒーが出てくるのだろうか。そんな未来を想像してしまい、俺は気分を落ち込ませてしまう。

 そうして俺は少しナイーヴな状態のまま、事務所へ戻ることとなった。





  
 

 
後書き
 
一日の活力:そう、だから朝食は食べた方がいい。特に受験生諸君!(ビシィッ

コーヒーに鳥肌:杏子さんは主人公に、トラウマを植えつけた!

“A secret makes a woman woman.”:「女が秘密を持つと女になる」の意。真実は、いつも一つ!(ビシィ

蝋人形:おそらく、デーモン小暮閣下のパロディ

「特選コーヒー豆」:この豆から、あの恐ろしい飲み物が出来上がるのだ!






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