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遊戯王GX ~水と氷の交響曲~

作者:久本誠一
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ターン5 移動砲台型戦闘機械、VWXYZ!

 
前書き
我ながらひねりのないタイトルだとは思う。 

 
 気持ちのいい青空。吹き抜ける潮風。…………なんてもの、今の俺らには関係ない。なぜなら、明日香撃破後に起こる最初のイベントがあるからだ。そう、テストである。正直めんどくさいのだが、ここで退学にでもなられちゃ馬鹿みたい、というか馬鹿そのものなので清明をしごき倒す。するとあの野郎、一人でも道連れを増やそうとしたのか死者蘇生を頭に巻きつけてお祈り中の翔と実技一本に絞ってデッキ調整中の十代を首根っこ掴んでズルズルと涙目になりながら引っ張ってきた。正直この二人はなんだかんだいって合格してたからどっちでもよかったけど、せっかくだから正史に干渉してみる…………早い話が一緒にカードの知識から暗記させることにする。まあ、どうせまだテストまで一週間はあるし。プリントに書いてあった。
 以上、今回ここに至るまでの経緯でした。

『よし十代、怒らないからゆっくり答えてみろ。モンスターを墓地から一体蘇生させる魔法カード5種類!』

「えっと、まず死者蘇生だろ、O-オーバーソウルだろ、ヒーローフラッシュだろ、後ブランチ、えっと…………」

『お前、ホント自分のデッキに関係あるのしか覚えてないのな。ちなみにあとパッと思いつくものとしては、禁止カードになった早すぎた埋葬なんかかな?んじゃ次、清明!自己再生能力もちのモンスター5種類!』

「なんか十代より問題難しくない!?ん~と、黄泉ガエルに、ドル・ドラ、それとタスケナイトにリバイバルスライム、あと…………不死武士!どーだ!」

『ほお、少しはやるじゃねえか。他にはナチュル・パイナポーとかもいるぞー。よし、ちょっと体借りるぞ』

「え、あ、ちょ…………よし、次はテメーだ翔!カードを破壊する効果持ちのカード、種類も枚数も言わないから3枚答えてみろ」

「は、はいっ!えっと、えっと……」

「がんばれ翔!落ち着いて考えれば、お前ならこんな問題できるはずだぜ!」

「じゃあヒント。確かビークロイドの中にも無効にして破壊の効果持ちがいたよな」

「そうか!ネイビィロイドッスね!」

「ん、そーだな。でも、まだ二枚答えてないぞ?」

「わかってるッスよ!ステルスロイドでしょ?」

「あと一枚だ。んじゃ、ここで最後のヒント。別に効果破壊ならモンスターでも構わんぞ?」

「もしかして、ドリルロイド…………っスか?」

「よし、やりゃあできるじゃねーか」

 と、そこで疑問に思ったらしい十代が声をかけた。…………不満たっぷりに。

「なあユーノ、ちょっと翔だけ贔屓しすぎじゃねーか?問題も俺の方が難しかったし」

「(うん、まあそうなんだけどな。ただ、はっきり言って今の翔はちとレベルが低いうえに自分に自信がまるでないからな。まず自信つけることから始めてもらわんと)」

 それに、今の受け答えだけではっきりしたことが一つある。この世界、俺の知ってるアニメGXよりもビミョーに原作キャラが強い。十代にはああ言ったけど、翔の最初期といったら例の『先攻スチームロイド攻撃表示』が示すほどひどかったはず。でも、ここにいる翔は少なくとも自分の使うロイドの効果はしっかり把握している。『俺』に『清明』というイレギュラーが入った影響なのか?そして、それよりなにより…………

「ごちゃごちゃゆーな十代。つぎ、チューナーモンスターを三体ずつそれぞれ答えてみろ」

「チューナーか…………まずこの間お前が使ってた氷弾使いレイスに竜宮の白タウナギだろ、それに……」

「アニキ~ひどいッスよ!僕がそれ言おうと思ってたのに!」

「へへっ、早い者勝ちだぜ!」

 これだ。この時代にいちゃあおかしいモンスター、チューナー。やっぱり俺がデッキごとこの世界に持ちこんできたのがまずかったんだろうか?もっともこの世界にはシンクロもエクシーズもなくて、チューナーの意味は単に『トラスト・マインドで蘇生できたり、チューナーズ・バリアで守ったりできるモンスター群』というもの…………乱暴に一言でまとめると、癖のないスピリットやユニオンみたいなカテゴリである。ちなみに…………

『はーい!』

「ん、清明」

『氷結界の水影!でもさ、ユーノ?』

「はいせーかい。どした?今ちょっとばかし忙しいんだ。後にしろ後に」

『いや、でもさ』

「後だ後」

『まあ、いいんだけど…………』

「だろ?よーし、じゃあ次の問題だすぞー」



















「じゃ、もう寝よっか~」

「ああ、俺らも部屋に戻るぜ」

「おやすみなさいッス~」

『おう。明日も覚悟しとけよー』

「「「明日も!?」」」

『…………何驚いてんだお前ら。ほれほれ、さっさと寝ろ』

「は、は~い」

 全く、なにかおかしなこと言ったか俺?








『…………何驚いてんだお前ら。ほれほれ、さっさと寝ろ』

 思えば、この時点で何かがおかしいと気づくべき…………いや、僕だってそこまで馬鹿じゃないよ、気づいてたんだよはっきりと。いや、でもさ?ぶっちゃけ、テスト勉強ってしたくないじゃん?ねえ?だから、僕は悪くない…………と、思いたいなぁ。
 まあ、何が言いたいかというと。

「じゃあお休み、ユーノ」

『ん』

「そういえば、さっきの話だけどさ」

『おう、そういや何か言ってたな。なんだ?』

「ユーノは普段授業中って校舎内うろついたり一緒に授業効いてたり一日中昼寝決め込んでたり忙しいけどさ」

『ハッキリ言ってくれ、ハッキリ。うっとうしいからグダグダ喋んな』

「その…………ほら、ユーノはテストの日って、プリントでしか見てないよね」

『まあそうだな。特に聞かなかったし………まさか!』

「その、あの後で訂正が入ってね?ほんのちょびーっとだけ、日付がずれたんだよね」

『怒らないから言ってみろ、結局テストはいつなんだ?』

「え?えっと、えーっと、イツダッタカナー」

『…………』

「明日、です」

『……………………』

「…………」

『今すぐ十代と翔たたき起こしてこい!まだ基本すら終わってねえぞ!?せめてチェーンに乗る乗らない特殊召喚ぐらいは脳みそに詰め込んでやるからキリキリ動けこの野郎っっっ!!』

「たった今怒んないって言ったじゃん!!」

『やかましーわ!どうもさっきの反応がおかしいと思ったらそーゆーことか!テスト前日にぐーすか寝ようとするたあいい度胸じゃねーかこのすっとこどっこい!』

「やっぱ言うんじゃなかったー!!!」

 その後?二人ともたたき起こして延々知識の詰め込み作業。あ、ちゃんと睡眠時間もとらせてもらえたよ?まあ下手に徹夜させて本番で寝オチとかいまどきギャグ漫画でもやらないパターンだろうけど。ってユーノが言ってた。















『……………ろ!おい、起きろっつってんだろ!』

 何か聞こえる気がする。でも眠い。うるさい。寝る。

『っの野郎…………よーしわかった、ちょい右手貸せ』

「むにゃ、右手?よくわかんないけど、好きにすれば………」

『言ったな?歯ぁくいしばれ馬鹿!』

「ぐぎゃんっ!?」

 自分の右手に本気で殴られてたたき起こされるって、人生の中でもそうはない経験だと思う。人って自分のことを殴る際にはある程度のリミッターがかかって無意識のうちに威力が落ちてるらしいんだけど、この場合動かしてるのがユーノだから遠慮も何もないマジパンチ。むっちゃ痛いです。

『目ぇ覚めたか?さっさと起きろ!』

「なにすんのいきなり!痛いよ?ふつーに痛いよ今の?」

『時計見てからものを言えっ!』

「とけ…………でぇぇぇぇぇっっっっ!!?」

『いやー、俺が昨日余計なこと言ったせいでフラグ立っちゃったんだろうな。すまない。本当にすまないと思っている』

「俺にわかるように説明しろ!…………って、言ってる場合か!とりあえず今からでも行かないと!そういや十代達は?」

『多分、俺らが先に言ってると思ったんだろうな。翔はともかく十代も遅刻組だし』

「え、十代も?」

『あーいや、こっちの話。とりあえず走れ!』

「わーってますよ、っと!」

 大慌てで食パン一枚だけ口にくわえて寮から校舎への地味に長い上り坂(この間ユーノが『こういう所もレッドなんだなぁ……』って物凄いしみじみした声で言ってた)を駆け上がっていくと、ふと見慣れた赤い制服と髪型、そして一台の車が見えた。ふむ。

「おーい、十代!何やってんのー?」

「あれ、清明?なんでお前がこんなところにいるんだ?」

「…………どっかの誰かさんが起こしてくんないから」

『…………どっかの誰かさんが電池の切れた目覚まし時計を放っておいたから』

「『…………一体誰のことだろうな(ね)』」

「そ、そうか」

 何か言いたそうだったけど、とりあえず何も言わないことにしたらしい。でもとにかく、僕は悪くないはず。

「んで、十代こそ何こんなとこで車押してんの?」

「ああ、実はな……」

「アタシの車の調子が悪くなってねぇ。手伝ってもらってるんだよ」

 十代が話そうとした瞬間、いきなり新しい声がした。車の陰に隠れて気づかなかったけど、どうもずっといたらしい。ちょっとぽっちゃりした体系の、優しそうな人だ。

「ああ、それでこの車を校舎まで押してかなきゃいけないんだ。やっぱ困ってる人はほっとけないしな」

「なるほどねえ…………オーケー十代、せっかくだから僕も手伝うよ」

「え、いいのか?お前まで遅刻することはないぜ」

「まったく、今自分でも言ったばっかりじゃないの。この遊野清明、困ってる人の横をたったか走っていけるほどの薄情者に見える?」

「ありがとな、清明!」





 結局、ガッツリ遅刻しましたとさ。とっぴんぱらりのぷう。わかってたけどね!…………そういや、あの人結局誰だったんだろう?名前がトメさんってことだけはわかったけど。

「それで、アニキも清明君も遅れちゃったんスか?」

「ああ、もうこうなったらしょうがない、勉強の成果を見せられなかったのは残念だけど実技試験で本気出すしかないな!」

「いや、むっちゃ嬉しそうじゃん」

 なんてことをダベりながらの昼食タイム。すると、そこに見慣れた顔がやって来た。…………僕のおにぎり勝手に盗られたー!

「やあ、君たち。もしよかったら、俺も混ざっていいかい?」

「ああ、別にかまわないぜ三沢」

「三人とも久しぶり、だってさ。それと、このおかか美味しいよ、とも言ってるよ」

「そりゃどうも、夢想………」

 ああ、僕の一日のエネルギー源が…………まあいっか。もう全部食べられたものについてあーだこーだ言ってもしょうがないし、ね。

「二人ともこんなところまで、一体どうしたんスか?」

「ああ、実は今日から新しいカードのパックが購買で販売されるんだ。遅刻した君たちに、それを教えないのも不公平だろう?」

 ふーん、新しいパックかぁ。興味はあるけど、ユーノがなんて言うかなあ。

『新しいパック……ああ、あれか。ま、行く行かないは自分で決めな』

 あれれ、意外と淡白な反応。

『んー、だってあれなぁ………』

 なんかコイツにしては珍しい、今一つはっきりしない物言い。うーん、

「な~んか気になるなあ」

「?」

「あーいや、こっちの話。それで、三沢はそのパックを買いに?」

「いや、下手に新しいカードを入れて上手く回らなくなるのも嫌だからな。俺は俺のデッキを信じるさ」

「つまり行く気はない、と。じゃあ僕もやめよっかな………あーでもやっぱちょっとは気になるし、冷やかしぐらいには見に行ってみよっと」

「私も同じ、だってさ」

「あ、僕も行くッス~」

「じゃあ俺も!」

「みんなが行くんなら、せっかくだし俺もついて行ってみるかな」

 そうと決まれば前進前進。

「ところで三沢」

「どうした、清明?」

「…………購買ってどこ?」

「俺もわかんねーな」

「あれ、アニキもわかんないんスか?」

「君たち、学校のどこに何があるかぐらい覚えておいてくれよ。なあ、河風君?」

「…………ごめんなさい、だってさ」

「そ、そうか…………あれ、もしかして俺がおかしいのか?」

『多分そんなことはないと思う、って俺が言っても聞こえねーか精霊体だし』

 まあとにかく、三沢せんせーによる道案内でたどり着いた購買。うーん、さすがにだいぶ人が集まってるなぁ。できればその新パック、収録カードのリストとかが出てるといいんだけどなぁ。そううまくはいかな………アレ?

「ねー十代、あの人ってさ」

「あ、そうだな!おーい、トメさーん!」

「あら、十代ちゃんに清明ちゃん。ごめんねぇ、実は…………」





「「買占め!?」」

「そうなのよ、みんながくるちょっと前にきてね、ウチにあるパック全部買って行っちゃったお客さんがいたから、もうカードは無いの。ごめんね、せっかく来てくれたのに」

「そうかー。まあいいか、そろそろ時間だし戻ろうぜ」

「ああ、そうだね(ユーノさーん?)」

『どした?』

「(いや、どしたじゃなくて。最初からこうなることがわかってたの?)」

『はてさて、何のことやら、だな』

「(むー、なかなか口を割らないなあ)」

「ああ、ちょいとお待ちよ二人とも!」

「え、なんですか?」

「ふふふ、ちょいとこっちへおいでよ。あ、静かにね!」

「「…………?」」

「はいこれ。さっきのお礼にね、こっそり一パックだけ隠しておいたんだよ!」

「え、これ俺らがもらっていいの!?」

「ほかの生徒には内緒だよ?それじゃあ試験、頑張ってね!」

「やったな清明!それじゃあ、あっちで翔たちと一緒に開けようぜ!」

「おー!」














「レッド寮より遊野清明です、こうなったらヤケだ、よろしくお願いします!」

「ブルー寮、万丈目準だ。まあいくらレッド寮とはいえ、遊城十代とデュエルする前の前座ぐらいにはなってくれるだろうな」

 実技試験で、僕の相手はブルー生徒…………しかも、話を聞く限りではかなりのエリート生らしい。ソースは夢想から聞いたブルー男子についての噂話だけど。どうしてこうなった。

『やんなくていい喧嘩吹っかけたお前が悪い』

「…………とか言いながらユーノさん、ムッチャ嬉しそうですよ?」

 そう、あれはちょっと前、三沢と夢想がそれぞれイエローとブルー女子のテスト部屋に帰っていき、それと入れ違いに現れたこの万丈目さ……あー、呼び捨てでいいや。万丈目とその取り巻きが『あること』を伝えに来た時だった。

『以下、回想です』

「………誰と話してんの?」





「おい、遊城十代!」

「お前確か、万丈目!」

「万丈目さん、だ!いいか、今回の実技試験、お前の相手は俺になった!」

「え、本当か!?」

「感謝しろよ、レッド生相手にわざわざ万丈目さんから直々にお呼びがかかったんだ!」

「そうだそうだ!」

「でも、そんなの不公平っスよ!だいたい、決まりでは違う色の寮の生徒どうしでは原則公式なデュエルはしないんじゃないんスか!?」

「だからこそ、俺様が直々に出向いてやったんだ!さあ、どうする遊城十代!この勝負受けるのか、それとも尻尾を巻いて逃げ出すのか!」

「へっ、上等だぜ!売られたデュエルは買うのが礼儀!それに、お前との決着はまだついてないもんな!」

「ん?翔、十代ってアイツとデュエルしたことがあるの?」

「入学初日に校舎に忍び込んで…………わっ!な、なんでもないッス~!!」

「だいたい把握した」

「そこ、黙っていろ!お前らレッド寮ごときはな、本来万丈目さんとは口を利くことすら許されないほど差があるんだよ!」

「ほー、口を利くことも、ね…………よーし面白い、そこの………えーと、名前なんだっけ?」

「万丈目、さんだ!」

「よし万丈目!レッド寮には十代もいるけど、この僕遊野清明がいることも忘れるなってんだ!十代とデュエルする前に、僕ともデュエルしてみろ!」

「あー?何言ってんだこのレッド、万丈目さんはなあ、お前みたいなクズとデュエルなんt「何、貴様が遊野清明だったか!」えぇっ!」

「あれ、僕も結構有名人なのかな?」

「クロノス教諭を倒したもう一人のレッド生………いいだろう!そのデュエル、受けて立ってやる!」





『別にわざわざ売らなくても何も問題ないデュエルだったよな。あ、これで回想終わりね』

「だから誰に向かって言ってるの?というか、もうほっといてよ………」

 反省はしてないけど。無論後悔もしてません。

『駄目じゃねえか』

「細かいことはいーの!いくぞ万丈目!」

「さんだ!」

「「デュエル!!」」

「先攻は俺がもらうぞ!ドロー!俺は、手札抹殺を発動!さあ、お前の手札を捨ててドローしろ!」

 うわぁ、せっかく初手にきてたペンギン・ナイトメアとスノーマンイーターが…………。

 手札抹殺
通常魔法(制限カード)
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから
捨てた枚数分のカードをドローする。

「さらに俺は、X-ヘッド・キャノンを召喚!」

 X―ヘッド・キャノン
通常モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守1500
強力なキャノン砲を装備した、合体能力を持つモンスター。
合体と分離を駆使して様々な攻撃を繰り出す。

 X-ヘッド・キャノン 攻1800

「カードを三枚セットして、ターンエンドだ」

『さーて、どうする?残念ながらあのセットカードがどうにかできる手札じゃない。かといって、あいつを放っておいたらユニオン合体されて手が付けられなくなるぞ』

「どっちにしても危険なら、突っ走ってみるのみさ!ドロー!永続魔法ウォーターハザードを発動、効果によりオイスターマイスターを特殊召喚!」

 フィールドにいきなりどこからともなく波がかぶさり、水が引いた後に立っていたのは毎度おなじみ牡蠣の戦士。

 ウォーターハザード
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札からレベル4以下の水属性モンスター1体を特殊召喚できる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 オイスターマイスター
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻1600/守 200
このカードが戦闘で破壊される以外の方法でフィールド上から墓地へ送られた時、
自分フィールド上に「オイスタートークン」(魚族・水・星1・攻/守0)1体を特殊召喚する。

 オイスターマイスター 攻1600

「さらに、オイスターマイスターをリリース!カモン、ジョーズマン!」

 そして牡蠣の戦士が光に包まれて姿を消し、その後に立っているのは体中に鋭い牙の生えた口をたくさん持つ、サメの名を持つくせに魚ではなく獣戦士なお方。ほらそこの観客さん、聞こえてますからキモいだのなんだの言わないでください。カッコいいのになぁ。

 ジョーズマン
効果モンスター
星6/水属性/獣戦士族/攻2600/守1600
このカードは特殊召喚できない。
このカードをアドバンス召喚する場合、
リリースするモンスターは水属性モンスターでなければならない。
このカードの攻撃力は、このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する
水属性モンスター1体につき300ポイントアップする。

 ジョーズマン 攻2600→2900

「馬鹿な!?攻撃力が上昇しただと!?」

「そりゃそうさ。ジョーズマンを召喚するためにリリースしたカードはオイスターマイスター…………こいつの効果でオイスタートークンが一体守備表示で特殊召喚されてたからね」

 オイスタートークン 守0

「行け、ジョーズマン!シャーク・ストリーム!!」

「甘いぞ!メインフェイズ終了時にトラップ発動、デモンズ・チェーン!」

 ヘッド・キャノンに突撃しようとしたジョーズマンだったが、その途中でどこからともなく飛んできた無数の鎖に全身を縛られて動きが止められてしまう。

 デモンズ・チェーン
永続罠
フィールド上の効果モンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターは攻撃できず、効果は無効化される。
選択したモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

「さらに効果が無効となったことにより、そのモンスターの攻撃力が元に戻る!」

 ジョーズマン 攻2900→2600

「…………カードを一枚セット、ターンエンド」

 万丈目 手札:1 フィールド:X-ヘッド・キャノン(攻) 伏せ:デモンズ・チェーン(ジ)+2
 清明 手札:3 フィールド:ジョーズマン(攻・デモチェ)、オイスタートークン(守) 伏せ:1

「俺のターン、ドロー!まずトラップ発動だ、ゲットライド!墓地のY-ドラゴン・ヘッドをX-ドラゴン・キャノンに装備!」

 墓地から赤い機械龍が舞い上がり、X-ヘッド・キャノンと合体…………合体?正直乗っただけのようn『それ以上言わないでおいてやれ。さすがにかわいそ過ぎる』………えーと、とにかく合体する。

 ゲットライド!
通常罠
自分の墓地に存在するユニオンモンスター1体を選択し、
自分フィールド上に表側表示で存在する装備可能なモンスターに装備する。

 Y-ドラゴン・ヘッド
ユニオンモンスター
星4/光属性/機械族/攻1500/守1600
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして
自分の「X-ヘッド・キャノン」に装備、または装備を解除して
表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で装備カード扱いになっている時のみ、
装備モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする。
(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。
装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、
代わりにこのカードを破壊する。)

 X-ヘッド・キャノン 攻1800→2200 守1500→1900

「そして、ドラゴン・ヘッドのユニオンを解除!」

「せっかく合体したのに、ここで解除!?」

 X-ヘッド・キャノン 攻2200→1800 守1900→1500

 Y-ドラゴン・ヘッド 攻1400

「まだまだ行くぞ、リビングデッドの呼び声を発動!蘇生させるのはZ-メタル・キャタピラーだ!」

 Z-メタル・キャタピラー
ユニオンモンスター
星4/光属性/機械族/攻1500/守1300
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして
自分の「X-ヘッド・ キャノン」「Y-ドラゴン・ヘッド」に装備、
または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で装備カード扱いになっている時のみ、
装備モンスターの攻撃力・守備力は600ポイントアップする。
(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。
装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、
代わりにこのカードを破壊する。)

「いくぞ、三体合体!フィールド上のX、Y、Zを全てゲームから除外することにより、XYZ-ドラゴン・キャノンを召喚する!」

『ちっ、なんだかんだ言ってもやっぱ強いな万丈目』

 XYZ-ドラゴン・キャノン
融合・効果モンスター
星8/光属性/機械族/攻2800/守2600
「X-ヘッド・キャノン」+「Y-ドラゴン・ヘッド」+「Z-メタル・キャタピラー」
自分フィールド上に存在する上記のカードを
ゲームから除外した場合のみ、エクストラデッキから
特殊召喚する事ができる(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードは墓地からの特殊召喚はできない。
自分のメインフェイズ時に手札を1枚捨てる事で、
相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。

「さらにマジック・プランターを発動、リビングデッドを墓地に送ってカードを二枚ドローする」

 マジック・プランター
通常魔法
自分フィールド上に表側表示で存在する
永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
デッキからカードを2枚ドローする。

『おいおい、あんな扱い難しそうなデッキであっさりXYZを出したってのに、まだぶん回すつもりかよ!?』

 全くだよ………!さすがにブルーのトップ、伊達じゃないね!

「ふむ………いいだろう、遊城十代と戦うその時まで見せないつもりだったが、気が変わった。このデッキの真の切り札、貴様に見せてやる!マジックカード、アイアンコールを発動!墓地に眠るⅤ-タイガー・ジェットを召喚だ!」

 アイアンコール
通常魔法
自分フィールド上に機械族モンスターが存在する場合に発動できる。
自分の墓地のレベル4以下の機械族モンスター1体を選択して特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。

 Ⅴ-タイガー・ジェット
通常モンスター
星4/光属性/機械族/攻1600/守1800
空中戦を得意とする、合体能力を持つモンスター。
合体と分離を駆使して立体的な攻撃を繰り出す。

 ひらりと墓地から飛んできたのは、虎がモチーフになった戦闘機。…………なんで緑色のパーツが多いんだろうか。

「さらに、俺はこのターン通常召喚を行っていない。W-ウィング・カタパルトを召喚する!」

 続いて現れたのはなぜかコックピットが二つある、ひじょーに飛びにくそうな青い戦闘機。

 W-ウィング・カタパルト
ユニオンモンスター
星4/光属性/機械族/攻1300/守1500
1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに装備カード扱いとして
自分の「V-タイガー・ジェット」に装備、
または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
この効果で装備カード扱いになっている時のみ、
装備モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする。
(1体のモンスターが装備できるユニオンは1枚まで。
装備モンスターが戦闘によって破壊される場合は、
代わりにこのカードを破壊する。)

「二体合体だ!フィールド上のⅤとWを除外することで、VW-タイガー・カタパルトを特殊召喚!」

 またもや行われる、今度はモンスター二体での乗っただけ融g…………合体。

 VW-タイガー・カタパルト
融合・効果モンスター
星6/光属性/機械族/攻2000/守2100
「V-タイガー・ジェット」+「W-ウィング・カタパルト」
自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードを必要としない)。
手札を1枚捨てることで、相手フィールド上モンスター1体の表示形式を変更する。
(この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。)

 大型モンスターが二体か。でも落ち着け僕、きっとなにか抜け道があるはずだ!………おや?

「確かに驚いたよ。でも、その二体の効果にはどっちも手札コストがかかるはず!今のお前の手札じゃ、大したことはできない、違うか万丈目!」

『お前なぁ、何をドヤ顔で恥ずかしいことぬかしとるか…………いやまあ、知らないっつーか教えてないから無理もないんだけど』

「フン、笑わせるな遊野清明!言っただろう、このデッキの真の切り札をみせてやると!フィールド上のXYZ、VWの二体を除外して、最強の合体、XYZVW-ドラゴン・カタパルトキャノンを特殊召喚だ!」

 二体の合体戦闘機がさらに複雑な変形をし、ついには一体の、人型の巨大なロボットになる。おお、カッコいい………!いや、言ってる場合じゃないんだけども。

 XYZVW-ドラゴン・カタパルトキャノン
融合・効果モンスター
星8/光属性/機械族/攻3000/守2800
「VW-タイガー・カタパルト」+「XYZ-ドラゴン・キャノン」
自分フィールド上に存在する上記のカードをゲームから除外した場合のみ、
融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードを必要としない)。
1ターンに1度、相手フィールド上のカード1枚をゲームから除外する。
このカードが攻撃する時、攻撃対象となるモンスターの表示形式を
変更する事ができる。(この時、リバース効果モンスターの効果は発動しない。)

「ドラゴン・カタパルトキャノンの効果発動!相手の場にあるカード一枚………ここは、その厄介なウォーターハザードを除外させてもらう!VWXYZ-アルティメット・デストラクション!!」

 肩の部分の砲台がグイーンとこちらを向き、そこから発射された光線がウォーターハザードのカードを打ち抜いてしまう。

『ちっ、やっぱりそっちで来たか。こりゃちょっとキツイかな?』

「そしてオイスタートークンに攻撃、この時もう一つの効果発動!オイスタートークンを攻撃表示にする!」

 オイスタートークン 守0→攻0

「ゆけ、ドラゴン・カタパルトキャノン!VWXYZ―アルティメット・デストラクション!」

 VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻3000→オイスタートークン 攻0(破壊)

 清明 LP4000→1000

「うわあっ!!」

 ととと、ソリットビジョンなのはわかってるけどやっぱりこんな大型モンスターからの攻撃は怖いな。思わず手をあげて頭を守ってしまった。

「さあ、このVWXYZの壁、越えられるものなら超えてみろ!俺はこれで、ターンエンドだ」

「くっ………」

 越えてみろ、そう万丈目は言った。でも、こんな状況、僕に突破できるのかな?相手の場にいるのは、一ターンに一度ノーコストでこっちのカードを除外してくるうえに下手に攻守が偏ったモンスターを出してもすぐに倒してしまう攻撃力3000の超大型モンスター。一方こっちの場にいるのは、効果が無効になって、攻撃することすらできないジョーズマン。クロノス先生の古代の機械巨人も攻撃力3000で強い効果持ちのモンスターだったけど、あの時は手札にフェイバリットカード…………霧の王がいた。でも、今の手札にはクロス・ソウルはおろか上級モンスターすらいない。じゃあ、もう………。

『ったく、めんどくせーなお前。他の奴とデュエルしてた時には、どんな状況だってわりと笑ってたじゃねえの。なんでまた今回だけ気弱になる必要がある?あれか、場の空気にでも呑まれてんのか?』

「ユーノ、でもそうは言ってもさ『おっと、何か言いたいのは俺だけじゃないみたいだぜ?ホレ、あっち見てみ』え?」

「頑張れー、清明!次は俺も控えてるんだからな、負けるんじゃないぞー!」

「十代………」

「清明君、レッド生の意地を見せてやるッスよ!」

「翔も……」

「クロノス先生を倒したその諦めない心、もう一度俺にも見せてくれ!」

「三沢………」

「どうしたのかしら?私に勝ったのだから、もう少し堂々としていて頂戴」

「「そうよ、いくらまぐれとはいえ、そんな顔していては明日香さんに対して申し訳ないです!」」

「明日香………」

 と、えーっと、名前なんだっけあの二人?とは言わないでおこう。また怒られそうだし。

「私もいるよ?ほら、あなたの実力はまだそんなものじゃないでしょう?…………だって、さ」

「夢想も………」

『まったく、出る時代間違えてんじゃねーってのぐらいコテコテのお涙頂戴話だこった。一部変なの入ってたけど。ま、嫌いじゃないがな。んで、どーする?あんだけ言われて、まだサレンダーするとか言い出したりするワケ?』

「いやー、期待されるってキツイもんだね~。…………でもま、わざわざ見に来てもらったんだ。折角だからその期待、しっかり応えてみますかね。ドロー!」

 引いたカードは…………よし!

『なんつーか、ホンッとお前って引きがいいんだか悪いんだかわからん奴だよな』

 後攻一ターン目からいきなりシーラカンス出せるぐらい引きのいい奴は黙っといてください。

『いや、俺だってあれはちょっとびっくりしたからな?』

「ホントかなぁ?まあいいさ、手札からアトランティスの戦士の効果発動!コイツを手札から墓地に送って、伝説の都 アトランティスをデッキからサーチ!そして、そのアトランティスをそのまま発動するよ!」

 見る見るうちに、辺りの風景が水中の都に変わっていく。レミューリアとはまた違う、完全に水没しきった町。

 アトランティスの戦士
効果モンスター
星4/水属性/水族/攻1900/守1200
このカードを手札から墓地へ捨てて発動できる。 
デッキから「伝説の都 アトランティス」1枚を手札に加える。

 伝説の都 アトランティス
フィールド魔法
このカードのカード名は「海」として扱う。
このカードがフィールド上に存在する限り、
フィールド上の水属性モンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップする。
また、お互いの手札・フィールド上の水属性モンスターのレベルは1つ下がる。

「ふん、今更レベルを下げたところで、俺のドラゴン・カタパルトキャノンの攻撃力を超えることができるモンスターなど」

「残念、いるんだなこれが」

「どういうことだ!?」

「僕は、アトランティスの効果でレベルが4になった深海の怒りを召喚!子のモンスターの攻撃力は、自分の墓地の水・魚・海竜族の数だけ上がっていく!」

 深海の怒り(レイジ・オブ・ディープシー)
効果モンスター
星5/水属性/魚族/攻 0/守 0
このカードの攻撃力・守備力は、自分の墓地の
魚族・海竜族・水族モンスターの数×500ポイントアップする。

「だが、墓地にそんなモンスターなど…………まさか!」

「その通りさ!万丈目、お前が発動した手札抹殺で墓地に送られた手札はペンギン・ナイトメア、シャクトパス、ウミノタウルス、スノーマンイーター、シャーク・サッカーの計五体。そして今アトランティスの戦士を墓地に送ったことで、水・魚・海竜族の数は六体になった!!」

 圧倒的な威圧感を誇る海の王に、墓地から六つの青い光が降り注いでその力を上げていった。

 深海の怒り 攻0→3200 守0→3200 ジョーズマン 攻2600→2800 守1600→1800

「ば、馬鹿な………だが、その攻撃を受けてもまだまだ俺のライフは残るぞ!」

「ふっ、それはどうかな?」

「何ぃ!?」

「見てればわかるさ!マジックカード発動、受け継がれる力!この効果で僕はジョーズマンを墓地に送って、深海の怒りの攻撃力を上げる!」

 闇の鎖を振り払って青い光になったジョーズマンの魂(?)が、深海の怒りをさらに包み込む。

 受け継がれる力
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送る。
自分フィールド上のモンスター1体を選択する。
選択したモンスター1体の攻撃力は、
発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送った
モンスターカードの攻撃力分アップする。

 深海の怒り 攻3200→5800

「深海の怒りでVWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノンを攻撃!アビス・ライジング!!」

『いや、どこのパック名だよ…………いや、この世界にはないみたいだけど』

 深海の怒り 攻5800→VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン 攻3000(破壊)

 万丈目 LP4000→1200

「ふん、やはり俺のライフはまだ」

「ここでトラップ、リビングデッドの呼び声発動…………蘇生させるのはジョーズマン、って言いたいところだけど、デメリット効果があるからね。戻って来い、シャクトパス!」

 リビングデッドの呼び声
省略

 シャクトパス
効果モンスター
星4/水属性/魚族/攻1600/守 800
このカードが相手モンスターとの戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
このカードを装備カード扱いとしてその相手モンスターに装備できる。
この効果によってこのカードを装備したモンスターは
攻撃力が0になり、表示形式を変更できない。

 シャクトパス 攻1600

「そ、そんな馬鹿な、この俺がレッド生なんかに…………」

「レッドだからって舐めてると、痛い目に合うぜってことさ。シャクトパスで攻撃、コンバット・イート!」

 シャクトパス 攻1600→万丈目(直接攻撃)

 万丈目 LP1200→0

「勝った………」

『だな。ところで最後のリビングデッド、あれでシャクトパスを呼んだのはもしかして…………』

「ん、まあね。あんまりレッドレッド言うもんだから、赤い子で決めてやろうかと思っただけ。あ、そうだ一言だけ。万丈目!」

「……………なんだ!」

 僕に負けたことがよっぽど悔しいらしい声色の万丈目に、軽く笑いかける。

「楽しかったよ、とっても。またデュエルして欲しいな」

「………フン!」

『このころはプライド高かったからな。そういやあ、もともとアイツ十代とデュエルするんじゃなかったのか?』

「あ、そういえばそんなこと言ってたような…………おーい、十代は!?あ、もう行っちゃった」

「えー!?俺、実技試験だけまだ誰ともやってねえぞ!?」

「ど、どうしよう!?このままじゃアニキが赤点になっちゃうッス!」

『と、とりあえず誰か先生呼んで事情説明して来い!!』

「あ、じゃあ僕がとりあえず行ってくるよ!ほら、十代も急いでデッキもって!」

「おう!」

 とまあ、せっかく勝ったって休む暇すら貰えなかったけど。こういうのも悪くない、なんて思う今日この頃。 
 

 
後書き
※ちゃんと十代は実技で受かりました。 
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