| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハイスクールD×D 新訳 更新停止

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第4章
停止教室のヴァンパイア
  第95話 二天龍、激突!

 
前書き
なんか、タイトルの事がオマケみたいになった様な…? 

 
「テメェなんぞに親を殺されてたまるかよォォッ!!」
赤いオーラがイッセーを包み、その身に赤い全身鎧(プレート・アーマー)を装着させる。
「ハハハ!未完成な物とは言え、なかなかの…」
「オラァァァァァァァッ!!!!」
「おや?」
愉快そうに語るレイドゥンの言葉を遮り、雄叫びをあげながらイッセーは拳を突き出していた!
「ッ!!」
だが、俺達の時と同じ様に奴の神器(セイクリッド・ギア)の力によってイッセーの拳も奴の顔面手前で制止してしまう。
「良い一撃だよ♪だが、私に届かせるには些か…」
「………いい加減に……黙りやがれッ!!」
『Boost!』
「なにより…」
『Boost!』
「その汚い足を…」
『Boost!』
「千春さんからどけろォォォッ!!」
『Boost!』
「これは!?」
『Boost!』
「ウオォォォォォォォッ!!!!」
ドゴォォォォォッ!!
イッセーの拳が奴の防御を突き破り、そのまま奴の顔面を殴り飛ばした!
「見ろアルビオン!兵藤一誠の力がケタ違いに上がったぞ!」
『神器(セイクリッド・ギア)は強い想いを力の糧とする。純粋な怒りが奴やお前に向けられているのさ。それこそ、ドラゴンの力を引き出せる真理の一つだ』
「そう言う意味では俺より彼の方がドラゴンと相性が良い訳だな♪」
「訳分かんねえ事言ってんじゃねェェッ!!」
レイドゥンを殴り飛ばしたイッセーは背中のジェットでヴァーリに迫る。
「アスカロン!」
『Blade!』
篭手からアスカロンを出し、そのままアスカロンを突き出しながら突っ込むが、ヴァーリは難無く避ける。
『龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)か。一太刀でも浴びたらダメージは否めないぞ』
「要は当たらなければ良いんだろ?」
ヴァーリはそう言うと同時にイッセーと肉薄する。
「イッセー兄ッ!?」
「待て、千秋!」
激突する二人の所に行こうとする千秋を腕を掴んで止める。
見ると、部長も千秋同様イッセーの下に行こうとして、サーゼクス様に止められていた。
「離して、明日夏兄!?」
「今、二人に近付くのは危険だ!」
「彼の言う通りだ。あの二人のオーラは限界を超えている」
「……近付いただけで焼かれるよ…!」
踏まれていた首を擦りながら、姉貴が俺達の下まで歩み寄ってきた。
「そんな!?」
「……こうして見てるだけなんて…!?」
二人の激しい激突は苛烈を極めていたが、次第に実力差からイッセーが押され始めていた!
「弱い!弱過ぎるッ!!」
ヴァーリの重い一撃がイッセーの腹部に決まってしまう!
「ゴハァッ!?」
『Divid!』
血を吐いたイッセーはヴァーリの白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)の力で力を半分にされながら地面に墜落してしまう。
「イッセー!?」
「イッセー兄!?」
「大丈夫です、部長。千秋も心配すんな」
『Boost!』
赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の力で自身の力を倍加させながら、イッセーは立ち上がる。
半減された力は今の倍加の力で戻す事はできた。
『だけど、アルビオンには吸収もあるからなぁ』
ドレイクの言う通り、白龍皇には半分にした力を吸収する能力もある。
このまま行けば、奴はどんどん力を上げてしまう。
『まあ、限界はあるけどな。ほら、翼から余分な力を出してるだろ?』
確かに、奴をよく見ると、翼から赤い光の粒子が放出されていた。
あれが余分な吸収した力って訳か。
とは言え、奴の力が際限無く上がる事が無くても、実力差は圧倒的だった。
「そうだった。コカビエルの時、君は仲間の為に戦ったのだったな。さっきも真っ先に幼馴染みの彼女を助けていたからね」
ヴァーリが姉貴の方を見ながらそう言った瞬間、奴の手に魔力が凝縮され始めた!
「家族より先に幼馴染みや仲間を殺すべきだったか?」
『ッ!?』
奴が何をしようとしているのかを察した頃には既に凝縮された魔力が俺達に向けて放たれていた!?
「明日夏!千秋!千春さん!」
回避も防御も間に合いそうに無かった俺達を庇って、イッセーがその身を盾にする!?
「グアァァァァァァァッ!?!?!?」
『イッセー(兄)ッ!?』
幸い、鎧が少し砕けた程度だったので、イッセーはそれほどダメージを受けてはいなかった。
「ほうら、こっちだ!」
今度は部長達の方に奴は突っ込む!
「テメェッ!!」
イッセーは突貫してヴァーリを部長達から引き離す。
「いい加減にしろよ、クソ野郎!」
「もっと憎め、怒れ。もっともっと強くなって俺を楽しませろ!兵藤一誠!」
奴は完全に自分が楽しむ為だけにイッセーを怒らせ、その感情を元に力を上げさせている。
……さっきのレイドゥンと俺達の様に…。
「グアァァァッ!?」
イッセーが奴の魔力によって吹き飛ばされるが、すぐに体勢を立て直して、奴に突貫する。
そんな単調な攻撃に避ける気が失せたのか、傍観するヴァーリ。
「ドライグ、アスカロンに力の譲渡だ!」
『おう!』
『Transfer!』
だが、拳が当たる瞬間、アスカロンに力が譲渡され、拳から龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の波動が溢れ出た!
ドガッ!
「っ!?」
予想外な一撃だったのか奴は顔面を殴られ、初めての大きいダメージによろける!
「ここだッ!」
『Transfer!』
スキができたヴァーリの翼を掴み、イッセーは力を流し込んだ!
俺はすぐにイッセーの意図を察した。
「テメェの吸い取る力と吐き出すを一気に高めてやる!この翼が処理しきれなくなる程になッ!」
イッセーによって過剰に高められた吸収の力は宿主であるヴァーリの限界を無視した量の力を吸収、そして過剰に力を放出して暴走を始めた!
『機能がオーバードライブする!?一度体勢を立て直せ!』
だが、イッセーはヴァーリを逃さない!
「龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の力、食らいやがれッ!!」
龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の波動が溢れ出る拳がヴァーリに叩き込まれ、奴の鎧を翼を残して木端微塵に砕かれた!
「グフッ……ハハハ、俺の神器(セイクリッド・ギア)を吹っ飛ばした…!」
血を吐きながらも、奴は喜々としていた。
「やればできるじゃないか!それでこそ、俺のライバル!」
『ッ!?』
奴が立ち上がった瞬間、砕かれた鎧が一瞬にして修復された!
「マジかよ!?」
『所有者を戦闘不能にするまでは終わらんさ。それが俺達の戦いだ。そろそろ腕輪の効力も限界が来ている』
「……また俺の実力不足って事かよ…!」
『制限時間付きでは話にならん。逃げないと死ぬぞ?』
「部長達を置いて逃げられるか!」
ふと、イッセーの視線が足下に向けられる。
そこにはヴァーリの鎧の宝玉が落ちていた。
時間が経てば自然消滅するなんてことの無いそれをイッセーは拾い上げる。
「……ドライグ、神器(セイクリッド・ギア)は想いに応えて進化するんだよな?」
『面白い!だが、死ぬ覚悟があるのか、相棒?』
おい、お前何をする気だ!?
なんとなく、イッセーがやろうとしている事を察した!
「……イッセー…兄…?」
千秋も何かを察したのか、不安の眼差しをイッセーに向けていた。
「……死ぬのは勘弁だ。俺はまだ部長の処女をもらってない。千秋にも絶対に死なないって約束したしな。でも、痛てぇのら我慢してやる!」
『ハッハッハッハ!良い覚悟だ!ならば、俺も覚悟を決めよう!我は力の塊と称された赤き龍の帝王!お互い生きて超えてみせるぞ、相棒…否、兵藤一誠ッ!!』
「おうッ!!」
何かを覚悟した様子のイッセーとドライグ。
「今更、何をする気だ?」
そんな二人のやり取りに訝しむヴァーリ。
「白い龍(バニシング・ドラゴン)ヴァーリ、貰うぜ!お前の力ァァッ!!」
そう叫び、手に持つ宝玉を右腕の篭手の宝玉にねじ込んだ!?
「あぁっ、あああぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
その瞬間、右手の宝玉が激しく輝き出し、イッセーは激しい苦悶の叫びをあげる!
「イッセーッ!?」
「イッセー兄ッ!?」
「痛てぇ!?痛てぇっ痛てぇっ!?これに比べたら、光の槍のダメージなんてっ!?」
「……俺の力を取り込むつもりか?」
そう、イッセーがやろうとしているのは白龍皇の力を取り込む事。
そして、その様な行動をしようとする考えに至ったのは。
「木場は不可能とされた聖と魔の融合を果たした!なら俺はお前の消失の力、俺の神器(セイクリッド・ギア)に移植してやるッ!!」
そう、相反する二つの融合と言う現象は木場の聖魔剣と言う前例があり、イッセーはそれと同様に二天龍の相反する力を融合させようと考えたのだろう。
『……無謀な事を。我らは相反する存在。それは自殺行為だ…』
『アルビオンよ、俺はこの宿主と出会って、一つ学んだ事がある。バカを貫き通せば不可能を可能にするとな!』
「……バカで結構…!どうせ才能で勝てないのなら、バカを貫き通してやるさ!俺の想いに答えやがれェェッ!!」
『Vanishing Dragon Power is taken!!』
その音声が鳴り響くと同時にイッセーの右腕の篭手が白い物に変わった!
「ヘッ、白龍皇の篭手(ディバイディング・ギア)ってところか!」
『……ありえん…!?こんな事はありえない!?』
『おぉ、おお、あのアルビオンがビックリ仰天してるぜ!』
そりゃ、長年の宿敵が自身の力を取り込んだとあっては驚きもするだろう。
『つっても、ありゃ、確実に寿命は縮めたな。まあ、少なくとも、お前が天寿迎えるぐらいの余裕は普通にあるだろうけどな』
悪魔は一万年も生きるらしいからな。
「ハハハハ!」
目の前の光景を見て、ヴァーリは心底楽しそうに笑う。
「面白い!なら、俺も本気を出そう!」
ヴァーリはその場から飛び上がり、翼を拡げる。
『Half Dimension!』
その音声が鳴り、奴が校舎に向けて手をかざすと校舎が半分、また半分とどんどん縮小されていく!
あれは、空間に半減の力を干渉させてるのか!?
「……流石は神滅具(ロンギヌス)と言うべきか…?まともじゃないな…」
「まともじゃねえのさ。ドラゴンを宿す様な奴はどこかな」
姉貴の呟きに答えながら、アザゼルが降りてくる。
「物は試しだ。もう一方のまともじゃねえ所突いてみるかぁ?」
こいつ、何をする気だ…?
「おい、赤龍帝、兵藤一誠!」
「ッ、何だよ?」
「お前にも分かり易く説明してやる。あの能力は周囲の物を半分にしている」
「半分…?」
半分……まさか…!
「つまりだぁ、リアス・グレモリーのバストも半分になっちまうぞぉ?」
……やっぱりか…。
……だとすると、この後の展開は…。
「ふっざけんなァァァァァァァッ!!!!」
『Boost!』
……やっぱりこうなるか…。
「俺の部長のおっぱいを半分にするだとォッ!!」
「……何…?」
謂れの無い激情をぶつけられて、ヴァーリは困惑していた。
「許さない!」
『Boost!』
「テメェだけは!」
『Boost!』
「許さない!ヴァーリィィィィィィィッ!!!!」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!』
宝玉からけたたましい音声がなり、イッセーの力がかつて無い程に高まった!
「ハッハッハっハッハッハ!なんだそりゃぁ、マジかよぉ!主様の胸が小さくなるって理由で力が跳ね上がりやがった!」
この状況を生み出した諸悪の根源は愉快そうに爆笑していた。
『ギャハハハハハハハッ!アッハハハハハハハッ!』
ドレイクの奴も笑い死ぬんじゃないかってくらい爆笑していた。
……笑い事じゃねえだろ、お前ら…。
「……今日は驚く事ばかりだ。しかし、面白い!」
お前も相手が強ければそれで良いのか!?
「リアス・グレモリーに手を出してみろォッ!!テメェ、二度と転生できねえくらい徹底的に破壊してやるゥゥッ!!ヴァーリィィィッ!!」
激情に任せ、飛び出すイッセーと避けようとするヴァーリ。
「ごあっ!?」
イッセーの拳が難無くヴァーリの腹部へと叩き込まれた!
「グッ……なんだ、このスピードは…!?」
「テメェを野放しにしておいたら、部長どころかみんなのおっぱいまで半分になっちまうゥゥッ!!」
慌てて距離を取ろうとするヴァーリだが、奴のスピードを優に越していたイッセーに追い付かれる。
「これは部長のおっぱいの分!」
『Divid!』
「ぐあっ!?」
イッセーは白い篭手の方で殴り、ヴァーリの力を半減しつつダメージを与える!
「これは、朱乃さんのおっぱいの分!」
強烈な頭突きが顔面に打ち込まれ、二人の兜が砕け散る!
「これは成長中のアーシアのおっぱいの分!ゼノヴィアのおっぱいの分!千秋のおっぱいの分!千春さんのおっぱいの分!鶇さんのおっぱいの分!燕ちゃんのおっぱいの分!神楽のおっぱいの分!」
みんなの名…と言うか、胸を叫びながらイッセーはヴァーリを殴り続ける。
「そしてこれは半分にされたらまるっきり無くなっちまう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だァァッ!!」
「ぐおあぁぁぁっ!?」
最後に強烈な一撃を顔面に打ち込まれ、ヴァーリは地面へと叩き付けられた!
「グッ……面白い…!面白過ぎる!」
野郎、まだ立ち上がるのか!?
しかも、明らかにさっきよりもこの状況を楽しんでやがる。
「彼になら覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を見せるだけの価値がありそうだな!」
『げっ、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)だぁ!?』
『自重しろ、ヴァーリ。この場でそれは良い選択ではない』
ヴァーリが発したその単語にドレイクが慌てだし、アルビオンも良い反応を示していなかった。
「……我、目覚めるは、覇の理に全てを奪われし…」
『ヴァーリ!我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?』
アルビオンの制止も聞かず、ヴァーリは黙々と呪文を唱えていく。
パキャァァァン!
だが、呪文を遮る様にヴァーリの傍に学園に張られた結界を破って、人影が舞い降りてきた!
「美猴、何しに来た?」
「北のアース神族と一戦交えるから、帰って来いってよ」
「……そうか、もう時間か」
現れた人影は三国志に出てくる様な武将が着る鎧を纏った青年だった。
「なんだ、お前!?急に出てきやがって!」
イッセーの疑問にアザゼルが答える。
「そいつは美猴。闘戦勝仏の末裔だ」
闘戦勝仏って、つまり!?
「分かり易く言えば、西遊記で有名なクソ猿、孫悟空だ」
「孫悟空!?」
おいおい、アザゼルはさっき末裔って言ってたから、本人じゃないんだろうが、それでも相当な事だぞおい!?
「まさか、お前までが渦の団(カオス・ブリゲード)入りしてたとは。世も末だな。いや、白い龍に孫悟空、お似合いでもあるか?」
三蔵一行の馬が白馬で本来の姿が龍だからか?
「カッカッカ!俺っちは初代と違って、自由気ままに生きるんだぜぃ♪よろしくな、赤龍帝♪」
そう言い、手に持つ棍を地面に突き立てた瞬間、地面に黒い闇が広がり、二人が闇に沈んでいく!
逃げる気か!?
「次に会う時はもっと激しくやろう。もっと強く」
「待て!?逃がすか!」
慌てて追おうとするイッセーだったが、突然、鎧が解除され、その場に倒れ込んでしまう!
「あれだけの力を一瞬とは言え、爆発的に発散したんだ。無理も無いさ」
結局、ヴァーリと美猴と呼ばれた孫悟空の末裔は闇に沈んで、この場から姿を消した。
倒れたイッセーの下に千秋や部長、鶇達が駆け寄って介抱する。
「やれやれ、私を置いて行ってしまうとは、酷いな、ヴァーリ、美猴」
『ッ!?』
突然の間の抜けた声が俺達の耳に入った!?
声がした方を見ると、額に手を当てて首を振っているレイドゥン・フォビダーがいた!?
あれをくらって生きてるのかよ!?
あの時のイッセーの一撃は生身の人間が受ければ死、運が良くても無事じゃ済まない程の威力はあったはず!
なのに、殴られた跡や吹っ飛ばされた際に付いたであろう埃はあれど、明らかに何事も無かった様に佇んでいた!
「赤龍帝君…いや、イッセー君。さっきのは見事な一撃だったよ♪おじさん、思わず焦ってしまったよ♪」
「気安く呼ぶんじゃねえ!」
「むう、嫌われたものだね」
「好かれるとでも思ってるのか!!」
俺は奴を睨みながら、怒気を孕んだ声で言う。
「それもそうだね。なにせ、暇潰し目的で大切な幼馴染みの両親を殺した悪いおじさんだからね♪」
ッ!!落ち着け!さっきの二の前になるだけだ!
そう自分に言い聞かせて怒りに任せて駆け出そうとするのをなんとか抑えている中、大量の水の激流が槍の様にレイドゥンに襲い掛かった!
姉貴が怒りに任せてレイドゥンに攻撃したのだ。
だが、姉貴の攻撃は奴の神器(セイクリッド・ギア)の力によって、奴に届く事は無かった。
「フフフ、この場では一番のお姉ちゃんなのに、真っ先に激情に駆られるとはね」
「ッッ!!」
奴の口を黙らせようと、姉貴はさらに水流で攻撃するが、姉貴の攻撃は奴に届く事は無かった。
「ふむ、君にはまだ上があったはずだが、何故、それを使わないのだね?」
「ッ!?」
上?まさか、禁手(バランス・ブレイカー)の事か?
当の姉貴は何故か苦虫を噛んだ様な表情をして、レイドゥンから視線を逸らしていた。
「ふむ。使わないのではなく、使えない?いや、その様子から察するに、使いたくないと言った感じかな?」
「ッ…!?」
「当たりみたいだね。しかし、せっかく手に入れた力を何故使いたがらない?ましてや、憎くて憎くて堪らない者が目の前にいるのに♪」
「……ッ…」
「是非ともその力が見たかったものだが、さて、どうしたものか」
奴は少し考えるなり、すぐに愉快そうに笑みを浮かべやがった!
「うむ、私に対する怒りや憎しみを一押しするのが良いだろう。さて、その為には…」
奴は俺や千秋を交互に見始めた!
「弟か妹を殺すか…」
そして、今度はイッセーの方に視線を向ける!
「彼を、赤龍帝、兵藤一誠君を殺してみると良いのかな?」
その瞬間、俺と千秋は奴に向けて濃密な殺気を放つ!
「おおぉ!先程よりも良い殺気を向けてきてくれてるね♪」
だが、俺達以上の殺気を放つ姉貴を見て思わず気圧されてしまう!
「そう言えば、先程赤龍帝君がヴァーリの力を取り込もうとした時、他の誰よりも彼の事を不安そうな表情で見ていたね?ふむ、君と言い、君の弟妹と言い、君達にとって彼は相当な特別な存在と言う事みたいだねぇ。ふむ、やはりこの場で彼を殺すのも一興かもしれないねぇ♪」
その言葉に俺達が身構える中、姉貴から水を含んだ濃密なオーラが溢れ出した!
「ハハハハ!是非とも見せてくれたまえ♪君の禁手(バランス・ブレイカー)を♪」
「ッ!!バランス…」
姉貴のオーラが最高潮に達しようとした瞬間、忽然とレイドゥンの隣に男が現れた!。
「……戯れもその辺にしてくれよな、レイドゥンの旦那」
男は嘆息しながら、レイドゥンに話し掛ける。
「ハハハ、迎えに来てくれたのかい♪」
「迎えに来てくれたじゃねえよ!あんたが勝手やったおかげで、またここに来るハメになったんだからな!」
「ハハハ、それはすまないねえ♪」
「ったく、あんたに死なれると、色々と不利益な事になるんだからよぉ。……少しは自重してほしいもんだぜ…」
男の小言を聞いて、レイドゥンはむしろ愉快そうにしていた。
「何者だ!」
「ああん?名乗るかバカ、メンドくせー」
俺の問い掛けをメンドくさそうに拒否された。
「まあまあ、せっかくなのだから、名乗ってあげたらどうだね」
「メンドくせーうえに、なんの利益もねえんだ。やんねーよ」
「では、私が名乗り代金を払おう♪」
「ハッ、流石旦那♪分かってるうえに太っ腹じゃねえか♪」
利益が出る事になった途端に意気揚々とそいつは名乗りだした。
「ゴルド、ゴルド・グリードだ。以上」
男、ゴルドはそう名乗ると同時に手をかざす。
その瞬間、ゴルドを中心にドーム状の物が広がった!
「さて、旦那、あんたには死なれると困るんで、戯れもここまでだ。とっとと帰るぞ」
「むう、仕方がない。彼女の禁手(バランス・ブレイカー)はまたの機会か」
会話の内容から察するに逃げる気か!?
『待ちやがれ!?』
俺と姉貴が叫ぶ中、奴は愉快そうに告げる!
「では、また会おう♪次に会う時はもっと私を楽しませてくれる存在になっている事を期待しているよ♪」
最後に奴は満面の笑顔を作る。
「See you♪」
そう告げると同時にレイドゥンとゴルドはドームごと姿を消した。 
 

 
後書き
次回で第四章は終わりです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧