SAO〜裏と 表と 猟犬と 鼠
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第3話 ギルド 仲間 恋
SAO 幻影の首領
今まで幾度…野宿をしたろうか…。
ここ1ヶ月、延々とモンスターを狩り、人員を誘う。勿論ギルドに入るからには、ソロプレイやツーマンセルをさせる必要がある為、常に二人組や1人で狩りをさせているが。
俺のレベルは既に14となり、初期では結構高めだ。相変わらずの敏捷値優先、筋力並ステだが、最近投擲スキルが結構上がった気がする。
俺はフード付きのマントの中で、食料を漁る。
SAO内での食事は空腹感が紛れるだけだが、食べておかないと耐久値が切れて消滅するそうな。
俺は狩りをしながら人員を集め、アルゴからの連絡も貰いすぐにギルドを立ち上げた。
情報ギルド 表裏商会
今のところ俺合わせ8人の普通パーティー並のギルドだが、まだまだ最初だしな。
して…今日顔合わせがあるんだが…。
「行きたくねぇ…人前は苦手だぜ…ったくよ。」
ここ1ヶ月。約2000人が死んだらしい。現実世界云々があるし分からんがね。
だが、そんだけ死んで、こんな時間あったにも関わらず、未だ第1層はクリアされていない。
「さてと、そろボチ行こうかね。」
《そろぼちとは そろそろ、ボチボチを合わせたものである。》
いや〜フィールドでぶっ倒れた時は焦ったな。何って回線切断でみんな倒れてたらしいし。フィールドいたやつ何人か帰ってこなかったらしいしな。
素材重くて走りずらい…。はぁ…確か集合地はトールバーナ…だっけか。あの周辺地味にポップ多いから面倒なんだよな〜。
腰に挿してあるレアモブから手に入れた長さ30〜40センチ程の短剣もどきを撫でながら歩く。
ピコン。
《メッセージが届きました》
おっと。こりゃアリーだな。
《from : arugo
今日は顔合わせだゾ。時間は確認したカ?あと五分しかネェゾ。あと今日はボス攻略会議が広場で行われるらしイ。あんまり待たせるなヨ。》
とっと…。こりゃミスった。もう9時半前か。ここから歩いても15分かかるし。全く。アリーもせっかちな野郎だ。
ちなみにアリーとはアルゴに俺が付けたあだ名だ。アルゴとか呼びにくいしな。
《第1層 トールバーナ 》
やっと着いたか。とりあえず、まっすぐと酒場に行かにゃあいつに〆られるからな。
カランカラン…
ゆったりな曲調のBGMが流れてくる。
そこの一角、主に端っこだが、既に8名全員揃ってるようだな。
「おっす相棒、待たせたな!」
「おせぇゾ!!このノロちんガッ!」
「すま…んがふっ!」
み…鳩尾だけは勘弁してくれ…。
「っと…いてて、さて始めようかね。俺はこのギルド、表裏商会のリーダー、オオミネと言うもんだ。」
「そういうのはフード外して言えヨ。怪しさ満点だゼ?オレっちでも外してるってのニヨ。あ、オレっちはサブマスのアルゴダ。よろしくナ。」
「ち〜す。細剣使いのカルテルっす。可愛い女の子特に副長パートナーにしてくださいまじでグハッ!」
舐めた事言ってくれた子にはお仕置きだぞ♡って訳で鉄拳制裁食らわせてやった。なんかケツ突き上げて痙攣してるがMなのか。
「あたしゃ、情報屋側って事でよろしく。名前はシルバっつ〜んだけど。んま、あんまり束縛されんのヤダからそこんとこよろしく〜」
「ハスキ…短剣…よろしく」
「あっ!あたしネミリャで〜す!あんまり狩りとかは苦手ですけど〜どんちゃんするのは得意です♪武器は片手直剣で!よろしくね!」
「あ〜。ちっす。トウツキっす。素早さなら自信あるんで〜。武器はダガーっす。よろしく」
「うちはメイラ!木登りとかちょー得意なんだけど、高いとこは嫌いで〜あ!片手直剣なんで!みんなよろしく!」
とまぁこんな感じで自己紹介を消化して。
「さてと、んまみんなよろしく。適当にやってくれや。っとちょっくら二人組作れ〜。これからは情報屋と護衛。二人一組ツーマンセルで行ってもらう。あ、俺とアリーは決定でな。それ以外で作り、情報屋活動や良さげな奴いたら勧誘よろしく。そこんとこは話し合ってくれや。ただ1つ。死ぬな。殺すな。それだけさ。」
シーン...。
静まるなよ。俺が何した何言った。
「お前からそんな言葉が出るとはナ。案外、いい奴だったノカ。」
「アリー、それはひでぇぜ。俺は万年いい奴さ。」
「ちげぇな。お前はいい奴の振りをした奴ダ。」
鬼かなんかかお前は。ま、否定はせんが、何しろここはもう一つの現実世界。ここで死ねば、生命活動を行っているその体すらも死ぬ。そんな世界で、本当のいい奴、つまりお人好しなんてのはいない。んなの死にたがりかただの馬鹿だ。
「ま、顔合わせも済んだ事だし各自ツーマンセルで行動してくれ。そうだ、これ配っとくわ」
そう言って全員一人ずつトレードをする。ま、そんな事をするといらんものを送ってくる輩が居るわけで。
「誰だ…この牛糞肥料送ってきた奴は…」
「あ、それ俺っす!別にアルゴさんとペアだから妬んでって訳じゃフグラバッッッ!!!」
勿論、お返しは鉄拳制裁だがな。
みんながアイテム欄をぽちぽちしていると、全員が頭から爪先まですっぽりタイプのローブを身につけていた。
黒色のローブに背中にギルドの紋章が付いている。
羽を休めた白い鳥と逆さまになるよう刺繍の入った羽ばたく黒い鳥。黒い鳥の周りを白い線が縁取っている。
「う〜んと。このローブが標準装備?ってか正装?で、その下は自由。これなら得物も見えないし、敏捷値が3上がるから付けとくべし!って感じ?」
黒尽くめの怪しい教団組織と化した。
「は…恥かしい…なんか奇妙な教団チックなのが恥かしい」
「「「「「「「お前が言うな(ナ)」」」」」」」
「か…解散…」
何故か全員晴れ晴れとした顔で酒場を出て行く。ん?全員?
「ちょっと待て」
「ぐえっ!」
俺がマントを翻す人物の首元を掴むと、カエルが潰れた様な声を出す馬鹿一匹。
「てめぇは俺とこい。少し寄りたい所があんだよ。」
「なんだ?キー坊の所か?」
「なんだ。知ってんのか。」
「お前、流石情報屋と言うかなんと言うか。」
酒場の扉を開ける。
カランカランと小気味のいい音を聞きながら、未だ人でごった返す街中を歩き出す。
「攻略会議を覗きに行くのカ?」
「1度だけ出てみようと思ってな。」
「オレっちもか?」
「好きにしな」
っつか来んな。お前は肝心なとこで危なっかしいからな。
「ま、お前がいねぇと締まらねぇからナ。オレっちも行く。心配すンナ。自分の身くらい自分で守れル。」
「んなこと言って強がんじゃねぇよ。」
アリーのレベルは9。あまり最前線に行けるようなレベルではない。つまり、ボスの一撃を食らえば、恐らく一撃で屠られるだろう。
「強がってねぇヨ。…ケド、オレっちが死にそうになっても助けには来るなヨ。お前は死んでいい人間じゃナイ。」
「バーカ言え。死ぬのはおめぇだ。助けになんか行くかよ。」
「ニャはは!それでいいんダヨ。」
その時、その笑いが、作り笑いだと言うことに気付いた。
「んで?誰がフォーマンセルで動けっつったよ。カルテル、シルバ。」
「商長だけランデブーとか!マジ許さないっすから!俺の副商長は譲らねっすよ!フダッ!」
金髪で顔の整ったチャラ男はそのままアリーの拳で沈む。
珍しくアリーが手を出した。珍しい事もあるもんだ。明日は雨だな。
「あたしゃ束縛されんのも面倒事も嫌いだけどねぇ。楽しい事や祭り事は、嫌いじゃないよ」
金髪で褐色色の肌を持った長身の女性が、腰まである髪を揺らし近ずいてくる。
「全く。カルテルはまだしもシルバ、お前が来るとはな。まぁいい。さてと、命懸けの祭り、楽しむとするか。」
広場に着くと、話が終わったのか、ゾロゾロと向こう側から歩いてくる。
その中に見知った姿を見て、近ずく。
こちらに気付くや否や目を鋭くし、警戒してくるキリトと、ボロいローブを羽織った人物が、立ち止まる。
「ボス会議は終わったのか?キリト」
「誰だ…。俺はお前なんか知らない。」
「もう忘れちまったのか?では改めまして、情報ギルド 表裏商会 商長 オオミネだ。」
俺が名乗ると目を見開き、俺はフードを下ろす。
「しぶとい奴だな。キリト、それより、一度だけ前線行ってみようと思ってな。ここにいる四人。加勢するぜ。」
「あ…。あぁ…よろしく…」
全員にパーティー申請が送られ、全員OKボタンを押すとキリトが驚く。
「って…えぇっ!?お前!鼠のアルゴ!」
「っ!?」
カルテルのレイピアがキリトの首筋に止まるのと同時に、俺の短剣がカルテルの目前に止まるのが同時だった。
パサパサと翻るローブと遅れて後ずさりするキリト。
「カルテル…なんのマネだ。こいつらは客と商人…。アリーはてめぇのもんじゃねぇぞ。過剰反応しすぎだ。」
「チッ…命拾いしたっすね。でも…フィールド出たら気をつける事っすね…」
「お前もMPKされねぇよう気をつけろよ。死にたくなけりゃ言動に気をつけるこったな。」
「にゃハハハハッ!まぁまぁお互い落ち着きナヨ。あんまり気張ってもいいことないゾ。」
見えなかった…。間違いなく、レイピアの方は手練れだ。そして遅れて動いたにも関わらず、それを止めるミネも…。
オオミネ、カルテル、アルゴ、シルバ。
先ほどから喋らないシルバと言う人物も含め、この四人は間違いなく今のSAOのトッププレイヤー達。いや、ギルドと言った時点で明らかにこのレベルのプレイヤー達が、ギルド人数でいるという事になる。
このレベルのプレイヤー複数人に襲われると、ボスとソロで戦うよりも勝機は少ない気がする。
そんな俺の心情を察してか、ミネが心配するな、と声を掛けてくる。読心術でも心得ているのか。お前は。
さてと、悶着も終わった事だし、聞いときたいこと聞いとくかね。
「集合は何時だ?」
「あ…明日の朝10時…。」
「そうか、じゃ、それまで少し寄るところがある。また明日な。キリト。アスナさん。」
「さてと、初仕事が四人とな。情報ギルドとは言えやるのは情報屋だけじゃねぇぞ。基本的に裏の仕事は一手に受けるよろず屋みたいなもんだ。で、今回の依頼は、ギルド内での仲間割れで仲間を斬り殺した奴を見つけ出すこと。報酬は1万コル。ボロい仕事だろ?男の名前はヘイヤ、両手剣使いの長身の男だ。」
「いつの間にそんなものヲ…。その報酬、オレっちにも出るんだろうナ?」
「勿論あたしにもあるんだろうね?」
「………」
「全員に分配してやるよ。っと、既に場所は分かってんだけどな。迷宮前、森のフィールド内。最後に俺が見たのはそこだったが。武器が壊されたのか。隠れていてな。」
トールバーナの門を出る。その右手に、鬱蒼と生い茂る森がある。
「ここカ…面倒臭いナ。オレっちは降りても…ウグッ…」
とりあえず逃げようとする馬鹿のローブを踏んどいて。
「カルテル…。よく考えろ。考えた上で自由にしろ。それだけだ。」
「あたしゃこんな奴と一緒するのは御免だね。一人で行くよ。」
「んじゃ、散!」
ローブを翻し走り出す2人。
「あとはあいつに任せる。それよりもだ。アルゴ。お前のレベルは、多分誰よりも低いぞ。」
「……ミネには関係ねぇダロ。」
「死なれたら面倒だ。行くぞ馬鹿。」
歩き出すと、堪忍したのか隣に並んでくるアルゴ。
そこからは無言で奥へ奥へと進んでいく。
ガーー!ガルルルッ!ゴアーッ!
パッキーーン。
…なんで俺は…こんなことしてんだ。
投げる、投げる。
アリーがクローで斬る。
筋は悪くないんだが、結構危ない時はある。
ピピピピ…。
ん?メッセージ?
《from kaltel
商長、来てください。
トールバーナの門から、正面へ》
「アリー。ちと便所。」
「了解ダ。行ってこイ…ン?オイ!このゲーム排泄システムなんてネェゾ!…アレ?」
木々の上を全力で飛び、走る。
アリーには一応、俺の全回復アイテムを渡してある。
森を出て門の正面から真っ直ぐ走る。
ザザザザー…。
「おい、カルテル。いきなり何の用だ。俺は子守で忙しいんだが。」
「商長…。いえ、オオミネさん。俺は…俺はこのギルドはやめませんが。アルゴさんの横じゃダメですか?」
「どうしてアリー…アルゴに拘る。」
もしかして…こいつ…。
「一目惚れっすよ。初めて見た瞬間。俺はアルゴさんの事が好きになってました。でも、オオミネさんは違うっすよね。」
「…そうか…なら。デュエル無し、真剣勝負で俺を倒せ。アルゴの横は………渡さんぞ…。別に好きとかんなもん知らねぇが。」
40センチの半端な短剣を抜く。
「あいつの横は強者じゃなきゃダメだぜ。」
あいつの横は面倒事も多いからな。
シャリン…。
カルテルの細剣が光る。
「あああああぁーーーーーー!!!」
ピシッ…。
細剣の腹を払う。
体術スキルのソードブレイクを使い、ただ剣を弾く。それだけで、カルテルは体制を崩す。
「お前の負けだ。今のお前は弱すぎる。強くなれば、いずれはあいつも振り向くだろうよ。」
ピピピピ…。
《from arugo
見つけたゾ。オマエアトデコロス。》
一人で肩をすくめる。
「あと数分でマスター交代かもな。」
訳がわからないって顔をしているカルテルを他所に、シルバ、アリーに門前に集合ってメールを送り、門に向かう。
「こいよ。カルテル。横は渡さねぇが。あいつの向く先は頑張りゃいいだろうがよ。」
以来完了で引き渡し後、俺の取り分はあいつの懐へ、俺の懐へはあいつの拳が炸裂した。
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