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俺が愛した幻想郷

作者:茅島裕
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俺は愛せる? 幻想郷...
式神の力ってすげぇ...
  第十九話 少女にはキャンディを

 
前書き
久しぶり過ぎる小説投稿。
私は今まで何をしてたかな、何もしてないな。
増してやこの作品は何ヶ月ぶり…

の、うp主妹紅です。

あっはは、やっぱりこの始まり方は止められません。(生存確認)
そして今だ書くことを忘れない気持ちでいます。(希望はありません)
そしてそして突然のぞんぞんびより(テンプレ)


っと、本当にどうでもいい話でしたね。

私は健在です。失踪しても失踪しません、が書かないと決めた小説は絶対に消す主義なので。残ってるやつは絶対に書くということですので。


本編、どぞ。 

 
洗いっこを存分に楽しみ、風呂から出た後、先ほどまで共に楽しんでいた橙がもう既に居るであろう自分の部屋へ行こうとしていた途中。まぁ長時間風呂に入り遊んでいたら当然とも思うが喉が渇いた。
何か飲み物を、と考えた俺は真っ先に思いついたリビング、そしてキッチンへ向かった。目指すはキッチンの冷蔵庫、っと言うかもう手をかけている。なんせ浴場からリビング、キッチンまでは近いからだ。冷蔵庫はキッチンへ入って直ぐ横にある、これがもう既に手をかけていた理由だ。
そして中身、冷蔵庫の中身だ、冷蔵庫いっぱいに詰め込まれている炭酸清涼飲料水... またの名をサイダー。おお、と感動からの呆気に取られながらも手を突っ込み、ボトルを一つ掴む。
取り出したボトルのキャップを回し、プシッと言う軽快な音を聞いた後に口をつけ、一口、(あお)る。
ピリピリと喉を通る液体が染みる。まして風呂上がり、たまらない。
そして一息吐く。
この量のサイダーは紫が用意してくれたのだろう。よくみればこのサイダー、あっちの世界で俺が好んで飲んでいたやつだ。などと先ほどから一口一口と止まらなくなり三分の二を減らしてしまったボトルをちゃぽちゃぽとならしていると...

「自分の部屋に冷蔵庫欲しい?」

と何処からか...いや、空間のスキマから割り入って出てきた紫が問いかけて来る。
確かに、一々ここまで来るのは疲れる、欲しいことには欲しいが…

「欲しいっちゃ欲しいよ。ここまで来るの大変だし」

片手に持ったペットボトルの中身をチャポチャポと音をたてて揺らしながらそう答えると、

「そう」

その一言と共に紫は空間のスキマに消えていった。口から離していたペットボトルをもう一度口へ運ぼうとしたとき。
ガタン、と少々音を発てて現れたそれを凝視しながら、いそいそとペットボトルの中身を空にした。

「有り難いけど… どうせなら部屋に飛ばして欲しかったな…」

などと文句を言いながら、目の前に置かれた小さな冷蔵庫に手を置いた。
どうせここに置かれたなら、と大きな冷蔵庫からペットボトルを根こそぎ取っていき、小さな冷蔵庫の中に詰め込んだ。そしてもう一度その冷蔵庫に手を置いて……





■■■




長い長い廊下を越え、長い長い階段を越えた俺は、部屋まであと少しのところで止まった。
どうやって寝るか。どうせ今日も俺の布団で橙が寝ている。一緒に入って寝るのでもいいのだけれど… あの子寝相が悪くて、蹴られ引っ掻かれ安心して眠れない。
まぁ、ここで考えていても仕方がないか。そう考えをまとめた俺はドアノブに手を付け、ゆっくりと開けた。
部屋の電気は消えている。

「あれ…?」

橙がいる、ということは部屋の灯りがついているはずなのだ。例え布団の中に潜っていても、あの子は電気を消さない。大それた経験ではないが… 消していた覚えがなかった。カーテンもいつの間にか開いてるし。
恐らく暗いのが苦手なのだろう、だったら布団から出ればいいのに…

などと考えながら部屋の電気をつけ、右端にある机の横に配置されている白い箱を開ける。箱の中は冷たくびっしりとペットボトルが入っていた。
そう、さっき下で見た、紫に貰った冷蔵庫だ。
やはりテレポート能力はいい物だ。生身の人間には使えないので自分をワープさせることは不可能だが…

「寝ますか…」

(ねこ)がいないとちょっと寒いし寂しい気もするが、ゆっくり眠れるかもしれない。
それにしても何故いなかったのだろうか?

冷蔵庫の扉をゆっくりと閉め、後ろを振り向く…

「…へ?」

一度瞬き、そしてもう一度瞬き。

「…へぇ?」

今度は瞬きに加え目を擦る。

「へぇ!?」

三度と声を上げる俺を見ている、"黄色髪の少女"は、一度と瞬きもせずに目の前で俺を睨みつけるように見つめている。

「待て。いや、待てよ。いや待ってるよ?」

自分でも何を言っているのか、考えているのか、わからなくなり。取り敢えず、とその少女に近づいて見た。
少女のビー玉のような水色の瞳は、俺が動くと同時に動いた。俺の目に一点を集中させているらしい。何故にそこまで俺を見る… そんなに俺が面白いか?

試しに手を振ってみる。びくともしない。それどころか俺をガン見する目が痛い、馬鹿みたいに手を振った自分の痛さを増やす目だ。



「な、なぁ、君はなんでここにいるんだ? そしてなんでそんなに俺を見る!?」

頰をピクピクとさせて微妙な笑顔を作り、そう聞いてみる。しかし少女はひたすら俺を見つめたままだ。

「わかった! 迷子なんだな!?」

迷子でなんでこんなところにいるんだよ…

「一度…その目逸らしてくれないか?」

頭をぽりぽりと掻きながら、ニヘラと頼んでみる。瞬間、ほんの数秒、コンマ数秒。目を動かしてまた俺を見た。

「お前ウケ狙ってんのか!?」

なんの感情かは定かじゃないが、少々笑ってしまった。
どうすればいいのだ、そう考えているうちに落ち着き、その少女の服装に目がいった。服装と言える服装でもなく、見える範囲では白いワイシャツ一枚だ。
中に何か着ているとも考えられるが、胸元から覗く限り、中にはなにも着ていないようだった。

どう言うことだ? 冷静になって考えてみろ。
元々ここにいる住人としか考えられないだろう。いきなり現れて人の部屋を勝手に使われたらそりゃ怒りもする。それが今、俺の目の前にいる少女じゃないのか?
じゃあ、なんでこの少女はこんな服装なのだ。この服装が好きなら兎も角、いや兎も角も何もそれしか考えられないか…

「ご、ごめんな? なんか、邪魔しちゃった…かな?」

この子は人間なのか、妖怪なのかはわからないが。見た感じ子供なのは確かだ。
確か机の中に買ってきた棒付きキャンディが…

一度、少女から離れ、後ろにある机に手をかけ、引き出しを引いた。
無造作に引き出しの中をコロコロ転がるその棒付きキャンディを三本掴み取り、三角座りをしながら今だ俺を凝視する少女の前で膝立ちをする。

「キャンディ…なのはわかるよな? お兄さんが一つやろう。何味がいい?」

一本一本指に挟み、味を見せて行く。
一本はソーダ味、もう一本はプリン味、そして最後の一本は、ロイヤルミルクティー味。ちなみにロイヤルミルクティー味は俺の大好物だ。

流石の少女もこれには少々目が泳いだ。俺を見ていた目は、三本のキャンディに動いたり、また俺を見たりと。

そのまま少し待っていると、少女は覚悟を決めたか、一本のキャンディに手を出した。それも、人差し指と中指の間に挟んだ…ソーダ味に。

棒の部分を摘んでいろんな角度からそのキャンディを見つめている少女は、まるでおもちゃを見つけた猫のようにも見えた。
人差し指、普通より長いと思われる薄ピンクの長細い爪でキャンディの袋をカリカリと掻く姿がまた、猫に見えた。

「…袋取ってあげようか?」

何処と無く愛らしく、微笑みながら手を差し伸べた。
少女は初めて見た、心の底からの俺の笑顔に安心したのか… 素直にキャンディを俺に渡した。ただ単に早くキャンディを食べたいからかもしれないけれど、少女の目が少し優しくなっている。だから、そう思えた。

袋を取ったキャンディを渡すと、少しそのキャンディを眺め、鼻の近くに持って行き、匂いを嗅いだ。

「匂いを嗅いで確かめるのやめなさい」

と頰を軟くして言うと、少女が少しビクッと反応した。そんなびっくりすることだっただろうか?

「舐めて確かめてみなさい?」

これまた爪と同じく、普通よりは長い八重歯を見せて、小さい舌をキャンディへ伸ばした。
言わなくてもわかるだろうこの行為。一言で言おう。

「か…可愛い」

これで少しは機嫌が良くなったんじゃないだろうか?
さて、俺はこれから何処で寝れば… っ!? 甘い!?

「なんで!?」

気づけば自分の口の中にソーダの味が広がっていて、鼻で呼吸をするとソーダの風味が…
この味は、先ほど少女にあげたキャンディの味だ。

その少女と言えば、舌をべぇっと出して険しい顔をしている。
苦手だったかぁ……
でもなんで俺の口の中に突っ込むかね… しかも気づかなかったぞ。味が染み渡るまで気づかなかったぞ!

「ほら、あと二本あるよ。お食べ。どっちもあげるから」

さらば、俺のロイヤルミルクティー味。

そして少女が選んだ味、プリン味の袋を取ってやる。
これも苦手な味だったらどうしようか。などと考えながら、もう一度可愛い表情を伺っていた。

すると、今度は反応が変わった。舌先でチロチロ舐めるだけではなく、その小さな舌を大きく使って舐め始めた。
少女には少し大きかったか、咥えようとしているがなかなか咥えられない。ちょっと苦しそうに咥えるも、余程好みな味だったのだろう、目がうっとりしている。
苦しそうに咥えてうっとりしてると他のことを連想するが、いやしたくないが、してしまう。それが果たして俺だけなのか、というのはまた別としてだ。

可愛らしいがいつまでも見ているわけにはいかない。
どうしたものか… 紫に一応言っておくか?
先ほどは、元々の住人かもしれない。と思ったが… 紫は俺にこの部屋をくれたとき、"使われてない"と言った。
紫がこんなくだらない嘘を付くはずが…あるかもしれない。

紫に聞いたらなんかややこしいことになりそうなので、藍さんに聞くことにしよう… 
 

 
後書き
藍さんに聞くため、少女を残し、部屋から出ようとした。
あの大きさのキャンディだ。増してやあの子には大きいし、時間稼ぎにはなるだろう。

そう思い、一度少女を見る。

「はぃ!?」

少女はキャンディをもう食べ終わっていた。あの最初のときのように、ひたすら俺を見つめている、が、心成しか少し優しい目だ。

ちょっと待て。

「お前、キャンディの棒どうした?」

少女の周りを見てもない、足りない、絶対に残るはずのキャンディの棒が。あの、プラスチックに見えて、ずっと舐めてると紙みたいに溶けて口の中に残る、プラスチックに見せかけのあの紙の棒がないのだ。

少女はキョトンと俺を見たあとに、小さな口を大きく開き、人差し指で横に広げた。

「食った…のか?」

目を見開いて俺がそう言うと、少女は一度口を閉じ、人差し指で横に広げ、八重歯を見せつけるようにして、口だけニヒッと笑って見せた。 
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