鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
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第二章 Born Wind
連動企画 ノルエンデ復興計画、始動!!
前書き
久しぶりに読み返したら割と誤字大爆発だったので修正に追われました。
ベルもティズも他人の為に一生懸命になる所とか天然な所は似てますけど、どこか根本的な所で似ていないような気がします。
ギルド職員のハーフエルフであるエイナ・チュールは、想像以上に大きな話に少し緊張していた。
町で冒険者の登録管理を行ったり、町そのものの管理を行ったり、法の策定を行う特殊な地位にある組織、ギルド。時には指名手配などの強い権限も行使できるこのギルドは、町の外からの干渉にも対応している。
基本的にはオラリオの不利益になる内容だったりするので突っぱねるのが仕事だが、非営利目的だとそうもいかないので話だけは聞かなければならない。今回は偶然それをエイナが聞く番だっただけだ。
「今回は『カルディスラ王国』か……慰安旅行で行ったことあるけど、あっちからの接触って今回が初めてじゃなかったかしら……?まさか、派遣されたロキ・ファミリアが余計な事をしたとも思えないけど」
今回の仕事は『国』が相手である。今までも国からギルドへの働きかけや圧力は幾度となくあったが、大きな組織が相手だと非常に気を遣うから困る。なにせ国家の多くがどうにかオラリオで金儲けや無理なスカウトをしようと画策しており、そのハングリー精神たるや骨までしゃぶる空腹の野犬の如くである。
付け入る隙を見せればあっという間に条件をはぎ取られ、後で大損したり大変な問題に発展したり………昔はしたらしい。今ではファミリアの自治とギルド側のノウハウ蓄積によってそのような事態は起きていないが、警戒に越したことはないだろう。下手に刺激するとどこぞの国の神みたいに恨みを買ってしまうかもしれない。
応接室の扉がノックされる。どうやら来たらしい。
カルディスラ役人のお手並み拝見……などと考えていたエイナ。しかしその出鼻は早速挫かれることになる。
「失礼します。カルディスラ王国ノルエンデ村復興計画代表……ティズ・オーリアです!」
部屋に響く、声変わりして尚幼さを感じる高い声。
そこにいるのは役人とかどうとか言う問題ではなく――どう見てもただの純朴そうな少年だった。
しかも純朴レベルが半端ではない。どう見ても争いとか競い合いに向いてなく、田舎からぽっと都会にやってきたような風体は、いっそ迷子になったから道案内して欲しいと頼んでくる方がしっくり来る。
「………………」
「あ、あの……ひょっとして僕、部屋を間違えました?」
「………あ、いえ……すみません。その、思った以上にお若いので驚いてしまいました」
「あははは……確かに僕は役人って見た目じゃありませんからね」
少年は自覚があるのか、恥ずかしそうに後ろ頭を掻く。
改めて少年を見るが……格好もどこかの民族衣装のようで正規の役人には見えない。提出された書類では間違いなく目の前の少年がそうなのだが、これはいくらなんでも予想外過ぎる。
(なんだか気が弱そうだし……ベル君と雰囲気が近いって言うか、放っておけないタイプって言うか……)
はっきり言って、エイナはこの手の相手に弱い。というか頼りない系男子に弱い。
まさかこちらの情に訴えるような人選で心理戦を仕掛けてくるとは、恐るべしカルディスラ王国……!と戦慄した。
ちなみにあの王様はその点も計算している。カルディスラ王、意外にタヌキ説浮上。
そして、ティズとエイナは詳細について話し合いを始めたのだが……
「きっと難しいことだって言うのは分かってるんです……でも、たとえ住む場所が変わってもノルエンデは僕の故郷なんです!どんな形でもいい……故郷を再興するためなら僕の頭くらい何度でも下げます!だから……お願いします!!この復興計画に協力してくださいっ!!」
(こ………断れない!これは絶対断れない!!むしろ断ったら人間じゃないっ!?)
なんと、少年は役人とは名ばかりで実際にはカルディスラ大崩落で消滅したノルエンデ村の唯一の生き残りだったのだ。ロキ・ファミリアの報告とも発言内容が完全に一致する。
考えても見てほしい。
16歳という若さで突如天涯孤独の身になった、どこまでもまっすぐで純朴な少年が……涙ながらに故郷の再興を訴えているのだ。しかも、目の前で。小細工、腹案一切なし。純度100%感情任せの悲壮な決意を一体どこの誰が断れるというんだろうか。
しかも、国がその感情を全面的に後押ししていると来たものだ。
そして何より嫌なのが、彼は恐らく断っても何度も頼むに違いないことが分かっていることだ。
それこそ、締め出しても毎日ギルドの前で企画書片手に立っている姿が容易に想像できる。
きっと冒険者に邪魔だと突き飛ばされても、大雨が降っても、お金が尽きてもずっとギルドの前で粘るだろう。
エイナ・チュール、人生始まって以来の危機到来である。
もうベルの小動物的視線が断りにくいとかそういう次元を完全に通り越している。可哀想だから受けてあげようとかいう問題でもない。人間として、根源的に血の色が赤いかどうかを試されているレベルに達してる。
文字通り彼はこの計画に命を懸けているのだ。こういう選択を迫られるのは余りにも卑怯だ。
こんなの、助けてあげたいと思うのが人情ではないか。人間だったら誰だってそう思うではないか。
故郷を、家族を失って、それでも立ち上がらずにはいられない。
余りにもド直球で切ない覚悟を以て挑むティズの顔は、既に瞳に涙が溜まっている。
今にも溢れだしそうな悲しみを必死で抑えたその表情は、見ているこっちの胸が痛くなる。
(う……ううう……!?も、もうやめてぇ……!そんな澄み切った目で私を見ないでぇっ!!)
彼の眼を見ていると、段々と話を受けるかどうかの葛藤を抱いている自分が汚い大人になったような錯覚さえ覚えてくる。ありていに言って生き地獄だ。
ここでのエイナの仕事は、基本的に話を断ること。
このノルエンデ復興計画とて、実害はなさそうに見えるが鵜呑みにする訳にもいかない。
だから本当はNOと言わなればならないのだ。NOと言わなければ……エイナの独断でこの話を呑む訳には……。
「お願いしますエイナさん……!もう僕に出来るのは、こんなことしか残されていないんです……故郷の為に出来ることは、これしかないんですっ!!」
ティズにとっては、大穴を塞ぐという目的は自分よりむしろ他人の苦しむ姿を見たくないが為。
現実問題、故郷のために出来る事はもう再興以外にないのだ。
エイナの中で天秤が揺れる。というか、ティズの魂の叫びに天秤の片方に未だかつてない重量がかかっており、天秤そのものが壊れないのが不思議なくらいのバランスになっている。彼の言葉はその一つ一つが余りにも重すぎるのだ。本当に失ってしまった少年が、本気で取り戻そうとしている夢なのだ。
「お願いします……僕の故郷を、一緒に助けて下さい……!!」
(あ、これもう無理。多分私100万回生まれ変わっても断れない)
エイナは、とうとう公私の区別を諦めた。
この子を放っておくと、自分の中の大切な何かが崩れる……それが彼女の出した結論だった。
なお、了承の直後にティズが見せたあまりにも優し過ぎる笑顔に見惚れ、ベルに「大好き」と言われたとき以来の赤面をしてしまったのはここだけの秘密である。
ティズ・オーリア……意志の強さと爆発的天然パワーを併せ持った彼は、ある意味ベルと並んでエイナの天敵なのかもしれない。
= =
えー……という経緯でして、結局話を受け持ってしまった責任という事でこのオラリオにおけるノルエンデ復興計画の活動協力を全面的に任されました、エイナ・チュールです。
では、復興計画について画面の前の皆様に発表させていただきます。
復興計画の人員は、この二次創作小説「鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか」……略して「鐘まち」を評価した人物の『分身』が、この物語内の復興計画参加者として登録されていきます。
そして『評価した人物』は、便宜上この小説を『お気に入り登録』したユーザーさんに限定させていただきます。なお、この発表が行われた2015年8月5日時点で既に『70名』ものユーザーさんが復興計画に参加しています。
彼らは既に、カルディスラ王国でティズ君の指示の下「ノイエ・ノルエンデ村」の復興に当たっています。
では、村の復興について詳しい話をさせていただきます。
基本的に村に人数が増えるほどにノイエ・ノルエンデ村の復興が進んでいきますが、その際彼らは村の経済発展や更なる参加者募集の為に『店』を優先的に建てているのです。そして店が建つと、彼らはそこで生成したものを差し入れ代わりに復興担当であるティズ君に送ってきます。
ここで手に入るアイテムや装備品は、これから物語内でも使用される重要なものです。
何を優先的に復興するかは基本的にティズ君と私が話し合って決めることになっていますが、もしもユーザーさんの要望がある場合は『このサイトのアンケートにて受け付ける』予定です。
では、具体的に何をするのにどれほどの人員が必要なのかを数値化してリストアップしましたのでご覧ください。なお、一つの施設にいる人間が別の施設を兼任することはできません。また、リストに表示される人数は上から合計人数順となっています。人数を増やすほどに作成可能な物が増えていくと考えてください。
『道具屋』
・ポーションの作成開始……1名
・毒消し、目薬の作成…… 5名(※)
・エーテルポーション…… 13名(※2)
・安息香の作成…… 25名(※3)
・万能薬の作成…… 41名(※4)
・ハイポーションの作成……65名
・フェニックスの尾…… 97名(※5)
(※)目薬は、目の異常全般に効く薬です。
(※2)エーテルポーション=MP回復ポーションです。
(※3)精神的な動揺などを一時的に抑えます。
(※4)大抵の異常には効く高級な薬です。
(※5)戦闘不能になった者を戦える状態まで回復させる最高級の回復アイテムです。
『防具屋』
・ブリガンダインの作成…… 2名(※)
・レッドキャップの作成…… 9名(※2)
・レインボードレスの作成……21名(※3)
・閃光魔帽の作成…… 41名(※4)
・祝福の盾の作成…… 69名(※5)
・血塗られた盾の作成…… 105名(※6)
・平家の防具の作成…… 153名(※7)
(※)それなりにいい鎧です。
(※2)被ると知能が上がり、魔法の威力が増す帽子です。
(※3)綺麗なのに防御力の高い不思議なドレスです。
(※4)被ると素早さが上昇する帽子です。
(※5)回復魔法を使用できるマジックアイテムで、ダンまちにおける魔剣に近いものです。
(※6)非常に防御力が高いですが、代わりに装備中は敵の攻撃を回避できません。
(※7)最高級の甲冑、兜、籠手のセットです。
……現在はこの二つだけが解放されていますが、今後章が進むにつれて武器屋、アクセサリ屋、攻撃アイテム屋、食べ物屋が追加されていきます。なお、復興次第ではまだ見ぬ新たな仲間が現れるかも……?
しかし、これらすべての段階での復興を終えるには膨大な人数が必要になります。恐らくは物語が完結するまでに全部を復興するだけの人数は集まらない可能性の方が高いです。そのため、大人数の動員が必要なアイテムに関しては『アンケートで決定』しようと考えています。具体的には、10人以上の動員が必要な場合がそれに該当します。
現在、『道具屋』ではポーション、毒消し、目薬が解放されています。
また、『防具屋』ではブリガンダインとレッドキャップが解放されています。
これ以上の人員動員は先ほども申した通り『アンケート次第』ですが、順次開放される『店』でも10人以下の動員を行うものは自動的に人員が割かれるものと考えてください。
現在の所、上記アイテム解放に『14人』を割きましたので、残りの人員は『56人』です。
これらの人員をバランスよく配分して全体的な『店』の品揃え拡充を狙うか……一点集中で強力なアイテムを狙うか……あるいはまだ見ぬ施設のために人員を『節約』しておくという手段もあります。
これらはどれも本編での大筋のストーリーとは関係ありませんが、登場人物の人間関係や装備には変化をもたらします。場合によっては助けられない人を助けたり、より危険の少ない戦いを実現させるかもしれません。よく考えて人員を充ててください。
………お願いしますよ?村の復興は皆さんにかかっているんですからね?
後書き
という訳で……ノルエンデ村復興計画始動です。
ゲーム内では村の復興はすれちがい通信で人が増えることによって加速するのですが、思いつきから小説に合わせて調整してみしました。読者参加型企画です。……まぁ、誰も参加しないかもしれませんが。
正直この試みが上手く行くかは分からないんですが、アンケート自体は非お気に入り登録者の方でも参加できるので是非とも村の復興をお手伝いしてください。
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