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ソードアート・オンラインーもしもあの時、サチが死ななかったらー

作者:Bloo-D
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SAO
朝露の少女
  第33話

 
前書き
“朝露の少女”を完結させます。 

 
キリト『ユイ?』
サチ『ユイ…ちゃん……?』
立ち上がった2人は、恐る恐るユイに声をかけた。
ユイ『パパ、ママ…全部、思い出したよ。』
一旦落ち着いた3人は、安全地帯に入った。

そこには、ユリエールとシンカーの姿はなかった。キリトとサチに言われた通りに、転移したのだろう。
安全地帯は、正方形の形状をしており、出入り口は1つしか無く、その中央には、立方体の黒い石が置かれてあった。

キリト『ところでユイ、思い出したって……?』
キリトは早速事を本題に移した。
ユイ『では、全てを話し致します。』
するとユイは、いきなり丁寧な言葉を使い出した。
今までは記憶がなかったから、標準語を使っていたのだろう。
ユイ『この[ソードアート・オンライン]には、この世界を制御する巨大なシステムが存在します。それが《カーディナル》です。カーディナルは、この世界のモンスターやNPCを含めた全てを操作する事が出来ます。
しかし、プレイヤーの精神等は、人間での解決が余儀無くされていました。そこで人間は、あるプログラムを試作しました。』
サチ『あるプログラム?』
ユイの説明に、サチは首を傾げた。
ユイ『それは、プレイヤーのケアも、プログラムに委ねる事です。そしてナーヴギアの特性を有効活用して、プレイヤーの感情等をモニタリングして、もし問題を抱えたプレイヤーがいたら、そのプレイヤーの元に赴き、話を聞く事で、プレイヤーのケアを行います。それが、《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》にして、その試作第1号《Yui》。それが、私の正体です。』
『『⁉︎』』
ユイの更なる説明を聞いた2人は驚いた。
サチ『ユイちゃん…あなたは、プログラムかAIという事?』
ユイ『そういう事になります。私には、プレイヤーに違和感を与えない為に、感情模倣機能が組み込まれています。偽りの存在なんです、私は。涙も…全て……。』
サチの問いに、ユイは涙ながら答えた。
ユイ『しかし、サービス開始と同時に、カーディナルは突然、予想外の命令を下しました。それは、プレイヤーへの接触及び干渉を一切禁止とするっというものでした。』
サチ『キリト、ユイちゃんが言っている事って……。』
キリト『間違いない、デスゲーム開始の事だ。』
ユイの説明に、キリトとサチは全てを悟った。

それは、茅場 晶彦がデスゲームの宣言の際による物だと。

ユイ『その結果私は、プレイヤーのメンタル状態のモニタリングのみを続けましたが、状況は最悪でした。プレイヤーの大半は、恐怖,絶望等の感情に支配されて、中には狂気に陥るプレイヤーも少なからずいました。ですが私は、カーディナルの命令により、義務が有りながら権利がない矛盾した中で、私はエラーを蓄積して崩壊しました。』
サチ『そ、そんな……。』
ユイ『ですが、そんな中私は、今までとは全く異なったメンタルパラメータを有するプレイヤーが目に止まりました。喜び,安らぎと言った脳波パターンでした。私はそのプレイヤーのモニタリングを続行しました。その最中、私の心にある欲求が生まれました。その2人の元に行きたいといったそういう欲求です。そこで私は、その2人のホームから1番近くのコンソールを持って実体化して、彷徨い続けました。』
サチ『それが…22層の森で……。』
キリト『そして、ユイが会いたかったのが…俺達っていう事?』
ユイ『その通りです。』
ユイの説明を聞いた2人は、ユイに聞いた。ユイの答えは正解。
どうやらキリトとサチに会う為に、森で彷徨っていたようだ。
サチ『ユイちゃん、あなたは…本当にプログラムなの?本当の感情を持っているの?』
ユイ『その筈です。ですが、解りません。私が何なのかも……。』
その後、暫し静寂が流れたが…、
キリト『ユイ、君は…システムに制御されるプログラムなんかじゃない。つまり君は、自分自身の望みを…言葉にする事が出来る筈だよ。言ってごらん、ユイ。君の答えを…君の望みを……。』
キリトがその静寂を破り、そしてユイに聞いた。
するとユイは、腕を2人に向けて伸ばした。
ユイ『私は…ずっと…ずっと一緒に、居たいです。パパ、ママ……‼︎』
サチ『‼︎』
この言葉を聞いたサチは、涙ながらにユイを抱き締めた。
サチ『私も…ずっとユイちゃんと一緒に居たい‼︎ずっと…ずっと……。』
キリトもユイとサチを抱き締めた。
キリト『そうだとも、ユイ。君は、俺とサチの子供だ。一緒に帰ろう。あの家に…そして、現実世界でも一緒に居よう。俺がなんとかする。だから……。』
その場に和やかな空気が流れた。

だが、それも長くは続かなかった。
ユイ『もう、遅いんです。』
サチ『えっ?』
キリト『遅いって、何で……?』
ユイの突然の言葉に、2人は驚いた。
ユイ『私が記憶を取り戻したのは、あのコンソールに触れたからです。』
ユイはそう言って、部屋の中央にある立方体の黒い石を指差した。
ユイ『先程サチさんが、ユリエールさんに私を安全地帯に退避させた際に、偶然私はあのコンソールに接触して、全てを知りました。あれは、GMがシステムへの緊急アクセスの為に置かれたコンソールなんです。先程のボスモンスターは、ここにプレイヤーを近づけさせない為に、カーディナルが配置したのでしょう。そして私は、そのコンソールでアクセスして、<オブジェクトイレイサー>を使ってモンスターを排除しました。その直後に、本来の言語機能が復元出来ましたが、同時に、カーディナルによって、私が注目されてしまいました。間も無く私は、消去されてしまいます。』
サチ『そんな……‼︎』
キリト『冗談じゃないぞ…どうにかならないのかユイ、今すぐここから離れるとかさ……‼︎』
ユイ『もう無理です、時間がありません。お別れです、パパ、ママ。』
ユイの説明に、2人は絶望した。方法は無いのかとキリトは聞いたが、ユイは別れを告げ始めた。
サチ『やだよユイちゃん‼︎みんなで…仲良く…楽しく…暮らそうって…言ったのに……。』
ユイ『パパ、ママ…2人に会えて…良かったです…さようなら……。』
キリト『ユイ‼︎』
サチは、あまりの事に涙が止まらなくなった。段々ユイを淡い光が覆い始めた。キリトがユイを抱き締めようとした時、ユイは消滅した。
サチ『うわあぁああ〜〜〜〜‼︎』
キリト『ユイ〜〜〜〜‼︎』
2人は茅場 晶彦に届きそうな程に叫んだ。

ーーーーーーーーーーー

数分後、^始まりの街^の転移門前。
『『…。』』
ユリエールとシンカーは、心配そうにキリト達の帰りを待った。すると…、
≪パアーーッ‼︎≫
転移門が光り輝き、光りの中からキリトとサチが姿を現した。
シンカー『無事でしたか。』
ユリエール『心配しましたよ。中々来ないので、黒鉄宮に確認しに行こうかと思いましたよ。』
ユリエールとシンカーは、2人の元に歩み寄った。
サチ『すみません。』
キリト『色々ありまして……。』
2人は、心配をかけた事を謝罪した。
シンカー『あれ、そういえば……』
ユリエール『ユイちゃんは?』
ユリエールとシンカーは、ユイが居ない事に疑問を感じた。
サチ『ユイは…家に帰りました。』
そう答えたサチの右耳には、青く輝く宝石が埋め込まれたイヤリングが下げられていた。

このイヤリングについては、ユイが消滅した直後まで遡る。
キリト『カーディナル、お前の思う通りに行くと思ったら、大間違いだ‼︎』
ユイが消滅した直後に、天に向かって叫んだキリトは素早い手つきで、コンソールを操作した。
サチ『キリト、どうするの⁉︎』
キリト『今なら、今ならまだ間に合う‼︎』
サチの問いにそう答えたキリトは、無我夢中でコマンドを入力していった。そして操作が終わった直後、キリトは炸裂音と同時に後方へ吹っ飛ばされた。
サチ『キリト、大丈夫⁉︎』
サチはキリトの元に走り寄った。するとキリトは、青く輝く小さな宝石をサチに渡した。
キリト『ユイの権限が切れる直前に、ユイのプログラムをシステムから切り離したんだ。』
サチ『それじゃあこれは……』
キリト『ユイの…心だ。』
サチ『⁉︎…、ユイちゃん。』
キリトの言葉を聞いたサチは、それを握り締めた。
サチが下げてたイヤリングは、そのユイの心たる宝石をイヤリングにしたものである。

ーーーーーーーーーーーー

時を戻して、シンカーは、今回をキッカケにキバオウ派の幹部全員を除名し、事実上<軍>を解体することを2人に告げた。
それを聞いたキリトとサチは、ユリエールとシンカーに別れを告げると、その場を後にして家に帰った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

サチ『キリト、現実世界に戻ったら、ユイちゃんの事はどうするの?』
キリト『心配するな。ユイは、俺のナーヴギアのメモリに保存されるようになった。後は、現実世界でどうにかするさ。』
サチ『そう、良かった。』
帰宅後、サチはユイの処遇についてキリトに聞いたが、キリトの言葉を聞いたサチは安心した。

その時2人は、宝石の中からユイの声が聞こえた気がした。
ユイ『パパ、ママ…ありがとう。私を助けてくれて。私、とっても嬉しいよ。現実世界でも、絶対に…絶対に、また会おうね。≪ニコッ≫』
 
 

 
後書き
SAOもそろそろ終わりに近づいて来ました。しかし、物語はまだまだ終わりません。次回作は、早ければ今週の終わり辺りに公開の予定で行きます。 
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