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ソードアート・オンライン ーEverlasting oathー

作者:ゆぅ駄狼
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Thirteen episode 親馬鹿

 
前書き
「〜〜〜♪」


「お、セイは偉くご機嫌だな」


「おとーさんのかたぐるまたかーい!」


「ふふふ……ならば歩くスピードを上げて飛行機だーーーー!」ビューン


「わぁーー!はやいー!」


「「「「……」」」」 

 
第1層 ーーーー始まりの街 黒鉄宮 地下ーーーー






「まさか黒鉄宮の地下にこんな広い空間があったなんてな……」


俺達は今、黒鉄宮の地下にセイとユイを連れてシンカーを救出しに向かっている。
セイはユウキと手を繋ぎ、ユイはキリトに肩車されて笑顔だった。

そういや昔、叔父が何か言ってたっけ……




ーーーーいいか優也! どんなゲームでも最初の街には必ず怪しい所がある! 叔父さんのスーパープレイを見てろ……ほらみろ! 最初の街なのに宝箱発見! しかも可愛い美少女がいるぞ! ……中身が空っぽだと…? あ、閉じ込められた。ぎゃあああああああああああ!!!!




残念だが叔父さん……此処には宝箱がないし、いるのはモヤっとボールに閉じ込められたおっさん一人だけだよ……

俺が昔の事を思い出しているとキリトは溜息をついていた。


「βテストの時にはこんな所なかったぞ……不覚だ……」


「第1層のボスの武器チェンジの時と同じ様に少しだけβテストと変わってるんだろ」


俺がそう言うとユリエールが俺の方を向いて首を振った。
俺の方を向くと何かを思い出したのか、誰かを恨んでいる様な顔をした。
そのままユリエールは前の方を向き歩き出しながら話しだした。


「いえ、上層の進み具合によって解放されるタイプのダンジョンなのでしょう……キバオウはこのダンジョンを独占しようと計画していました。」


「……確かに、専用の狩場があれば儲かるしな」


キリトの言う通りだ。
ユリエールが言うには俺達がいる所、黒鉄宮の地下ダンジョンは上層の進み具合によって出現するタイプの物だと言う。
上層の進み具合と言うことならここのダンジョンの第1層ではあるがモンスターのレベルもそれ程低いわけでも無いのだろう。
1番レベルの高いモンスターでも60程度だろう。


「キバオウは儲かると思っていたのでしょうけど、ここのダンジョンは60層クラスの強力なモンスターが出るので殆ど狩りは出来なかった様です」


ユリエールがそう言うとユウキが俺の服を掴んできた。


「60層クラス……セイを連れて来ても良かったのかな……」


ユウキは心配という顔をして俺を見てきた。
心配する気持ちは分かる。
ユイもそうだがセイのステータスが一切分からないので敵の攻撃を一発でも当たってしまったら一撃で死んでしまうかもしれない。
しかも大多数のモンスターに囲まれでもされればセイとユイの身の安全は保証出来ない。

確かに……ユウキの言う通りだ……大多数のモンスターに囲まれでもされたらセイのステータスが分からないから危険に晒されてしまうかもしれない……

俺は黙ってユウキの心配そうな顔を見ることしか出来なかった。






ーーーーーセイとボクが危険に晒されてもユウヤが守ってくれるもん!





俺は少し笑ってしまった。
一瞬頭の中を横切った言葉があまりにも可笑しくて。

全く……ユウキには困ったもんだな
お前達を絶対に守れるかなんて根拠は全然無いって言うのにさ
本当に笑えてくるよ
お前が俺にそう言っただけで守れる根拠だって思えちゃうもんな

俺はユウキの頭にそっと手を乗せ、優しく撫でた。
するとユウキは心配そうな顔から何処か自信が溢れた様な笑顔をした。


「大丈夫だよ、俺がユウキ達を絶対に守るから。それに俺はとーちゃんだぞ、一家の柱が家族を守れなくてどうすんだよ」


「うん!」


「アスナも何にも心配しなくていいよ。俺とユウヤが皆を守りきるからさ」


「キリト君…」


家族って本当にいい物だ。
囲まれていると何処か落ち着いて、心が温かくなる。
そして俺達家族と、キリト達家族を繋ぐ絆も素晴らしいと思う。
お互いを支え合い、力を合わせて不可能を可能にする……そんな奇跡も起こせそうな気がする。
それが俺が皆を守り抜くと言う事の根拠の二つ目なのかもしれない。


「皆さん、此処がダンジョンの入り口です」


俺達は歩いている内にシンカーが置き去りにされたと言うダンジョンの入り口に来ていた。
その入り口は早くも更なる地下に続く階段であった。
セイとユイは階段の奥のダンジョンに興味があるらしく、物凄くはしゃいでいた。
だがそんな事とは裏腹にユリエールはセイとユイを見て不安そうにしていた。
無理もない。レベルが60行ってるか行ってないかのユリエールにとって、いや、レベルが低いプレイヤーなら誰でも七人のプレイヤーで、しかもその内の二人は子供であり、ステータスがバグっていて武器すら持っていないというオプション付きの子供がいたら子供の身の心配もするだろうし、何よりその子供のせいで他のプレイヤーが危険に晒されてしまうというリスクもある。

セイはユリエールの視線を感じ取り、ユリエールの方を向くと少し笑顔を見せた。


「ぼくとゆいはだいじょうぶだよ! それにおとーさんがいるからぜんっぜんこわくないもん!」


「え?」


セイに大丈夫だと言われると自分の思っていることに対して返答された事でユリエールは驚いていた。


「大丈夫だよ。セイはしっかりしてるし、何よりボクとユウヤの子供だしね!」


「ユイちゃんもちゃんとしてるので心配しなくても大丈夫ですよ」


俺とキリトはユウキとアスナの言ったことに対して腕を組み、首を頷いて感心していた。


「うむ、セイは将来優秀な槍使いになるぞ」


「ユイもきっと最強の片手剣士になる筈だ」




……ピク



俺は最強という言葉に反応した。

ユイが最強だとしたらセイは二番手ということか!?
俺の子供であるセイこそが最強の筈だ!!


「ちょっとキリト兄さんやぁ……最強になるのはうちの子ですよ…?」





……ピク



キリトも最強という言葉に反応したらしく、俺の方を向き険しい顔をしていた。
他人から見たら火花が散っているであろうという位、俺とキリトは睨み合っていた。
此処から恐ろしい程のいがみ合いが始まった。


「おっと……確かにユウヤは最強プレイヤーと言われている……その息子が最強になるというのも最強の父親の指導次第によっては確かにセイは最強になるかもな……だがしかし!! 」


キリトは話を区切り、風を斬る様に腕を動かし、指は虹のアーチを描く様に人差し指で俺を指差した。
キリトは負けず嫌いの様だ。
そう、ユウヤとキリトの怒りは例えるならば、参観日で自分の息子や娘が手を挙げているのに当てて貰えなく「どうして俺の息子(娘)を当てないんじゃゴラアアアァアァ!!」という感じだ。

キリトは俺に指差すと目を閉じ、数秒経つと目を開け物凄い圧をかける様に言い放った。


「まだお前は俺と決闘をしたことがないからユウヤ! お前が最強とは限らない!!」


完全に俺の心に火がついた。
心の怒りの火の燃え具合を例えるならば、生徒会選挙で皆で教室で投票する時…


先生「はーい皆ー投票紙を配りまーす!私達のクラスでは優也君が生徒会に立候補しましたので是非丸を付けてくださいねー!」
親友A「優也ー俺はお前に投票するぜー!」
親友B「俺達は心の友だからな!」
俺「あはは、何か照れ臭いな///」
ヒュー…←隙間風。
パサー…←親友A、Bの投票紙が風で舞い、俺の目の前に落ちた。
親友A、B「あ」
俺「全く…お前らはいい友達だy……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

生徒会選挙 投票紙←親友A、Bの投票紙。


生徒会選挙活動最終日の生徒会立候補の決定

私達の学校において生徒会選挙で心を打たれ、この人なら生徒会を任せられると言う人には◯を、駄目だという場合は×を付けなさい。
尚、◯や×以外の記号を付けた場合は投票を無効とします。


加奈子 ◯

海斗◯

晴海×

友美恵◯

優也×←

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺「貴様ラァァァアアアアアァア!!」
親友A、B「ぎゃあああああああああ!!!」




と言ったところだろう。

確かにあの時の選挙活動の時に言ったことは何か物足りないと思ったけどさ……
じゃなくて!!
キリト……そこまで言われちまうと引き下がれないな。


「ならキリトさんよぉ……此処で決着を着けるとしようか……どちらが最強か……!」


キリトは息を飲んだ。
額には汗を浮かべ、緊迫した表情をしていた。
レベルなら確実にユウヤの方が上だろう。
レベルが物を言うこの世界ではユウヤの方が決闘は有利である。
武器を使えばの話だが。

キリトには作戦があった。


「ユウヤ、お前の神聖槍は確か決闘では使えなかったよな?」


キリトはそう言うと自分の拳を握りしめた。
俺は察した。
いや、心でキリトが訴えてきたのだ。

拳を握れと。

俺は無言で頷くと右手でウィンドウを開き、決闘ウィンドウを開き、対戦相手をキリトにした。
するとキリトの目の前に決闘ウィンドウが出現した。
キリトは深呼吸をし、決闘を承諾した。

カウントダウンが開始され、残り30秒となっていた。
ユウヤとキリトは睨み合っていた。
例えるならば…そう、お互いを嫌い合う黄金龍と黒虎と言った所だ。
だが二人は知らなかった。
二人が決闘を始めようとする中、二人の少女から黒いオーラが出ていた事を。

残りカウントダウンは5秒になっていた。
いや、死のカウントダウンが5秒になっていた。


「キリト、お前はいい友達だ。親友……いや戦友と言った所か。今までは本当にお前がいるだけで物凄く助かった。だが、今回はお前は俺の敵だ……俺の拳がお前を越えて最強へと導き、それと同時に俺の息子が最強になる!!」


「最強プレイヤーと言われたユウヤ……レベルなんて関係ない……武器なんて物も糞食らえだ……俺達はいつも心で繋がっていた……時には喧嘩もしたな……けれど、今この時この瞬間は俺の名誉、娘のユイに応える為に俺はお前を倒して最強になる!!」




3……

2……

1……





「ちょっとお二人とも……」


ユリエールの声がしたが俺達には聞こえない。
今は大事な真剣勝負だ。
そしてカウントダウンが0になった瞬間、俺とキリトは走りだした。
俺とキリトは至近距離まで来ると拳をお互いの顔に向けて放った。
俺達は避けようとしなかった。
俺達は心で繋がっている。
危険な時はお互いを助け合い、時には肩を組みながら食事をしながら馬鹿をして……
拳を避けるなんて卑怯な事は出来なかった。


「最強は俺だキリトおおおおおおぉぉおおお!!」


「お前を越えて俺は最強になるぞユウヤぁぁああああああ!!」


お互いの顔すれすれまで拳が来た。


ガシッ!!



「「な!?」」


俺とキリトは驚いた。
俺達の拳は腕を誰かに掴まれたせいでギリギリ当たらなかったのだ。
俺とキリトは真剣勝負を邪魔されたことにより怒りが湧いてきた。
すぐに腕を掴んだ奴に向かって叫んだ。


「「何してくれ……てん……」」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!!



腕を掴んでいたのは二人の少女だった。
少女達からは何故か赤黒いオーラが出ていた。
俺とキリト、黄金龍と黒虎がハトと子猫に変わった瞬間だった。


「ユウヤぁ……?」


「キリト君……? シンカーさんの救出が先だよねぇ……?」


「「ふぁい……」」





数分後……




チーン…



俺とキリトは正座をしています。
あ、あと最強は嫁さんでした。
因みに今、お説教を食らっています。

俺はキリトにこの場を切り抜ける策を考えるべく、ハンドサインを送った。



ーーーキリト、多分これ怒下惨は無意味だぞ。


ーーー土下座前提で話さないで欲しいんだけど。


ーーーあ、すまない



「「二人とも聞いてるの!?」」


「「聞いてます。」」


俺とキリトがそう言うとユウキとアスナは溜息をついていた。
俺達は顔を伏せながら反省をしている振りをした。


「ユウヤの親馬鹿も治さないと駄目だね!」


「そうね……キリト君も本当に親馬鹿なんだから……」


親馬鹿……俺にとっては悪い事では無いんだけどな。
心からセイを大事にしてるし、キリトも同じくユイを心から大事にしてるんだろう。
にしても……すっかり二人とも母親だな……
もう俺達、頭上がんないっすよ……

俺がそう思っているとキリトも同じ事を思っていたらしく、目が合った。
そしてお互いに苦笑した。


「それに最強最強ってユウヤ……血盟騎士団の団長さんいるでしょ」


「あ」


「キリト君も最強って言ってるけどヒースクリフ団長に決闘で負けてるでしょ」


「あ」


ああ…もう……涙がでるー……

俺とキリトは何も言い返せなくなってしまった。
心の中で俺とキリトが泣いているとセイとユイが俺達に近づいてきて頭を撫でてきた。


「ぼくのおとーさんがいちばんつおいよ!」


「ぱぱのほうがいちばんつよいー!」


セイとユイは俺とキリトの頭に手を乗せながら口喧嘩をし始めた。
自分の父親の方が強いなどの口論だ。
俺はその話を聞いて笑い、キリトは照れていた。


「とーちゃんとユイのパパが二人共最強って事でどうだー?」


「「うん!」」


俺がそういうとセイとユイは笑顔で返事をした。
とても元気がいい返事だった。
その返事を聞いてユウキとアスナはクスクスと笑い出した。

どうせ俺達の事、子供とか思ってんだろー!

俺はそう思いながらユウキ達を見た。


「ユウヤは強くて頼りになるボクの夫だよ♪」


可愛い笑顔で言われるもんだから困ったもんだ。
俺は照れ臭くなり、そっぽを向いた。

……たく……さっさとシンカーさんを助けに行くとしますか


「んじゃお前ら! 行くとしますか!!」


「「「「おーー!!」」」」


俺達は前へと進み始めた。
その後ろ姿をユリエールはずっと見ていた。
少しぼーっとしていた様だがクスっと笑った。


「幸せそうな家族ですね……」


そう呟くとユリエールはユウヤ達の後を追いかけた。







 
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