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オラリオは今日も平和です

作者:かずもん
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僕の出張日記2

 %月?日 雨は雨でも大きい雨はなんだ?―大雨

 
 今日こそ”土竜族”の住む地下都市へ行こうと、朝起きてからすぐに出発をした。
 昨日5時間ほど降りたにもかかわらず、未だに途切れることが無さそうな階段。どこまで深く掘ってるんだよ”土竜族”。

 そこからさらに1時間ほど歩いた頃だろうか?ようやくかなり開けた場所についた。
 明かりは魔石灯なのだろう。ほんのりと明るい部屋は、何処か寂しげだった。

 しかし、いつまでも止まっているわけにはいかないので、再び広い部屋を歩き始める。すると、ローブを纏った男の人を見つけた。
 おお、まさか僕と同じようにあそこから入った人なのか!?と、少し嬉しくなってしまい、初対面にもかかわらず、馴れ馴れしい態度で挨拶をしてしまった。

 向こうもいきなり話しかけられるとは思ってなかったのか、僕が話しかけると、バッとこちらに振り向いて、殺気を放ってくる。いや、殺気まで向けなくてもいいじゃん。なんで皆して僕に殺気をむけるんだよ…………。て言うか、最近殺気を浴びすぎな気がするんですけど僕。

 しかし、僕の顔は相変わらずニコニコ。うん、突っ込むのも疲れた。

 僕が話しかけた人物は、やたらと此方を警戒しながら「何者だ?」と尋ねてきたので、「貴方と同じです」と同じ道から入ってきたことを伝える。
 僕がそう言うと、向こうは何故か慌てた様子で「嘘を吐くなっ!」と怒鳴ってきた。思わず、内心でビクッと肩を震わせるが、ここは一刻も早く仲間がほしいため、「嘘ではありません。正真正銘貴方と同じです」と言ったところ、少しは警戒を解いてくれたようだった。

 だが、完全に警戒が解けたわけでもないようで、その後もいくつか質問をされた。途中で「お前も『彼女』に選ばれたのか?」と尋ねられたのだが…………もしかしてこの人の主神のことだろうか?
 でもまあ、僕はギルドの職員だし、【神の恩恵】を受け取っているわけではないので、「少し違います。僕は力を授かってません」と答えたところ、酷く驚いていた。え、驚く要素ありました?

 と、そこまで考えて、彼がオラリオの住人でないことに気付き、『そうか、ギルドの存在を知らないんだな』と内心で自己完結した。
 そして此処まで話すと、向こうも警戒は完全に解いてくれたようで、しばらくの間、世間話のようなものをしていた。

 彼(名前を聞くのを忘れてしまった)はとある場所へ向かっているようなので、僕もついていく。少なくとも彼は僕よりも道を知っているようだし、彼の目的を終えた後に都市に案内してもらおう、と考えたのだ。

 道中では、また彼による質問タイムが再会された。

 と言っても、「その左手の包帯はどうした?」とか、「なんでそんな格好をしているんだ?」とか簡単な質問だったが。
 左手のことは【剣姫】にやられた、と言うと何故か納得したようだった。あれ、アイズちゃんのこと知ってるのかな?てっきり知らないものだと思っていたから、二つ名で答えてしまったではないか。
 あと、制服のことも「一応仕事として来ているので」と答えると、此方もまた納得したようだ。

 その後は、お互いに無言のまま、道を進んでいく。気まずいが、ある程度は仕方がないだろう。あくまで僕たちは初対面なのだから。

 さらに十分ほど歩くと、そこには”怪物祭”で見た新種のモンスターや、アイズちゃん達の話にあった芋虫型がいた。
 僕はとっさに身構えるが、彼は左手で僕を制した。え、これ新種だよ?危ないよ?

 もしかしてコレも”土竜族”のペットなの!?いやいや、流石に違うでしょ!?
 え、コレを飼ってるの?貴方が?うっそだー。

 だって貴方”調教師(テイマー)”じゃないでしょ?多分【ガネーシャ・ファミリア】でも、このモンスターは調教できないと思うよ?え、貴方がやったんじゃないの?あ、そうなんだ。

 もしかして本当に”土竜族”?
 …………僕の中で”土竜族”の警戒度が一気にMAXになった。

 
 その後、しばらく彼について行ったのだが、一行に目的地につく様子が見えないので、先に”土竜族”の都市がある場所を尋ねてみると、どうやら”土竜族”の都市はこの穴からはいけないらしい。

 僕の6時間にも及ぶ苦労はなんだったんだ…………………?

 内心でガックリ落ち込んでいると、彼が「どうして”土竜族”の都市の場所なんか聞く?」と尋ねてきたので、「僕はそっちが本命なんで」と答えておいた。いや、そっちしか目的じゃないけどさ。

 もうこれ以上時間をかけるわけにもいかないので、彼に「僕はそろそろ仕事をしに行きます」と言って、もと来た道を引き返した。
 流石に彼がいる場所では 恥ずかしかったので、彼の視界から外れた辺りの場所から、全力疾走をする。

 うん、滅茶苦茶時間の無駄だったな。

 帰り道でまた”土竜族”のペットと思っていたものと会ったが、構っている暇はないので、普通に無視してきた。あ、でも、あのペットを放牧してるのかな?それなら納得できるし。
 まあ、後で”土竜族”の都市に着いてから聴けばいいか。
 そう言えば、急いでたからあまり気にしなかったけど、背後で何かが崩れるような音がした気がしたんだけど…………まあ、気のせいだよね。

 
 そして、入ってきた場所に戻ったときには、既に日が傾きかけていた。うん、馬車が通らないかな~?なんて思っていると、本当に”土竜族”の都市行きの馬車が通りかかったので、乗せてもらった。

 三十分後、無事に”土竜族”の地下都市へとたどり着けた。
 ハア……やっと仕事が出来る。




 %月#日 大雨の城で踊りたい


 ……………めっさ怒られた。主にエイナちゃんに。
 いや、確かに近道しようとして、道を間違えたのは僕だけど、そこまで怒んなくてもいいじゃん。髪が逆立ってたよ…………。

 なんとか仕事を終え、期限ギリギリまでに帰れたのはいいのだが、どうしてこんない遅いのか、とエイナちゃんに怒られた。
 そこで、ちょっと寄り道したことを正直に話すと、「何やってるんですかっ!さみし……じゃなくて、心配したんですよ!?て言うか、なんでそんなに笑ってるんですか!?」と怒られた。

 うん、今更だけど何で僕は怒られてるの?一応期日は守ってるよね?仕事もちゃんとこなしたよね?なして?それに、ニコニコ顔のことは、しょうがない。僕にはどうしようもないもの。

 原因不明のまま、怒られること一時間。エイナちゃんの担当冒険者であるベル・クラネル君が、ギルドを訪れてきたことで、説教は終わった。
 ホッと一息吐いてから、デスクワークに移ろうとするが、「ななぁかぁいそぉ~?」という、エイナちゃんの声に、何事かとそちらを見る。

 すると、先ほど僕を助けてくれたベル君が、エイナちゃんに怒られていた。
 ……………借りは返すべきだと思い、席を立ってから受付のところへ向かおうとしたが、エイナちゃんにキッと睨みつけられて、すぐさま回れ右をして着席。

 すまないベル君。僕では君の役に立てないようだ。




 %月!日 ここから先はゲリラ豪雨だ!おとなしく尻尾を(ry


 今日はギルドの仕事が珍しく休みなので、家でごろごろしていた。
 エイナちゃんは、どうやら昨日のベル君と【ヘファイストス・ファミリア】を訪れるようだ。

 ここまで書いて、ふと気付いた。僕ってエイナちゃんの買い物に付き合ったことはあるけど、僕の買い物に付き合ってもらったことはない。
 クッ………これがモテる男とモテない男の違いとでも言うのか、ベル・クラネル(モテる男)

 
 でもまあ、なんだかんだ言いつつ、今日もオラリオは平和でした。 
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