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夢のような物語に全俺が泣いた

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戦争遊戯

さて、あの日から二日が経過した今日。
俺とサチコちゃんは会場として用意された場所へと来ていた。

向こう側も既に来ていたようで、既に戦闘の準備を済ませているようだった。

「確り来たようだな」

「当たり前だ。そもそもがこちらから振った戦争遊戯だ。
逃げる事は絶対に出来ない」

神ソーマが俺の前に現れ、挑発をするかのように言ってくる。

「しかしそちらの人数はたったの二人か?
聞いたことのないファミリアだと思っていたが、その実、新設ファミリアだったようだな」

ニヤニヤと笑う神ソーマに若干のイラつきが出そうになる。

「くく…さて、ルールを説明する。
今回の戦争遊戯は攻城戦。アイテム、魔道具の使用は禁止だ」

「はっ!?魔道具禁止だと!?
そんな話は聞いてない!」

「それはそうだろう。君達は新設のファミリア。
戦争遊戯事態が初めてなのに、逆に知っている方がおかしい」

くっ…しかしゼウス様は特に注意事項は言っていなかったし、そんなルールがあるなんて…!
しかもこれだと予定していたサチコちゃんの魔道具も使うことすら出来ない!

「そして、魔道具等のアイテムの使用防止のため、ことブレスレットをつけてもらう。
魔道具を使った事を伝えてくれる腕輪だ」

「………」

神ソーマから手渡された腕輪を取り付ける。
サチコちゃんはいつもと変わらないようなポーカーフェイス。
心配じゃないのだろうか?
それともまだ何かの作戦が?

「では、始めよう…」

「くっ…!?
待て!そちらの人数に不備がある!
何処からそんなに集めたんだ!明らかに昨日よりも増えているぞ!」

立ち去ろうとした神ソーマを呼び止める。
神ソーマが立ち去ろうとした方角には、昨日の人数を遥かに超える人員が虚ろな目をして構えていた。

「何を言っている?彼らもまた、ソーマファミリアの団員達だ。
この事に嘘偽りは無いぞ?」

「バカな…」

もしもそれが事実なのだとしたら、二日前のあの日、一体何処にいたと言うのだろうか?
言い方は悪いだろうが、あの館にこれほどの人数を収容するスペースは無さそうだった。
極めつけはあの人たちの目。

「我がファミリア諸君!
この戦いに勝った暁にはっ!その祝いに神酒を飲み交わすことを約束しよう!」

『おおおおおおおおおおおおおお!』

神ソーマが両手を広げて宣言する。
ソーマファミリアの面々は雄叫びをあげ、土岐を高めていった。

「サチコちゃん…」

俺はサチコちゃんに向き直り、目線を会わせる。
封印されている力とやらは気になるが、使えなければ意味はない。
それでいて今回の頼みの綱であった魔道具も使用禁止を言い渡され、最早打つ手がない状態になっているのが現状だ。

「心配ないよ」

「え?」

「さっきゼウス兄が御父さん達を呼びにいくのが見えたから。
ケイは時間を稼いで」

「ゼウス様が………わかった。
あの人数にどれくらいの時間が稼げるかは分からないけど…やってみる」

俺は立ち上がって配置につく。
サチコちゃんは城として設置された所へと走っていった。

『それでは――始めっ!』

アナウンスが開始の合図を落とし、両陣営は同時に駆け出した。










開始早々、問題は発生した。

「武器が…出ない…?」

そう。武器が召喚出来ないのだ。
何時もならば懐から取り出す仕草で召喚するのだが、それが出来ないと分かったときには兎に角出そうとしてみた。
しかし一向に出る気配もなく、その時にはもう目の前に群生が迫ってきていた。

「死ねえぇぇぇ!」

「くっ!」

切りかかってきた男の攻撃を咄嗟に回避し、周りを見る。
俺のところに来ているのは10人弱。他の者達はまだ遠くにいるようだった。

「ひひひひ…殺す…げひゃっ…」

目が虚ろなこの男もそうだが、ここにいる殆どがこんな状態だ。
経験上こう言った輩は手加減など全く知らない。

「何で出ねぇんだよ!」

「ぶへっ!」

未だに出てこない武器に苛立ちを露にしながら目の前の男を殴り飛ばす。
しかし――

「ふふひふひ…」

「んなっ!?」

大したダメージでも内容に不気味に笑いながら再び接近してくる。

「くっ!うわっ!?」

各方面から剣が迫り、交わすのに手一杯な俺。

「ちぃっ!はっ!たぁっ!!」

振るわれる剣や槍を回避しながら反撃に移る。
しかし当たり前の様にダメージが通らない。
そしてふと、気づいてしまった。

こいつら…腕輪をしてない…!?
まさかっ!?

「サンダーボルト!」「エアカッター!」「ファイアボルト!」

「ぐぁぁぁぁぁぁあ!?!?」

突然飛来した魔法を直に受け、俺は後方に吹き飛ばされた。

「ぐぁ…がはっ……」

地面を転がりながら魔法によって切り刻まれた体から血を撒き散らす。
意識が朦朧とするなか、前方を見れば先ほどまでの10人弱の敵兵は大人数となっていた。

――兎に角、回復を!

「【聖なる活力を此処に】ファーストエイド!」

回復魔法であるファーストエイド。
術者の定めた対象の傷を癒す魔法である。
たがそんな回復魔法も、俺の傷を直すことはなかった。…いや、発動事態しなかったのである。

「そん…な……」

「がはははは!大口叩いていた割には大したことねぇな!」

「もう満身創痍ですってか!あはははは!」

そんな声が聞こえ、そちらを見上げればいつぞやの体格の良い男…カヌゥとその取り巻きが立っていた。
やはりカヌゥ達も腕輪をしていなかった。

「お…前…ら……腕…輪は……どうした…!」

「ああ?腕輪ぁ?
そんなもん誰が好き好んで着けるんだよ!」

「そうそう。
装備者のスキルを封じるなんて、つける意味ねぇだろ!」

「バァカ、意味ならあるだろ?
こいつが今その意味を発揮してくれてるんだからな!がぁはははは!」

スキルを…封じる?
なら剣が召喚出来ないのも…魔法が発動しなかったのも…この腕輪が原因だったってことなのか…!

「くっ……そ!」

俺は腕輪を外そうとする。
しかし腕輪は接着剤で取り付けたかのように張り付き、取ることすら叶わなかった。

「無駄無駄!その腕輪は誰かに外して貰わないと取れないようになってんだよ!」

何処の呪いの装備だよ…!
俺は腕輪を外すのを諦め、ヨロヨロと立ち上がった。

「おお?まぁだやるのか?」

「久し…ぶりだよ……こんな理不尽を…受けたのは…はぁ…はぁ…」

「理不尽?そりゃ違う。
一方的な殲滅なんだよ弱小ファミリア!」

「がはぁっ!?」

鳩尾に鋭い蹴りが叩き込まれ、息を吐きながら後ろに倒れる。

「何で攻城戦なのにお前一人に狙いを定めてんのか分かるか?」

「くっ……はっ……………げほっ!」

ビシャァっと吐血をし、胃の中に溜まった血液を吐き出す。
既にこの男が何を言っているのかさえ理解できない。
目が眩み、体の節々からはドクドクと血が流れている。

「理由は簡単だ。お前が気に入らねぇからだよ!」

「ブッ!?」

頭を踏まれ、地面に顔を擦り付けられる。

「はははは!汚ぇ顔だぜ!」

男たちの笑い声が聞こえる……。
そう言えば…サチコちゃんは無事だろうか?
あの子も俺と同じで腕輪を着けていた…。なら同じようにスキルを封じられているだろう。

「そういやぁもう一人小娘が居たな。
あのガキも存分にいたぶってやらなきゃなぁ!」

……今……何て言った?
サチコちゃんを…いたぶるって言ったのか…?
本来この件は俺の我が儘が招いた事態なのに…付き添いと変わらないようなサチコちゃんが俺と同じ様な目に遭うと言うのか…!?
そんなの…そんなの――

「やらせるかぁぁぁあ!!!」

「なっ!?こい…ぐふぇっ!?」

俺は全力で立ち上がり、全力でカヌゥの顔を殴った。
カヌゥは確りと地面を転がり、仲間に支えられる形で受け止められた。

「あの子には…指一本触れさせねぇ!
死にたいやつだけ前に出ろ!スキル封印なんざ関係ねぇ!
全員まとめて相手してやる!」

 
 

 
後書き
多対一を考えているうちに早3日。
これだけ時間を掛けてもクオリティが良くならないのは如何なものか? 
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