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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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ウダイオス!……のその前に

今日はダンジョンでの探索の日だ。目標は三十七階層。
俺達【バルドル・ファミリア】の最大到達階層が四十五階層であるため、今回はかなり下まで潜ることになる。
……ま、正直に言うと、スウィードを抜いた八人での最大到達階層は三十八階層で、俺とハーチェスさん、されにエイモンドさんの三人でろくに探索もせず(、、、、、、、、)に到達したのが四十五階層なのだ。
種明かしをすれば、神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)に二人を乗せて強行突破という無茶をしたのだ。蹂躙制覇、楽しかった~


ま、そんなわけで、だ。
今回も【ウィザル・ファミリア】に留守番をお願いし、スウィードを入れた総勢九名による 迷宮攻略だ。
正直、深層にLv1であるスウィードを連れていくのはどうかと思ったが、本人もやる気だし、俺が面倒を見ることになり決行されたのだ。

予定は六日、もしくは七日だ。

「それでは、行ってきますね、バルドル様」

「うん。しっかりやってくるんだよ。それと、安全第一だからね」

はい! と一同が声をあげると、バルドル様は満足そうに笑う。
それじゃ、いってらっしゃい! という見送りのもと、俺達はダンジョンへと潜ることになる。

「……ん?」

さあ入ろうとしたところで、見覚えのある少年の姿を発見した。
昨日とは違い、軽装に左腕に緑のプロテクターをしているが、白髪の少年なんてそうはいないだろう。
ハーチェスさんに少し抜けますと断りを入れてから俺はその少年、クラネル君に近付いた。

「よ! 少年。今からダンジョンか?」

「あ、ナンバさん。はい、これからです」

「式でいいぞ、クラネル君。にしても、君はソロなのか」

「はい。うちのファミリアは僕一人しか居ないので」

【ヘスティア・ファミリア】なんですけど、と付け加えるクラネル君。
ヘスティア……確か、竈の神様だったか?
前世の神話の知識を掘り起こす。
クラネル君のファミリアだし、原作知ってる(ちょっとだけど)俺なんだが……すまん。覚えてない

「ナン……式さんもダンジョンですか?」

「おう、これから三十七階層まで遠征でな。数日は潜るつもりだ」

「す、すごいです」

「ま、【バルドル・ファミリア】はオラリオでも上位派閥だしな」

うちとは前々違うや……と気落ちしたようにため息をつくクラネル君だが、少しすると頑張ろうと持ち直したので、俺は別れを告げてクラネル君の元から離れた。

「知り合いかい?」

「まぁ、昨日知り合いましたんで」

戻ってくれば、俺を待っていたのかハーチェスさんからそう聞かれた。
どうやら俺を待っていてくれたらしい。申し訳ない。

「それじゃ、行こうか。今日は一日かけて十八階層に降りる。パディとスウィードがメインだから、十分注意してよ」

「ええ。畏まりました」

「が、頑張ります!」

初めはスウィードを先頭に置いて上層を突破し、中層からはLv3の面々も援護に動き出す。
……まぁ、大体は前の小遠征と同じだ。
違うところと言えば、ハーチェスさんやエイモンドさん。そして俺が三十階層から本格的に動くといったことくらいだろう。

「四日目くらいには目標階層に到達できるように動く。確か、『ウダイオス』がそろそろ復活するからな」

「そういや、ちょうど三ヶ月たったんだっけか?」

「らしいっすよ。でもウダイオスってLv6相当っすよね? 大丈夫なんすか?」

「僕もそう思うよ。でも、これ式がやるって聞かないんだ」

はぁ、とあきれたような目でこちらに視線を送るハーチェスさん。
気まずいため、俺はスッと目を横に反らした。

「式、勝てるの?」

「まぁ、苦戦必須ですね。でも、ウダイオスならLvアップにはいい相手なんですよ。……ま、俺が持てる手段全部使うつもりなんで」

戦車(チャリオット)も海魔も、だ。

それに、次Lvが上がった場合、あの金髪ピアスから何かしらの反応があるはずだ。

「じゃあ改めて。皆、気合い入れるよ!」

『了解っ!』




ーーーーーーーーーー




「スウィード、なかなか強くなってんじゃねぇか!」

「あ、ありがとうございます!」

「ヒル、話しかけると集中が切れます。スウィード、来ましたよ!」

ダンジョン十一階層

ハード・アーマード相手に上手い立ち回りを見せたスウィードにヒルさんからの声が上がった。
そんなヒルさんに注意しつつも、パディさんはシルバーバックに向かってボウガンの矢を放つ。

「スウィード! 代わってください!」

「っ! はいっ!」

腰に差していたナイフ、【リッパー・ジャック】を引き抜き、前へ出る。

「シッ!」

『バァッ!?』

パディさんが接近したのは身長三Mを超す豚頭のモンスター、『オーク』
オークは向かってくるパディさんに向かって天然武器(ネイチャーウェポン)である棍棒を振り上げた。

「フッ!」

『ブゴッ!?』

だが、武器が振り降ろされる直前、パディさんが飛んだ。
軽やかな身のこなしで舞う執事服の青年

「【轟け、雷よ】」


そして同時に詠唱を紡いだ。

「【マテリアルボルト】」

超短文詠唱によって練り上げられた魔力は青白い光を発すると直後、パディさんの持つナイフの刀身に纏われた。
一閃

オークの顔面近くまで飛び上がっていたパディさんは目の前にあった首を斬りつける。

『ブギャッ!?』

緑の血飛沫。
だが傷は浅い。普通なら強靭な肉体を持つオークにはこの程度の攻撃は問題ないのだ

そう、普通なら(、、、、)

斬られたオークは背後に降り立ったパディさんに向き直ろうと足を動かす。
が、その足取りは重く、鈍く痙攣していた。

「スウィード!」

「いきますっ!」

鈍重なオークが更に鈍重となり、もはや巨大な的と化す。
棍棒を持った腕もろくに動かせないオークはその命をスウィードの刀で散らす。

【マテリアルボルト】
パディさんの唯一の魔法で、物質に付与し、触れた相手を感電させる魔法だ。

もちろん、矢にも付与が可能なため、補助としてはかなり有能な魔法だ。


「スウィードもやるっすね」

「うん。筋がいいよ、ほんと」

「……」コクリ

その様子を外から眺めていた三人が称賛の声を漏らす。
一応、この階層の到達アビリティとしてはB~Sとなっているのだが、問題はなさそうだ。
俺達が補助で動けるというのもあるが、そこはやはりスウィードの素質なのだろう

「しっかし、この霧うぜぇな。早く中層に降りようぜ」

「フッ、こんな霧の中でも美しく輝く僕……」

「はいはい、光ってるすね」

ヒルさんが辺りを見回しながら呟いた言葉に、エイモンドさんが続け、アルドアさんがそれを軽く流す。
上層の十階層から十二階層では霧が出現して視界が悪くなるのだ。
……まぁ、うちには光る人がいるため、はぐれる心配は皆無だが。

「私も犬に同意。早くいきましょ」

「おいこら、色ボケエルフ。然り気無く犬呼ばわりすんじゃねぇよ」

何時ものごとく、ヒルさんとリリアさんが衝突。
もはや見慣れた光景なのだが、ここはダンジョンだ。一応、自重くらいはしてほしい

「ほら、二人とも。そんなことは『リヴィアの街』についてからだよ」

「はいっ! 分かりましたわ、ハーチェス様!」

「こいつ……はぁ、分かったよ、団長」

「うん、分かったならいいよ。それじゃ次の階層に行こう」





ーーーーーーーーーー




で、だ。
階層が飛んで現在は二十四階層。前回の目標階層だ。


現状報告

怪物の宴(モンスターパーティー)の真最中だ。

知らない人のために言っておくが、簡潔に言うと同地域(エリア)での瞬間的なモンスターの大量発生のことを言う。

『『『『『ギャブバァッ!』』』』』

「チッ! どれだけ沸いてくんだよこいつら!」

「全くもって同意っす、よ!」

『ギィッ!?』

ヒルさんのついた悪態に、アルドアさんがデッドリー・ホーネットを屠りながら答えた。

「…………ッ!」

『『『『『ギャベッ!?』』』』』

「お、おっさん! サンキューな」

一度下がったヒルさんの代わりにデルガさんが前に出ると、手持ちのハルバート、【アースブレイカー】を横に薙いでまとめてホブ・ゴブリンをぶっ飛ばした。

まさに豪快の一振り。流石ドワーフといったところか。


「【ーー刮目せよ、水の怒りを】!!」

「皆さん!! リリアさんの魔法、いきます!!」

リリアさんの側で護衛(Lv的には頼りないが)についていたスウィードが合図を出す。
一斉に全員がリリアさんの後方まで退散する。

今まで攻勢に出ていた前衛がいなくなったことで、抑え込まれていたモンスターたちがこれ幸いとばかりにこちらに向かって駆け出した。

直後

「【ティアマティ・ダイダルウェーブ】!」

魔法名が紡がれた。
前方に展開された水色の魔法円(マジックサークル)から圧倒的質量を持った水が放出される。

『『『『『『『ギャァァァァァァァァァッ……!?』』』』』』』

大量の水によって押し流されていくモンスター達の悲鳴に似た鳴き声が突如ときてプツリと消えた。

前方広域攻撃魔法【ティアマティ・ダイダルウェーブ】

魔法種族(マジックユーザー)であるリリアさんの持つ津波の魔法

こういった大量のモンスターを相手にしたときにはかなり役に立つ魔法だ。

「ハッ、魔法も使い手に似て乱暴だな」

「なっ! 何を言うのよ! 私程寛容なエルフなんてそうそういないわよ! ハーチェス様限定だけど!」

「その事をいってんだよ!」

「フッ、それに彼女の魔法はまだ上があるからね。【水竜】なんて物騒な二つ名がつけわけ……」

「フンッ」

「ゲファッ!?」

なんかデジャヴな光景を目にしながら、モンスターが流されていった方へと歩みを進める。
少し歩けば、そこには息絶えたモンスターの群れ。
先程のリリアさんの魔法の影響で、モンスターも通路もビショビショだ。

だが、そんな状況でも嫌な顔ひとつせず、パディさんが魔石とドロップアイテムの収拾を行っ
ていた。
ちなみに、スウィードも中層からはサポーターに回っているため、パディさんのお手伝いだが、もともと狩人だったからか、妙に手慣れていた。



ーーーーーーーーーー




なんやかんやあってとう四日目である。
この四日どうやって過ごしたとか、そういったことについてはなにも言うまい。
気にしても仕方のないことだし、重要なのは今現在もダンジョンの中だと言うことだ。

一応、今日で三十七階層へ到達するうもりなのだが、まだLv的に不安のあるパディさんとスウィード、そしてリリアさんを除くLv3の団員三名が十八階層に残ることになった。
まぁ、一日も経たずにここには戻ってくるつもりだ。

リリアさんがついてくるのは単純。後衛だからだ。

で、だ。移動手段はというと……

「【来たれ、神威の車輪】」

俺の戦車(チャリオット)である

「【ゴルディアス・ホイール】」

何処からともなく雷が飛来し、神牛(ゴッド・ブル)に引かれた戦車(チャリオット)が現れる。
要はこれに俺を含めた四人が乗り、一気に三十七階層まで強行突破しようという魂胆だ。
そもそも、今回の遠征は俺の私情が含まれているため団員からの文句はない。皆、いい人たちだ。

「さ、乗ってください」

「……相変わらず、式の魔法って変わってるわよね……」

「それでいて威力もすごいし」

「まぁ、自覚はありますけど。エイモンドさんも、行きます……あれ?」

二人から目線を外し、もう一人いるはずのエイモンドさんを探す。
が、何処を見ても見つからない。まだ来てないのだろうか?

「式、エイモンドならほら、あそこ」

「え?」

ハーチェスさんが指で示す方へ振り替える。
そこはちょうど俺の背後、つまり戦車の上。早くも台へと飛び乗り、大袈裟に両手を広げて光を放つ男

「さぁ! 行くぞ! この僕、【極光の陶酔者(ナルシスト)】の名を世界に示すんだ! フッ、この僕の美貌をもってすれば容易いこと!」

「何やってんだあんたぁ!!」

台詞とともに手綱を握ろうとしていたバカを飛び蹴りで吹っ飛ばす。
それでもし動いちゃったらどうすんだよ!

「エイモンド、あんまりそういうのはやめといた方がいいよ?」

「フッ、団長。この僕の美しさは世界に示してこそ。このオラリオだけに止めておくのは罪だとは思わないかい?」

「思わないわよ。ハーチェス様、行きましょ」

あ、ちょっと、とリリアさんに手を引かれて乗り込むハーチェスさん。
エイモンドさんもすぐに起き上がり、肩を竦めると空いた場所に飛び乗った。

「それじゃ、行くぜぇ!」

『ヴオォォォォォォォ!!!』



ーーーーーーーーーー


通路を巨大な何かが通過していく。
追い付けるモンスターは皆無。行く手を阻むモンスターたちも一瞬で蹂躙される。


迸る雷。駆ける巨牛。そして、その後ろ。戦車(チャリオット)の御者台で手綱を振るうのは……


「オラオラオラ!! そこ退けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

俺だったりする


「……ほんと、圧巻よね」

「僕は慣れたかな。昔から式ってこんなんだし」

「僕も慣れたよ」

目の前に五Mの巨体をもった紅色の恐竜のようなモンスター、『ブラッドサウルス』が現れる。
が、そんなことは関係ないと、戦車を引く二頭の神牛……まぁ、正確に書けば『飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)』なんだが……まぁ、今はいいや。兎に角その二頭のてによって胸の魔石ごと破壊、灰と化する。

ここまで来る間に何度も見た光景だが、倒したモンスターを魔石を取り出さずにそのままというのはマナー違反であるため、こうやって粉砕する方針をとっている。
……もったいない気もするが、仕方ないことだと諦めよう

「でも、さっきからすごい勢いで走ってるけど……全然振動とかないのね、これ」

「式の話だと、地面すれすれを飛んでるんだって」

「この魔法、空を飛ぶのも可能らしいね」

「……嘘でしょ……そんなの全然知らなかったわよ」

後ろで三人が俺の魔法について話しているが、まぁその説明はまたホームに帰ってからも出来るだろう。

三十七階層に近づくにつれて、リザードマン・エリートやオブシディアン・ソルジャーなど深層に出てくるモンスターの姿も見られた。
まぁ例外なく全て破壊していったが。

オブシディアン・ソルジャーに関しては、体が黒曜石でできており、魔法が効きにくいとされているのだが、そんなモンスターすら戦車が通るだけで体を粉砕され魔石を砕かれ灰となる。

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

「さぁ、到着! 三十七階層ぉ!」




ーーーーーーーーーー



『グォオオオオオオオオオオオッ!?』

銀の光が走った。

頭から両断された骸骨のモンスター『スパルトイ』は絶叫を放った。

ヒューマンをベースにした骨格がところどころ鎧のように隆起したやうな禍々しい鋭角的なフォルムを誇り、白骨の武器を持つ骨の戦士。
『深層』を縄張りとするLv4相当の協力なモンスター……なのだが、そんなモンスターも一閃のもとに瞬殺された。

一撃を放った剣士は、ヒュンとサーベルを鳴らして切っ先を地に下ろす。

辺りは一面骨ばかり。

その全てが十を超えるスパルトイの群れの残骸だった

「結局一人でやっちゃったし……」

「ちょっと苦戦でもしてくれると、もっと可愛いげも出てくるのにね……」

仲間の声が届いていないのか、モンスターの残骸の中心でたたずむ金髪金眼の少女ーーアイズ・ヴァレンシュタインは無言で細剣を鞘に収めて彼らのもとに向かった。

「はいはい、お疲れアイズ~! ポーションいる? エリクサーは? アイズの大好きな小豆クリーム味のジャガ丸くんはどう!?」

「大丈夫、ティオナ。ありがとう。……最後のは欲しい」

「そもそも、傷一つ付けられてないんだから、ポーションも何も必要ないわ」

「何はともあれ、あらかたモンスターは片付けたな……。この後はどうする、フィン?」

「ンー、そろそろ帰ろうか? 今回はお遊びみたいなものだし、ここで長居して、帰りの道でダラダラと手を煩うのま面倒だ。リヴェリア、君の意見は?」

【ロキ・ファミリア】の最高戦力である第一級冒険者達五名。それにサポーターを含めた七名が迷宮探索に臨んでいた。
といっても、先程の会話どおり今回のは『お遊び』。多くの冒険者が未踏のこの深層においてもお遊びと豪語できるほど彼らの実力は桁違いなのだ。

まぁ、要するに気のあった仲間内で行う暇潰しだ。


「団長の指示なら従うさ。……お前達、撤収するぞ!」

超然とした風格を持つエルフ、リヴェリアが声を飛ばす。
アマゾネスの姉妹が了解の意を示し、アイズは腐りかけたジャガ丸くんを見て落ち込んだ様子を見せる。
食糧の保存状態が整っていないと、こういうことはよくあるのだ

「それにしてもさぁ、もし今頃ベートが一緒に来てたら、絶体やかましいことになってたよね~。あのええかっこしい、アイズの前では途端にはり切っちゃうんだもん!」

「あの宴会の後、酔いが醒めた後にそれとなくアイズに拒絶されたことを伝えたら、凄い勢いでへこんでたわよ」

「うっわァー!? 超見たかったー! 何で教えてくれなかったのティオネ~!」

撤収といっても、戦闘はアイズの独壇場。魔石の回収はサポーターの二人の仕事。やることなどほとんどないのだ。
そわな中、ジャガ丸くんから顔をあげたアイズが波紋を投じた。

「……フィン、リヴェリア。私だけまだ残らせてほしい」

名前を呼ばれたフィンは少し目を見開き、リヴェリアは顔色を変えずに片目を瞑った。
ぎょっ、として動きを止めるティオナとティオネに構わず続ける

「食糧も別けてくれなくていい。みんなには迷惑をかけないから。お願い」

「ちょ、ちょっと~! アイズ、そんなこと言う時点であたし達に迷惑かけてる! こんなところにアイズ取り残していったら、あたし達ずっと心配してるようだよ!」

「私もティオナと同じ。いくらモンスターのLvが低くても、深層に仲間一人を放り出す真似なんてできないわ。危険よ」

二人の意見に、アイズは何も言い返せない。
そりゃそうだ。彼女らのいってることの方が正しいのだから

「何でアイズはそんなに戦いたがるの? アイズはすっごく別嬪なのに、もったいないよ~。もうちょっと女の子しようよ~。アマゾネスのあたしの方がお洒落でどうするのよぉー」

「私は……そういうのは、いいよ」

「なんでぇ? 強い雄……お気に入りの男とか見繕わないの? アイズのその綺麗な顔は飾りなの?」

「あんた、自分でもしないことを押し付けるのは止めなさい」

押し黙って俯くアイズに、一歩離れて見ていたリヴェリアは息をついた。
フィンに向き直って口を開く。


「フィン、私からも頼もう。アイズの意思を尊重してやってくれ」

「「リヴェリア!?」」

「ンー……?」

「この子が滅多に言わない我がままだ。聞き入れてやってほしい」

「そんな、子を見守る親みたいな気持ちじゃ動けないよ、リヴェリア。ティオナ達の言っていることの方がもっともだ。パーティを預かっている身としては、許可できないな」

「甘やかしている自覚はあるが……さて」

二階の吐息をついたリヴェリアはアイズに視線を送る。
感情の起伏が少ない少女の申し訳なさそうな目を見て、今度は自嘲。
それから再びフィンに目を合わせた

「私も残ろう」

サポートを担う、とその意図を伝えるリヴェリア。
その瞳を覗き込むフィンは、顎に手を添えた後、ゆっくりともったいぶるように頷いた

「わかった、許可しよう」

「えあえ~、フィン~。説得してよ~」

「リヴェリアが残るなら万が一にも間違いは起こらないだろうしね。逆に僕たの方が、帰りの道で危険な目に…………ん?」

「? どうかしましたか? 団長」

「シッ、静かに」

話しかけようとしたティオネを手で制し、耳に手を当てるフィン。
当然の行動にどうしたのかと反応を見せるメンバーだったが、少しするとその意味を知ることになる。



『ーーーーォオオーーーー』

「あれは……」

「ミノタウロス……じゃないよね? こんなところに出るわけないし……」

視線を送った先にあるのは三十六階層はと続く通路。

「みんな、念のために戦闘準備」

団長の指示に従い、各々が武器を構えた。
そして、徐々に近づく鳴き声。
そして、姿を現したそれに、驚くことになる。
二頭の巨大な牛と
それに引かれた戦車(チャリオット)の上で手綱を握る青年の姿に

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

「さぁ! 到着! 三十七階層ぉ!」






 
 

 
後書き
二巻ってさ、だいたい10日くらいの話なんだけど……もう四日も消費してもうたwww

あんがい早く終わっちゃうかも 
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