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イタリア男

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第二章

「最近では野球も。日本の阪神タイガースというチームは素敵ですね」
「そうそう、あのチームはね」
「他のチームと違うから」
「勝っても負けても絵になるんだ」
「負ける姿まで美しいんだよ」
 学友達も言う、それこそが阪神だと。ザンカリーノにとってもいいことだ。
 だが、だ。日本人の学友達は彼にもう一つの質問は殊更強く問うた。
「あの、それでね」
「イタリアの男の人って」
「女の人好きだよね」
「もう女の子を見ると声をかけずにいられない」
「そうなんだよね」
「そ、そうです」
 戸惑いながらだ、彼は答えた。
「イタリア人ならです」
「やっぱりそうなんだ」
「イタリアの男の人って皆そうなんだ」
「誰にも声をかけずにいられない」
「女の子に対しては」
「はい、本当に誰でもです」
 いささか目を泳がせつつだ、友人達に答えた。
「女の子に声をかけずにいられないですね」
「じゃあザンカリーノさんもだよね」
「女の子大好きで」
「誰にも声をかけずにいられない」
「そうなんだね」
「はい、私もです」
 焦りを必死に隠しつつだ、彼は答えるのだった。
「女の子は好きで」
「声をかけないといられない」
「そうなんだ」
「そうです」
 こう答えてだ、実際にだった。
 彼は学友達と一緒にいるとだ、いつもだった。
 日本の女の子達に声をかけた、だが。90
 それは必死にしてのことだ、それでだった。
 日本に兄がいることから遊びに来た弟のジャコモ、兄によく似た外見の高校生の彼にだ。自分の部屋マンションの中でこう漏らした。
「参りました、この先入観には」
「イタリアの男は誰でも女の子が好きで」
「声をかけずにいられないという印象については」
「兄さんもなんだね」
「はい、持たれていまして」
 それで、というのだ。
「私もかなり無理をして」
「女の子に声をかけてるんだね」
「電話番号を交換して」
 そしてとだ、ザンカリーノは弟にさらに話した。二人でザンカリーノが作ったナポリタンを食べつつ話をしている。
「やり取りもしています」
「大変だね」
「私はあまり」
「そうしたことはだよね」
「女の子に声をかけることは」
 そうしたことはというのだ。
「苦手です」
「兄さん奥手だからね」
「そうです、女性は嫌いではないです」
 彼にしてもだ、同性愛者という訳でもない。
「ですが」
「自分から声をかけることはね」
「イタリアでは出来ませんでした」
 自分をよく知っている弟にだけ言えることだった。
「なのに日本では」
「無理をして」
「声をかけています、ですが」
「辛い?」
「かなり」
 偽らざる本音での言葉だ。
「疲れるものがあります」
「何かイタリア男はね」
「女好きというイメージがですね」
「あるね」
「確かにそうです」
 ザンカリーノはこのことは認めた。
「実際に女性を好きな方が多いです」
「そうだね」
「そのことは事実で私も」
「兄さんもね」
「嫌いではありません」
 その女性をというのだ。 
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