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ドリトル先生と森の狼達

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第一幕その七

「行かせてもらいます、動物の調査も大好きです」
「だからですね」
「はい、楽しませてもらってきます」
「それでは」
 こうしてです、お話が決まりました。先生は奈良県に行くことになりました。しかし。
 ここで、です。先生は。
 ふとです、こうしたことも言いました。
「あと奈良県といえば」
「はい、何でしょうか」
「義経千本桜という作品の舞台でしたね」
「歌舞伎や浄瑠璃の」
「あの作品で寿司屋の場面がありましたね」
 先生は最近歌舞伎のことも調べているので日笠さんにこのことも尋ねたのです。
「そうでしたね」
「先生はお寿司もお好きですね」
「はい、大好きです」
 日本に来て知った味です、これもまた。
「とても美味しいですよね」
「そうですね、私も好きです」
「ただ。奈良県は山なので」
 それで、とです。先生は言うのでした。
「海から離れていて昔は」
「そうです、今私達が食べている握り寿司はです」
「ありませんでしたね」
「握り寿司が何時でも何処でも普通に食べられる様になったのは最近です」
 日笠さんもこう答えます。
「ですからかつて奈良では握り寿司はありませんでした」
「そうですよね」
「義経千本桜では握り寿司のイメージかも知れないですが」
「実際は馴れ寿司ですね」
「そうでした、あと奈良には他にもお寿司がありました」
「どういったお寿司ですか?」
「柿の葉寿司といいます」
 それが奈良県のお寿司だというのです。
「鮭の切り身と御飯、やはりお酢を効かせたものを柿の葉で包んでいます」
「それが柿の葉寿司ですか」
「奈良県名物です」
 にこりとしてです、日笠さんは先生にその柿の葉寿司のこともお話しました。
「そうしたお寿司も奈良にはあります」
「そうなのですね」
「あと奈良はお素麺も有名ですよ」
「あの夏に食べる細い麺類ですね」
「桜井名物でして」
「そのお素麺もですね」
「とても美味しいです」
 笑顔での紹介でした。
「まだ夏ではないですが機会があれば」
「はい、頂きます」
「そうされると何よりです。それとやはり季節ではないですが奈良は柿自体も有名です」
 柿の葉寿司に葉を使うだけではなく、というのです。
「そちらも秋には楽しまれて下さい」
「そうさせてもらいます」
 先生は日笠さんににこりとして答えました。
「実は日本に来て柿が大好きになりました」
「柿、美味しいですよね」
「あんな美味しい果物があるのですね」
「随分とお気に召されたのですね」
「はい」
 まさにとです、先生は答えました。
「秋にはまた沢山食べたいですね」
「その柿が名産です」
「奈良は、ですね」
「ですから秋も楽しみにして下さい」
「そうさせてもらいます」
「ただ、今回は」
 日笠さんは笑顔から寂しいお顔になって先生にこうしたことも言いました。
「残念ながら私は行けません」
「奈良にですか」
「はい」 
 とれも寂しそうなお顔で言うのでした。
「動物園が忙しく。ご一緒は」
「いえいえ、ご心配には及びません」
 先生は日笠さんがどうして寂しそうなのか気付いていません、そのうえでの返事です。 
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