異世界系暗殺者
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実行の時間(2016/05/16 一部修正)
前書き
寺坂君、マジで命拾い。あと、神崎さんが○○デビューです。と言っても、実際は○○ではなく○○○○なんですが……
【視点:樹】
寺s――ゴリラにマジギレ翌日の昼。天気が良いことと、昨日の一件で教室に居辛いということもあって、俺は外で飯を食っていた。
当初は1人で食うつもりだったが、有希子が外まで付き合ってくれたおかげで、昼飯そのものが味気なくなることは無かった。
そして、飯を食い終えた俺が夏に吹くには珍しい涼しい風を感じ、木陰で有希子に膝枕をして貰いながら校庭の原っぱで寝転がっていると、教室の方が騒がしくなった。
聞こえてくる会話の内容から察するに、大幅な遅刻をしたもののゴリラが登校してきた様だ。昨日、俺をあれだけキレさせておいて、よく登校できたもんだ。
「イッキ君、眉間に皺が寄ってる。寺坂君のこと、まだ許せないの?」
「……許せる訳が無い。殺虫剤なんて、そもそも人に向けるもんじゃないし、そんなのを有希子の近くでぶち撒けたんだ。許せないのが当然だろ」
「私も別に体調不良になったりはしてないから、昨日のことを引き摺るのは止めよう。殺センセーも普段から皆で仲良く暗殺しましょう、って言ってるし」
「………有希子がそう言うなら許す。けど、次は無い。次、有希子に害が及ぶ様なことをしたら本気でないにせよ、あいつを殴り飛ばす。そのくらいは許してくれよ」
「フフ。嫌って訳じゃないけど、イッキ君って過保護だよね。分かりました。ちゃんと手加減してくれるなら、そのくらいは許して上げます」
「おう……」
この後、昼休み終了5分前に教室に戻った俺と有希子は、クラスの皆から放課後にゴリラ主動の下、殺センセーの暗殺が行われることを聞いた。
クラスの殆どが乗り気でない暗殺。しかし、暗殺対象である殺センセーからの希望ということもあり、クラスの殆どがゴリラの暗殺計画に参加することとなった。ただ、俺とカルマ、有希子の3人だけは参加しなかった。
カルマはゴリラの計画に乗るのが癪ということで参加拒否。俺は今回の暗殺計画に嫌な予感がした為、参加拒否。真面目な有希子が参加拒否したのは、俺が頼み込んだからだ。
一応、クラスの皆にも参加しない方がいいとは伝えておいたが、参加組は殺センセーの粘液濡れになりたくないという理由で参加することにした様だ。
そして時間が過ぎ、放課後。俺は有希子と一緒に教室から皆がいなくなるまで、昼飯を食った木の下でA・Tの整備をすることにした。
いや、A・Tの整備というより新調というべきか。有希子のA・Tにエア●ギアでいう所の棘の疑似玉璽を組み込むことにしたんだ。
ちなみに玉璽と疑似玉璽の違いは、玉璽の証明でもある核部品があるか無いかの違いだ。
今まで俺が使用してきた試験型玉璽には、俺自身が一から組み上げた核が存在している。が、有希子のA・Tにこれから組み込もうとしている棘の疑似玉璽には、その核が存在していない。
故に玉璽ではなく疑似玉璽。そもそも、荊の王が使う玉璽は棘ではなく荊の玉璽だし、棘という名称の時点で疑似玉璽ってことが分かるだろう。
詳しい話は長ったらしいので止めておくが、取り敢えずオリジナルの専用玉璽は勿論試験型玉璽より性能が劣る、けどノーマルA・Tからすれば凄いパーツを組み込むと思ってくれ。
そうそう。念の為説明しておくと、この棘の疑似玉璽は試作型疑似玉璽じゃなくて、試験型玉璽のデータを元に強化開発した正規実用型疑似玉璽だったりする。
試験型玉璽と試作型疑似玉璽には性能差が40%程あるが、試験型玉璽と正規実用型疑似玉璽の性能差は10%しかないんだ。
あと棘の疑似玉璽の形状についてだが、後輪がウィールに擬態した疑似玉璽パーツでウィールとしての機能が全くないので、前輪ウィールをワンウィール仕様に変える必要がある。
という訳で、有希子のA・Tを通常のウィール式からワンウィール式への改造することになった。作業時間は調律も含めて3秒だ。
前もってワンウィール仕様のウィールを作ってたり、疑似玉璽パーツの大まかな調律をしていなければ、作業時間が5秒くらいは掛かっていただろう。
取り敢えず、有希子のA・Tを棘の正規実用型疑似玉璽に改造後、俺は有希子と共に棘の疑似玉璽の慣らし走行をすることにした。
あっ!言い忘れたけど、俺が今日履いているのは最近完成した風の試験型玉璽だったりする。炎の試験型玉璽程ではないけど、俺にとっては使い易い試験型玉璽だ。
で、慣らし走行を始めてから十数分後。初めてワンウィール式A・Tを使用したとは思えない走りを見せる有希子と共に、裏山の木々の枝を飛び移っているとプールのある場所から普段なら聞くことの無い爆音が聞こえてきた。
「!!?」
「イッキ君、今の音!」
「ああ!プールの方からだ!!」
爆音の聞こえたプールの場所まで俺と有希子が向かうと、そこには堰が破壊され、水が殆ど抜けきった元がプールだったものと、今回の暗殺計画に参加してプール内にいたと思しき悠馬、岡島、片岡と主動していたゴリラの計4人の姿しかなかった。
「……何だ、これ?」
「一体何が……?」
「イッキ、神崎さん!さっき爆音がしたけど―――って、これ一体どうしたの!?」
「カルマ!……俺達も今来た所で何が何やら……」
俺達と同じくA・Tを履いたカルマは空から降り立つと同時に、プールの惨状を見て珍しく驚きの声を上げた。当然のことながら、俺達も状況を理解できていないので、答えようがない。
そんな俺達の疑問に答えたのは、皮肉にもこの暗殺計画を主動していたゴリラだった。
「お、俺のせいじゃねぇ。こんなの聞いてねぇよ!イトナを呼んでタコをプールに突き落とすって話だったのに……」
「「…………」」
「成程ね。寺坂、6月の頭に来てた2人の掌で踊らされてたって訳だ」
「お、お前ら!言っとくがこうなったのは俺のせいじゃねーぞ!」
ゴリラの発言からある程度予想はできたが、カルマが敢えてそれを口にすると、ゴリラはみっともなく自己弁護を始めた。
「こんな計画、教えもせずに実行させる奴が悪いんだ!俺だって、こんなことになるならあの2人に協力なんて―――ッ!!」
「もう黙れよ。言い訳ばかりしやがって、鬱陶しい!」
ゴリラの言い訳に苛立った俺はゴリラを1発殴ると、プールから流された皆を助ける為、その場を後にした。
【視点:カルマ】
イッキは情けない顔で言い訳ばかりする寺坂を殴り飛ばすと、何も言わずに水の流れる先へと飛んで行った。
「寺坂、命拾いしたね」
「!?」
「もし、神崎さんがこの暗殺計画に参加してて流されてたりしてたら、お前イッキに殺されてたよ。殴り飛ばされる程度で済んで良かったね」
「!!?」
「それに暗殺対象がマッハ20で動ける存在だったことも幸運だ。でなきゃ、お前は今頃大量殺人の実行犯になってる」
「………」
「……イッキだけじゃなくて神崎さんも皆の救助に向かったみたいだし、俺も行くわ。お前も見苦しい言い訳する暇があったら、何か行動したらどう?」
イッキに殴り飛ばされて項垂れている寺坂に俺はそう告げると、イッキや神崎さんに続く形で皆が流された方へと向かった。
そして、移動すること1分足らず。俺はイッキと神崎さんを補足した。イッキは水面を走りながら流されている奴らを救出し、神崎さんは皆と一緒に流されている危険な流木や岩の類を破壊している。
岩や流木を壊してるアレって、もしかして漫画に出てた棘の疑似玉璽の棘の鞭?イッキの奴、神崎さんのA・Tを疑似玉璽にしたんだ。……今度、俺のにも組み込んで貰おう。
イッキと神崎さんがいる所の少し先では殺センセーも皆を救助している。取り敢えず、俺はバケツリレーっぽい感じで、イッキの助けた奴らを貰う係でもしようかな?
「イッキ、パス!」
「!?カルマか?サンキュー!!」
イッキはそう言うや否や助けた奴――主に男子を、まるで金魚すくいの様に飛ばしてきた。女子を飛ばしてこないのは、イッキがフェミニストだからだろう。まぁ、らしいっていえばらしいけど。
そして、最後に流されていた矢田さんと速水さん、倉橋さんの救出を終えると、イッキも川原へと上がって来た。殺センセーの方も先の方で流されていた吉田と村松、原さんの3人の一時救助を終えたみたいだ。
そんなことを思っていた矢先に、殺センセーは足の触手を触手で掴まれ、川に引き摺り込まれた。どうやら、今回のことを寺坂に実行させた奴らが姿を現したみたいだね。
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