ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか
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豊饒の女主人
前書き
感想、お待ちしております
ダンジョンへの小遠征を終えたその翌日。
今日
一日は休養日ということになり、皆が思い思いの行動をとる。
朝食時に、今日の夜は『豊饒の女主人』で食べるということが決定し、それまでにはホームに戻ってくるようにと伝えられている。
パディさんが若干顔を曇らせていたが、今日くらいは執事の仕事を止めとこうよというバルドル様の言葉に渋々といった様子だった。
朝食を終えた後、エイモンドさんがギルドへ行ってくると言って出掛けたのを皮切りに、他の面々もホームから出ていった。ハーチェスさんとリリアさんは買い物(リリアさん曰く、デート)らしい。
現在、ホームに残っているのは俺とパディさんにヒルさん。そさてスウィードの四人。
俺はといえばやることもないため、自室のベッドでゆっくりしている。
マジでやることねぇ……
ダンジョンに行って時間潰しという手もあるが、それをしてしまうと色々と文句を言われるかもだ。主に、ハーチェスさんから。
「むぅ……武器の手入れも終わってるし、掃除はパディさんが毎日やってるから埃の一つも落ちていない。……あ、そうだ」
なんてバカなのだろう俺は。今日は『豊饒の女主人』へ行く日じゃないか!
バッとベッドから起き上がった俺は、すぐに身なりを整える。
「そうだな……花を買いにいこう」
花が嫌いな女性はいないはず。
物よりも、こういった寿命の決まったものとかならきっと受け取ってくれるはず。
あわよくば、俺の気持ちも受け取ってもらいたいものだ。
思い立ったが吉日。俺はパディさんに出掛けてくることを伝えると、すぐにホームを出た。
ーーーーーーーーーー
「リューさん、喜ぶかなぁ~」
買い物を終え、ホクホク顔の俺。手には水色の花を咲かせる花。
リューさんの空色の瞳をイメージして買ってみたのだが、あまり多いとお店の方にも迷惑がかかると思ってそれほど数は買っていない。
リュー・リオン。俺が思いを寄せるエルフの女性だ。
出会ったのは五年前。まだ【バルドル・ファミリア】が零細で、俺とハーチェスさんがLv1のときだ。
たまたま通った路地裏で、倒れていた冒険者と、その傍らに佇む薄鈍色の髪のヒューマンの女性。
よく事情が分からなかったが、手持ちの回復薬などを与え、その後の手伝いをしたのだ。
俺としては、関わってしまったからには途中で止めるのも悪い気がする、といった認識程度だったのだが……
はっきり言おう、笑顔にやられた
凛として少しキツい印象を与える彼女に、お礼を言われたときのあの笑顔
それ、反則だろぉぉぉぉぉぉ!!!
以来、何度もアタックを試みているのだが、いつも失敗に終わっている。
何がいけないんだ……
『豊饒の女主人』の店員である猫人のアーニャさんの話では、プレゼントを貢ぐのが一番ニャ!と自信をもって言われているのだが。
こら、エイモンドさんみたいとか言わないの
まぁ、今回は花だし、自然の好きなリューさんは快く受け取ってくれることだろう。
出掛ける時間まではもうすぐだ。
そう考えるだけで足取りが軽くなる。
ーーーーーーーーーー
「ハーチェスさん! 俺、先に行って席とっといますね!」
「あ、いや、式? 一応予約入れてるからその必要は……」
「うっす! 行ってきます!!」
僕の言葉が耳に届いていないのか、式はホームの玄関から飛び出していく。
「……はぁ、『豊饒の女主人』が絡むと、いつもこれだ……」
「まぁまぁ、ハーチェス。そういってやるなって」
「バルドル様まで……」
ポンッと僕の肩に手をのせる主神はそう言って、今しがた式が出ていった玄関を見つめていた。
「……ほんと、変わってないよね。 君も、式も。それに僕と」
「バルドル様は神様でしょ……」
ああ、そういえばそうだった、と、そう言って笑うバルドル様は、自分で言ったように五年前から全く変わっていない。
僕達、ヒューマンや亜人を超えた不変で不滅の存在、超越存在。
僕がバルドル様と出会ったのは式と出会う数ヶ月前の出来事だった。
恥ずかしい話、二〇を越えるまでオラリオの外で過ごしていた僕は、たまたま読んだ迷宮神聖譚の英雄たちに憧れ、そしてこのオラリオへとやって来た。
……ほんと、二〇を越えた大人が恥ずかしい話だ。
街へ来たまではよかったけど、そこからは大変。どこのファミリアにも入れてもらえなかったのだ。
まぁ、当然といえば当然だ。
戦闘の経験すら皆無のヒューマンが受け入れられる訳がない。
そんなどうしようもない、途方に暮れていた僕に声をかけてくれたのがバルドル様だったのだ。
初めは女神様だと思っていたのでビックリしたのを今でもよく覚えている。
「……あれから、五年たったんだね」
「そうですね。もう五年です」
「まさか、こんな風になるとは全然考えてなかったよ」
五年で零細から上位にまで名乗りをあげた【バルドル・ファミリア】。
そして、派閥のランクに合わない構成員の人数。
僕でもこんなことは思いつかなかった。
「全部、式と出会ったところから始まったんですよね……」
思い出すのは、あの日、モンスターに囲まれて疲労困憊だった僕を助けた式の姿。
あれで恩恵を授かっていないことに当時の僕はかなり驚いたのを覚えている。
「ほんと、下界は何が起こるか分からないよ………でも、だからこそ面白い」
ククッと笑う神様はそれだけ言い残して僕のもとから去っていく。
後はエイモンドが揃えば出発だ。
ーーーーーーーーーー
俺の敏捷は伊達ではなく、西の大通りの酒場、『豊饒の女主人』へはすぐに到着した。
オラリオの空はすっかりオレンジ色の夕焼け模様。魔石製品の灯が街を彩り、夜の訪れを告げる。
『豊饒の女主人』からは酒をのみ、はしゃぐ荒れくれ者達の声が響く。
「すいませーん」
「あ、式さん。いらっしゃい。 でも、早いですね」
「ああ。 リューさんはいるかい?」
そう言うと、シルさんは俺の持った花を見て、ああなるほど、といった顔で笑った。
「ちょっと待ってて下さいね。呼んできます」
「ありがとう。助かるよ」
どうやら、厨房の方にいるようだ。
シルさんはいえいえ、と笑顔を浮かべて下がっていった。
「あんたも懲りないねぇ」
「ミアさん。またごちそうになりますね」
と、そこで呆れたような様子で俺に声をかけてきたのがこの『豊饒の女主人』主人であるミアさんだ。
ドワーフである彼女は、俺より背が高いというよく分からないお人だと俺は思っている。
まぁ、でも、いい人には違いないのだ。ここの従業員であるリューさん以外の女の子達もわけありらしいが、全て分かっている上で雇っているのだ。
ちなみに、リューさんの事情は俺も知っている。
「別に私は何も言わないが、迷惑だけはかけんじゃないよ」
「もちのろんですよ」
「何をいってるのですかあなたは」
「リューさん!」
はぁ、とため息をつきながら現れた金髪のエルフの女性。
彼女がリュー・リオンさん。俺の想い人である。
「で? 何の御用ですか?」
「ああ、これ。プレゼントにと思って」
手に持っていた花をリューさんに見せる。
が、思ったほどリアクションが芳しくない。どうしたのだろうか
「あの、式。今は営業中だから、そういったものは困るのですが……」
「……ハッ!? 」
しまった!? 喜んでくれるかどうかしか考えてなかったから、時間帯まで考慮してなかった!?
ガクッと俺は膝から崩れ落ち、両手をつく。所謂、orzのポーズだ。
「ああ……俺は……俺はなんということを……」
「ちょ、ちょっと、式。こんなところでやめてください!」
『おい、あれ【秘剣】じゃねぇか?』
『お、第一級冒険者様じゃねぇか』
『……なんであんなことになってんだ?』
入り口付近での俺達の様子に気づいたのか、ガヤガヤと今まで飲んでいた冒険者達が騒ぎ始める。
これに困ったリューさんは、さらに慌てた様子で俺を立たせようとするのだが、あいにく、このときの俺には何も聞こえていなかったのだ。
ガンッ!
「営業妨害するなら、他所へ行きな」
「さ、シルさん。俺達の席は何処かな?」
「え、ああ。こちらです」
切り替えって大事だよね!
シルさんに案内されて席まで足を運ぶ俺だったが、席についたところで大事なことに気づいた。
……この花、どうしようか……
折角買った花なのだが、食事の間ずっとここに置いておくのもマナー違反というものだ。
他の人になんてもっての他だ。そうするくらいなら俺が部屋に飾る。
そんなことを考えていると、スッ、と横から花束に手が伸びた。
驚いて振り替えると、そこにいたのはそっぽを向いて花束を抱えるリューさんだった。
「……その、今度からは時間も考えてください」
それでは、と言い残したリューさんはそのまま厨房の方へと戻っていった。
「……あかん、俺死ぬ……!!」
主に、悶え死ぬという意味で!!
ーーーーーーーーーー
「なにしてんの? 式」
「……死にそうなのを必死でこらえてます……」
「君に何があったんだ」
それから十五分もたたないうちに、我が【バルドル・ファミリア】、バルドル様を含めた総勢十名が揃った。
全員が一つの席につき、バルドル様の乾杯の音頭を待つ。
周りの客たちも俺達【バルドル・ファミリア】に目を向け、ヒソヒソと声を低くして話をしていた。
「それじゃみんな。昨日はお疲れ様。スウィードも入って、また【バルドル・ファミリア】は新しくなった。お祝いも込めて、今日は飲むぞぉー!」
イェーイ!とノリのいいアルドアさんが醸造酒を掲げた。他の面々もアルドアさんまでとは言わないが軽く醸造酒を掲げ、食事が始まる。
「ハーチェス様! はい、あーん」
「デルガ、いい飲みっぷりっすね」
「……酒は別腹だ」
「で、デルガさんの声、久しぶりに聞いた気がします……」
「おい、パディ! なんで葉物ばっかいれてくるんだよ!?」
「あなたが食べないからです。 あ、バルドル様。この肉をどうぞ」
「お、悪いねパディ」
「俺の肉ぅぅ!?」
……場所が違うだけでホームとやっていることが変わらないという
俺は醸造酒を飲みながら、肉料理を口へと運ぶ。
ファミリアのメンバーの様子を見ながら視線を動かすと……ふと、店の一角、ポッカリと席が空いている場所があった。
「……どっかの派閥が予約でもしてるんですかね」
「ん? さぁ、僕は知らないな。シルちゃんなら何か知ってるんじゃないかな?」
確かに、と思ってシルさんを探してみると、どうやら、カウンター席の方で一人の冒険者とお話し中のようだ。白髪に深紅の瞳でまるで兎な少年だった。
と、そこで
五年前、前世の記憶を少しだけ思い出した。
「……って、主人公じゃねぇか……っ!」
「ん? 式、どうしたんだ?」
「あ、いや。何でもないです、はい」
そうか?と首をかしげるハーチェスさんは気にせず、食事を続けるが、それどころじゃない。
俺はこの物語を少ししか知らない。が、最初の方は知っている。
そして、当然、この場面も
バルドル様、逃げて!超逃げて!
が、少し遅かったようだ。
ドッと入店してくる十数人規模の団体が現れた。
彼等は、先程、俺が見つけた空いた席に座っていく。
種族が統一されていない冒険者達。
俺は知っている。
前世でも、そして、この世界で生きている今も
『……おい』
『おお、えれえ上玉ッ』
『馬鹿、ちげえよ。 エンブレムを見ろ』
『……げっ』
先程、俺達の方を見ていた冒険者達の視線を集める団体。
団員達の服に印された道化師のエンブレム。
『あれが』『……巨人殺しの【ロキ・ファミリア】』『第一級冒険者のオールスターじゃねぇか』『どれが噂の【剣姫】だ』
畏怖を込められた周りの声。
それは俺達【バルドル・ファミリア】も例外ではなく、スウィードなんかはひぇ~といった様子でその団体を眺めていた。
「……お? バルたんやないか!」
「ろ、ロキ……なんで君がここに……!?」
席に向かう集団の中、朱色の髪の女性がバルドル様を発見した。
バルドル様がいった通り、何を隠そう、彼女こそが【ロキ・ファミリア】主神、ロキ様なのだ。
まぁ、女性とはお前ないほど胸がないお方だけども。
と、心の中で呟いておく。口に出したらえらいめにあうかもだし
「なんや、そない嫌な顔せんといてぇな。うちとバルたんの仲やないか」
「それを君が言うのかい!?」
悲鳴に似たバルドル様の叫びが響く。
この神様達、なんでも、天界からの知り合いらしいのだが、バルドル様は何度もロキ様の手によって女装をさせられたトラウマを持っているらしく、今もなお苦手としているようなのだ。
「で? この子らがバルたんの眷族らなん?」
「……そうだよ、ほら、君も子供達が待っているだろ。早く行っちゃえ」
「つれんな~バルたんは」
ほなな、といって自身のファミリアの団員達の元へと戻っていくロキ様の背中を睨み付けているバルドル様をハーチェスさんが宥める。
だが、俺はその間、ロキ様が戻っていった方、【ロキ・ファミリア】の団員たちを見ていた。
【ロキ・ファミリア】団長、小人族の【勇者】、フィン・ディムナ
同じく、副団長、ハイエルフの【九魔姫】、リヴェリア・リヨス・アールヴ
ドワーフの【重傑《エルガルム》】、ガレス・ランドロック
俺よりひとつ上、Lv6の冒険者。
流石と言うべきか、なんというべきか、風格といったものが感じ取れる。
「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなごくろうさん! 今日は宴や! 飲めぇ!!」
向こうはロキ様の音頭で『ガチン!』とジョッキをぶつけ合う。
その様子を見て、他の冒険者たちも思い出したように食事を再開した。
「……」
その間も、俺は【ロキ・ファミリア】の様子を見ていた。
【剣姫】に、【凶狼】、【大切断】に【怒蛇】
ほんと、勢揃いだなおい。
……手合わせしてみたいなぁ…
どうやら、俺はこっちに来てから戦闘狂でもまじってしまったのだろうか?ナチュラルに恐ろしいことを考えている自分がいる。
「そうだ、アイズ! お前のあの話を聞かせてやれよ!」
少したった頃だろうか?
ベート・ローガ、【凶狼】がそう言って、【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタインに話しかけたのは。
「あの話……」
「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス! 最後の一匹、お前が五階層で始末しただろ!? そんで、ほれ、あんときいたトマト野郎の!」
トマト、そう聞いて俺は昨日のダンジョンの帰りに出会った少年を思い出し……チラリとカウンター席に着いていた白髪の少年を見た。
「ミノタウロスって、十七回層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出していった?」
「それそれ! 奇跡みてぇにどんどん上層に上っていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ! こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」
「それでさ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえ冒険者が!」
チラリとカウンター席の方をみやる。
白髪の少年は黙ってジョッキを握りながら俯いている。
その後も、ローガの言葉は止まらない。
だが別に俺は気にしない。第一級冒険者である彼にとってはそうみえるのだから。
途中、あのエルフの王女が注意をするが、ローガはそれを無視。
他の冒険者にとっても、まぁ、酒の肴になるのはしょうがない。
俺達【バルドル・ファミリア】の面々も、反応はそれぞれだ。
笑っている人もいれば、すこし不愉快そうな顔をしている人もいる。
「アイズはどう思うよ? 自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎を。 あれが俺達と同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」
「……あの状況じゃ、仕方なかったと思います」
「何だよ、いい子ちゃんぶっちまって。……じゃあ、質問を変えるぜ? あのガキと俺、ツガイにするならどっちがいい?」
何故そんな話にとんでいるのかすごくツッコミたい
「……ベート、君、酔ってるの?」
俺もそう思います
「うるせぇ。 ほら、アイズ、えらべよ。雌のお前はどっちの雄に尻尾を振って、どっちの雄に滅茶苦茶にされてぇんだ?」
思っても見なかったセクハラ発言に思わず吹きかけた。俺は悪くない。だから、パディさん、ナプキンとって下さい
「……私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」
「無様だな」
おっしゃる通りで
「黙れババアッ。……じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら受け入れるってのか?」
「……っ」
「はっ、そんな筈ねえよなぁ。 自分より弱くて、軟弱で救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねぇ。 他ならないお前がそれを認めねえ」
「雑魚じゃ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ」
ガンッ!と椅子が引き倒される音が響いた。
見ると、カウンター席でシルさんといた主人公が店を飛び出していく姿が見えた。
シルさんがその後を追う。
しかし、あれだな。
さっきから雑魚雑魚煩い犬だな、ほんと。
上層にいる冒険者がLv2に相当とされているミノタウロスに敵うわけがない。
普通、逃げることがまともな選択、手段だ。
Lv1の冒険者が、俺達第一級冒険者からすれば弱いのは分かってることだが、だからといってあそこまで言う必要はない。
それに、そうなった原因はローガ達にもあるのだから。
だから、そうやって、バカにするような物言いは………
「……不愉快だな、犬」
「ああ? そこ、なんかいったか?」
俺の声が聞こえたようだ。さすがは狼人。
「お、おい、式」
「その耳は飾りか? なら、もう一度だけ言ってやる。 不愉快だ、犬」
「……てんめぇ……」
「ベート、止めなって」
ガタッと立ち上がり、睨み合う。
お互いのファミリアのメンバーが止めるように言うが、それでも止まらない。
まさに一触即発。
そんなときだった。
俺達の視線の間に入ってくる一人の男
「フッ、僕が美しいからって、こんなところで揉めないでおくれ」
エイモンドさんだった
前髪をかきあげ、ポーズを決めるエイモンドさんは、そう言って
上を脱いだ
なにしてんのあんた!?
「さぁっ! もっとよく見るといいさ! この僕の美しき裸体を!」
「ちょ、このバカ! 変なの見せんじゃないわよ!」
「アルドア! エイモンドを止めて! あいつ下も脱ぐつもりだ!」
「了解っす団長!」
速やかにハーチェスさん達が動いたことが幸いし、エイモンドさんが取り押さえられた。
エイモンドさんは、あ、皆が、皆が僕を見ているっ!!と何故か嬉しそうに笑っていた。
「……チッ、気がそがれた」
「アッハハ! バルたんとこの子供らはおもろいなぁ~!!」
ローガはこちらを睨み付けながらドカッと腰を下ろし、ロキ様は大爆笑。
リリアさんたちはエイモンドさんを縄で巻くと、速やかに代金を払って『豊饒の女主人』を後にした。
「……フンッ」
バルドル様も店を出たため、俺も続いて外に出る。
その際に、ローガと視線があったが、もう無視だ。ここでまたつっかかったらエイモンドさんに申し訳ない。
すっかり暗くなり、灯りで彩られた街を歩く。
道の先では、俺のことを待っていたのか皆がいた。エイモンドさんも拘束を解かれている。
「……心配かけました」
「心配というか、焦ったすよ」
「……」コクリ
アルドアさんとデルガさんの二人に肩を叩かれる。
「まあ、お礼とかふくめて、エイモンドには感謝しておきなさいよ」
「……ありがとうございます」
「フッ、僕は僕がしたいことをしたまでさ」
いつものように前髪をかきあげるエイモンドさんが少しだけ格好良く見えた気がする。
「話は帰ってからにしよう。 いいね、式?」
「……うっす」
後書き
何か、無理矢理だなとか、思わせちゃったならごめんなさい。
でも、これが俺ニシュラの限界なんです!
あと、ロキとかベートとか、口調がおかしいと思った方にもごめんなさい
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