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夢のような物語に全俺が泣いた

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汚名返上の鉄拳制裁2

「おらああぁぁ!」「だあぁりゃあ!」

”ガィンッ””ズダン!”

犬野郎は腰の獲物を抜き、斬りかかる。
俺は直ぐ様籠手を具現化し、迫る刃を受け止める。
そのまま右ストレートで犬野郎の腹部を殴って後退させた。

「…ちっ」

「テメェ…」

手応えのなかった拳を再度握り直し、構えをとる。

「調子に乗るんじゃねぇ!」

「お前よりかはずっとましだ!」

お互いに罵倒を浴びせながら再びせめぎあう。
刺突のダガーを払って拳を打ち込み、その拳をいなされればまた別のダガーが向かってくる。
攻防の嵐とも呼べるその戦闘は、前世での武術の習い事以来だった。











ユウジside

「な、何やあの子!あのベートが一撃貰うなんて!」

「あの子Lv幾つなの!?」

「ベート、焦ってるね」

「むぅ…やりおるのぉ」

各々に思ったことを口にするロキファミリアの面々。
まぁ確かに見たこともないやつが現時点でLv5の冒険者を相手にしていて、尚且つ善戦してるんだから驚くのも無理はないだろう。

「あの少年の名前はケイ・ウタル。
Lv2でステイタス最高ランクはFだ」

取り合えず名前と大まかなステイタスの説明。

「な、なんやて!?
Lv2がLv5をあんなに圧倒するんか!?あり得んやろ!」

「彼、冒険者になってどれくらいたつの?」

「一日」

「「「「はあっ!?」」」」

一日と言うまさにあり得ない事態に驚く。

「因みに契約したのは昨日。
初期Lvが2だったから…ここに来る前に何かやってたんだろ。狩人とか?」

「だ、だとしてもあの強さはデタラメや…勝負見誤ったかいな…?」

確かに善戦しているようには見えるだろう。
だが犬が焦っているように、ケイもまた焦っている。
恐らく恩恵によるブーストに身体と思考が噛み合わないのだろう。

「…お兄…さん?」

「ん?おお、アイズか。久し振りだな」

後ろから話しかけられた俺は振り返り、話しかけてきた少女を見てそう言った。
アイズ・ヴァレンシュタイン。
いつ頃だったか、19階層に一人でいたときに俺がたまたま通りかかり、
剣の指導などをしてやったらなつかれた。

「あの子…凄いね」

「まだまだ。これからどんどん強くなる。
今はまだLv1と大して変わらんよ」

「ちょおまちい!
アンタ、アイズたんと知り合いなんか!?」

話に割り込むようにしてロキが割ってはいる。

「昔ちょっとな」

「うん…ちょっと」

俺たちは顔を会わせた後、そう答えた。
ロキは既にモニターを度外視して俺からアイズを引き離し、ガルル…と睨んでいた。











ケイside

「魔神拳!」

ガァァァ!と地面を這う衝撃波が駄犬に向かって進んでいく。

「そんな攻撃が当たるかよ!」

駄犬は飛び上がり、魔神拳を回避した。
しかしそれは悪手だと、俺はニヤリと笑う。

「空中なら避けられないだろ!崘堵旋風(ろんどせんぷう)!」

駄犬に向かって飛び上がり、回転回し蹴り、後ろ回し蹴り、回転突きを順番に入れていき、最後に体を捻って踵落としを背中に叩き込んだ。
全てがヒットし、駄犬は地面へと叩きつけられる。

「ぐはぁっ!!?」

「っと…ふぅ、ふぅ……」

この戦闘の勝利条件はどちらかが倒れるまで。
このまま倒れていれば良いのだが…

「この糞雑魚がぁ!!」

「ですよねー」

勢いよく立ち上がり、両手に持っていたダガーを投げ捨てる。
おいおい、武器は冒険者の必需品じゃねえのかよ?捨てちゃっていいのか?

「もう容赦しねぇ…ぶち殺す!」

「返り討ちって知ってるか?」

段々この感覚にも慣れてきた。
最初は自分の体では無いように感じたが…今ではその違和感も消えている。

「うらあああ!!」

「なっ!かはっ!」

一瞬で俺の前まで距離を積めてきた駄犬はその勢いのまま俺の腹を殴り、吹き飛ばした。

「っ…ぐ(…速い!正に獣のそれだ……!これがこいつの本気ってやつなのか!」

「まだまだ終わってねぇぞゲロ野郎!」

再び視覚では追えないほどの早さを出して俺を殴りまくる駄犬。
蹴りや殴りのラッシュが的確に俺の至る場所を捉え、ダメージを蓄積させていく。

「ぐっ!がっ!?ごほっぉぇ…んのぉ!」

苦し紛れに拳を振るうが、簡単に避けられ、左頬に激痛が走った。
蹴り飛ばされたのか、俺はそのまま吹っ飛び壁に激突する。
瓦礫がまい、俺の上に欠片がのし掛かる。

「はっ…雑魚は所詮雑魚って事か。
まぁ楽しめはしたぜ?もうやめとけや」

「誰が…ぺっ。
流石に痛かったけど…それでも敗けは認められない!」

フラフラと這い上がり、瓦礫をどかす。
そして再び駄犬と視線を交差させる。

確かに他の冒険者を雑魚呼ばわりするくらいの実力はあるとは思う。
だがそれだからと言って呼んで良いことにはならない。
そんな慢心した態度を改めさせるのは必要だと確信している。
そして何より、俺自身が気に入らない。

「……やるか…あれ…」

前世の頃、テイルズのゲームをやる度に思っていたこと。
アニメや漫画で良くあることなのに出来なかった芸当…。

「なぁ、俺たちは冒険者で…戦い方も様々…そうだよな?」

「ああ?んなもん当たり前だろうが…頭でも沸いたのかよ?」

「この喧嘩にルールなんてものは存在しない…そうだよな?」

「何が言いてぇ?」

「剣使おうが魔法使おうが…冒険者の自由なんだよなぁ!」

魔力を奮い立たせ、体内で魔法の精製を行う。
俺が考えた術の構成は補助魔法の合成。
ベースを[ホーリーソング]に[シャープネス]、[バリアー]、[リジェネレイト]を混ぜていく。
どうせ犬野郎の方がLvは上だしステイタスも比べ物にならないほどの差があるだろう。
だったら無理矢理にでも上昇させて同じ土俵に立つしかねぇ。

「戦闘中だぞ…テメェ…何してやがる」

「その恩身に支える事を約束せよ…[戦場の神歌]!」

使った瞬間、体が軽くなるのを感じる。
体力回復、攻守の増強に加えてテンションも上がってくる。
今の俺はLvにして4~5に相当するだろう。

「行くぞ…」

「上等だクソガk…ぐほっ!?」

まずは突貫。
一瞬で間合いを積め、腹部に一発。
ぶっ飛ぶ犬野郎を追い越し、進行方向で止まって膝蹴りを背中へ。
海老反りになる犬野郎の両腕を掴んで背負い投げをし、地面へと叩きつけた。

「まだ終わらないよな…これからだもんなぁ!」

「こ…のっ!クソガキがぁ!!」

怒りに身を任せたのか、犬野郎は一直線に向かってくる。
先程まで見えなかった動きも、今では確りと見ることが出来ている。
勢いよく繰り出される拳を掻い潜り、全身の持てる力を解放する。
オーバーリミットである。

「勝負を決めるぞ!」

腕をクロスさせ、魔力を溜め込んで打ち出す。
犬野郎はまともに受けて後方に吹き飛ぶ。

「風と共にぃ、駆け抜ける!」

吹き飛んだ犬野郎を全速力で追いかけ、その空いた顔面に――

「秘技!シャドウ・モーメン――」

ガクンッと、体が重くなる。
まるで重力が2倍…いや、3倍になったかの様に動きにくくなった。
どうやら補助効果が切れたようだ。

「ざけんなぁっ!」

決死の一撃だったのだろうか。
吹き飛びながらも接近した俺に向かって拳を突き出す犬野郎。

”バキィッ!”

お互いの顔面にお互いの拳を受ける。
所謂クロスカウンター。
勢いはそのまま、地面を仲良く転げ回り、地面に這いつくばる。

こうして俺と犬野郎の喧嘩は、お互いに気絶と言うことで幕を閉じる事となった。







ユウジside

「嘘…あのベートが…」

「何者なんだ…あの子は…!」

「Lv2がLv5に…相討ち?どうなっているんだ…!?」

「ぬぅ…」

相討ち…引き分けってところか。
今や店内は歓声で溢れ帰り、観戦していた客たちは称賛を送っていた。

「取り合えず治療しようか」

俺は指をならして二人を転送する。
戻ってきた二人を床に寝かし、魔術詠唱を開始する。

「命を照らす光よ、此処に来たれ…[ハートレスサークル]」

「こ、これは…全体回復の魔法…!」

「レアスキルか!」

みるみる怪我が直っていくのを見ていたエルフと小人族が驚愕を露にする。
まぁこの世界の回復魔法は殆どが単体向けだからな…だからと言って説明はしないけど。

「っ……ここは…」

「店の中だ」

気がついたケイに答える。
ケイは俺を見てから俯いた。

「負けたんですか…俺は」

「いいや、引き分けだ」

「せやな。まさかベートと引き分けるなんて思いもよらんで。
あんさん凄いな!どや?うちのファミリアに…」

「アホか。改宗は一年たたんと出来ねぇ決まりだろうが」

「そうやったな…」

いきなり勧誘に入るロキを制してケイの前にしゃがみこむ。

「お前が使ったあの術といい技といい…見覚えのあるやつばっかりだったけど…良くやったな」

「…はい……っ!」

「よし。じゃあ帰るか」

そう言って俺は立ち上がる。
そのままカウンターにいたミアにちかより、懐から金銭袋を取り出して目の前に置く。

「凄いじゃないか、あの坊や」

「まぁ、これからもっと凄くなるさ。
今回は一応引き分けだからな…100万ヴァリス置いてく。
足りない分はロキから巻き上げてくれ」

「あいよ…また来なよ?…あの子もたまにソワソワしてるからね」

そう言って影から俺を見ていたエルフの少女に目線を送る。

「なっ!?違います!」

そう言って店の奥へ入っていってしまった。

「ははは…まぁリューはあの時からあんな感じだろ?
もう少し話したいと言うのもあるが…そろそろ帰らねぇと面倒だからな」

「そうかい。んじゃ、またねユウジ」

「ああ。ミアちゃんも頑張れよ」

「ちゃんを付けるんじゃないよ!」

「わはははは!」

そうして俺とケイは店を出た。
後に残ったロキファミリアの面々は、何が何だかと言う感じで唖然としていた。











ケイside

あの後ホームに転移してもらい、談話室に到着。
その直後に二人の女性が現れ、ユウジさんを正座させて説教を開始した。

「良い!?こんなに遅くなっちゃうとこっちだって心配になるんだから!」

「いや、しかしだな…」

「しかしもかかしもないよ!
君はもう少しわた…皆の事も考えないと!」

一人は栗色の髪色でサイドポニー。もう一人は金髪でロングヘアー。
言うまでもなく高町なのはとフェイト・テスタロッサだった。

「また始まったね…」

「ソウヤさん…あの二人って」

「うん。高町なのはとフェイト・テスタロッサだね。
僕とユウジ、才人と翔はリリカルなのはの世界から来ているんだ。
今はちょっとした所用でここへ来てるんだけど…ね」

ソウヤさんの顔が少しばかり強ばった。
何かあったのだろうかとは思ったものの、聞いてはいけないと考え、深く追求はしなかった。

「お、帰ったか。ならステイタスの更新しちまうか」

そこへゼウス様が現れ、そう言ってくる。
俺はソファーにうつ伏せになり、上着を脱いだ。


ケイ・ウタル
Lv2

力: G 212 → E 440
耐久: F 315 → E 462
器用: H 154 → G 294
敏捷: E 411 → C 601
魔力: S 920 → S 931
《魔法》

《スキル》

英雄碑(テイルズオブ)
ヘイトマスター






「へぇ…大分上がったな」

「はい。多分あの犬野郎とやりあったからじゃないかと」

俺は起き上がり、服を着ながら答える。
自分よりも上のレベルと戦えば妥当だと言えるだろう。
俺は今日の喧嘩を振り返りながらその後を過ごした。 
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