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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦五日目(3)×情報強化と今回のデバイス補佐能力

一方本部にいる先輩方はモニター前でまたしても、女子の幹部二人が雁首を揃えていたのを見たのか市原先輩は舞い込んでいる試合結果の纏め上げに忙しいのかため息したのだった。

「いよいよ北山の出番のようだな」

「今度のは普通のCADみたいだけど、どうなのかは試合後よね。今度はどのような奇策を見せてくれるのかしら?」

「いや分からんぞ?そう期待していると、裏目が出て正攻法で来るのかもしれん」

真由美と摩利は、お気に入りのビデオプログラムに群がる子供のような目でアイス・ピラーズ・ブレイクの試合結果が映し出された大型モニターを見ている。鈴音は諦めて、もう一度ため息をついてから手伝ってくれる者の無い仕事へ戻った。

真由美と摩利も、雫の衣装には眉一つ動かしていない。九校戦三回目の彼女達にとっては、振袖などそれ程奇抜なコスチュームではないからだ。むしろ控え気味だろう程度なもので、九校戦を毎年のように観戦してきた雫でさえ特に恥ずかしくするような事もない衣装を選んでいるからだ。

「お、そろそろ始まるようだ」

二人は心持ち、モニターに顔を近づけた。フィールドの両サイドに立つポールに赤い光が灯った。光の色が黄色に変わり、更に青へと変わった瞬間、雫の指がコンソールを舞った。自陣十二本の氷柱を対象とした魔法式が投射された。一拍遅れで相手選手の魔法式が雫の陣内にある氷柱に襲い掛かるが、移動系統の魔法で敵陣の氷柱を破壊するポピュラーな戦術であった。だが対戦相手の魔法は、雫の氷柱を微動だにさせる事が出来なかった。

「ほう、情報強化か」

各本部のモニターは、発動中の魔法解析してその種類と強度をサーモグラフ映像の様に色で表示するオプションを備えている。その機能が、今の攻防詳細を教えてくれた事で何で防いだのかが分かったのだ。情報強化というのは、対象物の現在状態を記録する情報体エイドスの一部または全部を、魔法式としてコピーし投射する事により、対象物の持つエイドスの可変性を抑制する対抗魔法。

属性の一部をコピーした情報強化は、その属性に対する魔法による改変を阻止する機能を持つ。モニター映像は、敵校選手が放った移動魔法が位置情報という属性を強化した雫の魔法によって、無効化された様子を映し出していた。つまり『そこにある』という属性強化した魔法で、無効化される所。

「これはまた、随分と正攻法だな」

「摩利の予想が的中したのかな?」

その会話を聞いていた鈴音が心の中ではこう言うだろう。

『別に貴女方の裏をかく目的で作戦を考えた訳ではないと思いますが・・・・』

とツッコみを入れたくなったが、観戦に夢中になっていた二人にとっては届かないツッコミだった。

「最も、北山さんのように干渉力が特に強い魔法師なら、情報強化より領域干渉を使うのが正攻法だと思うけど」

「昨日から見ている限り、北山はキャパシティも中々のものだ。エイドスの複写が苦になる、という事もないだろう。それに特定の系統を妨害するなら、領域干渉よりも情報強化の方が効率的だしな」

画面の中では、再び移動系魔法を仕掛けた相手校の攻撃が最初と同じように無効化されていく。そして攻撃魔法が不発となった瞬間の間隙、敵陣の氷柱をまるで弾丸を跳ね返すように三本粉々に砕け散った。

「・・・・今のは何だ?真由美、見えたか?」

摩利には見えなかったので、問い掛けると真由美は少し自信が無いかのようにして顔を向けた。

「モニター越しでは推測にしかならないけど・・・・」

ほぼリアルタイムで分析画像が表示されると言っても、その場で直に魔法を感じ取るのとは勝手が違う。

「多分、『共振破壊』の応用だと思うわ『それは違いますよ、七草会長さん』桜花さん?何が違うと言うのかしら?」

本部にいつの間にかいた桜花が説明したが、本来であれば間接的に仕掛けられた魔法は、対象物に魔法効果が表示されない為、周囲の映像から使われた魔法を推測しなければならない。

「本来ならば、周波数を無段階に変更する振動魔法を敵陣の地面に仕掛けて、(ピラー)と共鳴が生じた所で振動数を固定させてからの一気に出力を上げて共振状態を作り出したと言う会長ではありますが、それは違うと言っておきましょうか」

「それならば対抗魔法を避ける為に、(ピラー)に直接魔法を仕掛けるのではなく、地面を媒体に使ったという事になる。同じ地面媒体でも、力任せな花音の『地雷原』に比べて、高度に技巧的な術式となるし共鳴点を探るのに時間が掛かるから、情報強化でその時間を稼いでいる訳ならば納得できる」

「そうよね、振動数の操作はお手の物という感じだけど。桜花さんが言うには違う術式だと言う事かしら?」

「一瞬なので分からないと思いですが、あれは見えない盾によって跳ね返させた振動を弾丸のようにさせたのです。なので七草会長さんが言った『共振破壊』の応用だと見えますが、雫さんが使っているデバイスはただの汎用型ではありません。無意識にリフレクターと振動弾=サイオン波を物理的なのにしてから、どこを破壊するかによって、敵からは察知されないようにしてます」

「・・・・一瞬で補佐的な事が同時に起きているという事?そんな高等な技術は今まで見た事ないわ」

今回の補佐能力は、見えないリフレクターがどこで配置されるかによって、振動を弾丸のようにさせてから一気に破壊する方法だった。そしてそれを察知されないような補佐されている為、敵はいったいどこから攻撃しているのかが理解出来ていない。似ているもんだと、服部を最後に倒した電撃と共に放ったサイオン波の振動数を緻密に制御して合成波を作りだした技術である。モニターの中で展開されている技巧も、雫の個人的なテクニックではなく一真のオリジナルデバイスによる補佐と破壊方法を習っただけである。

「流石に雫はキチンと仕上げているというより、俺の教えた通りにしているようだな」

「あれはまるで白龍皇が使う反射の力ですね、それかリフレクタービットのようなものでしょうか」

「ま、雫も最初は疑ったがいざやってみたらホントに出来たという感じだったからな。アレを試したのは、アルビオンの力を持った事により見えない盾により振動を塊にさせてから、反射させて一気に破壊するという方法を編み出したからな」

既に敵陣は氷柱四本となっており、雫の氷柱は十二本全部健在である。モニターのバイオリズム曲線は、疲労感を感じさせない程だったので問題なかった。今回の補佐能力は、見えない盾を無意識に敵陣に向けさせて、雫本人は空気の塊を撃ち出すだけであとはデバイスの補佐によってである。疲労状態ではないので、魔法行使にも影響はないに等しい。少し寝不足だったエイミィのように体調を崩している様子ではなかったし、『情報強化』と『リフレクターによる空気弾』も練習以上にスムーズに発動しているようだ。

『共振破壊』は雫の母親が得意としていた魔法で、本来なら雫も一真と組む前から高校生にしては高いレベルで使いこなしていた。本来の『共振破壊』は、対象物に無段階で振動数を上げていく魔法を直接掛けて、固有振動数に一致した時点で『振動させる』という事象改変に対する抵抗が最も小さくなった時点で振動数を固定し、対象物を振動破壊するという二段階魔法だ。対象物に直接振動魔法を掛ける場合は、魔法式の干渉に対するエイドスの抵抗で感覚的に共鳴点を探る事が出来るが、間接的に仕掛ける場合は対象物の共振状態を観測しなければならない。それを観測機械に頼るのではなく、魔法工程として起動式に組み込んだのが本来のやり方だ。

だが実際使っている魔法は、白龍皇の力である反射を使った事とデバイスによって見えないリフレクターが空気弾で、一気に破壊する方法を魔法として起動式に書き換えたようなもんである。俺がよく使う反射で何か出来ないか?と考えた結果が今であるが、そもそもこれが出来るのは全てオリジナルデバイスの力によって生み出されている。これを最初に聞いた雫も、疑問で一杯だったがいざ使ってみると『共振破壊』よりも使いやすく、補佐能力のお陰で魔法力を消費は最小限に抑えられている。学校の地下での相当練習した甲斐があった事の熟練振りだ。

敵陣の氷柱が二~三本同時に砕くが、自陣の氷柱は一本倒されていた。それについては、相手の最後の悪あがきだと思っていた。相手選手は一瞬で二~三本倒されているので、今の攻撃に魔法力を全て注いでいる状態となっている。敗北は免れないと認め、一本も倒せずに終わる完封負けだけはしたくないと考えたのだろう。モニターではなく自分の眼で雫の背中を見るが、彼女が放つ想子(サイオン)波に乱れは一切ない。練習通りに自陣の氷柱を守り、敵陣の氷柱をリフレクタービットのように展開させてから破壊する。残り三本であったが、一瞬にして砕け散ったのだった。 
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