異世界系暗殺者
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矜持の時間(2016/05/16 一部修正)
前書き
色々と端折ってる所もありますが、完成しました。
【視点:樹】
土砂降りに雨が降る今日、律に続く転校生暗殺者がE組にやって来た。律からの前情報で人間でありながら、人間の域を超えた力を持っていることが判明していたが、まさか壁を突き破って教室に入ってくる変人だとは思わなかった。
しかも、その後の教室での遣り取りで転校生――堀部イトナは殺センセーの弟を自称し、殺センセーに決闘を申し込む始末。
まぁ、実弟かどうかはさて置き、堀部と殺センセーにいくつかの共通点はあった。例えば、昼休みに甘菓子ばかり食ってたり、表情が読みづらかったり、同じ巨乳系グラビア読み始めたりだな。
そういった共通点を目にする度、クラスの皆は放課後まで殺センセーと堀部を比較して見る様になった。そして、放課後。教室にある全ての机と椅子を使ってリングを作り、その中央では殺センセーと堀部が相対することになった。
「烏間。これって、机のリング?」
「ああ。こんな試合スタイルでの暗殺を仕掛ける奴は初めてだ」
「殺センセーも普通の暗殺には飽きてしまったでしょ?ここは1つルールを決めないかい?」
ビッチ先生と烏間先生が、堀部&ポチの暗殺方法について話し合っていると、ポチが今回の暗殺で1つのルールを提案してきた。そのルールとは、リングの外に足が着いた方がその場で死刑というものだ。
殺センセーはそのルールを了承すると同時に、自分からもルールを提示した。それは観客に危害を与えても負けというものだ。センセーらしいといえばセンセーらしいルールだけど。
殺センセーの提示したルールも堀部が了承し、ポチの合図と同時に堀部の暗殺が開始。堀部が殺センセーに放った初撃。それは意図もあっさりと殺センセーの触手を切断した。
普通なら切断された殺センセー触手に目が行くだろう。だが、E組の皆の殆どはその触手ではなく、別の場所に目が釘付けとなっていた。
そう。触手を斬り飛ばした堀部の部位―――頭頂部から生えている殺センセーと同種の6本の触手に目が釘付けとなり、それを理解した瞬間、E組の皆は改めて驚きを露わにした。
そして、殺センセーは殺センセーで顔に凄い青筋を立て、完全にブチ切れていた。あんなブチ切れた殺センセーを見るのは俺は初めてだ。
「………どこだ?どこでそれを手に入れたッ!?その触手を!!」
「君にそれを言う義理はないよ、殺センセー。だが、これでイトナと君が兄弟という話にも納得できただろ?両親も育ちも違う。だが、君達は紛れもない触手兄弟だ」
いや、ポチさんや。その言い方は何か卑猥だぞ。もしかして、ポチはそういう趣味があんのか?
「ふむ。怖い顔をしているねぇ、殺センセー。何か嫌なことでも思い出したのかな?」
ポチが殺センセーをそう挑発すると、殺センセーは切断された腕を再生させながら、口を開いた。
「……どうやら、あなたには聞かなければいけないことが多そうだ。ポチさん」
「聞けないよ。君はここで死ぬからね。あと私はシロだ」
この会話を最後に、殺センセーが圧倒的に不利な状況での暗殺試合が始まった。ポチは殺センセーの弱点を知り尽くしている様で、殺センセーの身体を硬直させる光線を照射し、堀部のサポートを始めたからだ。
………まぁ、外野からのサポートは禁止されていないからな。暗殺ルールに抵触はしていない。そのせいで殺センセーは序盤から奥の手の1つである脱皮まで使ってしまう始末だ。
その後、ポチの口から殺センセーの弱点が明かされていった。脱皮直後、再生直後は体力を消費し、自慢のスピードが落ちるといった弱点が……。
どんどんと追い込まれていく殺センセー。このまま放って置けば地球は救われる。だが、このE組の生徒で自分達以外に殺センセーが暗殺されることを納得できる者は多くなかった。
俺はポチが3度目の光線を照射し、堀部が触手で殺センセー先生を仕留めようとした瞬間、牙の試験型玉璽のホイールを高速回転させ、牙を放って堀部の触手を全て斬り裂いた。
「なっ!?」
「ポチさんよ。外野のあんたが堀部のサポートしてんだ。なら、同じ外野の俺が殺センセーのサポートをしても文句は無ぇよな?まぁ、文句があるならあるで、別に構わねぇけど。
そん時は外野の人間同士、場外乱闘で話を付けるだけだ。あんたの身体に道を刻んで、その悪趣味な白服を血で真っ赤に染めるって形のOHANASHIでな」
「……今、この場で奴を殺せば地球は救われる。それでも君は邪魔をするのかい?」
「あのさ、本来一中学生でしかない俺達が慈善活動でそこのタコを殺して、地球を救おうとしてるとか本当に思ってんの?ぶっちゃけ、賞金目当てに決まってんじゃん。
なのに、あんたみたいな不審人物とその飼い犬に賞金を横取りされるなんて、普通に考えて納得できる訳ないだろ?むしろ、妨害行動に出る奴が現れる方が自然な流れだと思うね。
あと、世界王者級の阿呆でもない限り、堀部の触手を見た時点であんたが人体実験を平然と行う狂科学者だってことは理解できる。
そんな奴に殺センセーの賞金を奪われるのを容認するとか、人体実験の片棒を担ぐのと同義じゃん。そんな屑野郎になるくらいなら、地球共々消滅した方がまだマシってもんだ」
って、俺とポチがそんな会話をしている間に、殺センセーは脱皮後の抜け殻で堀部を包んで、外に堀部を放り投げた。
「イッキ君。君がイトナ君の触手を斬り、ポチさんを抑えてくれていたお蔭で勝つことができました。……さて、イトナ君。君はリングの外に足を着いてしまいましたね。ルールに照らせば君は死刑となり、二度と先生を殺れませんねぇ」
殺センセーが嘗めきった顔で堀部にそう言うと、堀部は顔と触手に青筋を浮かべ、ブチ切れ出した。しかし、殺センセーの説教は続く。尤も、その説教も堀部の反応を見る限り、聞いているとは思えないが。
そして、堀部が再び殺センセーに襲い掛かろうとした瞬間。堀部のクビに何かが打ち込まれた。すぐに意識を失ったことから考えるに、麻酔弾の類だろう。ちなみに発射したのはポチだ。
「すまないね、殺センセー。この子の精神状態ではまだ登校できない様だ。転校初日で何ですが、暫く休学させてもらうことにするよ」
ポチは殺センセーにそう言うと、殺センセーが反論したもののポチはそれを気に留めることなく、堀部を担いで教室から立ち去った。
その後はクラス全員で机の位置を戻し、殺センセーの過去について詰問したが、それもはぐらかされた。しかし、それが結果的にはいい方向にクラスを導くことになる。
殺センセーの生徒として殺センセーを殺し、自分達の手で殺センセーの過去という答えを見つける、という団結力へと導くことに……。
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