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オズのベッツイ

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第十一幕その八

「もうベッドから起き上がれます」
「よかったわ、もうこれで大丈夫ね」
「はい、それと」
 マリューさんはここでアンと一緒にいるベッツイを確認しました。そしてそのベッツイに対して笑顔で言いました。
「ベッツイ王女がおられるということは」
「あっ、無理はしないで下さい」
「いえいえ、もうすっかり大丈夫ですよ」
 マリューさんはアンににこりと笑って答えました。
「この通り」
「それで、ですか」
「はい、もう今からです」
「ジャムを作られるんですね」
「黄金の林檎から作ったジャムですね」
「そうです、それをですね」
「今すぐに作られます」
 こうアンに答えるのでした。
「ですから」
「そのジャムを」
「今から作りますので」
「それでそのジャムを受け取って、ですね」
「ヘンリーさんとエムさんの結婚記念日にお二人にお渡し下さい」
「わかりました、じゃあお願いします」
 ベッツイはあらためてマリューさんにお願いしました、そしてです。
 マリューさんはすぐにベッドから起き上がってです、キッチンに立ってそこにあった黄金の林檎を手に取って。
 ジャムを作りました、そのジャムをガラスの瓶に入れるとそこには黄金の色をしたとても奇麗なジャムがありました。
 そのジャムを見てです、ナターシャは喉をごくりと鳴らしてからアンに尋ねました。
「このジャムがですね」
「ええ、見ていたわよね」
「はい、黄金の林檎のジャムですね」
「そうよ、マリューだけが作られるね」
「伝説のジャムですね」
「黄金の林檎は普通の林檎と違うの」
 このことからお話するアンでした。
「だからジャムを作るにもね」
「普通のジャムとは違うの」
 林檎のそれとは、というのです。
「他のお料理に使うにもね」
「パイやお茶にもですか」
「そう、黄金の林檎はまた別なのよ」
「ううん、それでなんですか」
「黄金の林檎を使ったお料理はマリューだけが作られるのよ」
「魔法みたいなものなんですね」
「そうね、お料理でもね」
 それでもとです、アンはナターシャに答えました。
「魔法に近いわね」
「その人だけが出来ることだから」
「そう、だからね」
 それで、とです。アンはナターシャにさらにお話するのでした。
「魔法かって言われるとね」
「それが、なんですね」
「そう、似ているわ」
 魔法ともとです。
「実際にね」
「何でも極めると魔法に近くなるのかな」
 ここで言ったのはカルロスでした。
「お料理にしてもサッカーにしても」
「サッカーも?」
「ペレさんなんて凄いから、昔の映像を観ると」
 カルロスは首を傾げさせつつナターシャにお話します。
「信じられない動きしてるから」
「だからそう言うのね」
「うん、お料理でもサッカーでもね」
「極めると魔法に近くなる」
「そうなるのかな」
「そうかも知れないわね」 
 アンがカルロスに答えました、今度は彼にです。
「何でもね」
「極めるとですね」
「魔法に近くなるのよ」
「職人芸というんでしょうか」
 恵理香がアンに言ってきました。 
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