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異世界系暗殺者

作者:沙羅双樹
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想いの時間(2016/05/16 一部修正)

 
前書き
(注)
今話はイッキと神崎さんの甘々話です。神崎さんがかなり大胆になっていると思いますので、その点をご了承ください。


追記

この話でストックが無くなりました。次話更新は来週の月曜日以降になる予定です。 

 



【視点:樹】



生徒会役員&小物ビッチへの報復が終了した後、陽斗が他校の女生徒と飯を食いに行ったということもあり、集まった面子はあっけなく解散することになった。

そして、元々一緒に下校していた俺と神崎は、改めて一緒に帰ることになった。というか、俺の家まで来て貰うことになった。その時の遣り取りは―――


「神崎、今から俺の家に来ないか?」
「え?」
「今日中に神崎とやっておきたいことがあるんだ」
「………ひゃ、ひゃい」


と、言った感じだ。ちなみにこの会話を聞いていた面子は全員が顔を赤らめ、友人に至っては絶望したかの様に膝を地面に突き、白目になっていた。

神崎に関しては、顔が皆よりも赤く呂律が回っていなかったな。俺はただ、神崎専用のA・Tを組む為に来て貰おうと思っただけだったんだが、それのどこに赤面したり、呂律が回らなくなる程の混乱を招く要素があったんだろうか?

ほら、個人用にA・Tを組む以上、調律(リンク・チューン)は必要不可欠だろう?俺の場合、手首や首筋から脈を計るだけで、調律(リンク・チューン)が可能なんだ。

しかも、今日は週1の短縮授業―――5限までの日だ。これを逃したら、調律(リンク・チューン)と組み上げが同時にできる日が無いんだよ。ほら、同時にやった方が手間は省けるだろ?

一応、不破だけでなく神崎にもA・T製作を頼まれた一件以降、他のクラスの奴らの分も作る機会があるかもしれんないと思って、あらゆる種類とサイズの靴は既に用意済みだったりするからな。調律(リンク・チューン)さえできれば、いつでも組めるんだ。

ちなみに不破のA・Tに関しては2日前に手首から脈を取らせて貰い、今朝には調律(リンク・チューン)も終えて完成していたりする。今日、学校に持って行くのを忘れたけどな。

で、このことを他の奴らと別れて少し経った頃に念の為神崎に説明すると、神崎は顔を赤くして俯いてしまった。恥ずかしがっている様にも見えたが、何故か落ち込んでいる様にも見えた。

恥ずかしいに関しては大凡の理解はできる。神崎は純情系っぽいし、脈を取る為でも異性に触れられるのは恥ずかしがりそうだ。しかし、落ち込みの方は理解できない。というか、そういった要素がどこにあった?

………まぁ、いいか。と、そうこうしている間に俺の家に着いた。あっ、今日は家政婦の磯貝さんが体調不良で休んでいて、俺だけしかいないけど神崎は大丈夫だろうか?


「神崎。今日、家政婦の磯貝さんが休みってこともあって、家に俺しかいないんだけど大丈夫か?」
「……う、うん」
「んじゃ、パーツ一式持ってくるから、リビングで?待って貰ってていいか?調律(リンク・チューン)も含めてA・T組むから」
調律(リンク・チューン)って――」


俺が調律(リンク・チューン)と言うと、神崎がまた湯気が出そうな程顔を赤らめた。あれ?この反応から察するに、もしかして神崎は調律(リンク・チューン)の意味を知ってる?


……あっ!そういえば、この世界にもエア●ギアは存在するんだった!!神崎も読んだことがあるなら、ヤバい!ここに帰って来るまで過程でも調律(リンク・チューン)の説明は省いてたから、いきなり調律(リンク・チューン)の話をしたら絶対に誤解される!!


「か、勘違いはすんなよ!俺、脈拍を計るだけでも調律(リンク・チューン)できっから、手首か首筋に手を添えさせてくれるだけでいいから!だから、その、なんだ―――」
「わ、分かったからそれ以上言わないで……」


俺と神崎はそこまで言うと、互いに俯いてしまった。いや、俺としては神崎と本当の意味での調律(リンク・チューン)をできたら嬉しいけど、相手の気持ちとか無視してできることでもないからな。


「……んじゃ、パーツ取って来るわ。靴のサイズだけ教えてくんない?」
「うん。サイズは―――」


俺は神崎から靴のサイズを聞くと、A・Tのパーツ一式を置いてある工作室へと向かった。……ってか、俺は何やってんだ!らしくねぇ!!

そんなことを考えながら、工作室でパーツ一式と工具一式を手にすると、俺は神崎の待つリビングへと戻った。


「悪い。待たせた」


俺はそういうと、ロングソファーに座っている神崎の隣に移動し、テーブルに工具一式とパーツ一式を置くと、腰を下ろした。


「んじゃ、調律(リンク・チューン)しながら組むから脈取らせて貰っていいか?」
「うん」


俺の質問に答えると、神崎は目を閉じて顔を上げてきた。……あれ?これってもしかして、首筋に手を添えていいってこと?


「………?イッキ君?」
「……あっ、悪ィ」
「んっ」


俺が一瞬固まってしまったことで神崎が声を掛けて来て、俺は慌てて神崎の首筋に手を添えた。ってか、神崎の肌白くて綺麗だ。あと、触れた時に漏れた声が色っぽい感じが………。

って、俺は一体何考えてんだ!?今は調律(リンク・チューン)に集中だ!いや、寧ろ調律(リンク・チューン)終了後も忘れろ!!……よし、落ち着いた。俺、落ち着いたよ。

そんな訳で、改めて俺は調律(リンク・チューン)に入った。指先から伝わってくる神崎の脈拍から、調律(リンク・チューン)に必要なリズムを読み取り、人差指でパーツ一式を置いているテーブルをトントンと叩く。

そして、瞬く間。正に一瞬の内に俺はA・Tを組み上げた。俺は神崎の首筋から手を離し、口を開いた。


「できたぞ、神崎」
「え、もう?」
「おう。目開けて、目の前見てみ」
「………本当だ」
玉璽(レガリア)みたいな特殊なパーツを組み込む場合は3秒くらい掛かるけど、普通のなら組み上げるのに1秒も掛からねぇからな。今回は初調律ってこともあって、組み上げるまでに少し時間が掛かけたけど」
「そうなんだ。………ありがとう、イッキ君」
「ん、どういたしまして」


こんな遣り取りをしながら、俺は神崎の為に組み上げたA・Tを持ち帰り易い様、自作のA・T取説と一緒に箱に詰め、神崎へと渡した。

その後、神崎を家まで送ろうとしたが、玄関で神崎に断られた。言っておくが、嫌われたとかじゃないからな。そこまでして貰うのは申し訳ない的な意味で断られただけだからな。で、その時にこんな遣り取りもあった。


「今日はありがとう、イッキ君」
「お礼ならさっき貰ったからもういいって」
「うん。それとね、イッキ君」
「ん?」
「私、イッキ君になら本当の調律(リンク・チューン)、されても良かったよ?」
「え?」
「………」
「………」
「あと、私のこと名前で呼んでくれたら嬉しいな」
「えっと、それって下の?」
「うん」
「………」
「……私、そろそろ帰らないと。イッキ君、また明日」
「……お、おう。また明日」


…………本当の調律(リンク・チューン)OKって、そういう意味だよな?……ヤバい。俺、明日からどんな顔して神崎と会えばいいんだ?


 
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