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地上の楽園

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4部分:第四章


第四章

「軍に金をかけ過ぎて」
「しかもあの言動だ」
「パレードばかりしている」
「おまけにあれは何だ?」
 またしてもだ。その国の異常な点が指摘された。
 その国はだ。何かあるとなのだ。
 マスゲームをするのだった。大衆を動員して。
 これ自体は共有主義にはよく見られる。しかしだった。
 領袖のだ。顔やそうしたものばかりが出て来るのだ。このこともだった。
「個人崇拝だな」
「そうとしか思えない」
「何かあるとあの領袖が出て来る」
「どの家にも写真を飾ってるんだって?」
「肖像画もな」
「息子のものもな」
 ここでも後継者が一緒になっていた。
「個人崇拝も共有主義には多いがな」
「あそこまで極端なのはないぞ」
「国のあちこちにでかい銅像まで建ててな」
「何処の教祖だ?」
 宗教に例えられる言葉まで出た。
「カルト教団の教祖か」
「そうした感じだな」
「あんな強烈な個人崇拝が見たことがない」
 このことへの疑念が出た。だがこのこともだ。
 新聞やテレビはだ。こう言って擁護するのだった。
「あれは国民が支持している証だよ」
「お父さん、お母さんを敬愛するようなものだよ」
「それよりも我が国なんて昔はもっと酷かったじゃないか」
 またしても的外れとしか思えない指摘が来た。
「戦前なんてな。皇帝崇拝が酷くて」
「無理強いされてただろ」
「それと比べたらあの国は健全だよ」
「国民が自分達から慕ってるんだから」
「そうだよ、健全だよ」
 こんなことを言う始末だった。だがここでもだ。
 現実は厳しく指摘する。その現実は。
 秘密警察に異常なまでの言論統制、そして弾圧と恐怖政治だった。
「一人が捕まったら一族も全部捕まるか」
「強制収容所に入ったら一生出られないか」
「餓死するか死ぬまで働かせられる」
「拷問も虐殺もある」
「全然民主主義じゃないぞ」
「完全な言論弾圧国家だ」
「共有主義の中でも一番酷いぞ」
 共有主義には弾圧が付き物だ。だが。
 その国の弾圧はだ。異常と言っていい程だった。
「領袖様の写真が載ってある新聞を弁当に包んだだけで罪になるのか」
「それは幾ら何でもな」
「おかしいなんてものじゃない」
「異常だぞ」
「少なくとも民主主義の国じゃない」
「共和国でもない」
 このことがはっきりとしてきた。
 そしてだった。経済状況もだ。
 外に漏れてきた。その実態は。
「食べるものがない」
「燃料がない」
「あっても殆んど軍に回される」
「そして軍用に備蓄される」
「援助をしても国民の口には入らない」
「経済は破綻しているのか」
 何とだ。高らかに宣伝されていたことがだ。全て嘘だったのだ。
「一日二食食えればいい方で」
「下層階級は何時死んでもおかしくない」
「ガスも水道も電気もない」
「インフラは壊滅しているんだな」
 出て来た話だ。そうした状況だった。つまりだ。
 
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