EFFECT
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魔法の世界 1-3
オリバンダーの店を出て、次に向かったのは動物店。
杖程にこだわりなんてモノは無いが、どうせ傍に置くなら自分の目で見て選びたいと思った。ただ、フクロウにする気は無い。特に理由は無いが、あえて挙げるなら“いつも傍らにいるわけではないから”...だろうか。
近くにあった動物ペット店に足を踏み入れる。
見たところ客は俺だけのようだ。店主の姿は無い。だが、奥で物音がする。...店主だろうか?
「失礼。誰かいるか」
やや強めに声を出す。
奥の物音が慌ただしく鳴り、同じように慌ただしい足音の後、この店の店主らしき男が目の前に立った。
ぽっちゃりした体つきに、無精髭。服のあちこちに動物の毛がくっついている。
「へぃ、いらっしゃやせい。すいやせんねぇ...ウチは、他の店とは違って爬虫類、両生類を専門としていやして。餌用のネズミならいるんでやすが、それ以外の猫やネズミを希望されてるんでやしたら......」
「いや、参考程度に廻らせてもらっているだけだ。店主の一押しの動物を見せてくれ」
「え、いや...へぇ。少々お待ちを...」
店主は再び奥へと引っ込んだ。すぐに、重そうな何かを引きずる音がしたかと思うと、離れた場所から「お客さぁん!」と呼び掛けられた。
「すいやせんが、こちらへ来て下せぇ! オレにはそこまで『コイツ』を連れて行けそうに無ぇです」
「...わかった」
体格の割りに力が無いのか、それとも、それ程までに重い動物なのか...。期待していないと言えば嘘になる。
俺は、店主の言う『コイツ』とやらが見たい一心で足早に動いた。
そこにあったのは、人の背丈程の大きな檻。中には不思議な色の鱗に覆われた大蛇がいた。思わず「おお...っ」と声が漏れる。
「見た目の美しさで選んだんでさぁ! でも、コイツ...餌を喰ってくれねぇんですよ」
「そりゃあ、そうだろうな。コイツは肉を糧としていない。コイツが喰うのは“魔力”だ」
自慢と不安でコロコロ表情を変える店主に、真相を告げる。
店主は驚いた様子で「大変だ」と顔を青くしていたが、怖がるような事は無い。これがフクロウや猫だったら大変だっただろうが、蛇だったから良かった。
蛇は大喰らいのイメージがあるが、餌の捕食は少なくとも月に一度。平均でも年間に二十回程しか捕食を行わない。それに、これだけ大きな蛇となると“拒食期間”というものが四ヶ月~五ヶ月程続く。
要は、この世界の魔力とは違う能力が強過ぎる俺にとって、絶好のパートナーだという事だ。
「店主、この蛇を貰いたい。...いくらだ?」
「へっ!? お客さん、コイツでいいんですかぃ?」
「ああ。それに、このままここにいたら他の魔法使い達の魔力を勝手に喰らってしまうぞ。まあ...無理に、とは言わないが」
「いやいやいやいや...! 本当は大金で売ろうと考えてたんでやすが、お客さんにならその半分......いや、三分の一の値段で結構だ!」
「......いいのか?」
この店主は、この蛇の価値が分かっていないらしい。本来ならば今の値段の十倍~二十倍でも安いだろうに。まあ、得したことに変わりはない。喜んでその値段を支払った。
さて、教材の殆どはお下がりでいいとして、あとは俺の趣味に使う物だな。鍋と、フラスコと、スポイトと、簡易発火装置。それらで調合する薬草や薬品の数々...。
それに、薬草学の書籍を数冊。
思わず胸を踊らせ、意気揚々と横丁の中を進むのだった。
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