ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第4章
停止教室のヴァンパイア
第90話 血の悪魔との再会です!
前書き
アニメが終わってしまった。
アニオリ展開多かったけど、結構面白かったな。
しかし、おっぱいドラゴンの歌が最終回EDになるとわ…。
「さてと、これとこれは買ったな」
放課後、俺は買い出し為に商店街を訪れていた。
「イッセーの奴、副部長に呼ばれてたが、一体なんなんだ?」
そんな事を気にしながら繁華街を歩いていると、人とぶつかってしまう!
「あ、すみません!」
慌てて謝ると、ぶつかってしまった男性がこちらを見て笑みを浮かべる。
「気にしなくて良い。こちらも不注意だった」
かなりフレンドリーにそう言われる。
金髪の端整な顔立ちの中年男性で、見たところ外人だが、観光か?
「観光ですか?」
「そんなところかな」
この駒王町に観光する様なところなんてあったか?
「それにしても、随分と日本語が達者ですね?」
「ハハハハ、日本に来るにあたって、勉強したのだよ。その甲斐もあって、単純な会話くらいならこの通りさ♪」
本当に達者なもんだ。
「おっと、すまない。そろそろ失敬させてもらうよ」
「ああ、はい。ぶつかってしまって、本当に申し訳ありませんでした」
「気にしなくて良いと言ったろう、Boy?私はNo problemだよ♪」
急に英語混じりで話し始めたな。
「Boy、君とは何か縁を感じるよ。どこかで再び出会う、そんな気がするよ。では、See you♪」
そう言い、早々に立ち去って行ってしまった。
「……変わった人だったな…」
なんとも言えない、奇妙な出会いだった。
「とりあえず、買い出しの続きをするか」
そう思い、歩きだそうと踵を返した。
「あ!」
「ん?あ」
突然、背後から声があがり、気になって振り返ると、一人の少女がいた。
今度は知人と出会った。
「おい、何やって…」
そこに男が一人現れ、その男も知人だった。
……まあ、そんなに親しい間でもないんだがな。
「……あれ以来だな、ライニー・ディランディ、神田ユウナ」
「チッ」
「そうだね、士騎明日夏君」
ライニー・ディランディと神田ユウナ、先日のエクスカリバー強奪事件の際にエクスカリバー奪還の為にやって来た五人の教会の戦士(エクソシスト)の内の二人。
ベルとの戦いで負傷して戦線離脱してからそれっきりだったが、元気そうだな。
「……行くぞ、ユウナ…」
「ちょ、ライ君!?」
ライニーが早々とこの場から立ち去ろうとし、神田はそれを慌てて制止しようとする。
……なんとなくだが、ライニーの様子が少し変に思えた。
「……なんで付いて来る?」
「たまたま、こっちに用があるだけだ」
「チッ!」
「……ううぅ…」
たまたま、進む方向が同じだと言う事を言うと、ライニーは鬱陶しそうに舌を鳴らし、そんな俺とライニーを見て気まずそうにしている神田。
ちなみに今回はローブ姿じゃなく、普通の服を着ていた。
それにしても、ライニーのこの他人を…っと言うか、悪魔と関わりのある存在に対する拒絶した態度は初めて会った時と変わりは無いが、どうにも、それ以外の理由で避けられている様な気がした。
「……ごめんね。元々ああだったけれど、あの事件以来、さらに拍車が掛かって誰に対してもああなの。なんか、荒れていると言うか、やさぐれてると言うか…?」
……なるほど、大体、理由を察せた。
確信は無いがおそらく、あれが原因なのだろう。
「あ、ごめん、ライ君。ちょっと…」
「チッ」
神田が俺達からそそくさと離れる。
おそらく、トイレだろう。
「……………」
ライニーは不機嫌そうにしてはいたが、ちゃんと神田の事を待っていた。
「……いつまでここにいる気だ?さっさと行けよ」
俺に向かって追い払うかの様に言う。
「随分、俺を避けるんだな?」
「は?当たり前だろうが。悪魔と関わって…」
「ベルの言った事を俺も聞いたからか?」
「……ッ…………」
俺の言葉を聞き、一瞬、目を見開くと、それっきり黙ってしまう。
「…………」
「……黙ってるって事は肯定って事で良いんだな?」
「…………」
……これもだんまりか。
ライニー・ディランディと神田ユウナ、二人は血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)と呼ばれる常人には無い身体能力を持つ存在だ。
まあ、その名前はどこぞのカルト集団が勝手に呼び始めた物だったが、広まっている所では広まっていた。
周りからはその呼び名と身体能力に恐怖し、ギャスパーみたいに忌み嫌われる存在になっていった。
ベルの言い分からそう言う理由で二人は孤児となり、とある孤児院を兼任していた教会にベルも含め他の同じ境遇の子供達と一緒に拾われたが、その孤児院をはぐれ悪魔が襲撃した。
結果、教会の戦士(エクソシスト)になった二人とはぐれになったベルを除いた子供達全員がそのはぐれ悪魔に皆殺しにされた。
だが、ベルの口からその事件の衝撃的な事実が告げられた。
俺は偶然、その場に居合わせた為に聞いてしまった。
その事件は仕組まれた物だった。
実行犯は事件が起こった教会のシスター達と一部の教会本部の人間。
血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)を忌み嫌っており、ベルの起こした行動に端を発し、はぐれ悪魔を引き入れ、子供達を殺させた。
本来ならライニーと神田も殺させる予定だったみたいだが、ライニーが右腕と右足を犠牲にはぐれ悪魔を討伐した。
っとまあ、ベルが言っていたのはこんな感じだ。
そして、こいつがショックを受けたのは、事件の黒幕に慕っていたシスター達が絡んでいた事なんだろう。
シスター達は表面上は受け入れている様に振る舞っていて、こいつも少なからず信用していたんだろう。
信じていた存在に裏切られる、想像も着かないが、おそらく、とてつもなくキツイ物なんだろう。
「……ベルが言っていた事はお前を動揺、絶望させる為に言ったデマカセって言う可能性もあるんじゃないのか?」
「……そう思えれば、どれだけ楽なんだろうな…?」
「……事実だって言うのか?」
「……俺自身、その結論は考えていた。だが、もし、そうだったらと考えたら、受け入れられなくてな。強引に押し込んで、それ以上は調べなかった。だが、ベルの言葉を聞いて、頭の中がその事でいっぱいになって、その事を否定する為に調べ始めちまった。詳細は省くが、まあ、結果は…」
「……事実…だったと」
「……つうか、なんでこんな事、他人のお前なんかに話してるんだろうな、俺…?」
……たぶん、いろいろ吐き出したかったんだろう。
そんな事実があったんじゃ、周りの教会関係者は信用できないだろうし、かと言って、唯一信用できる神田にこの事実は話せた物じゃない。
俺はまあ、この事実を知っていて、話した所で問題にならないと思ったんだろう。
「……別に俺達血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)が忌み嫌われるなんて当時に始まった事じゃねえし…慣れっこだ…」
「……慣れてたら、そんなにやさぐれちゃいねえだろ?」
「フン、やたらとお節介だな?それもお前の親友君の影響か?」
「かもしれないな」
なんとなく、放っておけなかったと思ってしまったからな。
「ライ君、お待たせ。あ、明日夏君、ライ君のお話し相手になってくれてたんだ!忙しい中、ありがとう!」
戻ってきた神田にそう言われ、礼を言われる。
「別に構わねえよ」
「もし良かったらなんだけど…」
「ん?」
「もう少しだけ、買い物が終わるまでで良いから、私達に付き合ってくれないかな?」
「おい!ユウナ!」
そう言うユウナの瞳には僅かだが、怯えの色が垣間見えた。
……………。
「まあ、急ぎの物でもないし、お前ら都合に合わせても構わないぞ」
「え!良いの!」
「おい!お前も何言って…」
「悪魔と関わりを持っている人間様が相手で良ければ」
「良いよ!仲良くできるのなら私は別に良いよ!ライ君も良いよね?」
「だから!勝手に…」
「それじゃあ、美味しい物巡りにレッツゴー♪」
「おい!振っておいてそれか!俺の話を聞け!おい!ユウ!!」
テンションを上げる神田に捲し立てるライニーの肩に手を置いて言う。
「相方の突拍子の無い行動に付き合ってやるのも悪くは無いと思うぜ?お前にとっても良い気分転換になるんじゃねえのか?」
「チッ!勝手にしろ!」
そう言って、俺の手を払い除けると、ズカズカと歩き始めてしまう。
「ちょっと!?ライ君、待ってよー!」
慌てた神田は俺の手を引っ張って、ライニーの跡を追い駆け出す。
「なるほど、イッセーが呼ばれたのはそう言う事でか」
「うん」
ユウナ(名前で呼んでくれと言われた為)からイッセーが熾天使(セラフ)と呼ばれる天使の組織のトップである大天使ミカエルからアスカロンと言う名の聖剣が渡される為みたいだ。
なんだって天使のトップがそんな事をするのかは分からないが。
ユウナも詳しくは知らないみたいだ。
そして、思った通り、ユウナとライニーは天使側のトップのお供として来ていた。
そして、観光と言う名目でこの駒王町の視察していたと。
「ん~♪これも美味し~♪」
……まあ、こいつはおもいっきり観光を楽しんでいるがな。
って言うか、さっきから、食ってばっかだな。
「……………」
ライニーはライニーで仏頂面で俺達の後ろで歩いていた。
「ほら、ライ君♪これも美味しいよ♪」
そんなライニーにさっき買って食べている物をライニーに分ける。
「…………」
ライニーは無言で受け取り、口に運んぶ。
その際、一瞬だが、表情が和らいだので、美味かったみたいだ。
ユウナもそれを認識したのか、笑顔でまた、買った物を食べ始める。
こう言う雰囲気のやり取りが二人の日常なのだろう。
それから、俺とユウナはお互いの事や相方の事を話した。
「あはは、兵藤一誠君って面白くて優しいんだね!なるほど、それは好きになっちゃうよね、その二人♪」
今話しているのはイッセーの事で、鶇と燕の件について話していた。
「ちょっと、兵藤一誠君とお話ししてみたくなっちゃったなぁ♪」
だとしたら、「美少女と仲良くできる!」なんて言って大歓迎だろうなあいつ。
「フン、当時と今じゃ全然変わってるかもしれないぜ?悪魔に転生した訳だからな」
ライニーが唐突にそう毒づく。
「もう!そう言う事言わないの!そもそも、傷付いた私達を助けてくれたのはこの町にいる悪魔さん達じゃない!」
「チッ!」
「舌を鳴らさないの!」
「喧しい、食い気エクソシスト!」
「ムッカー!」
だんだん、二人の言い争いが始まりかけていたと思うと同時になんとなく、二人の事をよく知らないのにも拘わらず、いつもの二人に戻ったんじゃないかと思った。
「おい、こんな所で言い争いを始めるな」
とは言え、周りの視線があるので、止める事にした。
そんなこんなで二人に町を案内しながら散策していたら…。
「よう、イッセー」
「ん?」
学園に向かおうとしているイッセーを見かけたので、声を掛けた。
「あ、明日夏…って、ええッ!?」
こっちを見たイッセーは俺と一緒にいる二人を見て、驚きの声をあげる。
「また会ったね、兵藤一誠君」
「フン」
「ライニーにユウナ!」
それから、途中までイッセーも同行する事になった。
ライニーはさらに不機嫌になってしまったが…。
ユウナはあっさりと打ち解けて、イッセーと呼ぶ様になっていた。
……ただ、時々、瞳に怯えの色が見えたが…。
「アルミヤさんも来てたんだな?」
「ああ、アスカロンに施す儀礼のサポートをしてたみたいだ」
「アルさんは聖剣に関して、造詣が深いからね」
自身が持つ神器(セイクリッド・ギア)や因子の事で試行錯誤している内に自然とそうなったのだろう。
いや、元々そう言う面での才能もあったんだろう。
「……ユウナ、もう良いだろ?……さっさと行くぞ…」
ライニーが低い声音で言う。
「……悪魔と短時間だろうと一緒にいるなんてごめんだ…」
ライニーがイッセーを見ながら言う。
その瞳には嫌悪や憎悪が入り混じっていた。
「……お前だって、教会の戦士(エクソシスト)、ましてやあれだけの暴言を吐いた男なんか一緒にいたくはないだろ?」
歪んだ笑顔でイッセーに言うライニー。
「いやまあ、教会の人間だし、悪魔が嫌いだろうから、あんな事も言うだろうし。俺はもう、気にしてないんだけど…」
「……フン、所詮は教会側の俺達と接触して、あわよくば俺達側の情報でも得ようて魂胆なんだろう?」
「いや!んな事考えてねえけど!?」
「こら!ライ君、そう言う事言わないの!」
「チッ!」
ライニーは俺達から距離を取って歩き出してしまった。
「……………」
「あいつ、やけに悪魔の事毛嫌いしてるな?いや、教会の人間だから当然なんだろうけど…」
「だが、あれはそれだけの理由ってだけじゃない気がするがな…」
「ああ。俺もそう思う。それに、あれって、敵として嫌ってるって言うより…」
「悪魔に対して懐疑的な見方があると言うか…」
「悪魔にはみんな裏があるって決めつけてる様な感じだよな?」
「ああ、そんな感じだな」
あの時、イッセーに言った言葉も悪魔を敵として嫌悪感から出たと言うよりも、悪魔には必ず裏があると言う懐疑的な物だった。
「……ライ君が悪魔に対してああ言う見方をするのは理由があるの」
『?』
「ライ君にはお姉さんがいたの」
「お姉さん?」
「あいつに姉がいたのか?」
「うん。名前はエイミー・ディランディ。親に捨てられたライ君にとって唯一の肉親。たった二人で幼いながらなんとか生き抜いていたみたい。でも、ある日、二人の前にとある上級悪魔が現れたの」
「え、上級悪魔と!?」
なるほど、なんとなく読めてきた。
「その上級悪魔は二人を自分の眷属悪魔にしようとしたの。でも、ライ君を見ての通り、二人はその申し出を断った。でも…」
「そいつは二人を無理矢理に眷属にしようとした、か?」
「……うん」
やっぱりそう言う事か。
「ちょ、ちょっと待てよ!?無理矢理に眷属にするって!?」
「割りと少なくないらしいぞ。強力な眷属を得る為に強引に転生させたり、見返りがあっても理不尽な物だったり、扱いが非道だったりなんてな。特に強力な神器(セイクリッド・ギア)所有者なんかがそうなってるみたいだ」
「な、なんだよそれ!?」
「上級悪魔全員が部長や会長みたいな訳じゃねえって事だ」
部長がそう言う類いの輩じゃなくて本当に良かったよ。
仮にもし、そうだったら、今頃どうなっていた事やら。
「詳しい内容は分からないんだけど、結果を言えば、ライ君はお姉さんが囮になってくれたお陰で逃げ切れたみたいなの。でも、ライ君のお姉さんはその為に逃げ切れず、そして無理矢理悪魔に転生させられた」
……おそらくそいつ、最初は人が良さそうな雰囲気で接触し、眷属化を断られた際には人が変わった様に醜く豹変したんだろう。
そんなの見てしまえば、悪魔に対して、ああ言う振る舞いになってもおかしくはないか。
いや、周りから血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)と忌み嫌われ、迫害を受けてたあいつには元々周りが信じられない状態だったんだろう。
眷属化を断ったのも、そう言う所もあったんだろう。
「そもそも、そいつはどうしてライニーとお姉さんの事を執拗に眷属にしようとしたんだよ?ライニーって、神器(セイクリッド・ギア)持ってるって訳じゃないし」
「……そ、それは…」
イッセーの疑問を聞き、また、瞳に怯えの色を浮かばせ、言葉を詰まらせてしまう。
……思った通り、ユウナが時々瞳に浮かばせる怯えの色は自分が血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)だと言う事が知られた時に忌み嫌われるのではないかと言う恐怖心から来る物だったか。
多分、ユウナ自身は無意識なんだろうが。
「血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)としての身体能力と体質が魅力的…いや、戦力的に使えると思ったんだろう」
言い淀むユウナの代わりに俺が答える。
「っ!?……明日夏君…知ってたの…?」
「お前の事もな。知ったのは、あの事件でお前達を助ける時だ」
「……………」
「な、なあ、血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)って、あのベルと同じの…?」
「っ!?……う…うん、そうだよ…。私とライ君、それからライ君のお姉さんも……ベル君と同じ血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)だよ…」
ベルと同じって所を強調しながら言うユウナは全身に怯えの色を浮かばせていた。
「……アハハ……私の事…嫌いになっちゃった…?」
ユウナは俯きがちにそう言う。
周りから忌み嫌われる存在であり、ましてや、俺達に対して散々傷付け、迷惑を掛けたベルと同じ存在だって言う事で自分達に良い想いは抱かない、そう考えたんだろう。
「え、なんでだよ?」
「え!?」
ユウナの言葉にイッセーは疑問を浮かべ、その様子を見てユウナは少し戸惑う。
「だ、だって、私は血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)なんだよ…!」
「いや、だからなんで血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)って事でお前を嫌いになるんだよ…?」
「ギャスパーみたいに周りからその身体能力と体質を忌み嫌われているからだよ」
「あ」
俺の言葉を聞いて、ユウナが言わんとしている事を理解した様だ。
「ライニー達が親に捨てられたのもそれが理由だ」
人間は基本的に異質な物は避けてしまう。
神楽がイッセーに正体を隠してたのも、それが理由だ。
「……それに、君達を散々傷付け、迷惑を掛けたベル君と同じ存在な訳だし…」
「いや、ちょっと待てよ!ベルの事はあいつが自分で勝手にやった事だろうが!朱乃さんみたいな事を言うなお前」
「ん?副部長がどうかしたのか?」
「ああ」
イッセーはアスカロンを受け取った後の副部長とのやり取りの事を話した。
やはりと言うか、当然と言うか、副部長は堕天使バラキエルの娘で、どうやら、堕天使の血が流れてるって事で今のユウナみたいな事を言ってきたらしい。
……まあ、堕天使に関してはレイナーレの件、コカビエルの件と堕天使に良い印象は無いだろうからな。
にしても、そんな事を言ったとなると、コカビエルの言葉に対するあの激情っぷりから察するに堕天使…と言うよりも父であるバラキエルに対して相当な嫌悪感を出してるみたいだな。
ま、それは今気にしてもしょうがねえか。
「で、お前はなんて答えたんだ?」
「堕天使の事は嫌いだけど、朱乃さんは朱乃さんであって、変わらず好きだって言ったよ」
それはまた、どストレートでお前らしい回答だな。
「んで、ユウナ、お前に関してだって、別に嫌いになんてならねえよ。血の悪魔の子供達(ブラッド・チルドレン)って言われてもよく知らねえからピンっと来ねえし、ベルと同じ存在だって言うけど、お前はお前だろ。立場上、敵同士だから仲良くできなくなるかもしれないけど、そんな事じゃ嫌いにはならないし。もし、仲良くできるんなら俺は仲良くしたいよ」
これまた、どストレートに言うなぁお前。
「……………」
イッセーの言葉にユウナは呆気に取られていた。
「そう言う事だ。俺はともかく、こいつにそんな不安は抱くだけ無駄だ」
そもそも、立場やら、境遇やら、周りの扱いなんかを気にして他人を見て、避ける様な奴だったら、鶇や燕、アーシアは今頃この町にはいないだろうからな。
「おい明日夏。俺はともかくって、その言い方だとなんか自分はそう言うのを気にする酷い奴だって言ってる様に聞こえるんだけど?」
「昔の俺はそう言う薄情者だったろうが?実際、鶇や燕の事も見て見ぬふりしてたからな」
「あれは家族の事を第一って事で必死で余裕が無かっただけだろうが」
「どっちにしろ、家族の事しか考えてねえって事で薄情者には変わりねえだろうが!」
「家族を大事にするのは当たり前だろうが!それに、その事に関して罪悪感も持っていただろう。だったら、そんなに自分を卑下する様な事無いだろ!それに、今はそんな事無いだろうが!」
「そりゃ今はそうだが。それから別に卑下なんかしてねえよ!事実を言っただけだ!」
それに関してだって、お前に影響された訳だからな。
って言うか、なんでこんなどうでもいい事で言い争ってんだ俺達?
別にああ言ったのは自分を卑下した訳じゃなく、俺には過去にそう言う部分があって、お前にはそう言うのが無いって感じで言っただけなんだが、どうもこいつには自分を卑下してる様に聞こえたみたいだな。
まあ、今でも鶇と燕に罪悪感は抱いてはいるが。
もっとも、二人は最初こそ気にしてはいたが、今はもう蟠りは無い。
「アハハハ!」
俺達のやり取りを見て、ユウナが笑い出す。
「あはは、二人にこんな不安を抱くのは意味の無い事みたいだね」
目元の涙を拭いながら、さっきまであった怯えを微塵も感じさせない満面の笑顔を作る。
「ありがとう。そう言ってくれるだけでも嬉しいよ!」
「安心しろ。こいつはさっきから本心しか言ってねえし、俺も特に気にはしてねえよ」
「ふふ♪」
「それより…」
俺はユウナの後方の方に視線を向ける。
「ん?ああぁっ!?ライ君ッ!!」
ライニーがユウナを置いてきぼりにしようとしていた。
まあ、あの様子から俺達の話を盗み聞いてたっぽいがな。
「ああもう、ライ君ったら!ごめん!ライ君を追いかけなきゃ!またね、イッ君、アス君♪」
『は?』
「……いっ…くん…?」
「……あすくん…?」
ユウナは俺達にライニーみたいにあだ名で呼びながら別れを告げるなり、一目散にライニーを追いかけていった。
「え~と、嵐みたいな娘だな…」
「自分を受け入れてくれる存在がいた事が相当嬉しかったんだろう」
「でもまあ、良い娘だよな。敵同士ってのがなんか残念だな…」
「そればっかりはな…」
「それにライニーのお姉さんの事もなんか放っとけねえな…」
「それも少し難しいな…。ただ…」
「ただ?」
「もし、この会談で和平とかが成立すれば別かもな」
「そう言えば、ミカエルさんも三大勢力が手を取り合えればなんて言ってたな。でも…」
「今まで戦争をしてきた仲だからな…。ま、多少は期待してても良いんじゃねえか」
「そうだな」
「んじゃ、俺は買い出しの続きをしてから、お前の方を手伝いに行く」
「ああ、悪いな」
「気にすんな」
「んじゃ、後で」
「ああ」
そうやって一通り話した後、俺達はそこで別れた。
後書き
なんかイッセーが目立って、明日夏があんまり目立たなくなる様になってしまう(汗)
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