吊り天井
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第二章
「その理由じゃな」
「それが必要ですな」
「何としても」
「さもなければです」
「例え上野介殿を退けようとも」
「諸藩や民からよく思われませぬ」
「幕府の信に関わります」
「信がなくてはな」
律儀者の秀忠は特にこのことを気にしていた。
「政は出来ぬ」
「無体はその場はよくともです」
「後々返ってきます」
「ですからここは」
「何としても」
理由が必要だった、それでだった。
彼等は正純についてあれこれとだ、調べていた。特に彼の居城である宇都宮城について調べてだった。
そのうえでだ、側近達は秀忠に言った。
「城を攻めましょう」
「勝手に改修していましたし」
「幕府に届け出ことなく」
「大したことはありませぬが」
「福島殿と同じことをしています」
「左様か。ではそれを衝いてじゃな」
「はい、他にもです」
さらにとだ、周りの者達は秀忠に言った。
「鉄砲を勝手に買ってもいます」
「そこにさらにあれこれと付けて」
「そして上野介殿に問い詰めてです」
「そのうえで」
「上野介殿を」
「退けましょう」
「そしてその際です」
側近達は秀忠にこうも言った。
「上様が仰るのです」
「余がか」
「はい、五万石程を」
それ位の石高を、というのだ。
「せめてもの謝礼の様にと」
「これまでのことへの功績へのじゃな」
「はい、そうした理由で出せば」
「それでじゃな」
「上野介殿は誇りの念が強く鼻っ柱も強いです」
その傲慢さを言うのだった。
「それ故に」
「ここでそれを出せばか」
「はい、五万石程のです」
役目を退かせるその時にというのだ。
「それを出せば」
「あの者は断るか」
「意地を張って」
謀略家であるがそれと共に傲慢で意地を張る彼の気質を見越してのことだった。
「そうしましょうぞ」
「そうか、五万石か」
「これが三万石程なら」
それ位の石高なら、というのだ。
「上野介殿は受けられるでしょう」
「そこを五万か」
「あえて多くです」
「十五万から五万じゃな」
「それでも結構なものですので」
これだけ出せばというのだ。
「かえってです」
「そこまでいらぬとなってか」
「三万ならとなりますが」
そこが違うというのだ。
「ですから」
「あえて多くか」
「そうしましょう」
「わかった、では五万出す」
秀忠も彼のその言葉に頷いて言った。
「そこでな」
「そうされて下さい、そして上野介殿が断られれば」
その時はもだ、彼は秀忠に言った。
「そこで怒られて下さい」
「そのふりをするのじゃな」
「そしてです」
「さらにじゃな」
「はい、断罪されればいいのです」
「閉門でも命じるか」
「実際は蟄居を」
つまり絶対に外に出さないというのだ、蟄居はそれを命じた者を部屋から出させない。目付をつけることもあり自由な行動を一切許さない入獄よりも厳しい処罰だ。
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