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絶対に勝つ

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第四章

「食事も変えていました」
「炭水化物中心にしたのね」
「はい、レーサーみたいに」
「そうよ、試合前になるとね」
 レーサーはとだ、部長も言う。二人共ハンナもまだジャージであり半ズボンではない。
「レーサーの人はね」
「食事を炭水化物に切り替えて」
「それで身体を軽くするのよ」
「僕もそれやってみました」
 こう部長に言うのだった。
「これで違いますよね」
「間違いなくね」
「それにです」
 ハンナは部長に確かな笑みを見せてこうも言った。
「お風呂も」
「入ったのね」
「はい、昨日も」
 そうしたというのだ。
「それで身体をほぐしました」
「完璧にしてきたのね」
「そうしてきました」
「それじゃあ」
「勝ちます」
 ハンナは部長に強い声で告げた。
「これから」
「頼むわね」
「わかりました」
 こう応えてだ、そのうえでだった。
 ハンナはスタートラインに向かった、そしてスタートが告げられてからだった。
 走った、その調子はこれまでよりもよかった。身体が普段より軽い。
 足の動きが滑らかでだ、柔らかい感じがした。それでだった。
 普段よりスピードが出た、そのまま進む中で。
 隣に豊かな波がかったブロンドを後ろで束ねた少女が来た、背はハンナより七センチ位高く湖の様な青い目を持っている。顔立ちは鼻が高く大人びている。前にハンナを破ったローザ=フォン=エルデスブルグである。シャツと半ズボンはハンナが赤であるのに対してローザは青だ。
 そのローザを見てだ、ハンナは。
 言葉を出さなかった、だが。
 心をきっとさせてだ、そしてだった。
 足を速めた、力を入れたが。
 その動きはこれまでとは違っていた、やはり軽やかだ。
 それで前を見てただひたすら走った、隣にローザがいて意識していないと言えば嘘だった。だがそれでも今は。
 ただひたすら走った、ローザを見るよりもまず走る方がずっといいことがわかっていからだ。それでただひたすら走った。
 そしてだ、ゴールが見えたところで。
 足をさらに速めた、そのまま風を切り。
 ゴールをした、そしてここで周りを見るとだった。
 ローザが後ろにいた、そこでハンナはわかった。
「勝った・・・・・・」
「やったわね」
 先にゴールで待っていた部長がハンナに言ってきた。
「今度は勝ったわね」
「はい、何とか」
「やっぱりね」
「お風呂に入った分だけですね」
「身体が軽かったから」 
 それでだった。
「速く走ることができました」
「そうね」
「何とかでしたけれど」
「少しの差だったわ」
 部長は力を出しきり疲れ切ったハンナの肩にジャージの上をかけて言った。
「けれどね」
「勝ったことはですね」
「確かよ」
 それは事実だというのだ。 
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