ハイスクールD×D 新訳 更新停止
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第4章
停止教室のヴァンパイア
第88話 後輩できました!
前書き
オリキャラ紹介をまとめました。
「ここに?」
「私と同じビショップが?」
俺達が現在いるのは、旧校舎にあるとある一室、開かずの間と呼ばれている場所の扉前にオカ研全員と兄貴、姉貴はいた。
この開かずの間、扉に「KEEEP OUT」と書かれたテープが幾重にも張り巡らされており、一見すると、ただの封鎖された部屋の様に見えるが、実際は厳重に封印が施されており、容易に入室、退室ができない状態だった。
そして、ここに部長のもう一人僧侶(ビショップ)がいる。
しかし、ここまで厳重に封印しなければならない程の危険な能力ってのは一体?
「深夜は封印の術も解けるから、旧校舎内限定で部屋を出ていいことになってるの。でも、中にいる子自身はそれを拒否してる」
「要するに引き篭もり?」
「でもこの子が一番の稼ぎ頭なんですのよ」
「マジですか!?」
「パソコンを介して、特殊な契約を行っているんだ」
ほ~、そう言う契約法もあるんだな。
「しかし、封印されるほどの危険な力とは、どんな物なんだ?」
「俺も同じ事を思ったよ」
部長が扉に手をかざすと、魔方陣が浮かび、封印が解除されていく。
「……封印が解けます」
塔城がそう発すると同時に封印が完全に解かれた。
「扉を開けるわ」
そう言い、部長はドアノブを掴む。
『………』
中にいる者の事を知らなかった俺やイッセー達がイキを飲む中、扉が開かれる。
「キャアァァァァァァァッ!?!?」
『っ!?』
その後、悲鳴が響き渡る!?
「な、なんだぁッ!?」
俺やイッセー達は突然の悲鳴に驚きを隠せなかった。
そんな俺達とは違い、部長達は嘆息するなり、部屋に入っていき、俺達は慌てて跡をを追う。
「へぇ、かわいらしい趣味だね」
「さっきの悲鳴から、こりゃ女の子かな?」
部屋の内装を見て、兄貴と姉貴がそう漏らす。
確かに、かわいらしく飾られた、女の子らしい内装の部屋だった。
……静かに鎮座している棺桶を除けばな。
棺桶って事は、もしかして部長のもう一人の僧侶(ビショップ)の転生前の種族って…。
「ごきげんよう。元気そうで良かったわ」
「な、何事なんですかぁ!?」
部長の挨拶に狼狽気味に答える声が棺桶から聞こえてきた。
「封印が解けたのですよ」
副部長が棺桶に近付き、蓋を開く。
「さあ、私達と一緒に…」
「嫌ですぅぅぅッ!?ここが良いですぅぅぅッ!?外怖いぃぃぃッ!?」
棺桶の中にいたのは、 小柄で金髪、人形のように端正な顔立ちをした者がいた。
「おお!女の子!しかも 、アーシアに続く金髪美少女!僧侶(ビショップ)は金髪尽くしって事っスかぁ!」
美少女の存在に歓喜するイッセー。
「フフ」
「ッて!?なんだよ、木場!」
そんなイッセーの様子を見て、笑う木場がいた?
「この子は男の子よ」
「へ?」
「は?」
「え?」
「え?」
「ほえ?」
「はい?」
「ん?」
「ん?」
部長の言葉を聞いて、素っ頓狂な声をあげる俺達。
「……え?部長、今なんと…?」
「見た目は女の子なのだけれど、この子は紛れもなく、男の子」
『ええぇッ!?』
「あらら」
「わお」
部長が告げた事実に驚きの声をあげる俺達。
「うふふ、女装の趣味があるのですわ」
そりゃまた、ユニークな趣味を。
「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属、もう一人の僧侶(ビショップ)。一応、駒王学園の一年生で、転生前は人間と吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフよ」
「ヴァ、ヴァンパイア…?」
「吸血鬼(ヴァンパイア)って、こいつが!?」
「まあ、棺桶がある時点で予想できてたが」
流石に人間とのハーフである事…と女装の趣味は予想外だが。
「って言うか、女装ってマジか!?こんな残酷な話があって良いものかァァッ!?」
女装だった事にショックを受けたイッセーが激しく嘆いていた。
「でも、よく似合ってますよ」
「うんうん、かなり完成度高いぞ」
「だから、その分、ショックがでかいんだって!?引き篭ってて、一体誰に見せるってんだぁ!!」
「だ、だ、だ、だってぇ、この格好の方がかわいいもん…」
「もんとか言うなぁ!?もんとかぁぁッ!?……うぅ…ぅ…一瞬だが、お前とアーシアの金髪ダブル美少女僧侶(ビショップ)を夢見たんだぞぉ…」
「……人の夢と書いて儚い」
これまた、キツい一言だなぁ、塔城。
「ギャスパー、お願いだから、外に出ましょう?ね?」
「嫌ですぅぅぅ!?」
部長が外に出る様に促すが、当の本人はこのありさまだ。
「ほうら、部長が言ってるんだからさ…」
そう言いながら、ギャスパーの手を取った瞬間…。
「ッ!?」
……………。
ん?何だ、今、妙な感覚が?
「ん?あれ?」
いつの間にか、ギャスパーが目の前から消えており…。
「ううぅ…怒らないで!怒らないで!ぶたないでくださいぃぃぃぃ!?」
部屋の隅でちじこまっていた。
「おかしいです。今、一瞬…?」
「何かされたのは確かだね」
どうやら、みんなも妙な感覚を感じたみたいだな。
「なるほど、時間停止みたいだね」
『時間停止!?』
兄貴が口にした言葉に俺とイッセーの驚きの声が見事にハモった。
あの後、嫌がるギャスパーをどうにか連れて、部室に来る事ができた。
「停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)と呼ばれる、その子の持つ神器(セイクリッド・ギア)ですわ」
「……興奮すると、視界に写した物を一定時間停止させる事ができるんです」
「ギャスパー君はこの力を制御できない為、魔王サーゼクス様の命であの部屋に封じられていたのですわ」
「その上、無意識の内に能力が高まっていくみたいで、禁手(バランス・ブレイカー)に至る可能性もあるのよ」
「バ、バランス・ブレイカー…」
「なるほどねぇ。確かに、危険な能力って言われても納得だし。そんな状態じゃ、封印せれても仕方無いか」
姉貴の言う通り、能力が能力だけに、扱いこなせなければ、さっきみたいに味方を停止させたりする上に、そんな状態で力が高まっているのなら、封印もやむ無しだった訳だ。
「って、あれ?」
「あいつ、どこ行った?」
いつの間にかギャスパーがいなくなっていた?
「あそこ」
『ん?』
「ううぅ……僕の話なんか、してほしくないのにぃぃぃ……目立ちたくないですぅぅぅ…!?」
兄貴が指差す方を見ると、一個の段ボールがあり、中からギャスパーの声が聞こえてきた。
「……いつの間に…?」
「……ってか、なぜ、段ボールに…?」
部室に連れてくる時も隙を見つけたら、即座に隠れたりはしてはいたが…。
「また、こんな所に隠れやがって」
そうぼやきながら、イッセーは軽く段ボールを蹴る。
「ふうぇぇぇぇん!?僕はこの箱の中で十分です!箱入り息子って事で許してくださぁぁぁい!?」
「……なんだそりゃ…?」
「……文字通りだな…」
これは、神器(セイクリッド・ギア)よりも先に、この引き篭り症をどうにかしないといけないんじゃないのか?
「部長、そろそろお時間です」
「そうね。私と朱乃はこれからトップ会談の打ち合わせに行かなくてはならないの。祐斗」
「はい、部長」
「お兄様が貴方の禁手(バランス・ブレイカー)について詳しく知りたいらしいの。一緒に来てちょうだい」
「分かりました」
「その間だけでも、貴方達にギャスパーの教育係をお願いできるかしら」
「教育係?あ、はい、分かりました」
「お願いね、イッセー」
そう言い、副部長と木場を連れて、部長は転移していった。
「とりあえず、取り掛かるか?」
俺がそう言うとゼノヴィアが勢いよく立ち上がる。
「よし!ここは私に任せろ!バッチリ、鍛えてやる!」
胸を叩き、ギャスパーが入っている段ボールに紐を括り付けて引っ張って行ってしまう。
「……大丈夫なのか?」
「……さあ?」
少し不安を感じる俺とイッセーであった。
「いぃぃやぁぁぁぁッ!?!?」
「ほうら、走れ!モタモタしてると、このデュランダルの餌食になるぞ!」
「うわぁぁぁぁッ!?!?」
「ほらほらぁ!走れ走れぇ!」
「いやぁぁぁぁッ!?!?」
「おらおらぁ!」
ゼノヴィアの指導で始まったのは、デュランダルを持ってギャスパーを追い掛け回すと言う物だった。
「……吸血鬼(ヴァンパイア)狩りにしか見えねぇ…」
「……ああ…」
ちなみにギャスパーはデイウォーカーと呼ばれる、太陽の下で活動できる吸血鬼(ヴァンパイア)らしい。
なので、ゼノヴィアが問答無用で外に連れ出していた。
「ヒック……どうして、こんな事をするんですかぁぁぁ?」
「健全な魂は健全な肉体に宿る。まずは体力を鍛えるのが一番だ!ウフフ!」
涙目で尋ねるギャスパーにゼノヴィアは意気揚々と答えた。
「……その言い分には同感だが…」
「……ゼノヴィア、なんか楽しそうだな」
「え、ええ。ああ言うノリがお好きみたいですね」
「結構、脳筋?」
ノリノリなゼノヴィアに呆気に取られてる中、姉貴がズバッと言う。
「もうダメですぅ!一歩も動けませ~ん!」
「……ギャー君」
「?」
泣き言を言うギャスパーに塔城が近寄る。
「……これを食べればすぐに元気に」
「いやぁぁぁッ!?ニンニク嫌いぃぃぃッ!?」
塔城が手に持っていたニンニクを見た瞬間、ギャスパーは血の気が引いて顔が青ざめる。
ご存知、吸血鬼(ヴァンパイア)にとってニンニクは数多くある苦手な物の一つだ。
当然、ギャスパーは逃げ出す。
「……好き嫌いはダメだよギャー君」
「うわぁぁぁん!?」
「……好き嫌いはダメだよギャー君」
「いやぁぁぁぁッ!?小猫ちゃんが僕をイジメるぅぅぅッ!?!?」
「……ギャーくーん」
そんなギャスパーをゼノヴィア同様執拗に追い掛ける塔城。
「……小猫ちゃんもちょっと楽しそうです」
「……小猫ちゃんが誰かを弄ってるなんて…」
「ほらほら、イジメないイジメない」
そんな塔城を制止し、ギャスパーに近寄る姉貴。
「ほら、ギャー坊、これでも飲みな」
「あ、ありがとうございます…」
姉貴はミネラルウォーターのペットボトルをギャスパーに渡そうとする。
そして、ギャスパーがそれを受け取ろうとした瞬間にラベルに書かれているキャッチフレーズと製品名を口にする。
「心と体の邪気を祓ってリフレッシュ!ホーリーウォーター♪」
「聖水ぃぃぃッ!?いやぁぁぁッ!?浄化されちゃうぅぅぅッ!?」
再び逃げ出すギャスパーとニンニクを手にする塔城と一緒になって追い掛ける姉貴。
「……あれって、ああ言うキャッチフレーズと製品名のただのミネラルウォーターだよな…?」
「……今のあいつには、そんな事に気付く余裕なんて無いんだろ」
「お~!やってるな、オカ研!」
っと、そこへ、匙がやって来た。
「おお、匙」
「よお」
「解禁された引き篭り眷属がいると聞いて、ちょっと見に来たぜ」
「それはご苦労な事だ」
「んで?おお!金髪美少女かよ!」
『女装(野郎)だがな(だけどね)』
俺とイッセーが告げた事実を聞いて、匙はショックを受け、膝を着いて、四つん這いになる。
「……マジか?こんな残酷な話があって良いものか…」
あの時のイッセーと同じセリフを吐く匙。
つくづく、こいつら、似た者同士だな。
「分かる!分かるぞ、匙!」
「へえ~、魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してるって訳か♪」
『っ!?』
突然の第三者の声を聞き、慌ててそちらの方を見ると、前髪が金髪の黒髪の男性がおり、その男性を見た瞬間、イッセー、千秋、神楽の三人が警戒心を露にする。。
この三人の反応から、俺はこいつが誰だかを直感した。
「お知り合いですか?」
「やあ、悪魔君…いや、赤龍帝、元気そうだな♪」
「アザゼル!!」
『ッ!』
イッセーが男性の名前を言った瞬間、俺達も警戒心を露にする!
「ひょ、兵藤、アザゼルって…?」
「マジだよ!実際、こいつとは何回も接触している!」
「くっ!」
臨戦態勢になろうとしている俺達を見ても、男性…アザゼルは飄々とした態度を崩さない。
「お前らが束になっても勝負にすらならんぞ。いくら下級悪魔だってそのくらい分かるだろ。っと、悪魔じゃない奴もいたなぁ♪例外は穏和な態度を取ってるグラサンの兄さんぐらいだ」
この場でサングラスを掛けているのは兄貴だけ。
兄貴なら自分に対抗し得ると判断しているのか?兄貴の実力はそれ程だって言うのか?
「買いかぶりじゃないですか?僕は若輩の弱っちい人間ですよ?」
当の兄貴は姉貴と一緒に俺達と違って、普段の態度を崩していなかった。
「抜かせ。コカビエルを相手に本気を出さずに手玉に取っていた奴が何言ってやがる。そう言う事を言う奴が実力があって、めんどくせぇ人間なんだよ」
アザゼルの言葉に笑顔で答える兄貴を嘆息するアザゼル。
「何しに来た!」
「いきなりだなぁ、赤龍帝。散歩がてらちょっと見学だ。聖魔剣使いはいるか?」
「木場ならいない!それにあんたが木場を狙ってるってなら!」
『Boost!』
イッセーの想いに応えるかの様にイッセーの籠手から倍加の音声がなる。
「ったく!相変わらず威勢だけは良い男だなぁ。そうか、聖魔剣使いはいないのかよ。つまんねえな」
アザゼルが俺の方を向く。
「お前さん、極限幻龍(マキシマム・ファントム・ドラゴン)ドレイクの神器(セイクリッド・ギア)の持ち主だよな?」
「だったらなんだよ!」
「いや。過去の所有者はみんな、宿っているドレイクに身体を奪われていたもんだからな。ちょいと、気になってな」
「ただのこいつの気紛れだ!」
「そうかい。んで、そこの吸血鬼(ヴァンパイア)」
「っ!?」
いつの間にか木の陰に隠れていたギャスパーはアザゼルに呼ばれ、ビクつきながら顔を覗かせて、アザゼルを見る。
「停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)。このタイプの神器(セイクリッド・ギア)は持ち主のキャパシティが足りないと危険極まりない」
今度は匙の方を見るアザゼル。
「それは黒い龍脈(アブソープション・ライン)だな?」
「え?」
「訓練なら、そいつを吸血鬼(ヴァンパイア)に接続して、余分なパワーを吸い取りつつ、発動させると良い。暴走も少なくて済む」
「力を……吸い取る…?」
匙が自分の神器(セイクリッド・ギア)見て、呟く。
「なんだ、知らなかったのか?そいつは五大龍王の一角、黒蛇の龍王(プリズン・ドラゴン)ブリトラの力を宿していてな。物体に接触し、その力を散らせる能力がある。短時間なら、他の者に接続させる事も可能だ」
「こいつにそんな力が…?」
「ああ、そうだ。もっと、てっとり早い方法があるぞ。赤龍帝の血を飲む事だ」
「え?それって…」
「イッセーの血を飲ませるって事か?」
「確かに、吸血鬼(ヴァンパイア)なら血を飲むのが一番だろうね」
「そう言う事だ。ま、後は自分達でやってみろ。じゃな」
言うだけ言って、アザゼルはこの場から去ろうとする。
「待てよ!」
「?」
「なんで、正体を隠して、俺に接触してきた?」
「それはな…」
立ち止まったアザゼルは顔だけこちらに向けて答える。
「俺の趣味だ♪」
一度、フッと笑うと、今度こそ、この場から去っていった。
「あれが堕天使の総督ねぇ。なんとも、掴めない男だねぇ」
アザゼルが去った後も、姉貴や兄貴以外は口を開けなかった。
「行くぞぉッ!!」
「は、はいぃぃ…」
あの後、アザゼルに言われた事を実践する為、体育館に移動した。
ギャスパーに匙のラインを繋げて力を吸い取り、イッセーが投げたボールだけを停止させると言う特訓法を行う事になった。
「行くぞ、ギャスパー!」
「ッ!?」
………………。
また、あの妙な感じを感じて、目の前からギャスパーはいなくなっていた。
「おお!?消えた!?」
「ボールだけを停めるはずが、俺達まで停められちゃ、使いもんになんねえなぁ」
「……また、逃げ出そうとしていました」
「ごめんなさいぃぃぃ…」
逃げ出そうとしていたギャスパーを塔城が引きずってくる。
「……これは訓練その物が難しいな」
「能力が能力ですしねぇ」
「……力が強過ぎるのかなぁ?匙、もう少し、吸い取ってくれないか?」
「ほい来た」
「悪いな。付き合わせちゃって」
「気にすんな。俺も自分の新しい力を覚えられたしな」
匙自身も十分な収穫があった訳だ。
「試しにお前の血を吸わせてみるか?」
「ああ、そう言えば、そんな事も言ってたな、アザゼルの奴」
「ひぃぃぃッ!? 血嫌いですぅぅぅッ!?」
「いや、お前、吸血鬼(ヴァンパイア)だろ?」
「血吸うから吸血鬼(ヴァンパイア)なんだろうが!」
「血嫌いですぅぅぅッ!?生臭いのダメぇぇぇッ!?」
「……へたれ吸血鬼(ヴァンパイア)」
「うわぁぁぁん!?小猫ちゃんがイジメるぅぅぅッ!?」
塔城の一言でとうとう、泣き出してしまった。
「……これは困った物だなぁ」
「彼の場合、神器(セイクリッド・ギア)よりも、あの性格の方が問題かもね」
兄貴の言う通り、こいつの場合は、あの弱気な性格の方が問題がある気がするな。
まあ、なにかかしらの理由はあるかもしれないが。
「ギャスパー、出てきてちょうだい?無理に出した私も悪かったわ」
「ふぇぇぇぇんッ!?」
あの後、ギャスパーが自分のいた部屋に閉じ篭ってしまい、俺達が何を言っても聞いてくれない為、急遽、会談の打ち合わせを控えていた部長にお願いして来てもらったんだけど、それでも無理だった。
「……すみません、部長。大事な打ち合わせの最中、呼び出しちゃって…」
「いいえ、貴方達はこの子の為に頑張ってくれたのだし」
「ふぇぇぇぇんッ!?外怖ぁぁいぃぃぃッ!?」
「……これが逆効果でぇ…」
「ギャスパーがこんな風になってしまったのは、事情があるの」
「事情?」
そして、部長からギャスパーの出生の話を聞いた。
ギャスパーの父親は名門の吸血鬼(ヴァンパイア)で、ギャスパーはその父親と人間の母親の間に産まれたそうだ。
でも、ギャスパーに待っていたのは家族からの蔑みだった。
どうやら、吸血鬼(ヴァンパイア)は悪魔以上に血統とかを重要視してるみたいで、人間とのハーフであるギャスパーは差別的な扱いを受けたみたいで、人間からはヴァンパイアである事と、何より制御できない時間を停める能力を忌み嫌われたらしい。
確かに、時間を停められた時、若干の違和感は感じたけど、何をされたのか分からず、時間が停められていたと言う感覚すら無かった。
……あれは少し不気味だった。
時間が停められている間は何をされても気付かない訳で、その間に何をされたのか気になってしまって、怖くなってしまう。
ギャスパーの周りにいたみんなはその恐怖からギャスパーを避けてしまったのだろう。
……ふと、ギャスパーもアーシアと同じなんだと思ってしまった。
「ぼ、僕、こんな力いらない!みんな、停まっちゃうんだ!だから、みんな、怖がる!嫌がる!僕だってイヤだ!?仲間の、友達の停まった顔を見るのはもうイヤだぁッ!?」
その後のギャスパーは路頭に迷っていたところを部長に出会い、眷属になったみたいだ。
「ふぇぇぇぇん…」
「……これでは、王(キング)失格ね…」
ギャスパーの泣き声を聞いて沈み込む部長が見ていられなくなり、ふと、初めて会った頃の千秋の事も思いだし、決心する!
「部長、後は俺に任せてください!なんとかしてみせます!」
「……イッセー」
「大丈夫です!せっかくできた、男子の後輩なんですから、俺がなんとかしてみます!」
俺の言葉を聞いた部長は微笑む。
「イッセー、貴方に任せるわ」
「はい!部長!」
部長はギャスパーのいる部屋を見つめながら、転移していった。
俺は扉の前にドカッと座る。
「ギャスパー、お前が出てくるまで、俺はここを一歩も動かないからな!」
「ああ。ああ。分かった。後で、差し入れでも持って行ってやる。ああ。また後でな」
ピッ。
「イッセー兄、なんて?」
「部屋の前から一歩も動かないとさ」
「ギャスパーが出てくるまで、根比べと言う訳か」
「そう言う事だ」
まあ、あの手合いはああだこうだ言って諭すよりも、そうやって真っ正面からぶつかっていく方が良いかもな。
「イッセーさん、お一人に任せてしまうのも、申し訳ないです…」
ふと、アーシアが申し訳なさそうな顔をしながら言う。
「……私もそう思います」
「っと言っても、私達にできる事はあるのかな?」
「う~ん…」
「こうなってくると、真っ先にそう言う行動をするイッセーがスゴいと思うわ」
燕の言葉にみんな頷く。
「……イッセー先輩はとても仲間想いです」
「それはよく分かるよ。私がこうして一緒にいるのも、元はと言えば、イッセーが木場を救おうとした事から始まっているんだからね」
「イッセー君はと~っても優しいからね~」
まあ、ガキの頃からああだからな。
……時々、無茶するがな。
鶇と燕へのイジメの時、アーシアを巡っての堕天使騒動の時、部長の婚約騒動の時は無茶したもんだ。
挙げ句の果てには自分の腕を捨てるも同然の行為をする始末だからな。
「……イッセー先輩は良い人です」
お、塔城が珍しくイッセーを褒めてるな。
「……エッチなところ以外は…」
ああ、やっぱり、毒は吐くんだな。
「あれに関しては、もう、どうしようも無い領域だろうからな。ぶっちゃけ、俺はどうこうしようとする事は諦めてる」
「まあ、男なんだから、当然なところなんじゃないの?中途半端に隠してる奴に比べれば、全然マシだと私は思うけど?」
姉貴は単にイッセーのあれを気にしてないだけだと思うがな。
「むしろ、ここにいる二名の男共の女への興味の無さって言ったら。イッセーの爪垢煎じて、飲ませたいくらいだ」
いきなり、俺と兄貴の事を見ながら、そう言う姉貴。
「……別に全く興味が無いなんて事は無いぞ」
「僕も」
俺達の言葉を姉貴はバッサリ切る。
「いーや、あんたら、自分で思ってる程、興味全然、持ってない持ってない」
……兄貴はともかく、俺にまでずいぶんな言いようだな…。
「……私も二人に彼女できるのか心配」
千秋にまで、そんな事言われてしまう!?
「お前はイッセーとの事を考えてろ。姉貴だって、男っ気無いだろうが。どうなんだよ、そこんところ?」
「私?私はまあ、あんたらみたいに興味無い訳じゃないから、その気になれば、いつだってできるよーだ」
「じゃあさ、イッセー君はどうかな?」
「ちょ、冬夜兄!?」
「イッセー?」
ああ、俺も少し聞きたいなとは思っていた。
周りの女性陣も聞き耳立てていた。
「イッセーはまあ、かわいい弟分かな」
「でも、そう言う存在がいつの間にかなんて事もあるじゃん」
「まあ、彼氏にするのは、別にイヤじゃないかな。むしろ、良いかな。ま、真剣(マジ)で恋してる娘達がいるから、そんな適当な理由で付き合ったりしないわよ」
姉貴は千秋や聞き耳を立てていた女性陣に向けて、悪戯っ子みたいな笑顔で言う。
「っとまあ、いつの間にかイッセーの事、冬夜と明日夏の恋愛事、私の恋愛事の話って逸れてきたけど」
「あ、ギャー君の事」
『あ』
神楽の言葉で、いつの間にか、話が大分逸れていた事に気付く。
ギャスパーの泣き止み、しばらく時間を置くこと数時間、俺はギャスパーに話し掛ける。
「……なあ、怖いか?神器(セイクリッド・ギア)と俺達が?」
「………」
無言で、聞いてるかどうか分からないが、構わず続ける。
「俺の中にもさ、最強と呼ばれるドラゴンが宿ってんだ。正直、怖いよ。この力を使う度に体のどっかが、違う何かになっていく感じがするんだ。けど、俺は恐れず、前に進もうと思う!」
「…………も、もしかしたら、その力で大切な何かを失うかもしれないんですよ?どうして、そこまで、真っ直ぐに生きられるんですか?」
お、返してきた。
聞いてくれているみたいだな。
「俺はバカだから、難しい事は分かんねえよ。……ただ…」
「……ただ?」
「……部長の涙は二度と見たくねえ」
フェニックスとのレーティングゲームの時の事を思い出す。
「前にレーティングゲームをやった時さ、仲間が次々と倒れていって、最後は俺だけになって、でも、ボコボコにやられて。ほとんど覚えてねえけど、あの時の部長の涙だけは今でもそのまま心に焼き付いてる。あれはキッツいんだ…」
ギィ。
鈍い音を立てて、扉がわずかに開かれ、ギャスパーが顔を覗かせてくる。
「……あ、あの戦いは僕も知っています。……でも、僕はその時もここで…」
「別に責めてる訳じゃないさ。だって、これからは違うだろ?」
「……でも、僕なんかがいても、みんなに迷惑を掛けるだけで…」
「俺はお前を迷惑だなんて、思わねえよ。大事な後輩で、悪魔の先輩で、そして、仲間だからな」
「……先輩…」
いつの間にか出てきていたギャスパーに俺は強く語り掛ける!
「力を貸してくれ、ギャスパー!俺と一緒に部長を支えようぜ!お前に怖いもんがあるなら、俺が全部吹っ飛ばしてやる!」
「……っ……でも…」
「やっぱ、俺の血飲んでみっか?そうすりゃあさ、お前の力だって、もっと上手く扱え…」
「怖いんです!」
「え?」
「……生きた物から血を吸うのが…。……時々、我慢して輸血用の血を飲むのが精一杯で…。……今でも自分の力が怖いのに、これ以上、何かが高まったら、僕は、僕は…!」
「う~ん、そんなにイヤか?俺なんかお前の能力が羨ましいけどな」
「羨ましい…?」
ギャスパーは俺の一言に不思議そうな顔をする。
「時間が停められるって、最高じゃねえか!これは断言できる!まず、匍匐前進して学校中の女の子のスカートのなかをだなぁ♪ああ、そんなセコい事より、部長を停めて、おお、おっぱいを好き放題に♪そうだ!朱乃さんのおっぱいも良いなぁ♪うあー!妄想が止まらん!?あ…」
ギャスパーがキョトンとした顔をして、俺の事を見ていた。
やべぇ、思わず、妄想を暴走させてしまった。
「……ス、スマン、つい…」
「……先輩って優しいんですね」
「ん?」
「……羨ましいなんて言われた事、今まで無かったです。しかも、具体的な例まで…」
「ああ、いやぁ…」
「……僕、この能力は嫌われるだけの物とばかり、思ってました」
「バカ野郎!俺達は神器(セイクリッド・ギア)を与えられた!これが逃れられない運命なのなら、前向きに考えなくてどうする!呪ったり、恨んだりして一生を過ごすつもりかぁ!」
「ッ!?」
心底驚いた表情のギャスパーを前で俺は高々と叫ぶ。
「よく聞け、ギャスパー!俺はこの赤龍帝の力をどうにかして部長のおっぱいに譲渡したい!これが今の俺の目標なのだ!」
「ス、スゴいです、イッセー先輩!伝説と呼ばれる力を持っていながら、そこまで卑猥に前向きになれるなんて!ぼ、僕には到底及ばない思考回路です!イッセー先輩の煩悩って、勇気に溢れているんですね!」
「よ、よせよ、照れるだろぉ…」
「ぼ、僕もなんだか、少しだけ勇気が湧いてきた様な気がします!」
「そうだろう!そうだろうとも!いいか、聞いて驚けぇ?この右手わな、部長の乳を揉んだ事だってあるんだぜぇ♪」
「ほ、本当ですか!?そんな、主である上級悪魔のむ、胸を…!?」
そのまま、会話が弾む中、俺達はギャスパーの部屋に入って、盛り上がるのだった。
「やあ、明日夏君」
「木場か」
イッセーへの差し入れを持って旧校舎の廊下を歩いていると、木場と出会った。
「ひとまず、一段落したから、イッセー君とギャスパー君の様子でもってね」
「俺もまあ、差し入れついでにそんなところだ」
他の面子は集まって、ギャスパーにできる事の模索中だ。
「どんな感じになってるかな?」
「さあな。案外、既に打ち解けあってたりしてるんじゃねえのか?」
「アハハ、イッセー君ならあり得るかもね」
俺の言葉を聞いて、笑いながら肯定する木場。
「それに、引き篭りの相手は初めてじゃないしな」
「っと、言うと?」
「ああ、そう言やあ、みんなには話した事なかったな」
俺は千秋の引き篭りの件とイッセーと千秋の出会いとその後の展開の事を話した。
「……そんな事があったんだね」
「……ああ」
父さんと母さんが事故で死に、目の前でそれを見た千秋はショックで引き篭り、俺達が何を言っても、外に出てこなかった。
木場からギャスパーの事は聞いた。
理由や想いは違うが、状態はギャスパーと同じだった。
そして、そんな千秋を、今ギャスパーにやってる事とほぼ同じ事をやったイッセーが外に連れ出した。
それから、千秋がイッセーを異性として意識するのに、時間は掛からなかったな。
「鶇さんと燕ちゃんの事と言い、神楽ちゃんの事と言い、今の事と言い、今の彼女達があるのはイッセー君がいたからって言っても、過言じゃないね」
「お前や部長、アーシアにも言えるんじゃないのか?」
「アハハ、確かにそうだね」
なんて、談笑しながら歩いていると、ふと、木場が真剣な表情にして聞いてくる。
「少し気になったんだけど、事故って、何があったんだい?」
「ん?ああ…」
まあ、特に変わったところなんて無い物だった。
走行中のタンクローリーが突然、車線を外れて歩道に突っ込み、横転した上に不幸が重なったのか、積まれていたガソリンに引火して爆発炎上。
父さんと母さんはそれに巻き込まれて死んだ。
幸いにも千秋は偶然にもその場から離れた位置にいた為、爆風で吹っ飛ばされた際にできた擦り傷だけで済んだ。
「……お気の毒だったね…」
「……事故だし、どうしようもねえよ。悪意があったお前のに比べれば、大した事はねえよ。……ただ…」
「ただ?」
「いや、なんでもねえ」
ただ、その事故に関して気になる事があっただけだ。
なんせ、事故の原因が不明だったからだ。
正確には、タンクローリーが車線を外れた原因だ。
その時の運転手も爆発に巻き込まれて死亡した為、車線を外れた際の事、なぜ車線を外れたのかが分からず、検視結果も事故の際の火傷やらを除けば、健康体で、体調不良の可能性も出なかった。
自殺にしても、理由が見つからなかった上にやり方が滅茶苦茶過ぎた。
父さんと母さんを狙った心中殺害の線に関しても、俺の両親とその運転手に接点は皆無。
父さんも母さんも恨みを買う様な性格じゃなかったし、運転手の方も熱心に働く気の良い人だったみたいだ。
そんな具合で、結局、事故の原因は不明のままだ。
その不明な原因の事が少し気になっていた。
まあ、原因がなんだったのかなんて気にしたところで、何かがある訳でもないし、本当に少し気になっただけで、別に知る事ができなかったとしても、特に気にする程ではない。
とかやっている内にギャスパーの部屋が見えてきた。
「イッセー君の姿が見えないね?」
「まあ、諦めたなんてしてないだろうから、中にいるんだろう」
そして、扉の前で聞き耳を立ててみると、案の定、中からイッセーの話し声が聞こえた。
会話の弾み方から、ギャスパーと打ち解けた事がうかがえた。
「本当に打ち解けあってたね」
「だな」
そう言いながら、お互いに笑いあった後、扉を開けて、中に入る。
「よう」
「おう、明日夏。木場もお疲れさん」
「流石だね。もう、ギャスパー君と打ち解けてるなんて」
「ちょうどよかった!今、俺はギャスパーと話しながら、グレモリー眷属男子チームの連携を考えてたんだ!」
「へえー、それは興味があるね!」
「……あんまり期待しない方が良いぞ。大体想像がつく…」
「んだと、明日夏!だったら、聞いて驚け!まず、俺が溜めたパワーをギャスパーに譲渡する!そして、ギャスパーが時間を停める!」
「なるほど!それで?」
木場が期待に胸を膨らませていた。
「その間、俺は停止した女の子を触り放題だ!」
「……………」
イッセーの言葉に無言になる木場。
「……はぁ、んなこったろーと思った」
「……え~と、それなら、僕の役目はいらないんじゃないかな…?」
俺は嘆息し、木場は苦笑いしながら言う。
「いや、俺がエッチな事をしてる間に敵が攻めて来るかもしれない!お前は禁手化(バランス・ブレイク)して、俺を守ってくれ!うん、完璧な連携だ!」
……どう言う状況だよそれ…?
「明日夏、お前もいざって時は…」
「……んな、アホな事に参戦するか、ボケ…」
「……イッセー君、僕はイッセー君の為なら、なんでもするけど、一度、真剣に今後の事を考えようよ?」
「うるっせぇッ、イケメン共!!そんな、哀れみの目で見るな!?お前らは良いさ!俺なんか目が合っただけで、毒が回るとか言われてんだぞ!?おおっと、お前なんで、また箱の中に入ってんだよ!」
いつの間にか、ギャスパーが段ボールに入っていた。
「すみません。人と話す時、この方が落ち着くんです。あ、大丈夫です。蓋は閉めないんで」
「……そう言う問題じゃねえだろ…」
打ち解けたっと言っても、重度に患った対人恐怖症はそうそう治らんか。
「ずっとこのままって訳にはいかないよ?封印も解かれたんだし」
「……でも…」
木場の言葉に俯いてしまうギャスパー。
「ああ、よし!せっかく、オカルト研究部の男子だけが勢揃いしてんだ。良い機会だから、男同士、肚を割って話そうぜ!」
唐突にイッセーがそんな事を言う。
今後の事で暗い雰囲気になり掛けたギャスパーを気遣い、今だけは楽しくさせようって事なんだろう。
「そうだな。それも良いかもな」
「そうだね」
俺と木場は同意する。
「あ、あのぉ…」
「今すぐ、出ろなんて無理強いはしねえよ。少しずつで良いんだ。徐々に外に出る事に慣れていこうぜ」
「は、はい!」
イッセーの言葉にギャスパーは強く頷く。
「よっしゃぁ、第一回『女子のこんなところが堪らなく大好きだ会』!まずは俺からだ!俺は真っ先におっぱいと脚を見るね!」
……そう言う話題にするのかよ…。
しかも、真っ先に自分から言う事で強制的に始めやがった。
木場と視線を合わせると、互いに苦笑して、ギャスパーの為だって事と良い機会ってい言う事で話題に乗る事にした。
「次は明日夏だ。言っとくが、無いとか、考えた事も無いとか、興味も無いとか、そう言うのは無しだぞ!」
いきなり俺な上に言おうと思った事全部に釘刺された。
くそッ、女性のどこが好き、つまり、どこに魅力を感じるか、か。
……やべぇ、なんも浮かばねえ…。
……人並みに興味はあると思っていたが、どうやら、姉貴の言う通り、本気で俺は女性に興味を持っていなかったみたいだ…。
そんな中、ふと、浮かんだ物があった。
「……笑顔か…」
「笑顔?」
ふと、思い出したが、イッセーと出会ってから浮かべた千秋の満面の笑顔を見た時や鶇と燕が初めて笑顔になった時は綺麗だなぁっと思った事を思い出した。
「心からの純粋な笑顔は見ててイヤな気持ちにはならないし、綺麗だと思うからな」
「……ん~、なるほど…」
意外そうな顔をしながらも、うんうんと頷くイッセー。
……答えられないって思ってたな、こいつ。
まあ、実際、そうなってたかもしれないんだがな。
その後は木場やギャスパーも自分が女性のどこに魅力を感じるかを話した。
女装してるとは言え、男であるギャスパーもそう言う物はあったみたいだ。
木場も意外とイッセー程じゃないが、それなりにスケベだった。
「なんだ、仲良く話してるじゃないか」
持ってきた差し入れをツマミにそんな他愛の無い話で盛り上がってると、部屋に入ってくる一団があった。
「やあ」
「どうしたんだ、みんな揃って?」
入ってきたのは、オカ研の女子部員+兄貴と姉貴だった。
「あの後、イッセーさんだけにギャスパー君の事をお任せするのは、良くないと思いまして」
「私達にできる事がないか、いろいろ考えていたのさ」
「……僕の為に…?」
「……ギャー君も大切な仲間」
「そう言う事だよ、ギャー君」
「愛されてるねぇ、ギャー坊♪」
「み、皆さん…!」
「……お土産」
「私からはこれ♪」
「?」
そう言って、塔城と姉貴がギャスパーの入ってる段ボールに何かを放り込んだ。
「ひゃぁぁぁぁッ!?!?ニンニクと聖水ぃぃぃッ!?」
放り込まれたのはニンニクとホーリーウォーターと言う製品名のミネラルウォーターだった。
「ハァァッ!!」
ガバッ。
ギャスパーが慌てて段ボールから出てきたところを見計らって、ゼノヴィアがギャスパーに何かを被せた?
「ああ!?」
「どうだい?」
被せられたのは、紙袋だった。
ご丁寧にちょうど目の位置のところに穴が開けられていた。
「あれ?なんか落ち着く?あれ?あれ?ちょっと良い感じ?」
……なんか、えらく気に入りだしていた。
「どう言う事だ?」
「……アーシア先輩のアイデアです」
「アーシアの?」
「へえー、アーシアが?」
「ち、違うんです。私も人と面と向かって話すのは苦手で。でも、電話なら大丈夫なので、逆に自分の顔が見えなければと皆さんにお話しただけで…」
「そこで私がこれを思い出してね。頭に何かを被せたらと」
ゼノヴィアが取り出したのは、いつぞやの公衆の面前で取り出したコンドームだった。
「……まだ、持ってやがったのか…!」
イッセーが再びゼノヴィアの手から取り上げる。
「ちなみにそれを見て、顔を真っ赤かにした娘が二人いま~す♪」
姉貴が高々と告げる。
誰だかは想像はついた。
千秋と燕を見る。
二人とも顔を真っ赤にしていた。
「……ムッツリ…」
燕だけに聞こえるように言ってやった。
案の定、全身を真っ赤にして、何かを言いたそうにするが、自分の事だとバレない様に押し黙るが、バレバレである。
「どうですか~?似合いますか~?」
『っ!?』
穴の開いた部分から赤い眼光がギラリと輝いて、得も知れぬ迫力を生んで、思わず身を引いてしまった!?
「……得も言われぬ迫力があるねぇ…」
「……ああ。変質者的な恐怖感と言うか、とにかくスゴい……気がする…」
「……これは流石に…」
「……軽くホラーだね…」
あの兄貴や姉貴も流石に目の前のギャスパーには恐怖を覚えた様だ…。
案の元のアーシアを含め、鶇と神楽は今にもイッセーの後ろに隠れたがっていた。
「これ良いですね~♪気に入りました~♪」
……当のギャスパーは手を前に伸ばしながら、ウロウロしていて、なんか楽しそうだ…。
……っと言うか、振る舞いが通報レベルの変質者その物だった。
反射的にケータイに手が伸び掛けた。
「……俺、初めてお前をスゴいと思ったよ…」
「本当ですか!これを被れば吸血鬼(ヴァンパイア)としての箔が付くかも!ありがとうございます、皆さん!」
こいつ、今後、いろいろと大丈夫なのか?
俺の心中は不安でいっぱいだった。
後書き
アニメでとうとう、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)が登場!意外とデカかったな。結構カッコよかったし、なにより、一瞬とは言え、もう原作では実現する事の無い覇龍(ジャガーノート・ドライブ)同士の対決がスゴかった!
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