ムーア独立戦争
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1話
「……?」
起きて見たら見に覚えのない無機質な部屋にいた。
改めて回りを見渡してみると確かに生活の後が見えるが、簡素でしかし実用的なまるでオフィスのようなイメージを連想させた。
見渡しているうちにふと鏡が目に入った。
「……え」
目の前に移るのは見慣れない顔。だが自分が思ったとおりの行動を繰り返している。
自分の名前は佐藤博、日本人のはずで目の前のとても東洋人とは見えない人物では決してない。
そこまで考えたところで、一気に頭の中に佐藤弘ではない、間違いなく今鏡に映っているジャック = ハートレイの記憶が入ってきた。
ジャック = ハートレイ、36歳、地球連邦軍サイド4駐留艦隊司令、階級は大佐。
どうやら自分は別の人物になったらしい。
(36で大佐か、こいつできるな)
思考が一瞬ずれたのを元に戻す。
この記憶の中で重要なのは階級のわりに若いと言うことではなく、地球連邦軍所属とサイド4駐留のところだ。
とてもいやな予感がしたがまだ最悪の事態と決まったわけではない。
今が宇宙暦0080以降ならなんとかなると思われる。
そうすがりながらもおそらく分かっているだろう記憶をあえて思い出さず、カレンダーを見るとそこには宇宙暦0078年8月と言う無慈悲な数字があった。
どこが最悪の事態なのかはガンダムをただ見ただけでは分からないと思う。
ただ79年1月3日にサイド4のコロニー群が駐留艦隊ごと壊滅するとだけ書いておく。
説明すると長くなるので詳しくは調べてくれるとうれしい。
とりあえずあらためて状況確認。
自分の名前はジャック = ハートレイ。地球連邦軍の大佐でサイド4駐留艦隊司令。
若干36歳ながらも大佐なのは地球出身でなおかつ、つい半年前までは順調にエリートコースを進んでいたから。
最近エリートコースからも外れ辺境であるサイド4へ飛ばされている。
サイド4には40基のスペースコロニーがありそこに10億人ほど暮らしているのだが地球連邦内部では十分辺境らしい。(地球圏の総人口は約110億)
日付は宇宙歴0078年8月1日。
ジオン公国(サイド3にある国家)の地球連邦への宣戦布告と開戦が0079年の1月3日なのであと5ヶ月。
ジオン公国は宣戦布告と同時にサイド1、2、4とに対し奇襲する。
結果各サイドの駐留隊は敗北、サイドのコロニーの大半は破壊され壊滅状態に陥った。
つまりこのままいけばサイド4にいる自分はほぼ間違いなく戦死だろう。
(……まじかよ)
このまま安穏と職務をこないしていった場合の未来を想像し困惑する。
(しかしなんでまたこんな人物に憑依することになったのやら)
一応は落ち着いたつもりで今後のことを考える。
各サイドの駐留隊は敗北すると言ったけれども連邦軍の戦力はジオンと比べ決して少ない訳ではない。
むしろ純粋な艦隊としての戦力は上回っている。
ではなぜ負けたのかというと艦載機、いやこう言うと宇宙戦闘機を思い浮かべるだろうから正しくない、モビルスーツと呼ばれる巨大人型兵器のせいだ。
地球連邦の戦闘方針は主に戦艦や巡洋艦を中心とし、遠距離からの砲撃によるものだ。
その方針通りにいけば戦艦や巡洋艦の保有数に劣るジオンは連邦に勝ちようがない。
それは当然ジオンにもわかっていることなので別の戦闘方法を持ち出すことになる。
その戦闘方法がミノフスキー粒子散布下での有視界戦闘だ。
具体的にはまず艦隊同士の砲撃戦の前にミノフスキー粒子を散布する。
ミノフスキー粒子の特性は長波の電磁波、つまり一般的なレーダー波や通信用の電波を吸収する。
そのためレーダーを用いた長距離で高精度の砲撃と通信を使っての各艦での連携が制限される。
当然これは連邦、ジオンを問わず影響するのでこれだけではジオンは勝利できない。
そのため次にモビルスーツを投入する。
モビルスーツとは全長16mほどの巨大人型兵器で無意味なものに見えるがミノフスキー粒子散布下では無類の強さを発揮する。
ミノフスキー粒子により有視界での照準しかできないため砲撃の命中率が極端に下がるため、モビルスーツは容易に艦船に接近できる。
またモビルスーツはアンバックと呼ばれる手足を使った重心移動を行うことにより推進剤を使わず、かつ素早く機体の向きをコントロールすることができた。
さらに小型核融合炉を搭載し熱核ロケットを使用することで少ない推進剤で大きな推力を持ち合わせている。
モビルスーツの素早い動きに艦艇の砲撃では対応できず、掻い潜られ接近され近距離での攻撃をなすすべもなく受けるしかなくなる。
モビルスーツの脅威を確認している場合じゃない。
だいたいこういうのを読んでいるからにはそれなりの予備知識があるはずだ。
とにかく自分が生き残る方法を考えなくてはいけない。
まずは転属願いを出してみた。即座に却下された。
脱走して社会的な制裁を受けることは避けたい。
となると戦って生き残るしかない。
ともかく戦って勝つにしろ負けるにしろとにかく生き残ることが最重要。
とはいえ負けて逃げるよりは勝ったほうが生き残れる可能性が高いのは当然だ。
ならとりあえずは勝つことを目標とした方がいい。
勝つためにはまずとにかく機動兵器、連邦でいうとトリアエーズとセイバーフィッシュをそろえたい。
特にセイバーフィッシュは、モビルスーツに劣るとはいっても数がそろえば十分に対抗できる兵器には違いない。
ひとまずできる範囲のことを行うことにする。
改めて勝つためにするべきことで、一番単純なのはモビルスーツと一応同質の兵器である宇宙戦闘機の数を揃えることだ。
連邦軍が持っている宇宙戦闘機はトリアーエズとセイバーフィッシュの二種類。
トリアーエズは名前からして察せるが、ほとんど役に立たない。
理由としては主武装である25mm機関砲2門がモビルスーツに対し有効ではないからだ。
最悪対艦装備としてある腹部に搭載したミサイルでの攻撃もありうるが命中率や弾数を考えると論外と言わざる負えない。
一方セイバーフィッシュは25mm機関砲4門と12基のミサイルランチャーを装備している。
機関砲はともかくミサイルランチャーは速度と装弾数からして対モビルスーツ兵器として十分に使える。
つまりセイバーフィッシュの数を揃えるのが一番有効と言うわけだ。
しかし自分は地球連邦軍の最高司令官ではなくセイバーフィッシュを自由に作って配備なんてことは当然出来ない。
本部に何かしら理由をつけてセイバーフィッシュを増やさなくてはいけない。
セイバーフィッシュがサイド4駐留艦隊に必要な理由を考える、もしくはでっち上げる必要がある。
とりあえずミノフスキー粒子下でのモビルスーツの有用性について説明しようとしたが早々にあきらめた。
その事を理解できているなら自分がどうこうする前にセイバーフィッシュが大量に配備されているはず。
次に考えたのは連邦軍が宇宙戦闘機を何のために配備したかだ。
連邦軍が宇宙戦闘機を配備したのは宇宙戦闘艦には向かないところを補助するためらしい。
具体的には暗礁宙域とかだ。
それをサイド4周囲にあるとでっち上げてセイバーフィッシュの配備を要請してみる。
あと他の駐留艦隊とかとサラミス級(巡洋艦)やマゼラン級(戦艦)とセイバーフィッシュやアンティータム級(空母)を交換しないかと持ちかけてみた。
連邦軍のほとんどが砲撃を最重要視しており戦闘機を軽視している、いわゆる大鑑巨砲主義とでもいうべき考えを持つ人がほとんどだったのでむしろ喜ばれて交換できたのは運がいい。
越権行為かな……。
次にサラミスやマゼランの乗員の訓練を行う。
レーダーが使えなくなり手動で火器を動かすことになった場合、各艦で通常の通信が出来なくなった場合のレーザー通信の手順、有線通信の組み方、手動での火器の使用方法などを徹底して再訓練させる。
どの程度の成果があるかは不明だがしないよりはいいはず。
そもそもレーダーもほとんどの無線通信装置も無力化された環境での戦闘マニュアルは単艦レベルではあるけれども、艦隊戦レベルでの戦闘教義はほとんど見当たらなかった。
できればジオン軍の戦闘教義を覗きたいが当然無理なわけで、自分で考えることになる。
どうにか参考になるのはレーダーがまだ限定的な性能しか持っておらず、かつ大規模な空母による戦闘が行われた第二次世界大戦の資料ぐらいしかない。
どうしろと言うのか。
後書き
開戦直前で
サイド1,2,4,5,6の人口をそれぞれ10億人
サイド3は15億人
サイド7は一基しかコロニーがないので誤差
それ以外を地球の人口として45億人
としてます。
連邦とジオンの国力差と一週間戦争を考えるとこれくらいがちょうどいいと思ってます。
総人口の9割がスペースノイド、サイド1,2,4壊滅+コロニー落としで総人口の半分、ギレンの言う通り国力が20倍にするとサイド5の人口を極端に増やしたりしなきゃいけなくなるので。
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