FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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たった一人のためのギルド
化猫の宿にて
今俺たちは化猫の宿で休んでいる。皆さん服がものすごいボロボロだったので俺たちのギルドで作った服に着替えてもらっている。
早々に着替えた俺はギルドの中に入りマスターの前に腰かける
「マスター」
「なぶら。シリル、よくやってくれたな」
マスターがイスに座ったまま言う。俺は聞きたかったことを聞くことにした
「マスターがニルビット族だったなんて知らなかったんだけど」
「なぶら・・・隠しておったわけではない。言う機会がなくてな」
マスターは少々決まりの悪そうな顔をする。いや、別に責めようと思ってるわけじゃないんだけどね
「シリル・・・ワシは今回の連合軍のことを受けてな、以前から一つ決めておったことがあるんじゃ」
唐突にマスターがそんなことを言う。決めていたこと?
「何を決めたの?」
「ウェンディに本当のことを話そうと思ってな」
「!?」
本当のこと・・・というと俺には一つしか思いつくことがない。それはつまり・・・
「ギルドのみんなのこと?」
「そうじゃ」
マスターはうなずく。まぁ確かにいいタイミングかもしれないけど・・・
「ウェンディ、泣いちゃうかな?」
「お前がいてやればウェンディはそこまで悲しむことはない」
マスターがそう言って俺は少しだけ笑顔になる。俺はこの7年間あのことをずっと言えなかった。
ウェンディに嫌われるのではないかと思い、ずっと隠してきた。でも・・・今度は言わなければならないのだろう
「シリル~!!どこ~?」
俺とマスターが話していると遠くからセシリーが俺を呼ぶ声が聞こえる。
「あ、じゃあマスター。俺はこれで」
「なぶら」
俺は席を立ちその場を後にしようとする
「シリル!!」
俺は不意に名前を呼ばれてその場で振り返る
「ワシも7年間、お前たちといれて楽しかったぞ」
その時のマスターの笑った顔は今までの中で一番幸せそうな顔をしていた
それから少しして俺たちは化猫の宿の前に集合した。
「妖精の尻尾、青い天馬、蛇姫の鱗、そしてシリルにウェンディ、シャルルにセシリー。よくぞ六魔将軍を倒しニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表してこのローバウルが礼を言う」
マスターはそう言って会釈する
「ありがとう。なぶらありがとう」
「どういたしましてマスターローバウル!!六魔将軍との激闘に次ぐ激闘!!楽な戦いではありませんでしたがっ!!仲間との絆が我々を勝利に導いたのです!!」
「「「さすが先生!!」」」
一夜さんがかっこよくポーズを決めながら言うとヒビキさんたちがそれに向かって拍手する
「ちゃっかりおいしいとこもっていきやがって」
「あいつ誰かと戦ってたっけ?」
それを見てグレイさんとルーシィさんがあきれている
「終わりましたのね」
「お前たちもよくやったな」
「ジュラさん」
蛇姫の鱗の皆さんも任務成功を喜び合う
「この流れは宴だろー!!」
「あいさー!!」
「一夜が!!」
「「「一夜が!?」」」
「活躍!!」
「「「活躍!!」」」
「それ「「「ワッショイ!!ワッショイ!!ワッショイ!!ワッショイ!!」」」」
ナツさんの一言で全員がさらに盛り上がり出す。と・・・止めようにも盛り上がり過ぎてて止めにくい・・・
「宴かぁ」
「脱がないの!!」
「フフ」
「あんたも!」
いつのまにか服を脱ぎ上半身裸のグレイさんとリオンさん。それをルーシィさんが注意する
「さぁ化猫の宿の皆さんもご一緒にぃ!?」
「「「「ワッショイ!!ワッショイ!!」」」」
気がつくとナツさんたちまで一緒になって踊っていて
「ワッショイ!!」
ウェンディまで一緒に踊ろうとしていたのを俺は横目で見ていてそれに気づいたウェンディは赤くなって小さくなっている
ヒュウゥゥゥゥ
俺たち化猫の宿のテンションの低さに気づいて連合軍の皆さんが固まってしまう。
なんか申し訳ないです・・・
「皆さん・・・ニルビット族のことを隠していて、本当に申し訳ない」
そんな空気の中マスターが話始める。ついにあのことをウェンディに話すのか・・・
「そんなことで空気壊すの?」
「ぜんぜん気にしてねぇのに、な?」
「あい!」
ハッピーとナツさんがそう言う。
「マスター。私も気にしてませんよ」
ウェンディがマスターにそう言うとマスターは小さくため息をつく
「皆さん、ワシがこれからする話をよく聞いてくだされ」
ついにこのことを話すのか・・・俺はウェンディをチラッっと見るがウェンディは「なんだろう?」といった顔をする
「まずはじめに・・・ワシ等はニルビット族の末裔などではない」
「えっ?」
ウェンディが小さく呟く。まぁ俺もさっきまで知らなかったんだけどね・・・
「ニルビット族そのもの。400年前ニルヴァーナをつくったのはこのワシじゃ」
「何!?」
「うそ・・・」
「400年前!?」
「はぁ・・・」
「・・・」
マスターの突然のことにみんな驚く。
「400年前・・・世界中に広がった戦争を止めようと善悪反転の魔法、ニルヴァーナをつくった。
ニルヴァーナはワシ等の国となり平和の象徴として一時代を築いた。しかし強大な力には必ず反する力が生まれる。
闇を光に変えた分だけニルヴァーナはその“闇”をまとっていった」
俺は少しため息をつく。この辛い話をまともに聞く気になんかなれない・・・
「バランスをとっていたのだ。人間の人格を無制限に光に変えることはできなかった。闇に対して光が生まれ、光に対して必ず闇が生まれる」
「そう言われれば確かに・・・」
マスターの話を聞いてグレイさんは何か思ったようだ
「人々から失われた闇は我々ニルビット族にまとわりついた」
「そんな・・・」
「地獄じゃ。ワシ等は共に殺し合い全滅した」
マスターの話を聞いて連合軍は驚愕する。
「生き残ったのはワシ一人だけじゃ。いや・・・今となってはその表現も少し違うな。我が肉体はとうの昔に滅び今は思念体に近い存在。
ワシはその罪を償うため・・・また・・・力なきワシの代わりにニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで、400年・・・見守ってきた。今、ようやく役目が終わった」
そういうマスターの顔は晴れやかなようにも見えた。しかしそれを聞いた俺たちは全員驚きと悲しい気持ちに包まれる
「そ・・・そんな話・・・」
ウェンディが震えながら言う。するとマスターの後ろにいる俺たちの仲間が次々と消え始める
「マグナ!!ペペル!!何これ・・!?」
「みんな!?どうしたの~!!」
「アンタたち!!」
ウェンディたちが次々と消える仲間を見て驚く。昨日まで・・・一緒にいた仲間が・・・
「どうなっているんだ!?人が消えていく!!」
「シリル!!みんなが・・・」
ウェンディが俺を向く。しかし俺は悲しみと真実を黙っていた罪悪感から顔をあげることができない
「騙していてすまなかったな、ウェンディ。ギルドのメンバーは皆・・・ワシのつくりだした幻じゃ・・・」
ウェンディの目から涙がこぼれる
「何だとぉ!?」
「人格を持つ幻だと!?」
「何という魔力なのだ!!」
ジュラさんたちもその光景に驚いている
「ワシはニルヴァーナを見守るためにこの廃村に一人で住んでいた。7年前一人の少年がワシのところに来た」
「一人の少年・・・」
エルザさんが呟く。一人の少年・・・そう、ジェラールだ・・・
「少年のあまりにまっすぐな眼にワシはつい承諾してしまった。一人でいようと決めていたのにな・・・」
―――――
「この子たちを預かってください」
ウェンディを抱えたジェラールがそう言う。俺はその後ろに顔を伏せて立っている。
「・・・わかった・・・」
おじいさんは少し迷ってから答える。
「ありがとうございます。シリル・・・ごめん」
「・・・ううん・・・楽しかったよ。ありがとうね」
「俺もだ。さようなら。シリル、ウェンディ」
ジェラールはそう言ってウェンディを置いて足早にその場をあとにする。
俺はおじいさんに頭を下げる
「無理を聞いてもらってありがとうございます」
「よいよい。気にすることはない」
「シリル・・・」
ウェンディが目を覚ますと辺りを見回している
「起きたか。ウェンディ」
「ここどこ?そのおじいちゃんは?」
「この人はこの家の家主さんでローバウルさんだ」
俺はウェンディにそう言うとウェンディはうつむく
「ジェラールは?」
俺はその問いに答えられない
「ジェラール・・・私たちをギルドにつれてってくれるって・・・」
ウェンディの目に涙がたまる。俺は真実を告げるためウェンディの横にしゃがむ
「ウェンディ・・・ここは「ギルドじゃよ!!」」
俺の言葉を遮るようにマスターが言う。
「ここは魔導士のギルドじゃ!!」
「本当!?」
ウェンディが嬉しそうな顔をする。俺はマスターの顔を見る
「なぶら。外に出てみなさい。仲間たちが待ってるよ」
「やった!行こうシリル!!」
ウェンディが俺の手を掴み外へと飛び出す。するとそこはさっきまでの荒れ果てた廃村から賑やかな一つの町になっていて、たくさんの人たちが俺たちを見ていた。
俺はマスターの方を向くとマスターはただ静かにうなずく。俺はそれに感謝して黙ってうなずいた
―――――
「ウェンディのために作られたギルド・・・」
「そんな話聞きたくない!!バスクもナオキも消えないで!!」
ウェンディが耳をふさぐ
「ウェンディ、シリル、シャルル、セシリー・・・もうお前たちに偽りの仲間はいらない」
マスターそう言ってナツさんたちを指差す
「本当の仲間がいるではないか」
マスターはそう言ってニッコリと微笑む。そしてマスターの体も徐々に消えていく
「ウェンディ・・・シリルに心配ばかりかけるなよ。シリル・・・お前はもっと周りを頼りなさい。一人で抱え込んでいちゃいけない。
お前たちの未来は始まったばかりじゃ」
「マスター!!」
ウェンディがマスターの元へと走る
「皆さん、本当にありがとう。この子たちを頼みます」
そしてマスターが完全にいなくなってしまうと俺たちのギルドマークが消える。
「マスターーー!!」
マスターがさっきまでいた場所でウェンディは泣き叫ぶ。シャルルとセシリーもうっすらと目に涙を浮かべている。
俺はウェンディに近づいて抱きしめる
「ごめん・・・今まで黙ってて・・・」
「ひっく・・・シリル・・・」
ウェンディは俺を抱き返し再び泣いてしまう。俺も我慢できなくなって泣いてしまう
「愛する者との別れの辛さは・・・仲間が埋めてくれる」
エルザさんが俺の肩に手を置き言う。俺とウェンディはそちらを見る
「来い、妖精の尻尾へ」
後書き
いかがだったでしょうか。次からは日常編に入らせていただきます。次回もよろしくお願いします
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