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オズのベッツイ

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第五幕その四

「お野菜も果物も長い間冬は困っていたのよ」
「冬は植物自体が育たないからね」
「ロシアはその冬が長いから」
「それでだね」
「オレンジなんて今みたいに手に入らなかったの」
 恵里香はそのオレンジも食べつつ言うのでした。
「そのお話を昔から聞いてるからなの」
「ナターシャは果物を食べるんだ」
「今みたいに」
「そういうことなんだね」
「私も今は壊血病にならないことはわかってるわ」
 そう簡単にはです。
「ロシアでもそうよ」
「けれどだね」
「そのことが頭にあるから」
「どうしても」
「ええ、食べるようにしているの」
 壊血病のことが頭にあるからなのです。
「いつもね」
「そうなのね、じゃあ蜜柑も」
 恵里香はオレンジと同じ柑橘類というのでこの果物も出しました。
「あれも」
「好きよ」
「そうよね、蜜柑もね」
「ええ、大好きよ」
 実際にそうだというのです。
「冬によく食べるわ」
「私と一緒に遊んでいる時も食べてるわよね」
 お部屋の中でゲーム等をしている時にです、ナターシャはよく蜜柑を食べているのです。
「ビタミンは摂らないと、それに美味しいし」
「そういうことね」
「そう、食べているわ」
 ナターシャはオレンジの後はネーブルも手に取るのでした。
「こうしてね」
「そうね、後ね」
「後?」
「私は柑橘類が好きだけれど」
 恵里香が今手に持っている果物を見ての言葉です。
「恵里香はそれが好きね」
「柿?」
「あと枇杷もよね」
「確かにどちらもね」
 その両方がというのです。
「好きよ」
「そうよね」
「嬉しいことにこの果樹園にはどちらもあるから」
「両方食べるのね」
「特に柿よ」
 この果物をというのです。
「好きよ」
「それで今から」
「柿は大好きよ」
 本当にとです、恵里香はナターシャににこりと笑って答えました。
「本当に」
「柿は。確かに美味しいけれど」
 それでもと言うナターシャでした、柿については。
「渋いものもあるから」
「あっ、早い柿はね」
「あれは少し」
「うん、渋柿はね」
 恵里香も渋柿にはやや苦いお顔です。
「私も駄目よ」
「食べてしまった、って思ったことがあるわ」
「あるわ、柿の甘さは好きだけれど」
「渋さは」
 それはなのでした。
「苦手よ」
「そうよね」
「柿はね、私も好きよ」
 ここでベッツイも言ってきました。その横ではハンクが草を食べています。彼はここでも草を食べているのです。
「ただ、やっぱりね」
「渋柿はなんですね」
「ベッツイさんも」
「ええ、あれはね」
 どうしてもというのです。
「無理よ」
「普通の柿はいいですよね」
「そちらはいいのよ」
 好きだというのです。
「けれど渋い柿は駄目よ」
「じゃあ干し柿は」
「あっ、柿を干した」
「はい、あちらは」
「干した果物は好きよ」
 干した果物についても言うベッツイでした。 
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