願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)
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知らない人には御用心
あの後は予想通りに神埼と白雪が来たのだが、入室早々に撃ち合いを始め、金次を除いた俺達で収拾をつけた。
その後はお互いの自己紹介や持ち場の確認、役割等を決めて就寝した。
そして翌日の放課後。
「初めまして、かな?
君がここに来ることは推理していたよ」
俺の目の前には一人の青年が立っていた。
「推理……ね?それで、何か用か?」
俺は青年にそう尋ねる。この男の立ちずまいは中々のものだ。
体から涌き出る強者の匂いと、それに伴う眼光。
「君を試しに来たのだよ。Eランク武偵、赤志ユウジくん」
「試すねぇ…それでお眼鏡に叶った場合、俺はどうすりゃいいんだ?シャーロック・ホームズ」
「っ……まさか、知っていたとは…私にも推理出来なかったよ」
「推理推理と…過信しすぎた頭脳に頼ってばかりいれば脳が疲れて脳死するぜ?
先ずは確りとした休眠と…そうだな、甘いものでも食べて落ち着くといいぞ」
「ふむ。確かに最近休んでいなかったな…帰ったらそうしてみよう」
「ん、じゃあな」
俺はシャーロックの隣を通りすぎ、然り気無く帰宅を試みる。
「って!待ちたまえ!」
―――失敗。
「何だよ?俺忙しいんだけど」
「そう言っている者の大半が暇をしている事を私の経験が証明している。
と言うより、然り気無く帰ろうとしないでくれないか?」
「んなこと言ってもさ、お前ごときに試されるってのは少々尺にさわるんだよな」
お前ごとき。
この言葉にピクリと反応をしたシャーロック。
自分の実力に自信を持っていた反応なのか、ユウジが自分より下だと判断していた事から出た反応なのか。答えは後者であった。
「君の事は調べ尽くした。
が、私よりも上であるような発言は許されていない立ち位置にいることは明白。
何より、君を一目見て確信をしているよ。私よりもずっと小さいとね…」
シャーロックは俺に対して殺気を向けた。
「そうだな。立ち位置を考えるのならそうなるだろう。
だが、能ある鷹は爪を隠す様に、俺がそうでないことを予想できない次点で…」
俺は一端言葉を区切り、シャーロックの眼を見て言った。
「―――お前はもう、弱者だよ」
「っ!!!??!?」
殺気。
これまで生きてきた中でも最大級の殺気であった。
シャーロックは動けず、汗を大量に流し、一ミリ程の挙動さえも出来ずにいた。
「……まぁ、これに懲りたら上から目線は止めるんだな」
俺は殺気を無くし、再び帰路につく。
シャーロックは緊張が切れたように肩で息をして俺を見送るしかなかった。
「(あのまま行けば殺されていたのは私の方だった!
……くっ!何が試すだ…あれは試されるような器ではない…井の中の蛙とは…まさに私の事だったか)」
シャーロックがここに来た理由。
今後に控える計画を行うに当たって邪魔になる人物にユウジが引っ掛かったからである。
その為、この計画に脅威となるのかを検証し、もしもそうであったのなら、殺害するために来たのであったが…。
「これは…計画を見直す必要があるね…」
シャーロックはそう呟く他なかった。
更に翌日。
堤防沿いにある一角に、銀髪の少女が立っていた。
その少女は警戒を顕にし、目の前にたつ少年を睨み付けていた。
まぁ俺なんだが。
「貴様が教授の言っていた脅威か」
少女…ジャンヌ・ダルク32世はそう言った。
「教授…ああ、シャーロックか。
まぁ、俺が脅威かどうかなんぞ今は関係ない…が、面倒なことはしたくないんだ。
素直に帰るか、拘束されるか、いじめられるか選んでくれ」
俺はポケットに手を突っ込みながらだるそうにそう言った。
「理子から聞いた通り、そこの見えない奴だ…気に入るのも良くわかる。
だが私は騎士として、貴様に勝負を挑む!」
ジャンヌは西洋剣を抜刀して構える。
瞬間に冷気が漏れだし、足元を即座に凍りつかせた。
「へぇ。氷の属性剣…いや能力を纏わせているだけか」
「…よく見抜いた。我が剣は聖剣。名はデュランダル!
これより貴様を葬る私の愛剣だ!」
声を張り上げて宣言するジャンヌ。
こうなってしまったのはぶっちゃけて言えば散歩してたら…ってやつなんだが。
取り合えず適当にあしらう事で自己完結。
「ならさっさとやるか。
俺、これでも忙しいんだよね」
「ふん、時間など感じないままに終わらせてやる」
「それじゃ…」
「――(くるかっ!?」
「逃ぃげるんだよぉぉぉぉ!!」
「――――は?」
緊迫した状態での敵前逃亡。
誰も逃げ出すとは思わない場面で全力ダッシュする俺に、ジャンヌは理解できずに固まった。
「な…何なのだアイツはぁぁぁ!!」
俺が逃げ去ってから数分後、一人残されたジャンヌは大声を挙げて地団駄を踏むのだった。
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