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ブラック・ブレットー白き少女

作者:虚無龍
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ファーストコンタクト

「あぁん? お前が俺たちの応援に駆けつけた『民警』だぁ? 馬鹿も休み休み言え。まだガキじゃねぇか!」

 春先の夕暮れ時。

 『グランド・タナカ』というひび割れや、汚れなどが目立つマンションの前でヤクザの様な顔をした刑事らしき人と、覇気のない不幸顔の少年が少し険悪な雰囲気で話していた。

「んなこと言われたってしょうがねぇだろ。俺は正真正銘、お前達の応援に駆けつけた民警だよ。ほら、拳銃もライセンスも持ってる」

 そういうと不幸顔は、強面にライセンスを見せた。

「フハハハハ! お前、写真映り悪いな! すげえ不幸面じゃねぇか!」

 そう言って強面は不幸顔のライセンスについている写真の不幸面を笑った。

((…………なんか馬鹿にされてる気がする))

 勘はいいようだ。

「それより、仕事の話しようぜ」

「ああ、分かった。このマンションの一⭕二号室の奴が上の階から血の雨漏りがするって悲鳴上げながら電話してきた。情報を統合すると、間違いなくガストレアだ。まあいい、さっさと行こう」

 警察と民警というのは基本的に仲が悪い。

 それなのに何故、警察が民警を待っていたかというと、警察はガストレア関連の事件は民警と一緒じゃないと捜査できないことになっているからである。

「ん? お前、相棒の『イニシエーター』はどうした?」

「あ、あいつの手なんか借りなくても、俺一人で余裕だからだよ!」

 …………嘘つけ。

「ふん、まあいい。おい、なにか変化は?」

 すると、警官隊の一人が青い顔をして振り返った。

「す、すみません。たったいまポイントマンか二人、懸垂降下にて窓から突入。その後、連絡が途絶えました」

 瞬間、多田島(強面)の顔が憤怒に染まる。

 …………訂正しよう。ヤクザが女神に見えるほどこえぇ。

「馬鹿野郎! 民警の到着を待てって言っただろうが!」

 そこから一悶着あり、蓮太郎(不幸顔)が部屋へ突入したのだった。

 そして、『世界を滅ぼす者』と名乗る殺人鬼と出会うのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ーー蓮・太・郎・の・薄・情・者・めぇぇぇッ」

 夕暮れの住宅街で大声で怨みごとをはく少女がいた。

 藍原延珠である。

「おのれぇ、『ふぃあんせ』の妾
わらわ
を、よもや捨てていくとは…………」

 何やら物騒なことを言いながら歩いていたのだが、それは長くは続かなかった。

「延珠っ!」

 当事者たる蓮太郎が来たからである。

 延珠は蓮太郎の姿を見ると走り寄り、そのまま蓮太郎のピーにドロップキックをした。

「ぎゃあああ!!!」



 …………御臨終。

 そんな言葉が頭に思い浮かぶほどに壮絶だった。

 あれは同じ男にしか理解出来ない地獄だ。

 だって、イニシエーターの目、赤かったぜ?

                 by多田島


「延珠ぅぅぅ!!! 俺を殺す気かぁぁぁ!!!」

 と、蓮太郎が血走った目で叫ぶ。

 その目尻には涙がうっすらと浮かんでいた。

 そんな時。

 ドゴンッ!

 何か硬い物が砕けるような音で三人は現実に戻って来た。

「これはガストレアか?」

 多田島がそう言うと、蓮太郎と延珠はその方角に走り始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 現場に付いた三人(多田島は追い付いた)が見たのは、狐のお面をかぶった白髪の少女らしき人物が、バラニウム製と思われる真っ黒な太刀と、綺麗に両断されたモデル・スパイダーの首を持っている光景だった。

 あまりにも非常識な光景に動くことの出来なかった三人だったが、蓮太郎が、

「動くな! 何者だ!」

 と言い、XD拳銃を構えたことにより、多田島も同じ様にする。

 しかし延珠は、

「待つのだ、二人とも!」

 そう言って二人の前に両手を広げて立ち塞がった。

「退け、延珠!」

「そうだ! こんな怪しい野郎逃がす訳にいかねぇだろうが!」

 しかし延珠は一歩も譲らない。

 それどころか二人に背を向け、少女な話かける。

「…………妾と敵対する気はあるか?」

 すると、少女は喋りはしなかったが、小さく首を振った。

「…………なら行ってくれ」

 少女はそう言われると、そのまま走り去ってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「延珠! どういうつもりだ!」

 少女が走り去った後、蓮太郎は延珠に詰めよっていた。

「あの人は悪い人ではない」

「だから、何処にそんな根拠があるんだよ!」

 すると延珠は、

「…………あの人は数年前からたまに現れて、外周区の『呪われた子供達』に食べ物をで配っていた人だ。悪い人なはずがない!」

「そんなこと、わかんねぇだろうが!」

「それに…………」

「なんだ、早く言え」

 今度はイラついち様子の多田島が延珠を問いただした。

「妾達が束になってかかっても絶対ににあの人には勝てない」

「「なんでんなことわかんだよ」」

 今度は蓮太郎と多田島が二人同時に聞いた。

 すると、

「…………あの人はステージⅢのガストレアをあの太刀で、一撃で
・・・
いとも簡単に両断した」

「「なっ!」」

 延珠のこの言葉に二人は驚愕した。

 何故なら、ステージⅢにもなると、しっかり準備しないと簡単には勝てないような相手である。

 それをいとも簡単にとなると、尋常な強さではない。

「その上、誰が作ったのかは知らないけど、遠距離でも、『おーだーめいどひん』と言っていた恐ろしい銃もある」

「恐ろしいって、どう恐ろしいんだよ?」

「とにかく、恐ろしいのだ!」

 その様な会話をしていると、

「…………わかった。本部には俺から伝えておく。お前らはもう帰っていいぞ」

 多田島にそう言われて二人は帰ることにしたのだった。

 …………無論、蓮太郎はこの後、天童民間警備会社の社長たる、天童木更に蹴り回されたのだった。

 回避出来なかったのは、延珠が能力使用状態でピーを蹴ったダメージが回復しきっていなかったからである。


ーーーーーーーーーー??ーーーーーーーーーー

「おお! ありがとう。約束通りに持ってきてくれて」

 狐の面の少女はモデル・スパイダーのガストレアの首を太った、いかにも金持ちそうな男に渡し、札束らしき物が入った封筒を受け取った。

 この男はガストレアの首を収集するという奇妙な趣味を持った男だった。

「またいつかよろしく頼むよ」

 そう言われた少女はその男の屋敷から出て、路地裏に入ると、壁を駆け上った。

 そして、その建物の屋根にたどり着くと狐の面を外し、自らの赤い目を晒した。

「ふう、全くガストレアの首なんか集めてなにがおもしろいんだか」

 赤い目を隠すことなく少女は歩き続ける。

「まあ、そのおかげで金が手に入ることだし、我慢するか」

 屋根と屋根の切れ目に差し掛かると、少女は5メートルという距離をいとも簡単に飛び越える。

「そういえば、久しぶりに延珠と会ったな。あの頃と違っていきいきとしていたし」

 少し嬉しそうな顔をしながら少女は喋り続ける。

「あの『プロモーター』は珍しく良い奴
・・・
なのかな?」

 少女は少し考える様な素振りを見せた。

「ま、これから観察すればいっか」

 少女は不意に立ち止まった。

「ふふふ、久しぶりに東京エリアに来たけど、なかなか楽しくなって来たね」

 少女…………いや、アリス
・・・
はそう言って笑い、次の瞬間、アリスの姿は何処にもなかった。
 
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