緋弾のアリアGS Genius Scientist
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イ・ウー編
燃える銀氷
30弾 ホームズ家の性教育
「これに懲りたら二度とここで暴れるな。次やったら……分かってるよな?」
「「は、はい!」」
数十分に渡る説教の末、充分に反省したらしいアリアと白雪が素直に返事をするのを聞いて俺は満足した。世の教師はこの達成感と満足感を得るためにあんなに説教ばかりしているのではなかろうか。
しかし、これからどうするか。
今は二人とも俺に叱られたのが余程堪えたのか大人しくしたままだが、このままだと今度は外でドンパチを起こしかねない。そんなことになったら男子寮の管理人である俺の管理責任も問われる可能性がある。それだけは避けねば。
というわけで俺は、さっさと白雪の誤解を解いてしまうことにした。
「おい、白雪」
「ひぃっ、ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!こ、今回のことはお部屋を修理した後に死んでお詫びしますぅ!」
「いや、そこまでしなくていいから」
部屋の修理だけは頼むけど。費用はアリアに出させよう。
「いいか白雪。さっきの話だが、あれはお前の勘違いだ」
「さ、さっきの話?」
「俺がアリアとどうたらこうたらって話だ。俺達はただのパートナーにすぎないんだよ」
まあ、ホームズ四世とそのワトソンのコンビを『ただの』と言っていいのかどうかは微妙だが。決して恋人とかそういうことはないのだ。俺はロリコンじゃないからな。文?文は天使だからロリに含まれないんだよ。
「ほ、本当に?」
「ああ、もちろんだとも。俺の渾名はお前も知ってるだろ?言ってみろ」
「……絵に描いたイケメン」
「おいちょっと待て。俺にそんな渾名がついていたことを始めて知ったんだが」
それはいったいどういう意味なんだ?『絵に描いた餅』的な意味なのか?んなわけないか。うーむ、わからん。
「あと、ダメ人間」
「よしそれを言っていた奴を今すぐ教えろぶっ飛ばしてやる」
誰がダメ人間か。俺はちょっと生活能力がないだけだ。
「……若干話が逸れたが、つまり俺に恋人なんて出来るわけがないってことだ。分かったな?」
「う、うん」
納得してなさそうな白雪。そりゃそうだ。もっとこう『二次オタ』とか『マッドサイエンティスト』みたいな渾名が付いてたら楽だったのに。もしくは『女嫌い』とか。『昼行灯』はいらん。
「それに、俺みたいな奴と恋人なんてアリアに失礼だろ?こんな美少女が俺なんかと付き合うはずが無いってことは常識的に考えれば分かるだろうに」
「び、びしょっ」
先程から少し意気消沈していた(俺の説教のせいではないと信じたい)アリアに対するフォローを入れておく。するとみるみる赤面して、にへらとニヤける。微妙にキモい。そしてフォローのせいで白雪がまた少し殺気を出し始めた。どうしろと?
なんやかんやあったが、丸く収まりそうだと思ったその油断がいけなかったのか。
「で、でもミズキくん。それ……」
「ん?」
白雪が指すのは、実験用の白衣のポケットから顔を出しているレオポンのストラップ。このストラップは割りと大きく、そのせいで携帯をポケットに入れるとはみ出すのだ。
で、白雪はレオポンを示していた指をそのまま動かし、やがてアリアに辿り着く。
――――性格に言えば、アリアのスカートのポケットから顔を出す、レオポンのストラップに。
「ペアルックしてるぅぅぅぅううううう――――!」
ムンクの叫びみたいなポーズで絶叫しながら白雪は噴水のように涙を零す。
「ぺあるっく?」
アリアは現代ではまず使われないその死語を知らないらしく、ポカンとしている。
「ぺ、ペアルックは好きな人同士でするんだもん!私、ずっと憧れてたのに……!」
「す、好きな人同士!?あ、あわわわわわわ!ち、ちがっ、あたしとミズキはそんなんじゃっ!」
泣き出す白雪、パニくるアリア。
もうどっちも放り出してしまいたいが、そういうわけにもいかない。このままだと騒ぎを聞きつけた男子生徒がやってきて面倒なことになりそうな予感がするから。
「はぁ。白雪、白雪」
「うわあああああああああああああああんんん!!!!!!」
ダメだ、全っ然聞こえてねえ。仕方ない、あまり手荒なことはしたくなかったんだが……
「ていっ」
「ひゃう!」
泣きじゃくる白雪の脳天に軽い手刀をかます俺。それでようやく気づいた白雪がこちらを振り返るので、俺は落ち着いて語りかける。
「白雪、お前は俺の言うことが信じられないのか?」
「そ、そんなことないよっ!信じてる……信じてるよ……」
再三の否定のお陰か、態度が軟化する白雪。やはり積み重ねこそが大切なのだ、うむ。
ひくっ、ひくっ、としゃくりあげつつ、白雪は上目遣いで俺を見つめ尋ねる。
「じゃ、じゃあ、ミズキくんは本当にそんなんじゃないの?」
「おう」
「変なこともしてない?」
「うむ」
「き、キスとかも……してないよね?」
「……」
キス。キスですか。魚じゃなくて接吻な感じの方のキスですか。
どうやら今の白雪の言葉が聞こえていたらしいアリアと同様に、俺も石化する。
俺とアリアは誓って恋人なんかじゃない。変なこともしていない。それは確かだ。だが、
(キス、はしちゃってるんだよなぁ。これが)
いや、決して恋愛感情があってしたわけではないのだ。それも問題だとは思うが、今は置いておこう。
あの時の俺達は理子のバカに追い詰められ絶体絶命のピンチで、窮地を脱するための仕方の無いことであってですね。言うなれば戦術的・戦略的なキスであり、むしろハニー・トラップとかそういう感じの……いや、なんか違うな。医療行為、人工呼吸的な意味合いの方が近いのでないだろうか。やっぱどっちも違う気がする。
赤い顔で固まったまま視線だけ合わせる俺達の様子から何かを感じ取ったのか、白雪の目からどんどんハイライトが消えていく。あ、やばい。これはやばい。
「し……た……の……ね……?」
お茶の間のチビっ子に見せたら泣き出しそうな顔をしてますよ白雪さん!怖い!口から僅かに漏れ聞こえる乾いた笑い声がマジで怖い!かなりホラーだってこれ!
「そ、そ――――そういうことは、したけど!」
隣にいるアリアは石化から回復し、何故かこの状況のSAN値消費度を加速させていく。ああ、この石化がアストロンだったら良かったのに。これから襲い掛かってくるであろう痛苦は想像するだけで心がメガンテだよ。
「で、ででででででも!大丈夫!」
寄せて上げるブラを着用しても寄りも上がりもしないうっすい胸を張りながら、アリアが何事かを言っている。大丈夫?何が?恐怖でついにおかしくなったか?斜め四十五度の角度で殴ったら治るかな?ダメだったら文に頼もう。
「昨日分かったんだけど、こ、ここここここ――――」
――――こ?
「 子 供 は で き て な か っ た か ら ! 」
アリアの一言で、場が静まり返る。
こども?コドモ?KODOMO?――――子供?
なんで、子供?
アリアはいつもより三割り増しくらい顔を赤くしつつも腕を組んで仁王立ちのまま『どうよ!』とでも言いた気なドヤ顔をしている。
ひゅう。
白雪の体から、白雪っぽい姿をした半透明の何かが出て行った。その顔は半透明なのにはっきりと青かった。合掌。
「って、んなことしてる場合じゃない!」
俺はぽてん、と座ったまま真後ろに倒れた白雪を抱き起こし、がくがく揺さぶる。だがダメだ。へんじがない、ただのしかばねのようだ。
「おいアリア!お前――――なんで子供なんだよッ!」
「な、なんでって!あんたあんなことした割りに平気そうな顔をしてると思ったら知らないの!?あたしは人知れず結構悩んだのに!」
「何に悩んだんだよ!言ってみろ!」
「だ、だってキスしたら子供が出来るって、小さい頃にお父様が――――」
ホームズ三世のバッカヤロー!
娘の性教育くらいきちんとしておけよ!使用人たちは何をしてるんだ!貴族なんてアホばっかだ!
「キス程度で子供なんざ出来るわけねーだろ!んなことで出来てたら全国のカップルの大半が子持ちになるわ!」
「な、なによなによ!じゃああんたは正しい子供の作り方を知ってるの!?知ってるんだったら教えてみなさいよ!」
「 で き る か ! セクハラで捕まるっての!」
「そんなこと言ってどうせ知らないんでしょ!」
「知ってる!」
「じゃあ教えなさい!」
「無理だ!そういうのは矢常呂イリン先生に聞くか図書館で調べて来い!」
それから俺達は迷惑を訴えに男子生徒(武藤だった)が来るまで言い合いを続けたのだった。
ちなみに白雪はいつの間にか意識を取り戻したのか、気づいたときにはいなかった。
――――まるで、春になると溶けてしまう白い雪のように。
後書き
お久しぶりです!白崎黒絵です!
更新再開してからは初めてですね!さあみんな!S(スーパー)S(謝罪)T(タイム)がはっじまるよー!ごめんなさいすみません本当に申し訳ありませんでしたあ!
違うんです。聞いてください。あとがきが思いつかなかったんです。決して書き溜めてあるのが嘘というわけじゃないんです。更新停止してから再開まで書き溜めずに遊び呆けていたわけではないんです。
次はこのコーナー!
「理子りんプレゼンツ!あなたの情報くださいな♪」
理子「やっはろー!みんなの理子りんでぇーっす!ぶいっ!」
理子「というわけでこのコーナーも今回で四回目!そして今回のゲストはなんと……この方!」
メヌ「どうも」
理子「アリアの妹にして未来のヒロイン、メヌエット・ホームズさんに来て頂きました!わざわざロンドンから遠路はるばるあざーっす!」
メヌ「ちょっとした戯れですわ。それにこのコーナーにはお姉さまも参加なさったのでしょう?しかも途中でトラブルを起こしたとか。このコーナーを最後まできっちりやり通せば、また私がお姉さまよりも優秀であることが証明されてしまいますわね」
理子「そっすね!(適当)」
メヌ「それで?私は何をすればいいんでしょう」
理子「ではでは!メヌメヌは本編ではまだ未登場だからぁ本人に関する情報を明かすわけにはいかないし、お得意の推理を披露してもらおうかな?」
メヌ「メヌメヌ……まあいいです。何を推理してほしいのですか?」
理子「じゃあ、アリアの事とミーくんの事と……後は理子りんの事を教えてほしいな♪未来とか!」
メヌ「私の推理は未来予知などではないのですが……ではまずはお姉さまの事から、小舞曲のステップの如く、順を追ってお教えしましょう」
理子「キター!メヌメヌの決めゼリフ!」
メヌ「これは数年前のことなのですが、私がいつものようにお姉さまからポーカーで所持品を巻き上げたときのこと。その日頂いたのは下着だったのですが、結局それはすぐにお返ししたんですよ」
理子「なんで?」
メヌ「私はあのときのお姉さまにこう言いました――――『すぐに使えなくなりそうなので、これはお返ししますわ』と。お姉さまの胸を凝視しながら。それからです。お姉さまが見栄を張ってプッシュアップ・ブランジ・ブラを着け始めたのは」
理子「うっわーエッグいねー……」
メヌ「お姉さまはからかうと面白いんですもの。それでは次は、ミズキのことでしたわね」
理子「うん!……って、言いたいところなんだけどそろそろ尺が限界なので続きはまた次回!」
メヌ「あら、それではみなさん、ごきげんよう」
文字数が足りないお!
それでは今回はこの辺で!次回の更新は……気長に待っていただけると大変ありがたいです
疑問、質問、感想、誤字脱字の指摘、そして『あなたの情報くださいな♪』でのゲストと質問内容など、随時募集しておりますので何かありましたらコメントしてください!
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