オズのベッツイ
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第一幕その二
「それは乗り越えられるのよ、だからね」
「ドロシーさんもですね」
「前向きになられたんですね」
「以前よりも」
「そうなの」
こう笑顔で答えるのでした、五人に。
「冒険はするものよ」
「例えどんなことがあっても」
「それでもですね」
「大変な目に遭うとしても」
「それが後でいい思い出になるのよ」
苦難もまた、というのです。
「だから私はよく旅に出るの」
「そうなのよ、ドロシーはオズの国一の冒険者でもあるのよ」
ベッツイも言うのでした。
「王女であると共にね」
「そうなんですね、ドロシーさんは」
「そうした方なんですね」
「ドロシーがオズの国を冒険してね」
それこそです、ドロシーはこれまでオズの国中を冒険してきています。その数々の冒険が王室の年代記に書き残されています。
「オズの国の沢山のことがわかったのよ」
「そういえば」
ここで、です。ナターシャも気付きました。
「オズの国って物凄く色々な人がいて場所があって」
「わかっていないことも多かったわよね」
「死の砂漠の外だった場所も」
今は大陸全体が砂漠に覆われていますがかつては違いました。リンキティンクの国なんかはオズの国の外にあったのです。
「そうでしたね」
「そうした人や場所がね」
「ドロシーさんの冒険によって」
「そう、わかったのよ」
そうだったというのです。
「色々とね」
「それじゃあドロシーさんのオズの国への貢献は」
冒険によるそれはです。
「相当なものですね」
「そうよ、だからドロシーはオズの国の功労者でもあるのよ」
「私何もしてないわよ」
ベッツイの言葉にです、ドロシーは笑ってこう言うのでした。
「功績とかそんなことは」
「あら、していないの?」
「ええ、何もね」
これがドロシーの言葉でした。
「していないわ」
「それは謙遜じゃないの?」
「謙遜じゃないわ」
やっぱりこう言うのでした。
「だって。私はただ旅がしたくてね」
「それで宮殿を出て、だからなのね」
「そう、冒険は好きだけれど」
それでもというのです。
「何か目的を持ってしてはいないしいつも私だけじゃないから」
「僕が一緒のことも多いしね」
トトがここでも言ってきました。
「最初にこの国に来た時もそうだったし」
「そうね、トトはよく私と一緒にいてくれるからね」
「だって僕はドロシーの一番古い友達だよ」
それこそです、カンサスにいた時からの。
「だから僕が一緒じゃないとね」
「寂しいからね」
「僕が宮殿に残ることになったりもしているけれどね」
多くの場合はなのです、ドロシーとトトは。
「僕達は一緒だよ」
「冒険の時はね」
「大抵はね」
「トトもいてくれてね」
ドロシーは五人にさらにお話します、そのトトの頭を撫でてあげながら。
「かかしさんもいてくれて木樵さんもいてくれて」
「他にもその冒険の都度、よね」
ベッツイはまた微笑んでドロシーに言いました。
「色々な人と一緒に冒険しているからよね」
「そう、私だけで冒険に行ったことはないわ」
それがドロシーの冒険なのです。
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