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小さな信頼

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1部分:第一章


第一章

                       小さな信頼
 ヘブライの者達はだ。この時苦境の中にあった。
 彼等は戦い常に敗れていた。それは何故かというとだ。
 敵のぺリシテ人の中にだ。とてつもない男がいたのだ。
「何であんな奴がいるんだ」
「強いなんてものじゃないぞ」
「大きいだけじゃなくて力もとてつもない」
「化け物だ、あいつは」
「人間じゃないぞ」
 こうだ。ヘブライの兵達は忌々しげに言うのである。
 その男の名をゴリアテといった。彼がいてだった。
 ヘブライの者達はその強さの前に一敗地に塗れていたのだ。戦えば常に敗れ多くの死傷者を出し敵の嘲笑を受けていた。そしてだ。
 人だけでなく多くのものを失っていた。このままいくとだ。
「我々はペリシテに屈してしまうぞ」
「奴等の奴隷になってしまう」
「そうなっては元も子もないぞ」
「どうすればいいのだ」
 そのことが危惧されだしていた。しかしだ。
 誰もゴリアテには勝てずだ。敗北を重ねていた。ヘブライの戦士達は次々に敗れていく。ゴリアテはまさにだ。無敵であった。
 その彼がヘブライ軍を破っている中でだ。一人の少年がだ。そのヘブライの陣に来たのだ。
 黒い癖のある髪にはっきりとした顔をしている。黒い目の光は強い。まだ小柄であるが引き締まった身体をしており牧童の服を着ている。その少年がだ。ヘブライの兵達に尋ねるのだった。
「あの、いいですか?」
「んっ、何だ?」
「坊主どうしたんだ?」
「はい、兄さんにです」
 こうだ。少年は兵達に言うのだった。
「お弁当を届けに来ました」
 見ればだ。彼の背にはだ。
 袋が下げてあった。つまりその中にだった。
「パンと無花果ですけれど」
「へえ、そうなのか」
「感心だね、兄さんの為にわざわざね」
「ここまで来るなんてね」
「今大変だとも聞きましたし」
 戦局がだというのだ。
「それで心配になって」
「まあそれはな」
「ちょっとな」
 戦局の話になるとだ。彼等はだった。
 困った顔になる。だがそれを隠してだ。
 少年にだ。こう尋ねたのである。
「それで兄さんの名前だけれどな」
「何ていうのかな」
「はい、それは」
 兄の名前を言うとだ。すぐにだ。
 彼はその兄の所に案内された。兄は武装して仲間達と共にいた。その彼にだ。
 背中の袋に入れていた弁当をそのまま差し出す。兄はだ。
 その弁当を笑顔で受け取ってだ。こう彼に言うのだった。
「有り難う、ダビデ」
「これを食べて力を出してね」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「うん。ただ?」
「ただ?」
「ひょっとして元気ない?」
 その少年ダビデはだ。兄のその様子を見て言うのだった。見ればだ。
 その表情は晴れずだ。しかも雰囲気も暗い。そうしたものを見てだ。彼は問うのだった。
「やっぱりあれかな。負けてるからかな」
「わかるか」
「何か敵にとんでもなく強いのがいるって聞いてるけれど」
「ゴリアテだよ」
 兄は忌々しげに言った。
「あいつがいるんだよ」
「ゴリアテって?」
「名前は聞いてないか」
「敵に強い奴がいるってのは聞いてたけれど」
「それがそのゴリアテなんだよ」
 兄はこうダビデに話す。
「大きくて力も強くてな。誰が相手でも勝てるものじゃない」
「ふうん、そこまで強いんだ」
「滅茶苦茶強いんだよ」
 こう返す兄だった。
 
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