眼病から

「何かあるだろ」
「チャクラですか」
「人間の真の力か？」
「ええと、確か」
　ここで部員の一人が岩松に言って来た。
「身体の中心に七つあって」
「ああ、そうだったか」
「それで一つ一つ開放されていってですね」
「人間の本当の力を出す」
「それですよね」
「そうだったか。とにかくな」
　岩松はその部員の話を受けてあらためてだ、倉見に言った。
「今の御前はそうした他の感覚がよくなってな」
「そのうえで、ですか」
「本当の力が出てきてるんだよ」
「そうなったからですか」
「ああ、強くなったんじゃないのか？」
　こう倉見本人に言うのだった。
「やっぱりな」
「そうですか」
「ああ、目が見えないままでそれで我慢して入院し続けていたことがな」
　そのこと自体がというのだ。
「修行になったんだろうな」
「そうした感覚を鋭くさせて」
「本当の力を引き出すな」
「そうだったんですか」
「修行っていうと身体を動かすだけじゃないってことだな」
　あらためてだ、こう言った岩松だった。
「そうしたこともな」
「修行なんですね」
「柔道のな」
　まさにそれだというのだ。
「そういうことだよ」
「そうなんですね」
「さて、そうしたことも身に着けたからな」
　岩松は倉見にあらためて言った、これまでの話とはまた少し変えて。
「御前はずっと強くなったぞ」
「前よりも」
「ああ、だからな」
　それで、というのだ。
「金メダルだってな」
「いけますか」
「ああ、オリンピックで金メダルな」
　それがというのだ。
「いけるな」
「いけますか」
「前は有力候補位だったが」
　それが、というのだ。
「もう確実だな」
「確実な候補ですか」
「そうなったよ」
　こう言うのだった。
「だからこのままな」
「はい、このままですね」
「頑張ってくれよ」
「わかりました」
　こう言ったのだった。
「そうさせてもらいます」
「よし、じゃあな」
「励ませてもらいます」
　倉見は笑顔で言った、そして。
　彼はそのまま鍛錬を続けた、そのうえで。
　岩松の言葉通りオリンピックで金メダルも獲得した、勿論アジア大会でもだ。それで彼はメダルを獲得した時のインタヴューで言うのだった。