| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

小ネタ箱

作者:羽田京
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

リリカルなのは
  パパは強し

 
前書き
最終決戦。 

 

「ヴィヴィオ、助けに来たよ」

「パパ、身体が勝手に、うぁああああああああ」


 聖王のゆりかごを無理やり起動した反動だろう。
 ヴィヴィオは暴走し、見境なく攻撃しようとしている。
 このまま放っておけば限界を超えた魔力で自壊してしまうだろう。
 なんとしてでもヴィヴィオを止める必要がある。
 そのためには、暴走の原因となったヴィヴィオの体内のレリックを破壊しなければな

らない。
 さきほどヴィヴィオに助けられた。
 今度は俺がヴィヴィオを助ける番だ。


「怯えろ! 竦め! レリックの性能を活かせないまま死んで行けぇ!」


 殺しませんよ。ノリノリでヴィヴィオと拳を交わす。
 聖王のゆりかごのバックアップを受けているヴィヴィオは魔力無限チート状態だ。
 動力炉を破壊する必要があるが――。


『ドクター、動力炉の停止を確認しました!』

「よくやった、ウーノ」

『お礼ははやてに言ってあげてください』


 そうか、はやてがやってくれたのか。
 これで心置きなく戦える。


「パパぁ……笑ってるよ」

「む?」


 あきれ顔をにじませるヴィヴィオを見て苦笑する。
 俺はいつからバトルジャンキーになったのか。
 久々に全力を出せるとあって年甲斐もなく興奮している自分がいる。
 その後、戦いは一進一退の膠着状態に陥る。
 増援をよこそうとするウーノたちは止めてある。
 このレベルの戦いに援護にきても邪魔なだけだし、巻き込みかねない。
 その代り、次元震を抑えるようにいってある。
 なにせ拳の一撃一撃が小規模な次元震を伴っているのだ。
 今ははやてが馬鹿魔力によって抑え込んでいるが、長くは持つまい。


「私、足手まといにっちゃって……ごめんなさい、ごめんなさい」

「ヴィヴィオが居なければアルカンシェルで散っていた。俺がいま生きているのは間違

いなくお前のお蔭だよ」


 悔悟をみせるヴィヴィオを優しく諭す。


「……そういえば、親子喧嘩は初めてだな」

「何言ってるのパパ」

「駄々をこねる子どもを受け止めるのは父親の仕事だってことだ」
 

 無駄話をしながらも動きをやめない。
 そろそろ体力的に厳しくなってきた。
 ここが勝負所か。
 手に持ったエンジェルダストをヴィヴィオをかすめるように投げる。
 思わず目で追ったヴィヴィオの隙をつく――。


「目の良さが命取りだ!」


 無防備な身体に、渾身の右ストレートを放った。が、何ッ!?
 とっさにヴィヴィオが拳を押し付けてきた。
 全魔力をつぎ込み拮抗する。
 これだけの魔力衝撃を直接与えればレリックは砕けるはず。 
 しかし、現実は俺のほうが徐々に押し込まれている。 
 俺の優秀な頭脳は一つの方法を思いつく。
 ……これしかないか。


「ヴィヴィオ」

「なに、パパ」

「お前の父親になれてよかったよ」

「何をいって――!?」


 合わせていた拳をずらして、ヴィヴィオのレリックへと魔力打ち込む。
 ヴィヴィオのレリックが砕けたことを確認する。


「勝ったぞぉッ!」


 同時に、ずらされたヴィヴィオの拳が俺の胸へと吸い込み――。





 俺の中のレリックが砕け散る音を聞いた。
 





 まどろみから目が覚める。
 ここはどこだろう? 病院だろうか?
 なんだか悪い夢を見ていた気がする。
 そうたしか、聖王のゆりかごに乗って――。


「パパはどこ!? っていたた」


 一気に覚醒した。
 飛び起きようとして激痛から失敗する。


「今声が、ヴィヴィオ、目覚めたのね!」

「なんやて!?」

「ウーノママ、はやてママ」

 
 文字通り病室に駆け込んでいたのは、はやてとウーノの二人だった。


「よかったヴィヴィオ。あなた3日も目を覚まさなかったのよ」


 心底安堵したような表情をするウーノ。
 隣のはやても同じような顔をしていた。


「本当に目が覚めてよかったで。これでジェイルも――」

「こら!!」

「あ、まず」


 そうだ。パパがいない。
 パパも入院しているのだろうか。
 けれども、それにしては纏う空気が剣呑だ。


「ねえ、パパはどうなったの?」

「……」

 
 問いかけるも沈黙したまま答えてくれない。
 それどころか他の話題でそらそうとしてくる。
 いよいよもって不安が湧く。
 


「お願い、教えて」



 何度目かのお願いをする。
 絶対にひかない、と決意を込めた表情で2人を見つめた。


「……そうね。娘のヴィヴィオにはきちんと伝えないと、だめよね」

「遅いか早いかだけの違いやろうしね。けれどもな。あらかじめいっておく。ヴィヴィ

オは何も悪くない」 

「ヴィヴィオ、心を落ち着かせて聞いてね。ドクターは……ドクターは――」


 嫌な予感がする。
 

「――お亡くなりになったわ」


 目の前が真っ暗になった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧