タケミカズチ、抜錨します。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
暁の水平線に勝利を刻むのだ!!
前書き
ぽい語族、一人称しかも地の文で書くと何気に難しい、っぽい。
【視点:タケミカズチ】
艦載機の錬度を上げる為、航空母艦用演習場へとやって来た私は、演習用の模擬艤装を手にして自分の順番が来るのを、隣で正座をして待機している加賀さんと同じ様に姿勢を正して待っている。
私と加賀さんが待機しているという状況から既に分かるとは思うけど、今演習用の的に向かって艦載機の矢を放っているのは赤城さんです。
艦娘になってこの鎮守府に所属してから演習や実戦で赤城さんの射を何度か見たことあるけど、やっぱり赤城さんの射は綺麗としか言い表せない。
弓から矢――艦載機を発艦させる瞬間、意識を一点に集中させているから構えがぶれることもない。赤城さんなら普通の弓道でも必中の腕前だと思う。
え?私はどうなのか?私の場合、使用する弓――見た目は普通の洋弓なんだけど、的との距離や周辺環境で弦などの自動調整が可能となる装置が内蔵された特殊なのを使っているのと同義だから、射の技術でいえば空母艦娘の中で最下位だと思っている。
「お見事」
「流石ね、赤城さん」
「いえ、まだ微妙な調整が必要です。それに慢心しては足許を掬われてしまいます」
日常生活では割と緩い赤城さんも、実戦や演習の時は自他共に厳しくなる。まぁ、そのメリハリが技術を身に付ける秘訣なのかもしれないけど。
兎に角、あの集中力は見習いたいかな。索敵に支障がない程度にだけど。さっきから駆逐艦の子達が覗き見てるのに、赤城さんってば集中し過ぎて気付いてないし。ここは気付いた私が注意した方がいいかな?
「そこで覗き見している子達。見学するのはいいけど、そんな所でこそこそ見るんじゃなくて、こっちの道場で見る様にしないと駄目よ」
「わわっ、見つかっちゃったっぽい!」
ぽい?この独特の口癖は夕立ちゃんね。あと一緒にいるのは睦月ちゃんと、吹雪ちゃん?今日、この鎮守府に特型駆逐艦の艦娘が来るとは聞いていたけど、それって吹雪ちゃんのことだったのかな?
って、ああ!吹雪ちゃんが凄い勢いで松の枝に顔をぶつけた!!しかも、鼻の辺りだから凄く痛そう……。
「大丈夫、吹雪ちゃん!?」
「うぅ~……」
痛さの余り蹲ってしまっている吹雪ちゃんに、心配そうに声を掛ける睦月ちゃん。一応、私が声を掛けたのも原因みたいだし、謝っておいた方がいいかな?
「あなた、大丈夫?……鼻の所が赤くなってるわ。ごめんなさい、私が声を掛けたせいで……」
「タケミカズチさん。あなたが謝る必要はないわ。その子達がいた場所は発艦進路上ではなかったけれど、演習場内である以上艦載機の何かしらの不備で進路が逸れてしまうこともあるのだから」
「加賀さんの言う通り、演習場に無断で立ち入るのは余り褒められたことではないわね」
「す、すみません」
演習場に忍び込んでいた吹雪ちゃん達を加賀さんが少し厳しめに、赤城さんがやんわりと窘めると、睦月ちゃんが代表する様に謝ってきた。
「夕立ちゃん。睦月ちゃんが謝ってるのに、何であなたは一言も無しなのかな?次元覇王流師範として、門下生には仲間に責任を押し付けるなんてことを教えていたつもりはないのだけど……」
「す、すみませんでしたっぽい~!!!」
「はい。よくできました」
私は素直に謝ってくれた夕立ちゃんの頭に手を置くと、そのまま夕立ちゃんの頭を撫でた。うん。夕立ちゃんもそうだけど、艦娘の髪は基本的にサラサラで撫で心地がいい。これはある意味、自分にとってのご褒美でもあると思える。
「あの、演習中にすみませんでした!睦月ちゃん達は私が先輩達に会ってみたいって言ったから、ここに連れて来てくれたんです。だから――」
私が夕立ちゃんの頭を撫でていると緊張の余り混乱でもしたのか、吹雪ちゃんが謝りながら必死にそう言ってきた。別に私達は注意したかっただけで、そこまで怒ってないんだけど……。
「別に私達はあなた達に対して怒ってもいませんし、罰を与えようとも思っていませんよ。ただ、危ないから注意をしたかっただけです。……ところで、あなたは本日着任すると噂になっていた―――」
「は、はい!特型駆逐艦1番艦の吹雪です!!今後ともよろしくお願いします!!」
「吹雪ちゃんですね。私は当鎮守府の特殊航空戦隊、第8機動艦隊旗艦を務めているタケミカズチ級強襲機動特装空母1番艦タケミカズチ改です。こちらこそ今後とも宜しくお願いしますね」
「私は一航戦、第1機動艦隊所属の加賀型正規空母1番艦加賀よ。よろしく」
「同じく第一航空戦隊、第1機動艦隊所属。艦隊旗艦を務めている赤城型正規空母1番艦赤城です。あなたのことは提督から聞いています。いつか一緒の艦隊で戦いましょう」
「は、はい!」
私達が自己紹介を終えると、吹雪ちゃんは敬礼しながら元気よく返事をしてくれた。そして、鎮守府案内の続きもあるということで吹雪ちゃん達とはその場で別れることとなった。
私と赤城さん達は中断した演習の続きを始め、演習再開から数十分後。鎮守府全域に秘書艦の長門さんから放送が流された。鎮守府沖の敵棲地を第4艦隊が発見したので、こちらから打って出る様だ。
【夕立】
鎮守府沖に出現する深海棲艦の棲地が発見されたっぽくって、睦月ちゃんと吹雪ちゃん、私を含む第3水雷戦隊と他の部隊が棲地攻略の為、船渠に呼び出されたっぽい。
『主力第1機動艦隊。第2支援艦隊。第3水雷戦隊。第8機動艦隊。出撃可能な全艦隊の準備、整いました』
タケミカズチさんも出撃するってことは、相手はかなり強敵ってことっぽい?そんなことを考えていると、私の横で睦月ちゃんと吹雪ちゃんが話をしていた。
「ねぇ、睦月ちゃん」
「何、吹雪ちゃん?」
「第8機動艦隊って、タケミカズチさん合わせて4人しかいない艦隊なの?」
「吹雪ちゃん、それは違うっぽい」
「夕立ちゃん?」
「第8機動艦隊は実際の所、タケミカズチさん以外に固定された艦娘がいない部隊で、艦隊を組む時はその時手の空いている艦娘が一時配属される様になってるっぽい。今日組んでるのは、重巡の足柄さんと羽黒さん。私達と同じ駆逐艦の島風ちゃんっぽいね」
「えっ!?……そんなので連携とか大丈夫なの?」
「タケミカズチさんは単艦で5個艦隊と渡り合える艦娘だから、艦隊戦って言う意味じゃ他の艦娘と組む必要性は実際の所あまり無いっぽい。それでも艦隊を組むのは、不意を突かれない様にする為の護衛役が必要だからっぽいよ」
「そうなんだ、やっぱりタケミカズチさんって凄い人なんだね」
「あの人が単艦で挑めないのなんて、鬼か姫級の深海棲艦だけっぽいしね。って、そんなことより作戦内容をちゃんと聞いておかないと駄目っぽい」
ちゃんと聞いておかないと、次元覇王流の門下生は帰還後にタケミカズチさんからお仕置きという名の組手をさせられるっぽいし。
『秘書艦の長門だ。本日、第4艦隊が遠征中に深海棲艦と遭遇し、その際に敵棲地を発見した。この鎮守府沖海域を制圧しようとしている艦隊の棲地であることは間違いない。これよりそこを強襲する!
布陣は第1機動艦隊が航空戦力を以って敵棲地を強襲。第2支援艦隊はこれを援護。第3水雷戦隊はこれらの主力の前衛として警戒に当たって貰う。
また、敵艦隊には新型の潜水艦型と思しき深海棲艦が確認された。性能が未知数である為、この深海棲艦の相手は第8機動艦隊にして貰うこととなる。いいな。
本作戦の目標は鎮守府周辺海域における深海棲艦の脅威の排除、及び海上護衛航路の確保にある。各自、心して作戦に掛かって欲しい。慢心は禁物だ。
……では、第3水雷戦隊から先行して出発!暁の水平線に勝利を刻むのだ!!』
長門秘書艦の作戦説明が終わると同時に私達第3水雷戦隊は、海と繋がった艤装が保管された出撃用船渠へとリフトで移動。で、そこに着くまでの過程の間に、私は吹雪ちゃんの様子がおかしいことに気付いた。
「吹雪ちゃん、どうしたの?調子でも悪いっぽい?」
「この鎮守府での初陣だもん。緊張してもおかしくないよ」
「睦月ちゃん、夕立ちゃん。……実は私―――」
「そこの3人、お喋りはそこまでにして出撃だよ」
吹雪ちゃんが何か言おうとした瞬間、出撃用船渠に着いたっぽくって川内さんから話をしていることを注意された。そして、私と睦月ちゃんは吹雪ちゃんの様子を気にしながらも、艤装を装備する為の装置っぽい所に移動することになった。
装置の上に立つと、まず水上を移動する為の艤装が足に取り付けられて、太腿に魚雷発射管が装着される。そして、出撃用の斜路を滑降。海に出る直前で主砲と背面の主艤装を装着。これが基本的な駆逐艦の出撃までの流れっぽい。
船渠から出撃した私達第3水雷戦隊は、単縦陣形で目的地に向かって航行。順番は神通さん、那珂ちゃん、川内さん、私、睦月ちゃん、吹雪ちゃんの順。
私は出撃前の吹雪ちゃんの様子が気になって後ろを見てみると、重心が安定しないみたいにフラフラと航行している吹雪ちゃんの姿がそこにはあった。
「ふ、吹雪ちゃん!?本当に大丈夫っぽい?」
「吹雪ちゃん、艤装の調子が悪いの?」
「えっ!?そ、そんなこと無いよ」
「吹雪ちゃん。あなた、もしかして……」
私と睦月ちゃんに続く様に神通さんがそう口にすると、何故か吹雪ちゃんは私達から目を逸らした。そして、そのあと吹雪ちゃんの口から語られた事実は私達が驚愕するには十分過ぎる内容だった……、っぽい。
後書き
はい!ということで今回の話で次回(?)登場する深海棲艦側のボスキャラが何なのか、大体わかってきましたね。
ヒントは潜水艦と、前回の後書きに記載した○○○○○○○○で轟沈した○○○○○号。〇に埋まる文字がなんなのか、分かった人はいるかな?
タケミカズチの兵装もエグイですが、○○○○○号の兵装もエグイですよね。○○弾とか○○爆雷とか、ぶっちゃけ20世紀後半から21世紀以降のイージス艦しか対抗できないと思います。
(あれ?イージス艦でも対抗できるかな?なんせ、相手の最大船速は――。潜航されたら手も足も出ない気が……)
取り敢えず、次回こそ化け物艦船同士の戦いをお見せしたいと思います。それでは皆さん、また次回お会いしましょう。(笑)
ページ上へ戻る