ヴォルデモート卿の相棒
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組分け帽子
前書き
クレスはハーマイオニーと相性が悪い一方、逆にロンとの相性はかなり良いです。
新入生達はホグワーツの森番ルビウス・ハグリットに連れられて、険しく狭い小道を進み、大きな黒い湖をボートで渡り(この辺りでネビルのヒキガエル・トレバーが見つかる)、ホグワーツに入場した。
「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません」
新入生を校内に迎え入れた後、エメラルド色のローブを着た魔女が挨拶をする。背が高く、深い皺の刻まれたその顔はいかにも厳格そうな雰囲気を醸し出している。
名をミネルバ・マクゴナガルといい、この学校の副校長を務めている人物である。
「寮の組分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。
同じ寮生と寝食を共にし、肩を並べて勉強に励み、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。
寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリンです。
それぞれ輝かしい歴史があり、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは自分の属する寮の得点になりますし、反対に規則に違反した場合は寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りになることを望みます」
(話長ぇ……)
(こらっ、クレス! ちゃんと聞かなきゃダメでしょ!)
「まもなく全校列席の前で組分けの儀式が始まります。学校側の準備ができたら戻りますので、待っている間できるだけ身なりを整えておきなさい」
一通り説明が終わると、マクゴナガル先生は部屋を出ていった。
「私達はどこの寮になるかな?」
どうやって組分けするのかと新入生達が議論を交わす中、アレクはジークとクレスに問いかける。
「お前はどの寮に行くか大体予想つくな」
「逆に私とクレスはどう転ぶか……まあ大体予想がつくな。……いずれにしても、」
「「「おそらくバラバラになるだろうな(ね…)」」」
「さあ行きますよ。組分け儀式がまもなく始まります」
しばらくしてマクゴナガル先生が戻ってくると、そのまま新入生を引き連れて大広間に入っていった。
大広間は誰もが思わず感嘆してしまうほど素晴らしく、そして広大な空間が広がっていた。
何千という蝋燭が上級生の座っている4つの長テーブルを照らし、そこには金色の皿やゴブレットが小綺麗に置かれている。
上座には5つ目のテーブルがあり、そこに座っているのは校長アルバス・ダンブルドアを始めとする教師陣だ。
天井はあたかも天空に向かって開いているかのように、まるでプラネタリウムの如く満天の星空が広がっている。ハーマイオニーが本で知ったその光景の仕掛けを周りの生徒に説明していたが、正直余韻ぶち壊しである。風情もへったくれもない。
新入生達がその光景に見とれている傍ら、おもむろにマクゴナガル先生が4本足の椅子を置き、その上にボロボロの魔法使いの帽子を用意した。
生徒達の注目がその帽子に集まるや否や、ツギハギだらけのその帽子は突然歌い出した。
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンはもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん! 恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
歌が終わる広間にいた全員が拍手喝采をした。4つのテーブルにそれぞれお辞儀して、帽子は再び静かになった。
(…………シルクハット……か……)
「……?」
帽子の歌の中のワンフレーズを思い起こし、クレスは一瞬険しい顔になるが、すぐに元に戻ったため、アレクも特に気にしなかった。
「ABC順に名前を呼ばれたら椅子に座って帽子を被りなさい。アボット・ハンナ!」
マクゴナガル先生にハンナと呼ばれた金髪おさげの少女が、小走りで椅子の前に出てきて帽子をかぶる。
一瞬の沈黙……そして帽子は少女の進むべき寮を高らかに宣言した。
「ハッフルパフ!」
右側のハッフルパフのテーブルから歓声があがり、拍手が鳴り響く。ハンナと呼ばれた少女はそのテーブルに移動する。
その後も帽子は次々と新入生を組分けていく。
「エシャロット・クレスレイ!」
名前を呼ばれるとクレスは前に進み出て、無造作に帽子をかぶる。
「フムフム……非常に勇敢な少年である。ひたすら力を求めんとする貪欲さも持ち合わせているが、それ以上に大切な人を守り抜いてみせるという覚悟も持ち合わせている。よって君にふさわしい寮は……グリフィンドール!」
クレスは帽子を脱ぎ、割れるような歓声を浴びながら一番左端のテーブルに着いた。するとウィーズリーの双子の片割れがクレスに話しかけてきた。
「ようこそグリフィンドールへ。歓迎しよう!」
「あん? ……確か、フレッドだっけ?」
「僕はジョージだよ。君は僕とフレッドの区別もつかないのかい?」
「あぁそうか、すまんなジョージ」
「冗談さ、僕はフレッドだよ」
「しばいていいか? グーで」
「勿論ノーセンキューさ♪」
そう言ってからフレッドは、笑顔で拳を握りしめているクレスから距離を取る。
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
ハーマイオニーを走るようにして椅子に座り、待ちきれないようにグイッと帽子をかぶった。
「グリフィンドール!」
(げっ……)
帽子が高らかに宣言したのを耳にしたクレスは露骨に嫌そうな表情になる。テーブルに向かって歩いてきたハーマイオニーもそんな顔をしたクレスと目が合った途端不機嫌な表情になる。
「……何か御用?」
「いや、一緒になりたくねぇ奴と一緒の寮になっちまったなぁ、と」
「……ほんっっっと、あなたって失礼ね!」
ハーマイオニーはますます不機嫌な表情になりながらクレスから離れていった。
「あの女の子と何かあったのかい?」
その様子を見ていた双子の片割れがクレスに訪ねる。
確証はないがおそらくジョージだろう。
「いや、何も無ぇよ? ただ心底気に入らない性格だってだけで」
「わーお、身も蓋もない理由……」
「ゴズホーク・ジークフリート!」
名前を呼ばれたモノクルの少年・ジークはゆっくりとした足どりで前に出て、帽子をかぶる。
「フムフム……とても聡明な子だ。高い知性と物事を客観的に見渡せる能力を持ち合わせている。……しかし、この子の望みから考えると行くべき寮は……………スリザリン!」
帽子がジークの行く寮を宣言すると、ハリーとロンは衝撃を受けたような表情になる。
「あー、やっぱりスリザリンか」
「やっぱりって? 君、彼がスリザリンだとわかっていたのかい?」
ジョージは困惑した表情でクレスに訪ねる。ジョージに限らず、ウィーズリー家の人間は闇の魔法使いを多く輩出したスリザリン寮に対して少なからず偏見を持っている。
「なんとなく予想はついてたよ。純血主義でこそねぇが、あいつの性質はまさしくスリザリンだ。まあ機会がありゃ説明してやるよ」
クレスはジークがスリザリンに行ったことを大して気にもせず笑いながら返答した。
「マッキノン・アレクサンドラ!」
アレクはとてとてと前まで歩いて行き、かぶるために帽子を手に持った。しかし手に触れた瞬間、
「ハッフルパフ!」
「ええ!?」
まさに電光石火。組分け帽子はアレクが頭にかぶるまでもなくハッフルパフと宣言した。後からわかったことだが、歴代でもぶっちぎりで最短記録だったらしい。
(まーそうだろうと思ったが、この速さは予想外だな……)
(まあ無理も無い、なにせ奴自体ハッフルパフに選ばれるために生まれてきたような奴だからな)
その頃、クレスとジークはそのことを冷静に分析していた。
その後組分けはつつがなく終了した。
ちなみにマルフォイ・クラッブ・ゴイルはスリザリン、ハリー、ロン、ネビルはグリフィンドールとなった。
「ようお二人さん、これから七年間よろしくな」
クレスは一緒の寮になれてはしゃいでるハリーとロンに話しかけた。
「あ、クレス。こっこそよろしく!……でも残念だったね……」
「アレクとジークのことか? そんなもん予想通りだ」
ハリーが励ますような言葉にクレスはあっけらかんと答えた。その返答にロンはぽかんとした表情になる。
「予想通りって、どういうこと?」
「そのままの意味だ。俺達三人性格も考え方もてんでバラバラだからよ、ある意味この結果は必然だ。それより俺としては、あの出っ歯と同じ寮になっちまったことがとても悲しい」
「君、相当あの子のこと嫌ってるんだね……まあ僕もだけどね!」
「…やっぱお前とは仲良くやっていけそーだ」
ロンとクレスが硬く握手する様子をハリーは苦笑いで見守る。間接的に二人の友情の生け贄にされたことを、あの少女が知ったらどう思うだろう?
歓迎回はまだまだ続く。
後書き
以上、組分け回でした。
主要オリジナルキャラがバラバラに配属されました。まあ仕方ない。
アレクはハッフルパフと決まっていた、と言うより、ハッフルパフ的要素を詰め込んだキャラがアレクという少女なのです。
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