ヴォルデモート卿の相棒
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ダイアゴン横丁
前書き
……での準備は7割方カットしました。だれるので。
ダイアゴン横丁は、魔法使いや魔女が必要とするありとあらゆる魔法道具が売られている通り道である。
ロンドンにあるパブ「漏れ鍋」の裏庭にある壁の特定の煉瓦を杖で叩くと、ダイアゴン横丁に入ることができる。
マグル(魔法使いではない人々)から隠れるようにして存在しているその横丁に行くには魔法的手段を用いない場合、認識阻害魔法がかけられているパブ『漏れ鍋』の裏庭を経由しなければならないため、この通り道はマグルから完全に隔絶した世界と言える。
そんなダイアゴン横丁を、二人の少年少女が散策していた。
少女の方はウェーブのかかったセミショートの金髪に、薄いブルーの瞳の非常に整った顔立ちをしている。
誰が見ても敵意を感じさせないあどけない表情で辺りの物を興味深そうにキョロキョロと見回す様子は、上京したてのおのぼりさんを連想させる。
少年の方は艶のある黒髪をした、これまた非常に整った顔立ちをしているのだが、何よりも目立つのは彼の鷹のような鋭い眼だ。目を合わせた人を無条件に威圧するその目つきは、嫌が応にも他者を怯えさせるか、警戒心を抱かせる。腰に差した小太刀(小型の日本刀)も相俟っていかにも「殺る気満々」といった風貌である(強い認識阻害魔法がかかっているのか、小太刀のことは誰も注目しないが)。
まるで興味ありませんと言わんばかりの眠たげな表情で周りのことなど目もくれていない。
ありとあらゆることが対極なこの二人だが、二人仲良く目的の場所へ向かっている。
「わぁっ! すごいね~、ドラゴンのきもだって! でも高いな~……」
「そうだな」
「あっ、フローリアン・フォーテスキューだ! 今度食べに行こうよ!」
「そうだな」
「……あっ! ニンバス2000発売したんだ!……でも私は飛ぶの苦手だしなぁ」
「そうだな」
「…………1368年に成立した中国の王朝は?」
「明だな」
少女が話しかけてもことごとく生返事で返す少年だが、軽い引っかけ問題を難なく答えられるあたり、どうやらちゃんと聞いた上で適当に返事をしているようだ。
「もうっ! ちゃんと聞いてるなら適当に流さないでよクレス!」
「うるせーなアレク……眠いんだから仕方ねぇだろ」
膨れっ面で少年・クレスを軽く責める少女・アレクだったが、クレスは眠そうにあくびをしたまま全く取り合わない。
「……つーかよぉ、ジークの奴はいつの間にどこ行きやがったんだ?」
「あっ、ジークなら『フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で気になる本をいくつか見つけたので先に済ませておいてくれ』って言ってたよ~」
「……またかよあの本の虫は。なあアレク、この先あいつが死んだらあいつの墓標は古本で組み立てようぜ」
「なに言ってるのクレス!? 冗談でも死ぬとかそういうこと言っちゃダメだよ!」
「誰がすぐ死ぬっつったよ!? あのマイペースバカがそんなすぐ死ぬわけねぇだろ!」
「そっか……あれ? マイペース云々はクレスも人のこと言えないと思うけど?」
「…………おっ、着いたぞ。『マダムマルキンの洋装点』」
「誤魔化したね」
「やかましい」
店の外で待機しているのであろう2mを超える大男を一瞥しながら、二人は店内に入っていった。
マダム・マルキンは、藤色ずくめの服を着た、愛想のよいずんぐりした魔女だった。
「あら、坊っちゃんと嬢ちゃんホグワーツなの?」
「ああ」
「はいっ♪」
「全部ここで揃いますよ……ちょうど今二人ほど男の子が丈を合わせているところよ」
マダム・マルキンに案内されるまま店の奥に着いて行くと二人の少年が、片方は得意気に、もう片方は不機嫌そうな顔で話し込んでいた。二人は得意気な表情をした青白い、あごのとがった男の子の隣の踏台に並び、マダムマルキンはもう片方のくしゃくしゃの黒髪の少年の丈を合わせる作業に戻り、アレクとクレスには新しく追加された魔女が採寸を始めた。
「おや、君達もホグワーツかい?」
「ああ」
「うん!」
青白い少年の問いかけにアレクは笑顔で、クレスは眠たげな表情で応答した。
「ねえ、君達の両親は僕らと同族なのかい?」
「魔法使いと魔女だよ。そういう意味で聞いてるんなら」
「俺らもそうだな」
「……うん」
青白い少年がまた問いかけると、くしゃくしゃ髪の少年は不機嫌そうに、クレスはどうでもよさそうに、アレクは少し寂しそうに答えた。三人の返事に気をよくしたのか、少年は得意気に語る。
「それはよかった。他の連中は入学させるべきじゃないと思うよ。そう思わないかい? 連中は僕らと同じじゃないんだ。僕らのやり方がわかるような育ち方をしていない。手紙をもらうまではホグワーツの事だって知らなかった奴だっているんだ。考えられないことだとだよ。入学は昔からの魔法使いの名門に限ると思うよ。君達の家族の姓は何て言うの?」
くしゃくしゃの髪の少年は答える前に採寸が終わったので、逃げるように踏台から飛び降りた。よほど青白い少年と会話していたくなかったようで、青白い少年の「ホグワーツでまた会おう。たぶんね」と気取ったセリフを聞き流して店を出ていった。
「それで、君達の家族の姓は?」
「エシャロットだ」
「…………マッキノン」
「……!? その姓は……ということは君達の両親は……」
二人の応答を聞き、さっきまで得意気にしていた少年はバツが悪そうな表情に変わる。
「まあそういうことだ。俺はともかくこいつは気にしてるからあんまり踏み込んでくれるな」
「……すまない、考えが浅はかだったようだ」
「……ううん、大丈夫だから気にしないで」
と、そこで二人の採寸が終わり、アレクとクレスは踏台
から飛び降りた。
「じゃあな」
「バイバイっ」
「あ、ああ……ホグワーツでまた会おう」
まだバツが悪そうな少年のセリフを聞き流し、二人は店を出る。
「さてと、入学準備は整ったな」
「……うん」
「……あのなアレク、一つ言っておく」
「……?」
目に見えてしょんぼりしているアレクに呆れたように溜め息をついた後、クレスはアレクの目をまっすぐ見て言う。
「お前は一人じゃねぇ。少なくとも俺やジークやルーチェさんは……お前の家族だ」
「…………うんっ♪」
クレスのぶっきらぼうな励ましに、アレクは心の底から嬉しそうに頷いた。
「さて、先にルーチェさんとこ戻るか」
「あれ? ジークはほっといていいの?」
「あいつまだ採寸とか色々残ってんだろ、付き合ってられるか」
「ものぐさだなぁ」
待ち合わせ場所『漏れ鍋』に向かって歩きだしたクレスに、元気を取り戻したアレクは後ろからついていく。
これがクレスレイ・エシャロットとアレクサンドラ・マッキノンの、ハリー・ポッターとドラコ・マルフォイとの初邂逅であった。
後書き
というわけで、オリキャラ4人の名前が出てきました。
オリキャラはこれ以降しばらくは出しません。
オリ主ポジションはクレス君です。既に色々と世界から浮いていますが気にしない気にしない。
ページ上へ戻る