| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

パットン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

2部分:第二章


第二章

「李大統領はソウルを脱出しました」
「大統領は確かソウルを死守すると言っていなかったか?」
「状況が変わったとのことです」
 実に早い状況の変化であった。
「それで」
「全く。何をやっているんだ」
 はっきり言えば何もしていなかった。だから僅か三日で陥落したのである。
「それで北朝鮮軍はどうしているか」
「さらに南下を続けるとのことです」
「やはりな」
 その報告を聞いて誰もが当然のことだと思った。そもそもその為に戦端を開いたことが明らかだからだ。情勢を鑑みてみればだ。
「そう来るか」
「はい。それで国連ですが」
 第二次世界大戦後できた国際連合のことである。
「軍を派遣するそうです」
「あのソ連が賛成するとは思えないがな」
 ソ連が北朝鮮のバックにいるのは確実だった。何しろ彼等はそのソ連の兵器を使っているのだから。
「それはな」
「では。ソ連はどう出て来るでしょうか」
 この疑問が話に出て来た。
「やはり反対でしょうか」
「今出席をボイコットしていたな」
 丁度中華人民共和国の国連加盟問題でソ連は国連の場において欠席を続けていたのである。
「それではそのまま出席せずにだ。話が進められるな」
「そのままですか」
「欠席だが反対はしていない」
 そこであった。
「なら。何の問題もない」
 この言葉通りの結果になった。ソ連は出席せずに会議ではアメリカ軍を中心とした軍が派遣されることになった。しかしその頃にはもう韓国軍は何と半島の端にある釜山にまで追い詰められてしまっていた。
「何っ、もうか!?」
「そこまで追い詰められているのか」
 これには誰もが呆れてしまった。
「何と情ない話だ」
「今ここで釜山に上陸しても反撃できるのか?」
 誰もが韓国軍のあまりものふがいなさに絶句したがそれには理由があった。
 北朝鮮軍は強かった。やはりソ連からの援助を受けているのが大きかった。ソ連軍で実戦経験を積んだ者が多かったのも大きかったがやはりこれであった。
 特にその中でも。最もその存在を誇示していたのはあれであった。
「韓国軍はあの戦車に手も足も出ないようです」
「T−34にか」
「はい、あれです」
 ここでこの戦車の名前が出て来たのであった。
「あの戦車の前に一敗地に塗れているとのことです」
「そうか、あれが出て来たのか」
 誰もがT−34と聞いて顔を顰めさせたのであった。
「あの戦車が」
「予想された展開では?」
「まあな」
 このことは否定されなかった。
「ソ連といえばあれだしな」
「そうですよね。カチューシャとあれです」
 ここで言うカチューシャとはカチューシャロケットのことである。車両にロケットランチャーを積んでいてそれで一斉射撃を加えるのだ。その威力は想像を絶するものでありドイツ軍からはスターリンのパイプオルガンとも言われそのT−34と共に非常に恐れられていた。
「二つがソ連軍の象徴ですから」
「わかった。じゃあまずはだ」
「とりあえずはですね」
 ここで話は少し変わった。
「マッカーサー元帥のお考えですが」
「ああ」
 GHQの総司令官でありアメリカ陸軍元帥でもある。第一次世界大戦でも先の第二次世界大戦でも武勲を挙げている。言うまでもなく今度の戦争でも総司令官になっている。
「このまま釜山には上陸しないとのことです」
「そうなのか」
「まずは仁川だそうです」
「あそこか?」
「はい、あそこです」
 こう話される。その仁川とは韓国の首都ソウルのすぐ側にある。そこに上陸するというのだ。
「あそこから上陸して反撃に移るつもりだそうです」
「そうか。敵の横腹を突くか」
「どうやら」
「それはわかった」
 まずは仁川上陸には頷くのだった。
「上陸場所はな。しかしだ」
「問題はそれで何を使うかですね」
「まずは空だな」
 最初に話に出たのは空であった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧