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くノ一

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第三章

「この者を使ってです」
「情報を集めるか」
「両家の不穏分子、そして後ろを」
「そなたの警護は」
「何、警護を増やしてです」
 そして、というのだ。
「毒見も用意しますので」
「安心していいか」
「そして妹達の警護も増やしましょう」
 肝心の二人も守ろうというのだ。
「無論ゴンガード家にもお話をして」
「そしてか」
「あちらの次男殿、三男殿も」
 警護を増やす様にというのだ。
「お願いしましょう」
「わかった、ではな」
「はい、そうして手を打ち」
「ではこの者はか」
「私の警護でなくです」
 ディンギルの言葉は変わらなかった。
「そうしたことをしてもらいましょう」
「そうするべきか」
「はい、それでは。そして」
「そしてとは」
「この件は表には出さない様にしましょう」
 影で話を進めようというのだ。
「絶対に」
「では不穏分子やその裏にいる者達はどうするのだ」
「証拠を暴いて処刑したり密かに消えてもらうこともです」
 そうしたこともというのだった。
「あまり」
「そうした者が多いとな」
「急死は多いと」
「おかしく思えるな」
「今は流行病も流行っていませんし」
 それで死んでいったということにも出来ないからだというのだ、ディンギルはこうしたことまで考えているのだ。
「ですから」
「そうしたことをせずにか」
「はい、それにこうしたことは頭を潰せばいいです」
 ディンギルはグレアノフに冷静な顔のまま語っていく。
「雑魚は雑魚、何ということもありません」
「首謀者達だけを潰してか」
「そうです、その首謀者達もです」
「密かに消えてもらうこともか」
「何人も急になっては」
 流行病も流行っていない今はというのだ。
「おかしく思われるので」
「だからだな」
「そこは汚職でも見付けて」
 そうしてというのだ。
「それを理由にしてです」
「去ってもらうか」
「遠方に流せばそれでいいかと」
「そして裏に何者かがいれば」
「その者もです」
 汚職を見付けてというのだ。
「消えてもらいましょう」
「そうしていくか」
「では」
 こうして話を整えてだった、ディンギルは月光にも言うのだった。
 彼は月光を己の部屋に呼んだ、月光はそこでも彼の前で片膝を折って屈み畏まっていた。その彼女にだった。
 彼は落ち着いた声でだ、こう言った。
「まずは我が家の中を調べてもらいたい」
「ゴンガード家との婚姻を妨害する者を」
「そうだ、そうしてもらえるか」
「わかりました、それでは」
「それでその調査の仕方だが」
「それでしたら」
 ここでだ、月光は。
 不意に立ち上がりだ、そのうえで。
 顔を覆っていた漆黒の布の覆面を脱いだ、すると。
 楚々とした大人しそうな顔立ちの長い黒髪の少女が出て来た。目はやや切れ長で大きく鼻はさして高くない。彫の浅い顔で唇は小さい。
 その顔を出してだ、瞬時にだった。
 忍者の服の左肩に手をかけてそれを右に勢いよく引っ張って脱ぐとだ、その下にもう黒地に白エプロンのメイド服があった。それはクレバート家のメイド服だった。
 そのメイドの格好になってだ、ディンギルにこう言ったのである。 
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