うっかり失言
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第四章
「それで知ってたんだよ、僕も」
「そうだったのね」
「それでもね」
このことはだ、涼真は強く言った。
「もうそうしたお店は使っていないから」
「私と結婚したから」
「そう、だからね」
それでとだ。涼真は理央に話した。
「今は風俗店自体にも行ってないよ」
「それならいいわ」
「うん、けれどね」
「ええ、まさかね」
お互いにだ、苦笑いを浮かべて言い合うのだった。
「お互いこのホテルを知っていて」
「使っていたなんてね」
「ちょっとね」
「思いも寄らなかったね」
こうそれぞれ話すのだった。
「本当に」
「全くよ、ただ」
「ただ?」
「これからはね」
理央は夫に対してだ、ここは強い声で言った。
「二人でね」
「二人だけでね」
「ここに入る時は私達だけにしましょう」
「夫婦だけでね」
「浮気は駄目よ」
これは絶対に、というのだ。
「いいわね」
「わかってるよ、僕だってね」
涼真もだ、微笑み妻に応えた。
「そうしたことはね」
「守ってくれるわね」
「浮気はしないよ」
このことは絶対に、というのだ。
「お酒は飲むけれど」
「そうよね、私もね」
理央も言うのだった。
「浮気はしないから」
「絶対によね」
「そう、しないから」
夫にこのことを約束するのだった。
「そうしたことはね」
「うん、それじゃあね」
「ホテルに入ったから」
理央は夫と約束し合ってからだ、それからだった。
自分から服を脱ぎつつだ、彼にこうも言った。
「わかるわよね」
「うん、よくね」
「最初はどうするの?」
「お風呂に入る?」
涼真も自分から服を脱ぎつつ妻に言った。
「これから」
「二人でお風呂に入って」
「うん、身体を奇麗にしてね」
それからというのだ。
「お風呂場で、でもいいし」
「ベッドでも」
「ソファーでもね」
涼真はソファーも見つつ話した、部屋の中はわりかし広く人が寝られるだけのソファーも置かれている。テレビもある。
その部屋の中でだ、理央は涼真に言い涼真も応えたのだ。
「いいけれど」
「まずはね」
「身体を奇麗にしてね」
そして、だというのだ。
「それからね」
「何ならお風呂場の中でどうかな」
夫はまたこう言った。
「まずはね」
「一回?」
「そう、お風呂場の中で」
「別にそれでもいいけれど」
「何はともあれ最初はだね」
「お風呂に入りましょう」
「そうしようね」
二人で服を脱ぎながら話をするのだった、そのそれぞれがかつては別の相手と入っていた部屋で。夫婦で楽しく過ごすのだった。
うっかり失言 完
2014・11・19
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