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ダウンタウンすと~り~

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第一章

              ダウンタウンすと~り~
 ダウンタウン、聞こえはいい。
 けれど要するに下町、それ以外の何でもない。私は葛飾に生まれてずっとここで暮らしている。それは家でも学校でも同じだ。
 築何十年の家の自分の部屋で目を覚まして一階の居間に降りるともうそこで母が野暮ったい格好でいてこう言ってくる。
「お早う、今日もよね」
「ええ、部活あるから」
「朝練ね」
「そう、行くから」
「あんたも頑張るわね」
「頑張るって普通でしょ」 
 ちゃぶ台の自分の席に座りながら私は母に答える、いつもそうしている。
「高校生は」
「まあそうね」
「それに学校すぐ近くだし」
「自転車で行けるからね」
「あの学校にしてよかったわ」
 もっと言えば受験先に選んで合格してだ。
「本当にね」
「レベルもそこそこだしね」
「何よりも通学が楽だから」
「通学が便利なのが第一よ」
「そうよね、だからね」
「御飯食べてすぐによね」
「ええ、行くわ」
 部活の朝練習にだ。
「いつも通りね」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「あんたまたその食べ方なのね」
 やれやれといった口調でだ、母は私に言ってくる。
「御飯にお味噌汁かけて」
「だってすぐに食べられるから」
 実際にお味噌汁を御飯にかけている、そこに着けものを乗せて。
 私は朝御飯を食べる、これが私のいつもの朝御飯だ。おかずは今は目玉焼きだけれど他には塩ジャケの時も多い。
「だからね」
「無作法でしょ」
「お父さんも兄貴もそうしてるじゃない」
「二人にもいつも怒ってるわよ」
 そういうことはするな、とだ。
「けれどなのよ」
「二人共聞かないのね」
「そうなの、ましてあんた女の子でしょ」
「それはね」
「女の子はそんな食べ方しないの」
「いいじゃない、家の中なんだし」
「そうした問題じゃないわよ」
 母は私に口を尖らせて言う、自分も御飯を食べながら。
「女の子は可愛くないと」
「駄目なのね」
「全く、寝る時はジャージで」
 上下共だ、白の。
「色気も何もないんだから」
「いいじゃない、楽なんだから」
「もうちょっと女の子らしくしなさいっていうの」
 これが母の言い分だった。
「いいわね」
「そう言われてもね」
「そんなのだったらお嫁さんの貰い手いないわよ」
「大きなお世話よ」
 口を尖らせてだ、私は母の今の言葉に返した。
「ちゃんと相手はいるから」
「正典君?」
「そう、あいつがいるから」
「正典君ももの好きね」
 母は笑って私にこんなことも言ってきた。
「あんたみたいなのと付き合って」
「もの好きって何よ」
「だってあんたよ」
「私だからなの」
「そうよ、あんたみたいなガサツな娘の何処がいいのか」
「わからないっていうのね」
「まあ正典君には感謝してるわ」
 こうも言った母だった、どうにも朝から嫌な話になっていると思いながらとりあえずは朝御飯を食べた。そうしてだった。
 私は家を出て学校に向かった、すると。
 そこにその正典が来た、そうして笑顔で私に言ってきた。 
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