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執筆手記

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没ネタその6 ネギに憑依しました

 光が眩しくて目を覚ましたら、知らない天井だった。

 甘ったるい匂いが鼻を突く――――最初の違和感――――口の中で舌を動かしたが歯が無い。

 結構気に入っていた犬歯も奥歯も、綺麗に生え揃っていた前歯も、全部無くなっていた。

 ――――夢か。俺はまだ布団の中で、体が動かないと寝ているだけだ。

 歯が無くなっている様に感じるこの感触も、きっと夢で、何かと勘違いしてるんだ。

 ――――――なら寝よう。起きればいつもの日常だ。

 そして俺は、授乳されるまで、それが現実だとは気付かなかった。



………………
…………
……


 ――――俺、死んだか。

 あの衝撃的事実から三年、俺は現実と言うか――――この悪夢を受け入れていた。

 俺の名前はネギ・スプリングフィールドと名付けられ、あと六年もすれば学園ハーレムを築くバグキャラだった。

 赤ん坊だった俺を、ネギ、ネギ、と呼びかけ、杖を振り魔法を使うご近所――――確定だろう。

 動ける様になってからは、絵本代わりに魔法の本を強請り、文字を覚え、魔法を覚えた――――たぶん瞬間記憶能力がある。

 家に置いてあったネカネの教科書は全て読破、魔法も習得し、かくれんぼと称してネカネと爺相手に逃亡サバイバルの練習。

 そして、今日俺は――――村が襲撃される前に全力で逃亡した――――全村人が騒ぎ出す様に手紙を置いて逃げた。


 ――――冬が来る前に、世界を見てきます。


 どっかのバカが計画した襲撃計画に巻き込まれてたまるか。

 魔法で飲み水を作り出し、氷と鉄板で補強したハングライダーを使い風の魔法で昇する。

 かく乱工作はしておいた。姿を消す魔法だと魔力までは隠蔽できずに看破されるので――――囮の数を増やした。

 木を隠すなら森。見つかるのなら木を増やす、俺の魔力で霧を発生させ、ダミーの紙飛行機を全方角へ飛ばしてある。

 天気予報の魔法で上昇気流を捕まえて、後は魔力を節約しながら移動。

 日本の方角が分からなければ――――見える所から直接行けば良い、何て考えてた時期も俺にはありました。


 ――――――俺は今、成層圏から下降中である。


 温度と気圧が変わらない登山用の魔道具を組み合わせたおかげで凍死したり目玉が飛び出さずにすんでいる、が。

 怖ッ!? 降りる時の振動が本気でやべえッ!? 翼が、氷の翼がメキョメキョ、バッキバキ言って――あ、もげた。


「――――だあああああああッ!?」


………………
…………
……


 千葉県某沿岸。


「――――ふぅ。死ぬかと思った」

「アニキぃいぃいッ!? 言う事はそれだけっスかッ!?」

「おぉ、起きてたかカモ」

「そりゃ起きてますよッ!? 気が付いたら海の中とかッ!? でっかい壁にゴリゴリと削られて、もう少しでおっ死ぬ所でしたよッ!?」

「アレは日本海溝だな、上空で体温を確保する為に風除けの鉄板を背負ってなかったらヤバかった」

「地獄の淵かと思いましたよッ!?」

「安心しろ、本当の地獄は此処からだ」

「アニキぃいぃいッ!? …………魔力の強いアニキの使い魔になれた、あの時の感動をオレっちに返して下さい…………」

「俺がこれから行く所は――――若い女の子の下着が数万単位であるんだが?」

「――――ッ! 一生お供させてくださいッ!!」

「さて、逝くか――――地獄の蓋を開けにな」

「…………アニキ、やっぱ帰って良いスかね?」


 ――――いざ、麻帆良へ


………………
…………
……


 深夜。麻帆良学園近郊。


「――――良いか? これから結界内に入るからな? 俺は間違いなく撃退されるから、下手に手を出して死ぬなよ?」

「…………アニキ、本気でやるんですかい?」

「俺の人生だからな、俺が切り開かなくてどうする?」

「…………アニキぃ……」

「では逝くぞ」


 結界内に侵入して霧の魔法を複数使う――――遠くに大人の影を見つけたので教師だと断定――――まずは外れか。

 隠蔽魔法を使って霧の中を逃げる――――次のエリアに行って見るか。

 何度か教師や生徒らしき影と遭遇したが、お目当てが見つからない――――風邪でも引いて寝てるのか?

 魔力が限界に近付いてきた所で、小さな影を見つけた、居た。アレだ。

 ポンポンと胸で眠るカモに別れの挨拶をした後、近くの木の影で仰向けに寝転がり、俺は自分自身の両目を両手で押えた。

 さて、行くぞ? 死んでくれるなよ俺。大きく息を吸って叫ぶ。


「だ~れ、だッ!?」


 俺が叫んだ瞬間、俺の近くにあった木が吹き飛ぶ音が聞こえ、手首を掴まれ顔から手の平を引き剥がされる。


「誰だ? キサマ? 何故子供がこんな所に居る?」

「ナギ・スプリングフィールドの子供だよ、初めましてエヴァンジェリンさん」

「アイツに子供!? …………私に会いに来た!? 一体何の用!だ?」

「詳しい事は俺の前世の記憶を見てくれるかな? その方が早い」

「…………妙な真似をしたら殺すぞ」

「何時でも殺れるだろ?」


 その後、エヴァの別荘に連れ込まれ、俺の記憶検証が始まった。


「キサマの記憶は見せて貰った――――ふざけた話だな――――私に保護を求めに来たのか?」

「いやいや、弟子入り希望だよ。上手くやれば数百年は生きられる身体みたいだし、仲良くやって行きたいな」

「――――なるほどな。チャオが来るまで良い暇潰しになりそうだ――――それで? キサマは私に何を差し出す?」

「えー? カシオペア手に入るでしょ?」

「それはチャオが持っているものだろ、キサマから何か遣せと言っているのだ」

「俺がクーフェイか、俺の家系とクーフェイの家系が結ばれないとチャオ来ないよ?」

「お前の意思とは関係無しにチャオは生まれるのだろう? 話にならん!」

「それだと俺の血ぐらいしか残ってないけど、それで足りる?」

「足らんッ!! キサマの人生、全てを遣せッ!! 我が下僕としてなッ!」

「はじめからその心算で弟子入りに来たんだけど?」

「――――キサマの頭では回りクドイ話は出来んようだな……」

「馬鹿ですまん。何を言われてるのか、まったく理解できてない」

「ふん。とりあえず村へ帰れ」

「あれ? 弟子入りは拒否?」

「違う。キサマが此処に居る事が、あの腐れ爺にバレてるからだ」

「やっぱりさっきのは誘導されてたか、三歳児で此処まで上手く行く筈無いよな」

「それに冬には襲撃があるのだろう? イベントをしっかりこなして来い、これは師匠命令だ」


――――――――――――没ネタ此処まで。 
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