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ルドガーinD×D (改)

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三十二話:愛おしいこの幸せ

 
前書き
コーヒーの準備は済ませたか? リア充爆発のお祈りは?
部屋の壁をボコメキョにへこませて悶える心の準備はOK?

それでは本文です、どうぞ。

 

 


『宇宙戦艦ト~マ~ト~♪』


目覚まし時計から音が鳴り始める。俺は覚醒しきらない頭でボーッとしながらもなんとか手を伸ばし目覚ましを止める。そのまま意識が覚醒しきるまで目をつぶってジッとする。そして意識が覚醒しきったところで大きく伸びをして隣で眠る愛しい人を見る。

生まれたままの姿で布団にくるまる黒歌はやけに官能的で尚且つ美しかった。
……一応、誤解の無いように言っておくけど別に俺は大人の階段を昇ったわけじゃないからな。
俺にはまだそんな度胸はない。ヘタれって言うな、ヘタれって。


「愛しているよ、黒歌」


俺はまだ起きていない黒歌を起こさないようにソッとささやきかけ、頬にキスをする。そして名残を惜しむように一度、黒歌の頭を撫でて、朝食を作るために布団から抜けて台所に向かう。キッチンで証の歌を歌いながら料理を作っていると、匂いにつられたのか黒歌が少し眠そうに目をこすりながら起きてくる。


「おはよう、黒歌」

「おはようにゃ、ルドガー」


お互いに挨拶をして、俺は一旦料理を作る手を止めて黒歌の元に行く。そして優しく口づけを交わす。このおはようのキスは黒歌から提案されたものだ。最初は恥ずかしかったけど今では俺の方から率先してやっている。この愛しいお想いが押さえられないからな。

それにこっちからするとキュッと目をつぶって俺を待つ可愛い黒歌が見られるからな。
最近、自分でも色ボケている気がするけど気にしない。彼女を可愛がって何が悪い!
もし、ダメだと言う奴がいるなら『絶拳』百発だからな、ありがたく思うんだな。

料理を作り終わったら、一緒に食卓に着く。前から何度も一緒に食卓に着いているけど恋人になってからはその形も変わった。精神的な違いもあるけど一番の違いは座る位置が変わったことだな。前は向かい合った状態で座っていたけど今は違う、今は隣り合って座っている。何故かって?
それは―――


「はい、ルドガー、あーん♪」

「あーん」


お互いに『あーん』して食べさせ合うためだ。向かい合った状態だと遠くて食べさせ合いづらいからな。そんな事を考えながら俺は黒歌の差し出したスプーンの上に乗る『トマト風オムレツ』をパクリと食べる。うん、美味い。やっぱり黒歌に食べさせて貰ったからかな。そう言うと黒歌は、はにかみながら喜んでくれる。最近は毎日、同じようなことを言っているけど黒歌はいつも嬉しそうに笑ってくれるから俺も嬉しいよ。


「黒歌、あーん」

「あ、あーん」


何故か、自分がやる分には一切恥ずかしがらないのに、俺の方からやってやると恥ずかしそうにするんだよな、黒歌は。まあ、そう言うところも可愛いんだけど。俺は『トマト風オムレツ』を美味しそうに食べる黒歌を見ながらそう思う。そのまま交互に食べさせ合っていきデザートの『トマトゼリー』も同じように食べさせ合い最後の一口は同時に『あーん』をする。これもいつも通りだ。

さてと……今日は休日だけど何故か部長から学校に来るように言われているから行くか。いつもなら、強制しない部長がそう言うんだから何かしら仕事があるんだろうな。それなら行かないわけにはいかない。俺は休日なので特に制服はいらないだろうと思ってジャージを着る。何かしら作業があるならこっちの方がいいしな。


「それじゃあ、行ってきます。黒歌」

「いってらっしゃいにゃ」


俺は黒歌からいってらっしゃいのキスを貰って学校に向かい歩き出す。
しばらく歩いていると、同じように学校に向かうゼノヴィアが見えたので声を掛ける。
ん? なんで、ゼノヴィアが居るかだって? まあ、それは色々と込み入った事情があるんだけど簡単に言うと聖書の神とやらの死を知って投げ槍気味に部長の新しい『騎士』の悪魔に転生したらしい。

因みにイリナはエクスカリバーの本体を持ち帰る為にちゃんと帰っていった。まあ、二人共、残ったら色々と不都合があるだろうしな。それに、イリナは神の死を知っても教会から離れるという選択は出来ないらしい。まあ、今まで信じていたものだからなあ……実際の所ゼノヴィアも相当悩んで決めたらしいし、そうするのが普通だろうな。


「ルドガーか、丁度いい。一緒に行こう」

「ああ。それでゼノヴィアは今日何で呼ばれたか知っているか?」

「プール掃除だと聞いているが、聞かされていないのか?」


さも当然のように聞いていないのかと聞き返して来るゼノヴィア。
はい、聞いていません。いつも通り、大切な所は省かれて伝えられています。
俺は気にしてないから。だから、なんだか哀れそうな目で俺を見ないでくれ。
泣きたくなる。


「……なあ、俺って影が薄いのか?」

「いや、十分すぎる程濃いと思うぞ」


今度は何を言っているんだこいつ? みたいな目で見られる。いや、薄いよりはいいんだけどそんな顔されると俺がどういう風に見られているのかが気になって来る。
俺はただのトマトと黒歌が大好きな人間なんだけどな……。え? 十分濃い?

………そう言えばもうそろそろトマトの収穫シーズンだな、今度近所の農家さんに手伝いに行かせてもらおう。これは決して現実逃避ではない、決してな!
それにしても、プール掃除か……俺の掃除スキルが唸りを上げる!





「ボサッとするんじゃない、イッセー! もっと的確に効率よく動くんだ。そんな府抜けた掃除態度で汚れを落とせると思うな!」

「いや、幾らなんでも気合が入りすぎだろ……」

「何、後退しているんだ! 掃除に後退の二文字はない!」


現在俺はみんなのプール掃除の指揮をとっている。全く、みんなは掃除の神髄ってものをまるで分かっていない。少々痛いかも知れないが、身をもって知ってもらおう。俺は汚れを十分に落としきれていなくて落としきるために後退するという効率の悪い掃除方法をしているイッセーの口の中に向けて“弾丸”を放つ。『ヘバアッ!?』と変な声を上げて崩れ落ちるイッセーに詰め寄りとどめの一撃を放つ。イッセーはそんな俺に何か言いたそうにもごもごと口を動かしてゴクリと“弾丸”を飲み込んでから立ち上がり口を開く。


「色々と言いたいことはあるけど、まず、言いたいことは何で銃弾の代わりに『ミニトマト』が撃ちだされてくるんだよ!?」

「何か問題でも?」

「大ありだよ!?」


さも当然のように返すと何故かイッセーに突っ込まれる俺。俺の神器(セイクリッドギア)が俺の願いを具現化させた武器に何て事を言ってくれるんだ。俺がより早く強く相手にトマトを食べさせたいと願った結果生まれた夢の武器なんだぞ、これは。今はミニトマトサイズしか発射できないがゆくゆくは普通のトマト、そして理想としてはバズーカ砲にデカトマトを詰め込んで発射出来る様にしないとな。いや、夢が広がるな!


「お前本当にトマトが好きだよな……」

「少なくともイッセーよりは重要な物だな」

「俺はトマト以下なのかよ!?」

「?」

「何だよ、その『当たり前だろ、なに言ってんのこいつ』見たいな顔!?」


ええー、そんなの当たり前だろ。俺にとって、トマトは無くてはいけないものでイッセーはまあ、別に無くてもいけるだろってところだな。俺の中での大切な者ランキングは黒歌がトップでそこに越えられない壁が存在して、次がトマトでその下にみんなだな。別にみんなが嫌いなわけじゃないぞ。

ただトマトがないと俺の体を構成する成分が補給されないだけなんだ。
そろそろ食べなかったら禁断症状が表れるようになるかもな。
あ、因みにエルとルルと兄さんとミラは大切な者ランキングに殿堂入りしている。


「とにかく、早いところ掃除を終わらせるぞ! 妥協は許さん!」

「分かった、分かったからその突きつけたトマト銃を離してくれ!」


仕方ない、食材を粗末にするわけにはいかないからな。俺は銃を下ろしてイッセーを自由にする。さて、そろそろ俺も取りかかるとするか。俺は(モップブラシ)を取り(汚れ)を睨み付ける。ふっ、見せてやろう、掃除スキルを極めし者の真の力を!





「……プールが光輝いています」

「光沢が生まれるなんて……どうなっているの?」

「まるで新築ですわね……」

「凄くキレイになりました!」


俺の掃除スキルによって生まれ変わったプールを見てそれぞれの感想を述べる小猫達、アーシア以外が若干、引きぎみなのは気にしない。やっぱり、アーシアは天使だな。
それにしても良い仕事をしたな俺。

爽やかな汗を流しながら飲む、仕事終わりのこの一杯が堪らない!
ん、何を飲んでいるのかって。キンキンに冷やしたトマトジュースですけど何か?
マイボトルに入れて毎日持ち歩いていますけど何か?


「まあ……考えても無駄よね。ルドガーの行動に一々ツッコンでいたら身が持たないもの。
 さっ、掃除も終わったしプールで遊ぶわよ!」

「「「「オオー!」」」」

「え? 俺は聞いてないぞ」


衝撃の事実に驚いて、空気も読まずにテンションを上げるかのように叫ぶみんなにそう言う。するとみんなの憐みの視線が俺に集中し、その次に非難がましい視線が部長に集中する。それに対して、部長は明らかに『しまった』といった感じの顔になり気まずそうに俺から顔を背ける。それを俺は恨みを込めたジト目で見続ける。そしてついに俺の視線に耐えきれなくなったのか部長が口を開く。


「サ、サプライズよ!」

「無理しなくてもいいですよ。慣れていますから」


かなり無理のある発言でごまかそうとした部長に対して、俺はそう言ってしゃがみ込んで体操座りをする。みんなが俺に伝えるのを忘れていても泣かないし……。ルドガーは強い子だから泣かないんですー。だからみんなの可哀想な物を見るような目なんて少しも気にならないんですー。
……ごめん、やっぱり泣いてもいいか?


「ルドガー、どうしたのにゃ!?」


後ろから抱きつかれて背中に柔らかい感触を感じる。黒歌来た! これで俺はまだ戦える!
これでかつる! そう思って後ろを振り返って愛しい人の顔を見る。


「今から折角みんなで、プールで遊ぶのにどうしてそんなにテンションが下がっているのにゃ?」


黒歌…お前もかっ!? 何なんだ、何なんだ、この虐め! みんなどうして俺には伝えてくれなかったんだ。伝え忘れるにしても、もう少し何か臭わせるような発言をしてくれよ。
伝えられる情報がいつも最小限過ぎて分かり辛いんだよ! しかも今回はゼノヴィアに聞いたから大丈夫だと思っていた所にまだ情報が隠されていたという二段構えの罠だ。ゼノヴィアはどうして最後まで伝えてくれなかったんだ。

どうして俺に対する伝達はいつも適当なんだ。あれか、役所みたいにたらい回しにしていった結果伝えることすらなくなるパターンか? それに黒歌だって一緒に住んでいるんだからもう少し、
言ってくれたっていいじゃないか。今日だって普通に見送られてきたから全然気づかなかったぞ。
そう思ってちょっぴり涙目で黒歌を見上げる。


「……何だか分からないけど、取りあえずごめんにゃ。それとルドガーが水着を忘れていたから持ってきておいたにゃ。それじゃあ、また後でね」


そう言って、水着の入った袋を手渡される俺……。理解されなくたって泣かないんだからな!
結局その後、俺は体操座りを無理やり、やめさせられてイッセーと祐斗にズルズルと引きずられながら更衣室にまで連れていかれたのだった。





現在、俺達オカルト研究部、男子組はプールサイドで女子が来るのを待っている。こういうのは総じて女性が着替えるのには時間が掛かるからな。以前からの経験でも分かっている。まあ、こういうのは待つのも楽しみの内だよな。夏の焼けるような日差しが俺達を照らしてくるが我慢だ。そうして待っていると二人の視線が俺の着ている物に集中してくる。どうやら、二人は気づいたようだな、俺の羽織っている物の正体に。


「ねえ、ルドガー君……そのパーカーって、もしかして―――」

「『クロパーカー』だ。勿論モデルは猫状態の黒歌だ。可愛いだろ? 因みに手作りだ」

「しかも手作りで作ったのかよ……。呆れを通り越して尊敬するぜ」


そう、俺がたった今、ドヤ顔で羽織っているのは俺手作りの『クロパーカー』だ。密かに計画を着工してからつい先日に出来上がった俺の渾身の一品だ。因みに特にこだわった所は耳の部分だな。出来るだけ黒歌の癒し成分と可愛らしさが引き出されるように何度も作り直したからな。
因みにこれは302回目でようやく納得のいく出来になったものだ。
予定よりも早いお披露目になったがどこに出しても恥ずかしくないレベルの代物だ。


「ルドガー、お待たせにゃ」


そんなところにはずむ様な黒歌の声が聞こえてくる。俺は直ぐにそちらを向きたいのを堪えてイッセーの方を向く。まずはやらないといけないことがあるからな。悪いが犠牲になってもらうぞイッセー。俺は若干鼻を伸ばして黒歌の方を見ようとするイッセーの目に目掛けて―――


「じゃんけん、チョキ!」


「目がっ! 目がああああっ!?」


二本の指を突き立てる。悪いな、イッセー。気持ちは分かるがお前みたいな、いやらしい目線を黒歌に向けられるのが俺は我慢ならないんだ。お前がいたって普通の、そうだな……隣で顔を青ざめて必死に黒歌から目を背けている祐斗と同じぐらい普通の目になれたら目つぶしはしないから頑張ってくれ。

さて、気を取り直して黒歌の水着姿を褒めるとしよう。そう思って黒歌の方を見る。少し興奮しているのか、頬を赤らめてこちらを見つめてくる黒歌のプロポーション抜群の肢体はシンプルな白のビキニ姿で包まれており黒歌の黒髪と絶妙なコントラストを描いている。
一言で言うと……綺麗だな。他に言い表せる言葉が見つからない自分の語彙力が情けない。


「その……綺麗だよ、凄く。……これ以上は言葉で言い表せないんだ、ごめん」

「ありがとうにゃ。そう言ってもらえると嬉しいにゃ」


そう言って本当に嬉しそうに笑う黒歌に思わず見とれてしまう。……やっぱりこの人を好きになってよかったな。そう思いながら段々と顔を近づけていく。そのことに黒歌は少し驚くものの、直ぐに受け入れて目をつむる。そして―――


「……イチャつくならよそでやってください」

「うおっ!?」

「にゃっ!?」


小猫が俺達の間に入ってきてズイと俺を押し戻す。そのことに驚く俺達だったが直ぐに先程までの行動を思い出して顔を赤くする。確かに今のはここですることじゃないよな。
最近は二人きりの事が多かったから周りの目に対する配慮が足りなかったな。
今度からは二人きりの時、限定になるようにしよう……出来たらだけど。


「……全く、姉様も兄様も色ボケ過ぎです」

「うっ…ごめん。……それとやっぱりその兄様って呼び方は変えてくれないか?」

「酷いにゃ! 昨日はあんなに私を激しく抱いて、愛しているって言ってくれたのにあの言葉は嘘だったの!?」


何故か、わざとらしく泣き真似をしてそんな事を言ってくる黒歌に思わず焦ってしまう。
因みにその顔は小猫からは見えないように俺の方に向けているので小猫からは本当に泣いているように見えているかもしれない。


「いや、ただ単に恥ずかしかっただけだからな! 愛しているのは嘘じゃない! 後、今のは冗談だから、俺と黒歌はまだそんなことしていないから小猫はそんな目で俺を見ないでくれ!」


まるでゴミでも見るかのような目で見てくる小猫の誤解を解くために急いで説明をする。
はあ…黒歌はこういう時は悪乗りして俺をいじってくるんだよな……可愛いから許すけど。
それと、あれ以来、小猫の俺の呼び方が兄様に変わったんだ。

まあ……実際俺も今は本当の妹みたいに思っているけどやっぱりその言い方はなんだか恥ずかしいんだよな。俺も、ゆくゆくは黒歌と結婚して夫婦になりたいとは思っているけど……というか他の人とそういう関係になる気はない。けど、やっぱり堂々とそう言われると恥ずかしいんだよ。
それと小猫の水着も褒めてあげないとな。


「小猫もその水着、似合っているぞ」

「……ありがとうございます」


小猫の水着は青と白のラインが入ったセパレート型の水着だ。
形は所謂タンキニってやつだな。小猫に良く似合っていて隣の黒歌が頭を撫で回しているのも良く分かる。小猫の方は少しうっとおしそうにしているけど拒んではいない。
何だかんだ言って、甘えたいんだろうな。気持ちは良く分かる。

そんなことを考えていると部長達が到着したので早速プールで遊ぶことになった。
因みにイッセーが部長や朱乃さんを見て鼻血を噴射していたがそこは省いてもいいよな。
他の人の水着? 今の俺は黒歌にしか興味が無いんだ。だから特に何もない!
小猫? 小猫は妹だから褒めてあげただけです。





「ルドガー、あーん」

「あーん」


しばらく遊んで、遊び疲れたので、俺達はプールサイドで部長が趣味の為に持っていた、かき氷器で作ったかき氷を食べている最中だ。因みに作っているのはイッセーだ。偶には食べる専門なのも悪くないな。そんな事を考えながら黒歌にかき氷を『あーん』してもらう。
みんなの前でイチャつくのは自重しようと思ったけど黒歌がナチュラルに俺にスプーンを差し出してきたのだから仕方ない。早く食べないと溶けるしな。

それと、イッセーがそんな俺達の様子を見て血涙を流しながらかき氷器を回していたり、アーシアがそんなイッセーに『あーん』させたいが今は動いているので迷惑かな、でも、させたいと葛藤してオロオロとしていたり、小猫が呆れ顔でこちらを見ながら食べていたせいか頭がキーンとなって顔をしかめているのはなぜだろうか?


「あら、シロップをかけ過ぎたかしら。妙に甘いわね」

「部長、その部分には何もかかっていませんわよ」

「イッセー君、僕の分を食べるかい?」

「野郎にやって貰うほど寂しくはねえよ!」


何やら真っ白な氷の部分を食べて甘いと呟く部長にツッコミをいれる朱乃さん。
何故か、イッセーに『あーん』させようとしたのが失敗して本気でへこんでいるように見える祐斗。そんな状況を眺めながら俺は黒歌に『あーん』をする。


「そう言えば、そのパーカーって私がモデルになっているのかにゃ?」

「ああ、黒歌が可愛くて仕方がなかったから作ったんだ」

「にゃははは。そう言われると照れるにゃ」


俺の『クロパーカー』のモデルにした理由を素直に伝えると照れたように笑いながら俺の方に寄りかかって来る黒歌。そんな様子を見てゼノヴィアは何やら『参考になるな……』などと呟いているが何の参考にするつもりだ。もしかして、イッセーの事が好きになったのか?

そう言えば、前にクラスで何か騒いでいたような気がするな。その時は待ち受けの黒歌の画像を見るのに忙しくてよく聞いてなかったけどな。……最近は特に何もなくて平和だな。
ありふれた日常、それがどれだけ大切な物かを噛みしめる。


「黒歌……俺、今、幸せだよ」

「……私もにゃ」


そう言って二人で微笑みあう。ああ……本当に幸せだな。この幸せを守りたい。
叶う事ならこの幸せがいつまでも、いつまでも続いて欲しい……そう願っている―――




幸せな“世界”なんてどれだけ望んでいてもすぐに壊れて消えることなんて―――


――俺が誰よりも分かっているはずなのにな――

 
 

 
後書き
甘いだけで終われる程、世界は甘くない。

 
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